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の着想を得た物です。
曇らせです。
以上の事を踏まえながら読んでくださると幸いです。
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おれがトレセン学園を卒業してから四年。
おれはトレーナーさんと共に無事トゥインクル・シリーズを走り抜き、短期大学に通い、理学療法士になる事が出来た。
今は、理学療法士として駆け出しだけれど少しずつ成長していると思う。おれがここまで成長出来たのは、両親、おれを診てくれたお医者さん、トレーナーさん、周りの人達のお陰ということはおれが一番分かっている。だからこそ、こうして今度は自分が人を助けられていることに幸せを感じる。
そんな、ある日。トレーナーさんから、おれ宛に一通の手紙が届いた。
クリーム色で綺麗な封筒に、金色の縁、更にシーリングスタンプまで付いている。
ゆっくりのりを剥がして手紙を見てみると、そこには
「〇月〇日、△時から、私達は結婚式を挙げることとなりました。 つきましては、日頃お世話になっている皆様に……」
と、丁寧な文字で結婚式の招待状が書かれていた。
ああ、トレーナーさん、結婚したんだ。
黒で書かれた文字は、綺麗で細い文字と、少し不格好で太めの文字があった。トレーナーさんは、この二人と招待状を書いたのかな。少し、微笑ましくて手紙を見ていると、電話が鳴った。
「はい、もしもし。ケイエスミラクルです。」
「ミラクル!大分成長したね」
「えっ。そうですか?」
「俺はトレーナーだからな。声だけでも分かるんだよ。」
「へへっ……、ありがとうございます、トレーナーさん。あ、あと、ご結婚おめでとうございます。」
「あっ、そうだった。話を忘れていたよ。ありがとうなミラクル。実は、ミラクルにスピーチを頼みたいんだ」
「お、おれが?」
「ああ。元教え子だしな。それに、ミラクルはスピーチ得意だし。」
「へへ、そうかなぁ。分かりました。おれ、スピーチやってみます。」
「そうか!いやー、クラシック級では毎日張り詰めたような生活を送っていたミラクルが、今ではスピーチしてくれるだなんて、俺も幸せ者だよ」
「も、もう……トレーナーさん、たら…」
「ははは。突然電話すまなかったな。また、スピーチの内容とか詳しい事は伝えるから。またな。」
「はい、トレーナーさん。ありがとうございました。」
受話器を元の位置に戻すと、一度深く深呼吸をした。
「スピーチ、かぁ……」
それから、スピーチの内容を毎日のように考え、机に向かい、おれはひたすらトレーナーさんの期待に応えようと練習し、ついに、今日、その日が訪れた。
新郎姿のトレーナーさん。隣にいるのは…おれの後に教えた子だろうか。トレーナーさんとは二人でしか話した事がないから、相手が誰だか全く想像していなかったし、きっといい人なのだろうと思っていたけれど……まさかウマ娘だとは思ってなかった。そんな思いを頭から強制的に消して、拍手で二人を迎え入れた。
「それでは、次に□□さんの元教え子のケイエスミラクルさんのスピーチです」
ああ……そういや、いつもトレーナーさん、としかあまり呼ばないから、トレーナーさんの名前が名前だと気づくのに時間がかかってしまう。そうか、おれは、元─────
深呼吸して席を立ち、マイクの目の前まで歩く。大丈夫だ。今までウイニングライブで慣れてきたのだから。それでも、目線が棘のように全身を刺していく。心臓の鼓動が早くなる。ここはトレーナーさんの大事な結婚式だ、大丈夫─────
「ただ今ご紹介に預かりました、ケイエスミラクルと申します。」
「ト、…□□さん、××さん、並びに両家の皆様、本日は誠におめでとうございます。」
よし。よし。大丈夫。心を、落ち着かせて。息をゆっくり吸い込む。
「僭越ではございますが、お祝いの言葉を述べさせていただきます。」
「□□さん、元トレーナーさんと出会ったのは、元トレーナーさんが、元、トレーナーさん、が……」
あれ。声が、上手く出ない。
視界が霞んで、ぼやけて見えなくなっていく。
「元、元っ……トレーナーさんが……っ、た、たまたまっ、おれの、目の前を……」
どうして。練習も全部、上手くいったのに。言葉が詰まって、喉から出てこない。
声が震えて、力を出してようやく出てきても、続きが頭から出てこない。メモを取り出して見ようにも、視界がぼやけて何も見えない。お願い。お願いだから、トレーナーさんの──────
ああ、ようやく、分かった。
おれは、トレーナーさんに恋をしていたんだ。
ずっと感じてた、新婦さんへの邪な気持ち。これは、嫉妬だったんだ。
「あぁっ、あ、ああ……」
目頭が途端に熱くなって、涙が止まらない。
流れる涙を自分でも、止められない。
もう、遅い。
トレーナーさん、いや、元トレーナーさんの結婚式でようやく、自分の恋心に気づいたのだ。
恋なんて無縁だと思っていたから。なんて言い訳を並べても、嗚咽も涙も止まることはない。
「ああ……ううっ、あ……あ…」
「ミラクル?!」
「ミラクルさん、あんなに泣いているけれど、大丈夫なの…?“貴方”」
「待っててくれ」
トレーナーさんがおれの元に駆け付けてくる。
今は、その優しさも、新婦さんの心配も、言葉の全てがおれに無慈悲に突き刺さる。
「うぅっ、う……」
声も枯れて、思わずふらつき、座り込む。
トレーナーさんは、ただ心配そうな顔をして、おれの背中をさする。会場は異様な雰囲気にザワついているようだ。
やめて。おれに触らないで。おれに、心配の目なんか向けないで。おれは、おれは──────
おれは遅かったから。その癖に嫉妬してしまうから。こんなおれに優しくしないで。痛い。ただ、心が痛い。“貴方”?貴方?おれがもし、先に気づいていたら、ああ、トレーナーさん、おれの、おれのトレーナーさん───────
ただ、そんな事をひたすら考えるケイエスミラクルには心配と同情の視線しか向けられなかった。