ロトの血を引くあなたなら世界を救える? 知らん……何それ……怖……   作:初音の歌

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この物語は原作設定や展開とは微妙に異なる部分があります。ご了承下さい。


第1話・勇者の旅立ち

 

 

 さて、美女とたっぷり夜のプロレスを楽しんだ俺は、勇者から賢者に転職していた。

 

 ベッドに寝転がる俺。隣では美女が安らかに寝息を立てている。中々の強者だった。よもや俺のプロレスに最後まで着いてくるとは……ラダトームの美女、侮りがたし。

 個人的には明日以降も、プロレス相手を探して街を練り歩きたいのだが……流石に何日も城下町に滞在は出来まい。

 何せ、王様から色々と指令? みたいなものを受けている。王様の命を無視して女遊び――じゃなかった。プロレスばかりしていては、間違いなく噂になってしまう。そうなればラダトームから追い出されること間違い無しだ。なんと世知辛い世の中だろうか。

 

 眼を閉じながら、今日の事を思い返す。

 近衛兵の、ジジイとイケメンとかわいこちゃんを助けた。

 で、ラダトームまで案内してもらった。ただ、ごめん。途中の説明、眠くてよく聞いてなかった。なんかジジイが懇切丁寧に何かを喋ってたのは覚えてるんだけど……うーん、何だったんだか。島がどうこう、竜王がどーのこーの言ってた記憶はあるんだけど。

 まあ、聞いてなかったものは仕方ない。過去は振り返らず、未来に向かって進むのだ。

 そいでラダトーム城に入って、偉そうな国王陛下の前に立ったんだっけ――

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「おお、勇敢なる若者よ。そなたが来るのを待っていた」

 

 目の前で王様が、多分両手を広げながら俺を歓迎している。

 何で多分かって? そりゃあ片膝着いて、顔を上げずに聞いているからですよ。王様の前で突っ立つ度胸は無いからね! 王族には低姿勢。これ鉄則よ。

 あと右前方……大臣さんの方から、敵意に似た視線が向けられているのを感じる。

 うんうん、解ってますよ。そりゃそうでしょうよ。こんな身元不明の怪しい傭兵を、謁見の間まで連れてくる……それ自体がありえない。確かに近衛兵の恩人だけれど、今のところの俺の身分は「勇者ロトの血族を名乗る怪しい男」でしかない。こんなの普通、丁重に持て成さないからね?

 

 王様の話は続く。俺はもう、頷くだけの人形よ! 適当に「ええ」とか「はい」とか言う。

 王様の言葉を遮ったりしないし、否定したりもしない。完璧なYESマンよ!

 ただ、話を右から左に聴き流している途中、「竜王」がどうのこうの言い始めた。

 あー、リムルダールでもそいつの噂は流れてたなー。海の真ん中の孤島の城に住んでるとかなんとか。あんな孤島に住んで何してんだろうね? ぼっち?

 よく解んないけど、悪の親玉らしいから俺はよく「竜王を倒す為に鍛えている!」とか宣言してたりする。結構、ウケいいのよこれが。

 

 話は続く。何か大臣さんが大声上げてる。

 多分、ロトの子孫だなんて信じられないとか何とか。

 安心して。俺も信じられないから。というか信じてないから。

 夢のお告げの美女が、何を持って確信してるのかは知らないけど……あの戦士タネウマ(48歳)の子供が、勇者の末裔の訳ないじゃん。勇者って言葉を、辞書で引いた方がいい。

 

 話は続く……え? まだ続くの? 王様、話長いんだけど。

 思わず、少しだけ顔を上げてしまう。

 するとそこには、満足げに、そして仰々しく頷く王様の姿が。

 え、何?

 

「勇者ロトと、導きの声について知りたいなら……ロトの洞窟と、雨の祠を調べてみるがよい」

 

 別に知りたくないし……ってロトの洞窟? 何それ?

 え? 墓? 勇者ロトの墓標? ……何でラダトームから遠く離れた洞窟に、勇者の墓があるの? おかしくない? 普通、勇者の墓っていったら、王都近郊の、王族所縁の墓所にしたりしない?

 

 ……嫌な予感がする。謀略の予感。

 言われてみれば確かに。魔王を倒した後、勇者に価値なんてあるのだろうか? いや、無い。けれど世界を救った勇者を無下に出来ず、何らかの方法で暗殺。まあ、毒盛るなり方法は幾らでもある。

 で、特別感を装って、ラダトームから遠く離れた土地に埋葬……有り得る話だ。特に毒殺した死体は、検分すればすぐバレる。真に「死人に口無し」を実行するために、僻地へ埋めたのか。

 

 流石王族。なんて汚い。

 

 そして今、俺にその洞窟へ向かえと……ははーん。成程ね。こうやってロトの血族を騙る奴が来るたびに、そのフカシ野郎を僻地へ誘導。そして人知れず抹殺すると。

 よく出来てるじゃん。へー…………。

 

 ……って、そのフカシ野郎って俺じゃねぇか!?

 やべぇ、どうしよう!? ラダトーム王家に殺される!?

 

「ロトの洞窟と、雨の祠を調べ終えたら、解った事をわしにも教えてくれ。では、また会おう!」

 

 また会おうじゃねぇ! 会えねぇよ! 二度と会えねぇよ!

 どうしようどうしよう。やっぱ、勇者の末裔ですなんて言わなきゃよかった!

 え? 何? お金やるから旅に役立ててくれ? なーんだ、それならそうと早く言ってくださいよ王様ー。ちゃーんと軍資金まで用意して、思わず暗殺疑っちゃったじゃないですかー。

 

 さーて、どれどれっと……ってショッボ! 120ゴールドてアンタ!

 娼館にすら行けねぇよ! どうなってんだこれは!?

 

 あー……間違いない。ロトの洞窟なんぞに行ったら、俺は殺される。洞窟の肥やしにされる。

 まじかー。やべぇなこりゃ、どうにかして逃げないと。

 

 ちゃんと王様に礼をして、静かに、礼儀正しく、謁見の間を離れる俺。

 でも頭の中はメダパニ中。どうすれば殺されずに済むか、必死で考えてる。

 

 まず、順を追って考えよう。落ち着け。まだ、慌てるような時間じゃない。

 少なくとも、ロトの洞窟に行くまでは殺される可能性は低い。特に今は王城の中。この城内で殺人は犯さないだろう。やるとしたら城を出た後。

 となると、正門から出るのは危険か? いやいや、さっき自分考えた。ラダトームの領内で死ぬ可能性は低い。慎重に、慎重に行動しないと。

 

 てくてく歩きながら考える。

 まず、俺の顔は国王に覚えられてしまった。大臣にもだ。安易な逃亡は図れない。

 大切なのは、どのタイミングで行方を眩ますかにかかってる。

 街中で、人混みに紛れて消えるか? だが、俺はラダトームに来たばかり。街の構造を把握していない。ええい、近衛のジジイに案内されてるとき、ちゃんと見ておくべきだった! 誰だ眠いからって無心で歩いていた奴! 俺だよ! 畜生!

 

 ああ、もう、真面目に不味い。なんで睡眠不足解消のためにラダトームまで来て、俺は王家に命狙われなきゃならんのだ!? 俺が何かしたか!? 勇者の末裔ですって言っただけだろうが!?

 畜生! なんて理不尽な世の中だ! こうなりゃ死なば諸共、城に火点けて盛大に暴れてやろうか!? 本気になった俺は、マジでやるぞ!?

 

 ふんすふんすと鼻息荒く、城内を歩く。

 そして気づく。

 

 

 ……えっと、ここ何処?

 

 

 ……あー、城の裏庭か? 考え事して歩いてる内に、変なとこ来ちまった。

 というか、帰りの案内くらい付けてほしい。警備の安全も考えれば、そっちの方が確実よ?

 来て早々思ったんだけど、ラダトーム大らかすぎやしませんか?

 

 しかし……ホント、何処だよここ。何か階段あるし。

 地下行きの階段。

 ……すげぇ怪しい。何で城の裏手に、こんなのがあんの?

 

 ……ふむ。何か王家の秘密でもあるのか? となると逆にチャンスか。

 ここでラダトーム王家の秘密を握って、俺の方から脅迫する。最低限、ラダトーム領から無事に逃げ出せれば良いのだから、多少の実力行使は許容範囲。きっと、多分、許容範囲。

 色々考えながら、既に足は地下へ。おじゃましますよっと。

 

 ……なんじゃここは。明かりがある。

 人の気配は……あー、なんか一人分くらいある。この奥か。

 

 で、扉がひとつ。しかも魔力のかかった扉。

 常人では開けられない。昔、噂で聞いた「盗賊の鍵」でも開ける事は不可能だろう。

 

 ……間違いない。ここにラダトーム王家の脅迫材料がある。

 この中に居る誰かが、国の秘事を握っていると見た!

 となれば、早速突撃だ。魔力の掛かった扉?

 俺を舐めるなよ。一体何回リムルダールで、借金の取り立てやったと思ってる! 娼館のツケは一度も逃がしたことはねぇんだ! ヤリチン用心棒を甘くみるな!

 魔力のかかった扉なら、魔法で開ければいいだけの話!

 いくぜ、これが俺の握力と魔力の合成呪文……肉体的解錠呪文(アバカム)!!

 

「ふんがっ!」

 

 バキャ!

 

 

 

 

◇ ◇ ◇太陽の賢者side◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 この地下に籠って、どれだけの月日が流れただろうか。

 

 ラダトームの地下。知る者は僅か。王族すら知らぬラダトームの秘事。

 誰の声も聞かず、誰の顔も見ずに、この地下に留まるのは……思いの外、辛い日々である。

 無論、重要性は解っている。代々受け継いできた聖なる宝を、万が一にも悪しき者の手に渡してはならぬ故。儂の命は、その役目を果たす為にある。

 それは、解っているのだ。

 

「……ゴホッ」

 

 だが、はたして……それまでに儂の命が保つかどうか。

 この地下にも食事を届けに来る者はいる。ラダトームの暗部。情報局の一員だ。その者達から外の状況も、多少は聞いている。

 聞けば闇の軍勢が暴れまわり、なんと姫殿下まで攫われてしまったとの事。

 

 なんたる事か。最早、一刻の猶予も無い。

 早く、少しでも早く、この聖宝を勇者に渡さなければ。

 

 だが、本当に居るのだろうか。かつて世界を救った勇者ロト――その末裔がこの時代に?

 

 不安ばかりが胸を過ぎる。

 この地下の扉は、通常の手段では絶対に開かない。

 特殊な鍵……魔力を込めた「魔法の鍵」がなければ開けるのは不可能だ。

 

 しかし現在、その魔法の鍵は、一部の街の賢者しか造れない。壊れない鍵となると、この世にひとつとして無いだろう。

 つまり、そんな鍵を入手するには、力だけでも知だけでも足りない。

 力と知恵、そして勇気を兼ね備えた勇者でもなければ、あの扉は開かないのだ。

 

 ……今日も、扉が開く気配は無い。

 儂は扉から目を背ける。もう、待つ時間が苦痛になってきた。諦めの感情が、浮かぶ。

 

 どうせ今日も、明日も、この先永遠に、あの扉は開かれない。

 

 世界の全てが闇に包まれたとしても、絶対に。

 

 

 

 ――バキャ!

 

 

 

 何かを壊す音が、聴こえた。

 

 突然の音に驚き振り返る。

 そこには開け放たれた扉と……一人の青年の姿。

 静かにこちらを見据える、戦士の姿があった。

 

 今の音、まさか……力で壊した?

 否、不可能だ。力で壊せる扉ではない。あの扉を開けられるのは「魔法の鍵」……そして遥か昔に失伝した呪文、解錠呪文(アバカム)でも無い限り、絶対に無理。

 

 ならば……来たのか? 遂に、勇者が儂の前に。

 

「……儂には分かっておった。いずれ、ロトの血を引く若者が、ここを訪れる事を」

 

 思わず、涙が零れる。

 万感の想いとは、まさにこの事なのであろう。

 

「この、誰も知らぬ地下室まで来られたということは、お主がそうなのであろう」

 

 男は言葉を発さない。

 ただ、静かに頷くのみ。その瞳には何か……決意のようなものが込められている。

 凄まじいまでの意志。必ずやり遂げるという強い志。

 

「さて、お主にこれを渡そう」

 

 最早、迷う事はなかった。

 時が来たのだ。代々受け継いできた、この聖宝を渡す時が。

 

 光り輝く、この太陽の如き聖石を、今こそ汝に手渡そう。

 

「その太陽の石は、遥か昔、勇者ロトからラダトームの大臣が託されたものじゃ」

 

 太陽と雨雲が混じりし時、虹の橋が道を繋ぐ……ふふ、その全てを知っている訳では無い。

 だが、これは希望だ。儂には分かる、この石に込められている聖なる力が本物だと言う事を。

 

「この事は、王族や、儂の息子である現在の大臣すら知らぬ、国の秘事じゃ。見つけるのに、苦労したじゃろうが……」

 

 そして、今目の前にいる男こそ、伝説の勇者の子孫なのだということも。

 この地下を見つけるのには苦労をかけたと思う。

 だが許してくれ。

 

「全ては、太陽の石を、悪しき者たちから守る為。悪く思わんでくれ」

 

 男は、太陽の石を見つめ、静かに頷いてくれた。

 儂の声など、耳に入っていないような様子。

 

 ふふ……それでよい。こんな老人の事など些末事。

 大切な役目は、他にある。勇者のすべき事の前に、儂など路傍の石に過ぎぬ。

 

 

「さて……長い間、太陽の石を見守り続けて、儂も少しばかり疲れたわい。そろそろ休ませてもらう事に、しようかのう……」

 

 

 ああ、長かった……だが、これでやっと……眠れる。

 おさらばですじゃ……国王陛下……ローラ姫。

 

 ラダトームの繁栄と平和を……爺は、いつまでも願っております……。

 

 

「この地に再び平和を……頼んだぞ」

 

 

 去っていく男を見つめる。

 扉が閉まる、最後の瞬間まで。

 

 

 老人は安心したように――永い永い眠りについた。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇勇者side◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 うーん、今日一日だけで随分激動だ。俺みたいな傭兵が国王陛下に謁見とか、多分二度と無い経験だよね。緊張して、話の内容殆ど覚えていませんぞ! 決して聞いていなかった訳ではなく!

 覚えてるのは、地下で爺さんにやたら綺麗な石を貰ったことだけよ!

 何か太陽だの愛用だの、ごちゃごちゃ言ってたけど……俺には分かる。

 

 この石は……高く売れる!

 

 いやぁ、これだけピカピカしてる石、並みの宝石じゃないぜ? 10000ゴールド……いやもっとするかも知れない! この輝きは伊達じゃない!

 なにせ、この石見せただけで、街のねーちゃんが「素敵ー!」って言って着いて来たんだから。

 おかげでナンパ大成功! 夜のプロレスも大満足! ピカピカの石に大感謝! これがパワーストーンってやつかも知れないね!

 

 うーんでも……流石にラダトームで売るのは足がつくか。どっか遠い町まで行って売らないと。

 

 どこがいいかな……リムルダールは無し。地元は駄目。知り合いがすり寄ってくる。

 マイラとかは……うーん、温泉宿としては有名だけど、あそこはラダトームからも近いし。

 ガライ……まあ、無難っちゃ無難だけど、高く売れるかなぁ。

 ドムドーラはとっくに滅んでるから論外として。

 メダル王……あそこの王様、メダルにしか興味ないから却下。

 

 となると……メルキドか! うん、それがいい! ラダトームから遠いし最高!

 

 よーし、そうと決まれば明日メルキド目指して出発だー!

 

 

 

 ……あれ? 俺、そういえば何しに地下行ったんだっけ?

 

 えーと、うーんと……。

 

 ……まあ、いいか! 忘れるってことは大した事じゃない! 大切なのは金と女!

 

 よーし、明日からも頑張るぞー!

 

 

 

 

 

 

 つづく

 

 

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