ロトの血を引くあなたなら世界を救える? 知らん……何それ……怖……   作:初音の歌

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第2話・盗賊カンダタ

 

 

 

 ラダトームを出発した俺は、早速メルキド目指して歩みを進めていた。

 

 なお、昨日の美人のねーちゃんとは一晩限りの付き合いだ。やっぱ後腐れなく別れないとね! 旅先の女とは、その場限りが一番よ! あ、ちゃんとお金渡しといたよ。昨日、王様から貰った120ゴールド。すげぇ微妙な顔してたけど。納得できないけど、文句も言い辛い金額でごめんね!

 

 で、道中襲ってくる魔物しばきながら思う訳ですよ。

 そういや王様、俺に何処行けって言ってたっけ。

 はい。覚えてませんよ。俺の「おもいで」に記憶されてるのは、美女や美少女との会話だけだ。野郎や爺の言葉なんて、2分も保たねぇ。脳の無駄遣いをする趣味は無い。

 まあ、あれだ。きっと世界を救えだの、竜王を倒せだの、そういう類の話だ。一応、勇者の末裔名乗った訳だし。適当に魔物しばきながら旅してれば、命令に従ったことになるだろう。

 

 メルキドまでの道は長い。ガライに寄ろうかどうか迷う。

 でも、あそこは別に名産も無いしなぁ……なんか有名な墓所があるけど、何が悲しくて墓所巡りなんてしなくちゃならんのかと。

 ちと疲れるが、ガライには寄らずこのままメルキドに向かうか。

 はあ、やれやれ。長い旅になりそうだぜ。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 それでですよ。途中で、旅の宿屋に入った訳ですよ。

 いくらなんでも、休憩もせずにメルキドまで歩く気は無いのでね。

 金払って、ベッド入って、すやすや寝ていたら――隣の部屋から、やたら煩い声と物音が。

 たいしたものですよ。この俺を、ここまで怒らせるのは。ラダトームに行った昨日は、あのうるさい夢は見なかった。そして今日、この宿屋でも夢は見なかった。

 本当に、久々に熟睡してたんですよ俺は。それなのに隣が煩くて眠れない訳ですよ。

 

 まあ、当然、剣片手に乗り込みますよ。

 安眠妨害は斬首も止む無し。誰であろうと、なますに切り刻んでやろうと。

 

 そしたら――何か、見覚えのある、覆面パンツ男が。

 

「……げっ!? だ、旦那!? な、なんでこんなところに!?」

 

 見ると、覆面パンツ男が窓から外に出ようとしている瞬間。

 部屋の床には、商人みたいな恰好の男が倒れており、荷物が幾つか荒らされている。

 ほほう、つまり……物盗りですか、そうですか。

 まあ、別に俺以外の荷物から盗みを働こうが、どうでもいいのですけれどね。

 ようするに、その音が、俺の睡眠を邪魔したんですね?

 

「ま、待ってくれ旦那! これには深い訳が……っ!」

 

 知らぬ。存じぬ。心底どうでもいい。

 故、要らぬ。見知った顔だが、奴の命と俺の睡眠では、睡眠の方が遥かに重い。

 え? 商人の男の容態? いや、知らんよ。知り合いでも無いし、それはどうでもいい。

 だが、奴は、あの覆面パンツ男――カンダタだけは赦せぬ。

 さあ、我が鋼の剣が血に飢えておるぞ。

 

「や、やべぇ、あの目はマジの目だ……お前達、ずらかるぞっ!!」

「へ、へいっ!」

 

 どうやら窓の外に仲間が――ああ、そういやお前に部下が居たっけな。

 思い出した思い出した。リムルダールで、娼館のねーちゃんの相手に「料金が高い」だの「絵姿と違う」だの、ぎゃあぎゃあ騒いでいた下っ端共か。

 あの時は鼻の骨折る程度で済ませてやったが……今回はそうはいかんぞ。

 

閃熱呪文(ギラ)

「あっつ!? 嘘だろ!? マジで撃ってきやがった!?」

「に、逃げろ! あの人に言葉なんて通じねぇ!!」

 

 あ、くそ。当たらなかった。掠めただけだ。

 ええい、逃げ足だけは速い奴らめ。あっという間に窓の外に飛び出して、宿から離れていきやがる。

 

 すぐさま自分の部屋に戻り、鎧の早着替え。急いで宿の外へ向かう。

 絶対に逃がさんぞ。

 

「ちょっとお客さん!? 一体何が!? 部屋が荒れてるんですけど!?」

「覆面パンツのカンダタって盗賊の荒しだ! 賠償はそいつにするんだな!!」

「ええ!? ……って、壁が焦げてる!! 呪文使ったんですか!?」

 

 宿のオヤジが、わちゃわちゃ騒いでいるが、そんなの無視だ。

 急がねば見失ってしまう。あの野郎、俺から逃げ切れると思うなよ。

 地の果てまでも追い詰めて、痛覚を持って生まれた事を後悔させてやる!

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 それから、すごかった。

 

 俺とカンダタの、追いかけっこは、本当に長く続いた。

 夜の草原を駆け抜けて、森を潜り抜けて、毒の沼地すら踏破して……気づけばカンダタ達を見失っていた。

 

 畜生めが。あの野郎ども何処へ行きやがった。

 この先に大きな町は無い。このまま行くと、滅びたドムドーラがあるだけだし……メダル王のとこか? まあワンチャンあるか。あの盗賊団共のことだ、メダル王の城でも盗みを働く可能性がある。

 よし。ひとまずメダル王のとこまで行くとするか。

 そこで見つかれば良し。見つからなくてもひとまず休める。

 あいつらがメダル王の城で盗みを働いていたら……盗んだ品だけ奪って、罪を全部あいつらに擦り付けておくか。盗賊の言い分など、信じないだろう。

 

 おのれ。リムルダールで見逃してやった恩を忘れやがって。今度会ったら覚悟しておけよ。

 

 で、今、ドムドーラ近辺の砂漠に居る訳だが……あっちぃなぁ、ここ。

 魔物の分布も変わって来たし、面倒な事この上ない。

 ったく、やれやれ。マトモに宿で休んでないし、踏んだり蹴ったりだ。

 

 あーあ。早いところメルキド行って、この綺麗な石売らないと。

 そして手に入れた金でしばらく豪遊するのだ。面倒な傭兵稼業なんてやってられねぇぜ。

 

 

 

 

◇ ◇ ◇カンダタside◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 走り続けた先にあった洞窟の中で、俺様達はようやく一息つくことが出来た。

 

「はぁー……はぁー……はぁー……」

 

 死ぬかと思った。割とマジで、命の危機を感じた。

 隣を見れば、俺様の子分たちも似たような様子。全員が汗だくで、蒼褪めた顔をしてる。

 そりゃそうだ。あの旦那は、リムルダールで会った時から変わってねぇ。女以外、雑草か何かだと思ってやがる。俺たちの命は一度狩ったら、二度と生えてこねぇっていうのに。

 

 つか、おかしいだろ。あの人はリムルダール娼館の用心棒だった筈。なんだってあんな場所に居たんだよ! 地元から出てくるんじゃねぇよ! 地元から出すんじゃねぇよ、あんな危険ブツ!

 

 リムルダールの無料案内所で笑顔で客引きしてるかと思いきや、トラブルが起きればすぐに出動。娼婦に怪我なんてさせようもんなら、あの旦那が肋骨5~6本折って大人しくさせる。

 

『おう兄ちゃん。ウチの姐さん方に、怪我させんでもらえますかね?』

 

 そう言って、ダンピラ片手に脅してくる危険人物。一回、揉め事起こしたが最後。全身ボロボロにされた挙句、慰謝料と賠償金払わせられる。ちくしょう、何で怪我した側が金払わないと……いやまあ、娼館の譲さん方に、あれこれ文句言ったのは悪いと思ってますがね?

 

 でもあれはさぁ……パネマジにしたって、限度ってもんがあるじゃろ?

 俺様はスレンダー系の姉ちゃんを頼んだの! それで何で「きめんどうし」みたいな熟女が出てくんだよ! おかしいだろうが!!

 

「いや、あれはおかしらが、番号札間違えた所為じゃないすか」

 

 うるせぇ! 18番の隣の19番が、あんな熟女系だなんて誰が思うか! 普通、ジャンル毎に纏めておくだろうが! 何でスレンダー美女の隣が、鬼面系熟女なんだよ!!

 まったく……思い出しただけで疲れた。もうリムルダールには行かん。

 あの旦那の相手はコリゴリだ。命が幾つあっても足りやしない。

 

「お、おかしら……ところで鍵は……?」

「おう。そりゃ勿論ここに……ほれ」

 

 心配そうな子分たちを安心させる為、俺様は懐にしまった鍵を取り出す。

 これこれ。これだよ。これが俺様を、あの商人の跡を追った理由。

 この『盗賊の鍵』。元々ウチに代々伝わるお宝。そんな大事な家宝を、あのクソ商人め。俺様が酔い潰れて寝ている間に、盗み出しやがって。

 居場所を突き止めるまで苦労したぜ。もし売られてた思ったら、気が気がなかったぜ。

 けれど

 

「これ取り返した途端、まさかあの旦那から逃げる羽目になるなんて……」

 

 本当に不味い。あの旦那は一度狙った獲物は逃がさない。正直なところ、この洞窟の中に留まるのも危険。いつまた剣片手に襲い掛かってくるか分かったものじゃない。

 子分たちも同じ考えのようだ。顔色が悪い。

 

「これから……どうします?」

「ぬぅ」

 

 かなり難しい。

 ただでさえ、俺様達は盗賊団。その名を至る所で知られている。

 

「とりあえず、でかい町には行けねぇな。メダル王の城なんて、絶対行けねぇ」

 

 あんな城なんぞに行ったら一発でアウトだ。人目に付き過ぎる。

 となると、小さな村や町がいいか。地図にも載っていない、小さな集落を渡り歩いて、旦那の魔の手から逃れよう。

 

 ……しかし、本当になんだってあんな場所に居たのやら。傭兵稼業も魔物退治も、リムルダール近郊だけで済んでいただろうに。あの旦那の性格上、今の世界情勢なんてどうでもいいだろうしな。

 魔物が増え、竜王なる魔物達の王が出現した、今のアレフガルド。

 城の兵士や騎士なんかは、国の平和を守る為に戦うだろうが……あの旦那が、そんな殊勝な事する訳が無い。金儲けと女遊びしか興味ねぇんだぞあの人。男の話なんて2秒で忘れるし。

 

 まあ、考えていても仕方ない。さっさとこの洞窟から出て――

 

「ん……? 何の音だ?」

 

 何か、音が聴こえた。

 足音……のような。羽音……のような。

 魔物、か? まあ、洞窟の中だからそりゃ居るだろうが。

 

「そういやこの洞窟、人を惑わせる妖精がでるって噂があるっす」

「妖精だぁ~? はっ、あの旦那に比べたら、妖精なんぞ屁でもねぇよ!」

 

 魔物も妖精も、はっきり言ってどうでもいい。あの旦那に比べたら、どんな敵もスライムみたいなもんだ。泣く子も黙るカンダタ盗賊団は伊達じゃない。リムルダールでの、旦那との激闘……正確には一方的なリンチを経て、俺様達の力量(レベル)は爆上がりしてる。

 何が相手でも怖かねぇぜ!

 

 さあ、出てきやがれ! 矢でも魔法でも持ってこいやぁ!!

 

 

「ホッホッホ……こんなところに、まさか人間がいるとは……」

 

 

 うわ。何かホントに出て来た。杖持ってローブ纏った……んー? 何だあれ?

 見た事ないタイプの魔物だな。まほうつかい系……か?

 そんな、俺様も初めて見る魔物は、此方の様子をジロジロと伺っている。

 

「まさかとは思いますが……いえ、違いますね。お前達が『勇者』であるはずがない」

 

 勇者? 勇者ってロトの勇者か?

 そりゃまあ違うわな。俺様はカンダタ。伝説の盗賊、カンダタの末裔。

 勇者ロトは――ご先祖様の子分の名前さ! 間違えるんじゃないぜ!

 

 

「ホ~ッホッホッホ!! 私の魔法で、消し炭に成りなさい!」

 

 

 そして魔物は、俺たちに呪文を――閃熱呪文(ベギラマ)か!

 赤き熱線が、俺様達を襲う……だが甘いぜ。俺様達はベギラマなんて、もう怖くねぇ! さっきまでベギラゴン使う危険ブツに追いかけられてたんだぞ。こんなもん、そよ風よ!

 

 瞬時に散開し、高熱の光線を避ける我等盗賊団。

 俺様達の機敏さを考えてなかったのか……ローブ羽織った魔物は、こっち見て驚愕してやがる。

 馬鹿が! 敵を前に驚いてんじゃねぇ! そんなんじゃ旦那相手に生き残れねぇぞ!!

 

「行くぜ、お前ら!! 旦那に比べたら、こんな奴、どうってことねぇ!!」

「おう!!」

 

 そして、武器を振り上げ、一斉に襲い掛かる俺様達。

 戦いの基本は多対一よ! そうでもしなけりゃ生き残れねぇと、俺様達は知っている!

 ベギラマ程度で悦に入りやがって。てめぇみたいな甘ちゃん相手に勿体ないが……特別だ! 戦い方をレクチャーしてやるよ! 代金はてめぇの命な!!

 

「うぐっ!? ま、まさか、こいつらこそが……ぐおぉっ!?」

 

 何かゴチャゴチャ言ってるが、知ったことか。

 そうして俺様達は、取り囲んで、敵の息の根が止まるまで、ひたすら武器を突き立てていた。

 そりゃもう夢中で、一心不乱に、グッサグッサにしていた。

 

 

 

 

「ね、ねぇ、もくりん。あの人達、すっごく強いけど……何者なのかなぁ?」

「さ、さぁ……?」

 

 

 

 

 だから、そんな声がしていた事に気付かなかった。

 俺様達が、妖精に出会うのは、その後の話――。

 

 

 

 

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