今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。 作:一宮 千歳
ひじょ〜〜〜〜に、こまった。
リリアナ=ヘーゼル、たぶん16歳ぐらい。それが今の自分。孤児だったせいで正確な年齢はわからない。
ダイスロ王国、と言う国に囲われ、まあまあ高給をいただきながら魔法使いをやっている。
それまでには紆余曲折あった。
そして、この世界ではなく日本で生きていた記憶があり、その時の名を前道孝明(まえみち・たかあき)という。いわゆる異世界転生者、というやつであり、限界独身男性だった。こちらはあんまり思い出したくない。
で、このたび魔王討伐のため異世界から召喚された勇者について、非常に個人的な、しかし大きな悩みを抱えることになったのである。
まず召喚された勇者の外見なのだが、
くせ毛でもさもさしてるがちょっといいシャンプー使っててツヤだけはある黒い髪と、人を殺してそうと揶揄されたこともあるドブのような漆黒の瞳、をさらに印象悪くする奥二重。筋が通ったとはとても言えない日本人鼻、そんで下唇がちょっと厚い。さらには、ニキビとかはないんだがスキンケアをしてないためにちょっとくすんだお肌。
総合的に顔は…下の中! いやまあ中の下って言ってやるか。
そして無意味に高いタッパ180cm強を台無しにする猫背……いや、謁見の時は一応背は伸ばしてたな。
あとは服装がブレザーにネクタイと学生ズボンだった。これは母校の旧制服の冬服だ。顔が中の下でも制服着てればそれなりの見てくれになるから制服って偉大だよね。
そしてこやつの名乗りがタカアキ=マエミチ。
母校の制服。見覚えのある顔。自分の名前。それが揃ったヤツはそう、どう見ても高校生の時の自分なんですよねェ〜……。
なんで異世界転生して美少女に生まれ変わって楽しくやってたのに◯ーの鏡見せられてるんだ?
そしてそして。謁見の間での、陛下や重鎮へのお披露目が終わった直後。奴は私に向かって直角に礼をしながらこう言い出した。
「一目惚れです。仲良くしてください。」
無理って言ってやったよ。百歩譲って一目惚れですって言う必要ねえだろ。いやでもこういうやつだよな俺。もういや。
「いやあ、あれは笑いを堪えるのに必死になった」
「マジで勘弁してほしい……」
そしてそんな事件に巻き込まれた私に対し、たのしそうにニヤニヤ笑いをしているのはイグナス=ファーロン29歳、中肉中背の金髪蒼眼、ファンタジー的イケメンなダイスロ王国第二騎士団副団長。この世界において数少ない、私に"男の前世の記憶"があることを知る人物である。
今は王都の会員制高級料理店『
この店、すごーくまえにこの世界に召喚された"ニホンジン"のおかげで、地球で馴染みの、ちゃんとした和食・洋食・中華がメニューにあるのだ。
一見さんお断りで紹介者が必要だったのだが、イグナスが連れてきてくれた時はマジでこいつ神かと思った。いや、真なる神は料理を提供してくださる従業員の皆様なのだが。みんなも飲食店の従業員に横柄な態度を取らないようにしようね。みんなって誰だ。
で、大根のつまだけが残った刺身の盛り皿やら固形燃料と具材の消失したすき鍋やらを前に、他愛もないおしゃべりタイムを続行中。
普段はイグナスのかわいい部下のしょうもないミスやら急に降って湧く仕事やらの愚痴が主体なのだが、今日は違う。
ここのところかかりっきりである、国家一大プロジェクトである勇者召喚、これがなんか変なことになったぞ?という話になっている。
「あー面白。で、君と同じ名前の彼は結局なんなの?」
「私。私が私になる前から換算して、だいたい20年ぐらい若いけど」
イグナスがため息をつく。またなんか「この国は君に頼ってばかりか」とか言い出すんだろうな。
「この国は君に頼ってばかりか……」
「変な縁でもあるんだろうね。気にしてないよ別に」
言った。なので気にしてないことを伝える。
そもそも私がイグナスと知り合った時、私のちゃんとした戸籍と社会的信用はほぼなくなっていた。だから国が名前と立場をくれたことには感謝してる。ギブアンドテイクというやつだ。
「そう言われてもな……」
「それはそうとねえ、転生前の私には特別な才能は本当にないよ? 【勇者召喚】によって《勇者》のギフトがついてるだけのただの一般人のはずだから、予定通りちゃんと鍛えなきゃいけないね」
「そうか……」
なんかイグナスの表情が暗くなった。異世界からの一般人誘拐行為になんか引け目でも感じてんのかな。そういう柄じゃないだろお前。
そして、はたと気付く。
「……私ってさあ、対人接触最小限でやってきたじゃん」
「そうだね、元男と対人関係苦手ってのがわからないようにしたかったんだよね」
そのへんも自白したとは言え、ちょっと絶望的な気分だ。
「で、その上で神秘的〜で儚げ〜な感じが出てる、さらさらつやつやの白金色の髪で翠緑の眼の美少女顔面じゃん」
「騎士団内にもヘーゼルファンクラブ会員がいて、僕は君と仲良さそうに見えてるからそのへんから妬まれてるね」
初出情報にけっこう絶望的な気分だ。マジか。ファンクラブて。妬みて。
「えっなにそれ今初めて聞いた……今度からもっと避けるね? で、身長だいぶ低いじゃん」
「1m40cm強だっけ」
「いま44ね。でもって髪は短めで、体型はちょっとどころじゃなく細くて、触ると折れそうじゃん」
「そのほっそい手から出る魔法一つで国を滅ぼせるって言われてるけどね」
枯れ木のような、というのは老人に使う形容表現だが、まあ自分の腕足を形容するなら若木かな。ほそっこく安定感がない。
「砦の一つや二つぐらいなら余裕だけど国はちょっと…あとメガネかけてるじゃん」
「なくてもいいけどあると便利ってずっとその眼鏡かけてるね」
そう、私は今生において眼鏡っ娘である。裸眼でも問題なく生活でき、レンズに度が入ってないのは眼鏡っ娘として邪道と言われるかもしれない。
だがしかし待ってほしい、このメガネ、遠くを見るための【遠視】の魔法が付与されている。ある意味度入りだ。
本気を出す時はメガネを掛ける、それは"メガネ属性あり"と言っていいだろう。誰に言い訳してんだ。自分に。
「で、気付いたんだよ」
「何が」
「外見的にぜーんぶ、昔から変わらず、これが理想の女の子でーす、みたいな姿してんのね、今の私」
「なら一目惚れは当然の結果だね?」
当然だったのだ。こまった。