今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第10話

さて、一夜明け。

ポーション作り、リン殿下の魔法の稽古に加えて、勇者(おれ)くんの鍛錬付き添いが通常業務になると通達されてしまった。解せぬ。いやわかるんだよ、本人のモチベが段違いになるってのは。けどそれを認めたくない自分がいるのは別問題だろという話で。

 

例えば【挑発】と【威嚇】の特訓内容自体は「2秒間相手の足を止める」という目標が明確なので、本来は私がいなくても成立する。そんな感じで騎士団にメニューを渡して後は任せる……というふうにしたかったのだが、どうせ一緒に旅するんだしそれまで交流しておきなさい、という名目で、私が空いている時は特訓に混ざるように、ですって。

将来のカップル売りのためだろ。単純接触効果で私からアレへの好感度を上げさせたいんだろ。くそわよ。

 

「ヘーゼルさん!今日も頑張るよ」

「ええ、頑張ってくださいましね」

 

勇者(おれ)くんが寄ってきたのでほい【鑑定】。

うーん、能力値の五角形グラフに等間隔に目盛りがついてるの、なんでなんだろうな。現状を把握したいのでとても良いが。

 

現状の勇者(おれ)くんのステータスは筋力4%、運動性4%、器用さ5%、集中力4%、丈夫さ4%。

で、だいたい25%になったら旅させるか?という話になっている。勇者(おれ)くんの素の状態が1%ぐらいだったのとここまでの伸び率的に、そのぐらいでいっちょまえの騎士程度に育つ見込み。

 

ただなあ、約25%ってこのままのペースだとたぶんあと20週間なんですよ。多分練兵としては標準的な期間。

ただ私は訓練が終わったこいつとは一緒に旅をしなければならない。引き伸ばしたいようで、引き伸ばしてるうちに魔族やカス人類が調子乗る可能性もあって大いに悩む。

 

……しゃーないな、さらなる特訓をしてもらおう。

それで訓練期間が短くなったら……嫌だけど全体益としてプラスだから。うん。

 

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「ってわけで、何かいい特訓、ない?」

「特訓ねえ……」

 

若手くんたちと会食した週の週末(金曜日)

今週のイグナスとの夕飯は中華である。『黄金の御手』、ほんといい店だよ。エビチリうまー。えがおになっちゃうね。

 

「イグナスも常人離れした剣技あるでしょ。アレを身につけるのに何やったの?」

 

イグナスが真顔で応える。

 

「地道にコツコツと」

「うわー才能の暴力ー!」

「君が言うなよ」

 

そりゃそうか。イグナスは杏仁豆腐を口に運び、やれやれという顔をした。

 

「彼に必要なのは能力値もだが、戦場で生き残る思考力じゃないか。君と同一人物とは思えないくらいボンクラだが」

「伊達にアレの約三倍生きてないからね」

 

ラスト一個のエビチリを口に放り入れ、嫌悪を差し引いた感想を述べる。

 

「ただまあ、チャンスさえあれば伸びるよ。だって私だもん」

「嫌う割には能力だけは信用できると?」

「自分だからねー。言うてなんだけど私、あの年代から劇的に知識が増えたわけじゃない。大体は気づきの問題。《勇者》ギフトで身体的ポテンシャルも上がってるわけだし、せめてイグナスと同じくらいには到達してもらいたいもんだよ」

 

私の言葉にイグナスが苦笑する。まあ、王国の中でも上澄みであるイグナスと同じレベルを要求するのは酷ではあるんだが、何も今すぐそうなれと言ってるわけじゃなく、最終目標だ。

 

そして私ははたと思いつき、口に出す。そうだ、訓練メニューなんか自分で考えさせればいいんじゃん。奴は私と言う超強力な動機がある。ない頭振り絞って考えると言うことそのものも、集中力の訓練になる可能性がある。イグナスはそれでいいのかみたいな顔してるけど、それでいいんだよ。甘え腐った日本育ちの平和ボケ脳みそを自分で作り変えてもらおう。言われてやることより自分で考えたほうがより良いのは自明だ。車輪の再開発は困るけど。

 

「そんなにうまくいくかねえ」

「うまくいかなかったら、まあ頼むよ。杏仁豆腐一ヶ月分でどう?」

「引き受けた」

 

助かる〜。

ちなみに『黄金の御手』の杏仁豆腐のお値段は金貨一枚(約一万円)。これは軽傷治癒ポーション十五個の買取額とほぼ同じ。前世比較だと高いが、今世に限っては端金よ。

 

「だが、君が彼に直接話すのはやめたほうがいいな」

「そう?」

 

彼、君にぞっこんだろう。言われてもいない余計な文脈を読み取って暴走しかねない。いい機会だから、騎士団全員に自己鍛錬の方法を考えさせることにして、そこに彼を巻き込む。とイグナス。

ああ、特別扱いするわけではなく、騎士団の取り組みに巻き込む体にするってことね。いいと思う。

 

「じゃあイグナス、それで頼むよ。ナイスアイデアにつき、杏仁豆腐は二つ分を一ヶ月にしてやろう」

「太っちゃうだろ。ありがたくいただくが」

 

HAHAHA。アホみたいな訓練量の騎士がその程度で太ったらびっくりだわ。

 

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翌日(土曜日)とさらにその次の日(日曜日)、リン殿下の魔法訓練が挟まり、計二日を明けたのち(週明け月曜)に昼からの勇者(おれ)くんの訓練に登場した私。リン殿下が二日で【氷の華】をほぼ実用化させた一方で、勇者(おれ)くんはなんか伸びたりしたかな。

嬉々としてやって来る勇者(おれ)くん。

 

「ヘーゼルさん! 対5人の訓練に入りましたよ!」

「え、本当に?」

「はい!」

 

とりあえず真偽を確かめる前に能力値の【鑑定】だ【鑑定】。

すると現状の勇者(おれ)くんのステータスは筋力13%、運動性14%、器用さ11%、集中力17%、丈夫さ12%、と出た。

 

思わず二度見。バカほど伸びてらあ、お前呂蒙かよ。

先週末ALL5ぐらいだったよな? 何があったんですか? まさか良くない薬でも!? いや、自己鍛錬がいい結果出たんだろうけど、それにしてもさあ。

 

メチャクチャ驚いていると、ゴリマッチョ団長が豪快に笑いながら寄ってきた。

 

「わはははは! リリアナ嬢、タカアキの努力を褒めてやってくれ!」

 

うへ、名前呼びになってら。マジで何やったの? 先週末は夏場の猫みたいに溶けて(へばって)たのに、なんか背筋が伸びて体力もついたっぽい……。おしえてゴリマッチョ団長。

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