今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。 作:一宮 千歳
「団長、尋常ではない伸び率ですわ。自己鍛錬メニューを考える、と言う話は聞いておりましたが、どのように……?」
私は驚きを隠さずに尋ねる。
「聞いて驚け、見て笑え。……訓練場の中央を見るといい」
はあ。何が面白いんだろう。さっぱりわからん。団長が豪快に笑う中、指さされた通りに訓練場を見る。
騎士がいるね。何やらでかいものをそばに携えて。
なんか嫌な予感がするぞ。
そばの
「丸太をぶつけてもらいました!」
まるた。まるた? 思わず思考が止まる。
いや、私は魔法使いだ。どんな時にも思考をまわさないといけない。
……よくよく見れば、騎士の横に積まれた何かは確かに丸太だ。なんなら、訓練場の隅っこにちょっとばかし転がっている。
アレを? ぶつける? 死ぬぞ?
しかし私の頭はすぐに答えを捻り出す。いや、死なない。《勇者》のギフトによる被ダメージ軽減がある。なんと言うことでしょう、匠の手によって建材として死蔵されていた丸太が勇者専用のトレーニング器具になってしまいました。バカかよ。
「あは、あはははは……」
私の乾いた笑いをよそに、ゴリマッチョ団長は興奮した様子で説明を続ける。
「おう、笑うといい。これはタカアキが一人で考えたのだ。騎士が五人、それぞれの方向から予測不可能なタイミングで丸太を投げつける! タカアキがそれをかわす! シンプルだが有効な訓練だ! 最初のうちは丸太が直撃してその度に中断していたが、今ではほぼ全ての回避を……」
「弓と矢で良くないですか」
「ぬ」
「弓と矢で良くないですか???」
丸太を投げると言う頓狂な発想はまあいいよ。でもそれ、矢で良くない?
昔の少年漫画みたいな特訓をしおって……!
「わはははは! 流石はリリアナ嬢だ、合理的だ! だが、そこにこそタカアキの狂気……いや、天才的な着眼点があった!」
団長は興奮した面持ちで続ける。あたまいたくなってきた。
「丸太である理由、その一! 重さだ!」
おもさ。
「矢は速いが軽い! かわし損ねても、かすり傷で済む。だが丸太は違う! 直撃すれば、彼の【被ダメージ軽減】スキルをもってしても、一撃で悶絶するほどの衝撃がある!」
……えー。私そんなん知らんし。え、ダメージは無効化するけどスタンは受けるみたいな感じか?
私の内心の混乱など知る由もなく、団長は目を輝かせている。
「やってみてわかったのだがな、タカアキの《勇者》ギフトはダメージこそ軽減されるが、衝撃は身体に残り、一瞬から数秒間の行動不能を引き起こす。それを避けるには、絶対に直撃してはならないという極度の集中力が要る!」
私はゴクリと喉を鳴らした。確かに、死なないが、絶対に避けなければならないという状況は、集中力を一気に引き上げる。
「そして、これが理由その二だ!」
団長は丸太を担いだ騎士たちを指さす。
「丸太は弓矢と違い、投げ手に依存して軌道が予測不能!」
「……あーっ!?」
そりゃそうだけど! そりゃそうだけど!
「弓矢は速度は速いが、軌道は比較的安定している。だが丸太は、騎士の投げ方や丸太の太さ、重心のブレによって、どこへ飛ぶか、どう回転してくるか、全く予測できない! タカアキはこれを戦場での魔法や岩石、突然現れる魔物の動きに見立てたのだ!」
確かに、確かに【矢避け】だののスキルでは軽減できなさそうな衝撃力があり、生の感覚と判断力を育てるのには向いてるかもしれない。
「そして、極めつけが理由その三!」
団長はさらに声を張り上げた。
「丸太は面で来る! 矢のように点ではない! これは【威嚇】や【挑発】のようなスキルを、単なる魔法的な『発動』で終わらせず、『体全体を使った受け流し』として昇華させるための訓練になるのだ! スキルで相手の意識をわずかに引きつけ、どうしても喰らうという時は体幹を固めて面の衝撃を受け流してもよい!」
「……降参ですわ」
「この一見アホだが、勇者の育成にかけては合理的な特訓は、わしもタカアキを認めざるを得なかった」
丸太特訓は、有効。なんか屈辱的だが、私はそう判断せざるを得なかった。
「ただ難点はあってな。本当の丸太と周りを取り囲んだ騎士による投擲では、五本同時が限界なのだ。これ以上を求めるとなると、リリアナ嬢の力が必要になってくる」
「……なるほど?」
つまり今日は面制圧系の魔法を四方八方からぶつけてさしあげればいいのですね?
「うむ。頼むぞ」
「頼まれましたわ……勇者様を目標に攻撃するの、ちょっと辛いのですけど」
自分の顔自分で殴るみたいでやなんだよ。
もちろん変な誤解されてニヨニヨされた。経費。
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丸太訓練を見学したが、
それを続けても、全然当たる気配がない。
確かに丸太避けの訓練は効果を発揮してるみたいだ。
「では、実際に魔法による本格的な特訓にうつりましょう。脅威度によって色を分けます。全部実際のダメージはないと思いますが、当たったら即死は赤、大なり小なりダメージになるものは緑、ダメージはないがスタンの危険があるものは青、で行きますわよ」
ざらり。
大小さまざま百個の魔力塊を、適当に色分けして勇者君の周り15m、円になるように配置した。
魔法って、遠距離発動、複数発動は難しいって聞いたけど? と、
「このぐらいならなんてことないですわ」
クソ人類を視覚的に追い詰め殺すために組み立てた魔法を、殺傷力を極限まで落とすデグレードを施した勇者訓練用特別魔法だ。あえて名付けて【
魔力塊の設置と発射は別工程にした。適当に弾道調整と一度に飛んでいく数の制限を加え、起動をむにゃっと念じると、【
「うおおおおおおおおお!」
青弾の影に緑弾を隠したり、目の前で停止したり、忘れた頃に頭上から降ってきたり、かなり性格の悪い弾幕を構成したつもりだから、そう簡単にクリアはできない。あ、青に当たった。当たると動きを停止して地面に落ちた後雲散霧消する(ように見える)ようにしてるので、当たるとすぐわかる。
「当たっておりますわよ?」
「流石に……ちょっと……キツい!」
キツいか。でも一生懸命やってくれんと困る。目的は過負荷による
むにゃむにゃ念じて、再セットアップよーし。
「すぱるた?」
「徹底的にいきますわ」
「望むところです!」
キッショ。いや、ちょっと理不尽か。