今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第12話

日が暮れ、鐘が鳴り、訓練が終わった。

流石にへばっている勇者(おれ)くんを【鑑定】すると、現状のステータスは筋力15%、運動性18%、器用さ12%、集中力20%、丈夫さ15%、と出た。

 

また明確に伸びてる。推定上、こんなに伸びないはずなんだが。

 

「ぜぇ……はぁ……」

 

なんか世界の側(・・・・)から細工がされてるんじゃないかな、これ。伝承は「勇者の成長上限」には触れているが、「勇者の伸び率」には言及がない。つまりこれ、異常事態の可能性がある。

 

人一人の成長を克明に【鑑定】して記録する、というのはなかなかない事だが、全くないというわけでもない。リン殿下など、王族がそうであるはずだ。

だが、私に共有されているリン殿下の成長記録では、こんな急激に伸びたことはなかった。となれば、何か例外がある。……それが、《勇者》だから、と仮定すれば、一応仮の理由にはなる。

 

とはいえ、一般的な訓練自体はすでにしていた。なぜ、丸太と【3(スリー)C(カラーズ)ストーム】訓練でだけ、こんなふうに伸びる?

 

……要因としては「ガチ恋パワー」が一番しっくり来るの、腹立つな……。

 

「勇者様、能力値が素晴らしく伸びていますわ。一般訓練の頃から比べて大幅な上昇ですが、何か心当たりはございますか?」

 

感情を抑えて、一応本人に聞いてみる。関わりたくないのだが、何か悪い方向に転がり得たり、悪い原因があるなら早く排除しなければならないし。

 

「ヘーゼルさんの事を想って……精一杯頑張りました……」

 

やめろやめろ。予想通りだがそんなこと聞きたくない。

魔法、スキルについては精神力だけでかなりの部分説明がついてしまうのだが、それだけでは説明のつかない何かがこの世界にある。はず。

 

「精神力が重要、みたいな話を騎士の方やバロウズ団長から聞いて、それで、ヘーゼルさんのためにって……」

 

うーーーん。この世界なりのやり方としては、間違ってない。ただ、ガチ恋だけで成長率が伸びてるなら、もっと「ガチ恋した方が成長率が伸びる」と話題になってもいいだろうに。

 

「それだけであれば、巷の恋煩いの騎士、兵士、冒険者は、みな精鋭になっていないとおかしいですわよ」

「……それも、そうですね……」

 

となると、ガチ恋パワープラス勇者なのかな。勇者が守るべきもののために秘められた力を発揮するってのは、いかにも(・・・・)だ。

そうなると……過去の勇者の恋愛譚が今回のようにプロパガンダで、勇者は誰にも恋していなかった、ということになるのか?

要調査だな。この辺はリン殿下が好きなので詳しいはずだ。次の週末にでも聴くかな……。

 

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翌日、火曜日。

私がのんびりとポーションを作成していると、突然リン殿下の次女の一人が伝令にやってきた。

「夕食の後、自習を手伝ってほしい」とのことだ。

かわいいリン殿下の頼み、断るはずもなくOKした。

 

そして夕食を済ませた後、第二王女リン殿下の私室がある王宮の奥へと向かう。

私が美少女なので、未成年の王女殿下の自室に夜二人っきり(侍女はカウントしない)になっても合法。これはすごいことですよ。

 

「リリアナねえさまーっ!」

 

こんこんこんとノックした後、入室を許可する声がしてドアを開けると、リン殿下がジャンプして抱きついてきた。私の方が身長下なんですが!?

なんとか受け止めると、ふわりと少女特有の甘い匂いがする。控える侍女二人も微笑ましいものを見る目で見ている。が、お前らは止めろよ。

 

「お行儀が良くありませんよ、リン殿下」

「でも、リリアナねえさまにこんな時間に会えるのですもの! 私うれしくって!」

 

リン殿下がぴょんこぴょんこ跳ねる。プライベートの時間は歳の割にちょっと落ち着きがなくて挙動がロリロリしいが、これもリン殿下の良さである。よきかな。

 

「さて、自習を手伝ってほしいと仰せなので伺いましたが、何の自習を?」

「うそですわ」

 

リン殿下が、イタズラっぽい顔で笑う。

 

「なんと?」

 

私は驚きを隠せずに尋ねた。リン殿下が嘘をつくなんて、初めてのことではなかろうか。

 

「わたくし、単にリリアナねえさまとお話ししたくてたまらなかったのです!」

 

なんかめっちゃかわいいこと言うじゃん。そしてリン殿下は、「ここから先は、楽しいないしょばなしの時間ですわ! 申し訳ないけど、二人は下がっていらして?」と、侍女二人に部屋から下がるように命じた。

 

侍女二人が部屋から出て、ぱたむ、とドアが閉じたと思ったら、リン殿下が声を発した。

 

「……勇者様について、懸念があるのでしょう?」

 

うおっびっくりした。リン殿下らしからぬ低い声がリン殿下から出る。いつものリン殿下のロリロリしさはなりを顰め、王族の威厳が滲み出る。

 

「わたくし、遅ればせながら昨夜に、勇者様の脅威的な成長について報告を受けまして。きょうは王宮の勇者関連の文献を読み漁ったのですわ。ざっと歴代勇者一人につき二冊ほど、合計でいえば三十冊ほどでしかないですが」

 

いや、それは随分な速読でしょうよ。

 

「王族のみが閲覧できる文献において、勇者が脅威的な成長を遂げた、という記録はありませんでしたわ」

 

ふむ。……今回の勇者召喚に、過去と違うところがある?

私としては「同一人物の召喚」は絶対に過去と違うのだろう、とは思うのだが。かといってそれが原因かというと、違う気がする。

 

「恋の力、愛の力、そういった理由ではないか、と私は思っているのですが」

「可能性はあります。でもそれ、リリアナねえさまらしくないですわ。何か見逃している要素が、あると思いませんの?」

 

……わからない。何だ?

 

「見逃している要素ですか。……私には、わかりませんね」

「ではリリアナねえさま、この伸びについて、今結論を出すのはやめにしてくださいな。……何か、何か胸騒ぎがするのです」

 

その、リン殿下の困ったような表情で、絞り出すようにして出された言葉に、私は言葉を返せなかった。こくりと頷くと、リン殿下は表情を変えた。

 

「……さて! 謎が解けないお話はここまで! 残りの時間は、ファーロン様とリリアナねえさまの関係について語ってもらいますわ! ずばり、恋仲ですの!?」

「えっ」

 

リン殿下がにまーっと笑う。い、イグナスと、私?

 

「『黄金の御手』で毎週のように会食なさっているの、わたくしは知っていましてよ?」

「えっ」

 

あそこ高級会員制だからどこにも漏らさないんじゃないのかよ。どこだ、どこから知られたんだ!?

 

この後めちゃくちゃ問い詰められた。否定には成功した。

また、かわりにリン殿下に「ファーロン様が、恋愛的に気になっておりますの……」と言わせることに成功した。カウンター成功だぜ。なんか負けたような気分ではあるが、気にしない。

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