今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第14話

「ヴィサーラさん、早速女同士で今夜、夕食をご一緒いたしませんか?」

「行きません」

 

ああ、コミュニケーションを重視しないタイプだよね。

じゃあ。

 

「場所は『黄金の御手』、全額私の奢りで」

「行きます」

 

だよね。

 

「ヴィサーラ……」

 

イグナスが頭を抱えている。部下が現金すぎて言葉を失ってるのだろうな。そこに勇者(おれ)くんが口を挟んでくる。

 

「『黄金の御手』って、王宮で聞きました。一見さんお断りの、超高級料理店ですよね」

「はい、はじめてなので、とても楽しみです」

 

ヴィサーラ、上機嫌だ。女の子が機嫌いいとこっちまで嬉しくなるね。

 

----

 

「約束通り、奢ります」

「奢られます」

 

『黄金の御手』、その個室。地味顔ながら引っ込んでるところは引っ込んでる、ばいんばいんの女の子と二人きり(店員はカウントしないものとする)。あれ、これなんてえろげ。まあエロい展開なんて期待してないんだけども。

 

「では、この大人用お子様ランチ(小盛)を」

「……ほかにも美味しい料理はたくさんありますよ?」

 

すき焼きとか。

 

「お子様ランチという名前からして、子供向け。それを大人向けとして提供し、さらに小盛にするというのは、非合理で面白いです」

 

独特の価値観を持っているなあ。ちなみに実態は日本の普通のお子様ランチだ。チキンライスに旗が立っていて、ハンバーグとポテトとエビフライとナポリタンが小盛り。さらにプリン(カラメルなし)がついてきてお得。なんで知ってるかって? 私も気になって頼んだことあるから。

 

「……なるほど。まあ、注文は他にもしていいですから、お好きになさいませ?」

「それと、お酒をメニューの上から全部、ボトルキープします」

「まって。」

 

思わず口に出た。遠慮がなさすぎる。首を傾げるヴィサーラ。

 

「今日は、すべて、奢りだ、と言いましたよね?」

「……ええ、二言はありませんわ」

 

こいつ辛党(酒豪)かよぉ。まあ知ってても連れてきたとは思うけどね。

 

「金銭でわたしの関心を買う、とても合理的です。褒められたのも相まって、メロメロです」

「そう、喜んでいただけて何よりですわ」

 

やりやすいけどやりにくいなあ。

たぶん、いい財布と認識されただろう。貯金が死ぬ。

でもまあ、かわいいからいいか。

 

ほどなくして私のオーダーしたガーリックライスとサイコロステーキ、そしてお子様ランチが運ばれてきた。

……私用の果実水と、山盛りの酒のボトルとコップも一緒に。この世界、冷蔵庫がなく冷蔵といえば氷室(ひむろ)なので、酒を冷たくして飲むのがまだまだ浸透していない。常温か熱燗で飲酒するのが常だ。で、ボトルキープということで燗はされてない。

ヴィサーラはしばらく悩んだ末、ほかではなかなか飲めない、米酒(日本酒)のうちの一種類を選んだ。お子様ランチ洋食だし、ワインでも良かったのに。

 

「何に乾杯します?」

「リリアナ様のおさいふに」

「……はあ。お財布に」

「乾杯」

 

こん、と木製のコップが触れ合う音がする。

……おい! ポン酒をコップ一杯とはいえイッキするな!

 

「……危険ですわよ?」

 

眉を顰める私に、ヴィサーラは平然と返す。

 

「くちをつけたらおいしかったので、つい……危険というのは、何処でお知りになりましたか?」

 

え、この程度でなんか看破してくるのか。こわ。

 

「……ああ、酒精はよいもの、でしたね。この世界(・・・・)の常識を忘れていました」

「……ふむ、転生者でしたか。なるほど」

 

あえて少し水を向ければ、すぱんと真正面を撃ち抜いてきた。やっぱ超優秀じゃん。

 

「……ファーロン副団長は知っているのですが、他の方、特に勇者様には内緒にしてくださいませんか?」

「言った方が良い時には言いますよ?」

 

それでいい、と答えれば、手酌で次の一杯を注ぎ始めた。こいつぅ。

 

「ところでなぜ、転生者と? 答え合わせ……いえ、他でボロが出るのを避けたく思います」

「異世界転生者を自称する幼馴染が、その昔お父さまに『エール(お酒)やめようよ、体に良くないよ』と言っていたのを思い出しました」

 

あー、過去に。でも飲むのやめないのね。三杯目注いでるし。

 

「良いものだと聞いていた幼少のみぎりの私には衝撃でした。なぜ?と聞いたらアルコール分は体に良くないと。アルコール分ってなに、と聞いたらお酒に含まれる、と」

 

すんげえざっくりした説明だな。ちょっと気になるぞその幼馴染。

 

「異世界転生者って仰いましたけど、その幼馴染は?」

「冒険者になって死にました。弱かったみたいです」

「それは……なるほど」

 

その幼馴染は、一歩間違えた私の姿かもしれない。

冒険者の親に拾われて、魔法と剣の訓練を叩き込まれていなければ? ぞっとする。

 

「私は彼女と勇者様を見て、異世界から来た方はこの世界の常識外にいる、と思っています。リリアナ様もそうですか?」

「そう見える?」

「魔法以外は、普通の女の子です(・・・・・・・・)

「そう、それは良かった」

 

転生者バレはしたが、前世男バレまではしてない、か。ならよし。

「私の秘密を知ってしまった」ことについて、どう考えてるのかな。

 

「秘密を暴いてしまうことは、多々ありました。その度に叱られたので、なるべく暴かない方がいいとは思っています、すみませんでした」

「そうですね、そこは私も同意いたします」

 

私が再度頷くと、ヴィサーラは黙々とお子様ランチをつまみに酒を飲み出した。

仲良くなりたいな、という目的だけでご飯に誘ったけど、転生者であることがバレたのは想定外だった。まあでも観察眼が優れてることはわかったから、実質プラスかな。

そんなことを考えていると、じっとこちらを見てから、ヴィサーラが口を開く。

 

「申し遅れましたが」

「なあに?」

「私は男の子にエッチな目で見られるのはもちろん、女の子にそう見られるのもバッチリオッケーです。美少女ならなおのこと、です。うっふん」

 

……一瞬脈絡がわかんなかったが、イグナスと勇者(おれ)くんのどっちが良いか聞いた時の流れと、体つきについてこそこそ話してたのを聞いてた、ってのを今持ってきたのか。

 

「ではヴィサーラさん、これからたまにえっちな目で見ますわね」

「伝えた甲斐がありました。存分に欲情してください、あっはん」

 

ノッた私も悪いが、言い方。爆弾放り投げないと気が済まないの?

でもコミュ障だったわ。当然か……。

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