今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第16話

きんきらきんようび。『黄金の御手』、いつものイグナス飯である。

今夜は私は天ぷら。揚げたてを提供してもらえ、たいへん美味である。一品ずつが来るの遅いのが難点だけどね。

 

勇者(おれ)くんに加えてヴィサーラにも極めて深く惚れられてる気がするんだけど」

 

そう言ったら、イグナスが爆笑から帰ってこなくなった。

 

「失礼じゃない?」

「ひー、ひー。いや、僕言っただろう、ヴィサーラは『対人関係を円滑にこなすのに少々問題がある』って」

「そ、そういうこと〜〜?????」

 

まさかコミュ障って言ってるんじゃなくてチョロすぎガチ恋モンスターって言ってたなんて想像つかんて。

 

「あの肉体に釣られて声をかけた騎士団員がいたんだけどね、ヴィサーラのあまりの熱烈な求愛行動に騎士団を辞めて故郷に引っ込んでしまったよ。まあ、そいつは軟弱なやつだったから、いない方が良かったが」

「そーゆー大事なことは早く言ってくれえ……」

 

テーブルにもたれかかって泣き言を言う私に、イグナスが半笑いで返事する。

 

「でも君、知っててもヴィサーラには声かけたろ」

「はい」

 

つまりはそういうことだ。イグナス、黙ってた方が面白いだろうからって黙ってやがった。

 

「あとな、アレはアレで『自分だけの秘密』に執着して、他に漏らさないところがある。君の猫かぶりについて僕が知っていると漏らさなかったのは、不幸中の幸いだな」

 

独占欲もあるのかー……。

 

「まあ、式には呼んでくれ」

「ちょっと? 私にはリン殿下に臣籍降嫁していただく夢がですね?」

「我が国は家名もちの当主は重婚できるぞ。『ヘーゼル家のリリアナ』は当主だから、嫁、婿を複数取れる」

 

MAJIDE?

 

「なんだ、知らなかったのか」

「誰も教えてくれなかったし……」

「まあ、マエミチ家の当主と判定されるタカアキも重婚できるんだが」

「ろくなことになんねえからそれ絶対教えないでくれよな」

「了解」

 

イグナスが苦笑する。

……リン殿下とヴィサーラが両方嫁か。いいな。

しかしそう考えた私に、イグナスが冷や水をぶっかける。

 

「リン殿下は他国に嫁ぐと思うがな」

「ゆめみせてくれたっていいじゃん!」

 

まあそりゃ私も現実的には二人やもっと大勢に平等に愛を注ぐなんて無理だから、理想はリン殿下と単婚、現実的にはメンヘラを本気にさせた責任とってヴィサーラとだけ結婚、だと思うよ。思うけどさあ。

怒ったのでかぼちゃの天ぷらを顔に貼り付けて火傷させてやった。

あ、貼り付けた天ぷらはイグナスが食べました。うまかったらしい。やっぱ食べ物で攻撃したらあかんな。

 

----

 

明けて土曜日、ポーションの出来がよかった。

たぶん午後にリン殿下と会える、と言う高揚があったからだと思っている。

……いるのだが、「魔法はメンタルが大事」と「メンタルがいい感じだから」で認識してたのは、「私がリン殿下にガチ恋してるから」の可能性もあるのか、と気付いた。

 

つまり勇者(おれ)くんを含めた私の魂(・・・)が「ガチ恋でスペックがあがる」という性能を有する、と世界に定義されてる可能性。……うーん、突飛かな。

可能性の候補として考えておこう。

 

さておきリン殿下との対面。本日は王族用練習場で【氷の華】と【氷の槍】の訓練だ。

 

「【氷の華】は完璧ですね。美しい氷の花が、リン殿下の魔法によって咲き誇っております」

「がんばりましたのよ!」

 

リン殿下がドヤる。くるりと回ると、右手の軌跡にあわせぽんぽんぽん、と氷の花が咲く。完全に【氷の華】の発動に慣れたようだ。

 

「でも、【氷の槍】はうまくいかない、と……」

「他の方を攻撃する魔法というのが、やはり怖くて……」

 

不満そうな、だがほっとしているような気配を見せるリン殿下。

 

「なるほど……攻撃魔法についてはゆっくり慣れていくしかないですわね」

 

とはいうものの。

魔法に攻撃魔法とそれ以外、と言う分類は本質的には(・・・・・)存在しない。

『できると思えるか』それだけが大事なのだ。

もう言葉にして伝えているその点に、改めて気づけば(・・・・・・・)、リン殿下は化ける。

ちなみに私なら、この空中にふわふわと漂う氷の花を槍に変えることだって可能だ。そうすればいいのに、とはあえて言わない。

想像力の芽を摘み取ることになってしまい、それでは魔法使いとして伸びない。

 

「む〜〜」

「ゆっくり、ゆっくりです。焦らず成し遂げましょう」

「リリアナおねえさま……」

 

まあ、攻撃に魔法を使えないマスコットみたいなリン殿下もいいかな。私のそれより若干高い位置にある頭を撫でながら、そう思った。

 

「ところでおねえさま、旅立ちが近いのですわよね?」

「ええ、いかがなさいました?」

「ファーロン様のこと、よろしくお願いしますわ……」

 

ああ、そのことか。恋する乙女を私が邪険に扱うはずもなく。

 

「必ず無事で(かえ)させますわ。……でも、一ついじわるを言ってもよろしいでしょうか」

「どうぞ」

 

邪険にはしないが、少し厳しいことを言う。

 

「リン殿下は、ファーロン副団長と婚姻するため、お父様など重鎮の皆様を説得できますか?」

「それは……」

 

私は続けた。

 

「他国と、血で縁を繋ぐ。そう言ったお役目があることは、そろそろ自覚なされているはず。リン殿下かわいさにまだ婚約者を決めていらっしゃらない国王陛下も、そろそろ……」

「……いじわるですわ、リリアナおねえさま」

 

うーん。でもちょっとかわいそうかな。

 

「魔法と同じですよ、リン殿下」

「え?」

「できる、とお思いなさいませ。『説得できる。私とファーロン様が結婚するのは当然だ』、と」

「当然……ですの?」

「ええ。魔法使いたるもの、何事も『できる』と思いましょう。それが正しい魔法使いの姿です」

 

ぱあっとリン殿下の表情が明るくなった。

 

「……ふふ、励ましていただきありがとうございますわ」

 

いえいえ、リン殿下の先生ですから。

本当にいい子なんだよな。どこの誰が娶るのやら。

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