今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第17話

魔族の勢力圏と面した、リース辺境伯の治める土地は、もちろんそのままリース領という。

そのリース領の最前線にむけて、私たち勇者パーティは馬車で出発した。その初日、1時間も経たないぐらい。

 

「あの」

「なんですか?」

「おしりが痛いです」

 

勇者(おれ)くん、早速泣き言か〜〜……。

御者をやっているイグナスから声が飛ぶ。

 

「立てばいいぞ」

「それはちょっと……」

 

ヴィサーラとイグナスは騎士だからまあまあ慣れてる。

私はというと、魔法でちょっと浮いてるから痛くない。

しかし、こういった痛みは《勇者》のダメージ軽減は効かないのか。なんか、例外がいろいろありそうだな。

 

「私の胸でも見て気を逸らしてください」

「いや……それもちょっと……」

 

ヴィサーラは、なんというか何も隠さない。なんだ、これが彼女の素か?

 

「おや。それでは膝の上にどうぞ」

「だ、だだいじょうぶ、です」

 

あと君、私のこと好きですって言っといて勇者(おれ)くんでもいいのか? ちょっとジェラるぞ。

 

「リリアナ様はどうですか」

「私はまあ、魔法使いなので」

「しょんぼり」

 

痛がるのも見てられないしなんならヴィサーラが強制膝の上乗せをやらかしそうなので、勇者(おれ)くんにも【ちょっと浮いて馬車搭乗中のお尻の痛みを軽減する】魔法を使ってあげた。感謝された。

 

「……街道で敵に遭遇とか、あると思ってました」

「王国はそんなに治安悪くないですよ」

 

タカアキの言葉に、ヴィサーラが返す。まあファンタジー世界ではありがちな展開だよね、街道での敵襲。

 

「そうなんですね」

「良くも悪くも魔族という共通の敵がいるので、人間同士はそこそこ仲良しです。平民の意識としては、前線以外はそこそこ平和ですよ。上の方は分かりませんが」

 

ヴィサーラの言葉に、補足する。

 

「力を持て余したような人は冒険者となって、好き好んで魔族討伐や未開拓地の開拓に勤しんでいますね」

「そうなんですね。冒険者か……TRPG(テーブルトークアールピージー)みたいだな」

 

お前やったことあるのTRPGじゃなくてPBM(プレイバイメール)だろ、知ったかぶりおって。まあいいけど。

 

「てーぶるとーくあーるぴーじー、とは?」

「ああ、ようはごっこ遊びです。別人になりきって、楽しく遊ぶ。……まあ、僕は友達とやったことはないんですけどね」

「では私と恋人ごっこ、しますか?」

「ヴィサーラ!」

 

イグナスがおこった。流石に私もたしなめる。

 

「はしたないですよ」

「ごっこなのに……」

「ごっこでも、です。そもそも私たちは死地に向かっているのですから、そういった余裕はないかと」

「……とてもしょんぼり」

 

----

 

日が暮れる前に、街道沿いの宿場町で宿泊を取る宿を決めた。

この世界、街道に街灯・篝火などはなく、陽の落ちた夜間の通行は想定されていないので、泊まる所は早い段階で決まる。

まあ、強行軍というのも本来なくはない選択肢なんだけど、そもそも勇者(おれ)くんの急成長により全体的なスケジュールが早まったので、多少遅れても、というところだ。

 

「女二人、男二人の二部屋でいいな?」

 

イグナスの提案。

まあ普通に考えたらそうなんだけどさ。私とヴィサーラを一緒にしたらどうなるかって話よ。

 

「……獰猛な目で見ないでくださいませ、ヴィサーラさん」

「わたしは平静です」

 

じゃあそのわきわきしてる手はなんなんだよ。

 

「リリアナ様。恋人ごっこしましょう」

「あの。身の危険を感じるのですが」

 

男どもに助けを求める私。

 

「……女同士なら子はできない。被害を最小化するためなんだ。納得してくれ」

「百合だ……」

 

男二人が薄情で味方がいない。詰んだ。

大人しく首根っこ掴まれて二人で部屋に向かうことにする。まあ、男女で大きく部屋の位置が違うわけでもないので、ぞろぞろと歩くわけだが。

 

ヴィサーラがドアを開け、一緒に部屋の中に入る。

ベッドが二つと間にテーブルが一つ。ベッドを椅子がわりにしろってか。ずいぶん適当な宿だ。

 

「さておき、リリアナ様は魔法使いなわけですから、長旅に欠かせないアレをお願いします。あと猫も脱いでください」

「はいはい。【清払(きよはらい)】〜」

 

ヴィサーラのリクエストに応え、【清払】の魔法を使う。

【清払】の魔法は、衣服や体についた土埃や汗、垢を消す魔法だ。これがあればお風呂がいらない。変な匂いにもならずいつでもフローラル。

欠点もあって、「汚れていない」という姿をイメージしてその形に変える、といった感じの魔法なので(あくまで私の場合)、付き合いが浅い相手には効果が薄い。

 

「おお。効果がすごい。これは恋人関係なみと言っても過言ではありません」

「過言だよ」

 

……付き合いが浅い相手には効果が薄いはずなんだけどなあ? 疑問に思いながらも、部屋にも【清払】をかける。

この世界、ルームサービスとしての部屋の清掃を期待できないから、これは当然の行為だ。

部屋全体とベッドが綺麗になって、ようやく落ち着ける。

 

「はー」

 

ベッドにごろり。あー、絶妙に硬いけど逆にそれが悪くないぞ。よく寝れそう。

 

「本日はお疲れ様でした」

「心労の原因はヴィサーラが大半だけどね?」

 

本当になんだよ恋人ごっこって。……うーんでもコミュ障なりに旅の緊張をほぐそうとしてくれたのかな。じゃあ無罪か? でもこれ、いいように考えすぎてるか。じゃあ有罪か。

 

「それは、すみません。でも」

 

ヴィサーラが意味深に言葉を切る。私は続きを促した。

 

「猫をかぶるの、疲れてませんか?」

「……うーん、どっちも私、って感じかな。ありがとね」

「……私は、単に秘密を暴いただけにはなりたくなくて」

「うん」

「私の前でリリアナ様が笑ってくれると、嬉しいなって思います」

 

ヴィサーラ、いい子じゃん。

 

そのあと、私か横になっているベッドに潜り込んできたヴィサーラを拒否せず、抱き合って眠った。

なぜそうしたかって、……なぜだろう。お互い、性欲ではなかった、と思う。

 

……ただ、私がまだ嘘をついてるのは、心にちくりと刺さっている引け目ではある。

どれもこれも、話したら、ヴィサーラは受け入れてくれるだろうか、それとも。

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