今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

19 / 40
第19話

リース領の最前線への旅路6日目ともなれば、リース領に入って、領の中心的な街、メルムに着こうかという頃。

 

「リリアナさんにも、お伺いしたいんですが」

「なぜ、魔法使いになったか、ですか?」

 

ウゲーッ。私に対する勇者(おれ)くんの質問が始まろうとしている。というか、ここまで我慢したのな。そこはちょっとすごいぞ。

 

「どのあたりから話せばいいのか……」

「最初から! 子供の時からお願いします! リリアナさん、どんな子だったんですか?」

 

そうかそうか、そんなに気になるか。気持ちはとてもわかるけど、乙女の過去ってのはあんまり根掘り葉掘り聞くもんじゃないんだよ。

 

「私、6歳より前の記憶がありませんの」

「えっ」

 

あっ、「気まずい」って顔した。

 

「しかも、孤児でしたのよ。それで、6歳というのも拾ってくれた母たちが『だいたいそのぐらいだろう』と見積もってくれただけで」

 

実際のところは「目が覚めたらベッドの上で、母たちに心配そうに見つめられてた」がこの世界最初の記憶なんだよな。その前のことはわからないが、たぶん行き倒れてるとこを拾われた、とかなんかだろう。記憶の切れ目は多分、体の主が死んだ代わりに、私の魂が体に入った、とかそんな。

 

「……すみません……」

「気にしておりませんわ」

 

そう伝えれば、勇者(おれ)くんは露骨にホッとした表情になる。

 

「普通は気にするので、安心しないほうがいいです」

「ヴィサーラさん……」

 

続けていいのかな。やめてもいいのかな。

 

「さておき、私もリリアナ様の過去は気になります。教えてください」

「しょうがないですねえ、特別ですよ」

「はい、ぜひ!」

 

にこにこのヴィサーラと勇者(おれ)くん。

 

「そうですね、【ご飯がいらなくなる魔法】と【お手洗いに行かなくてよい魔法】があると聞いてからですね、魔法使いになると決めたのは」

「……めちゃくちゃ便利な魔法では?」

「【ご飯がいらなくなる魔法】、マギータ翁がいつも使っているね」

 

イグナスが御者台から口を挟んでくる。

 

「待ってください、リリアナ様は魔法を知ってから、あえて(・・・)志したのですか?」

「ヴィサーラさん、それのどこか変なの?」

「大いに変です。一般的に魔法使いというものは、自然に何か魔法を発現させてしまってから魔法の才能があるとわかるもの。道理に合いません」

 

ヴィサーラの指摘はあくまでこの世界の一般的な魔法使いのそれだ。しかし私は、一般的な魔法使いではない。TSつよつよ美少女魔法使いだ。

 

「いいえ、『魔法使いは、できると思ったことができる』のですよ、ヴィサーラさん」

「……ああ、なるほど。『できると信じきることができた』」

 

ヴィサーラは納得した顔。遅れて勇者(おれ)くんもなるほど、という顔をした。

 

「おそらくそれが正解です。私は魔法を使いたいと思い、使えると信じた。だから魔法使いなのです」

「その教えは、どこで……?」

「あら。私、リムステラ=ヘーゼル、レジーナ=ヘーゼルのふたりを母に持つ、というのはお話ししましたわよね。もちろん、その母たちですわ」

 

リムステラ母さまが魔法使いのあらあら系おねえさんで、レジーナ母さまが剣士のガハハ系アネゴなんだよな。

二人して「できる」って言ってくれたから、私はそれを信じて頑張ってしまった。

そして、私のために二人とも死んでしまった。……話してると悲しくなってくるな。

 

「すみません、涙が。二人のこと、まだ慣れていないのですね、私」

「……ごめんなさい」

「いえ、憎むべきは魔族と、魔族に()する人類の裏切り者、それと魔王ですわ。謝る必要はございません」

「勇者様、人の心がわからない?」

 

ヴィサーラも大体わかってないでしょうが。共感性が低いから思ったことをそのまま口に出しちゃうんだぞ。

 

「悲しい話はそのぐらいにしておくといい。街に入るぞ」

 

イグナスの言葉。気付けば街門はすぐそこだった。

 

----

 

メルムの街全体が、緊迫した空気に包まれている。子供はいる。もちろん大人もいる。露店もあるし、人通りは多い。だが、やはり戦場に近い街特有の空気というものが漂っている。

ここまで乗ってきた馬車を預け、一路領主の待つ館に向かう。

 

我々が到着し、すぐに館に向かうという先触れはすでに衛兵経由で頼んである。普通に行けばいいだけだ。

 

「辺境伯って、どんな重要度の人なんですか。偉さはそこそこあるのはわかるんですけど」

「今聞くのかい、それ」

 

連れ立って歩きながら、勇者(おれ)くんがすっとぼけたことを聞く。公候伯子男ぐらいしか知らんからだろうけど、超えらいんだぞ。

 

「端的にいえば強い、賢い、裏切らないという方でなければ任命されない、重要な地位ですね」

「国境を任せられるわけだからな。少しヘマを打てば我が国自体の領土が減る、そしてその責任を取ることになる。その重圧と常に戦っている方だよ」

「思ってたよりすごかった」

 

ヴィサーラのわかりやすい解説にイグナスの補足が加わり、勇者(おれ)くんびっくりである。

 

「ちなみにリース辺境伯は、王国有数の女傑だな」

「我々女性の憧れの的ですよ」

「女性なんですか!?」

 

勇者(おれ)くん何度驚くんだよ。まあわからなくはない、私は面識あるけど、最初女性の辺境伯なんて、と面食らった。

しかも見た目はやさしそうなおばあちゃん風。それで軍才、将才があるの、わりと詐欺だと思う。若い頃から優秀で、それがおばあちゃんになったのだな、と思ったものだ。

 

「驚くのも無理はない。他国の例を見ても、辺境伯が女性というのは我が国だけだ。おっと、勘違いしてもらっては困るが、決して我が国が人材不足というわけではないぞ。一番適した人材だから、辺境伯になった、というわけだ。リース辺境伯はその卓越した戦略眼で、10年ほども対魔族の最前線の指揮を取っておられる。ついでに言えば、その前から、今は魔族の尖兵となったアブル皇国と長年睨み合いを続けていたな」

 

リースおばあちゃん、元気かなあ。

……おばあちゃん、私は嫌いじゃないんだけど、私が街を吹っ飛ばしてるのも知ってるから、若干顔を合わせづらいんだよね……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。