今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。 作:一宮 千歳
前世日本において、少人数で敵対勢力の拠点に潜り込んで頭目をぶっ倒そうとする、という点において勇者なんてのは暗殺者と同じである、という論があった。大筋では私も同意だ。
国家間、世界間対立の問題解決手段に暗殺なんて手段を取るのは前世の常識的には終わってる、とは思う。
ただ個人的な恨みがあるから、魔王とそれに連なる魔族、さらに魔王魔族に与して利益を得ようとするカス人類はぶっ殺したい。あでも、人類との共存を目指す美少女魔族とかは許すかもしんない。
まあ正確には一番許せねえのはカス人類で、魔王はちょっとわからせてやるか、ぐらいの気持ち。
そういうことで、基本的に私は「古式ゆかしい少数精鋭の勇者パーティを編成した魔王討伐」という案には賛成だった。なんならパーティ参加を志願もした。
が、召喚された勇者が推定99%過去の私なことで湧いた疑問がある。「勇者が死んだら私も連鎖的に消滅するのでは?」という問題だ。
「過去の自分がいないのであれば現在の自分もいなくなる」というやつ。
無鉄砲な初見告白に対して殺意を抑えて理性的に対応できたのは即座にその可能性に思い至れたおかげだ。サンキュー私の灰色の脳細胞。
自殺(他殺)は防げたのでともかく、魔族やら魔王やらに殺されると私の存在の危機になる。
私、なんだかんだでこの世界の生活が気に入っている。それを手放したくはないのだ。
……まあ、《勇者》のパッシブ効果が無法に強いんだよな。じゃあ国の予定通り魔王捜索させるか、とも思っている。私が監視してればだいじょーぶだいじょーぶ。
魔王、もしくはその根城はまだ人間には発見されてない。
実際復活したところで、今も領土狙いで攻めてきている魔族がどのような質的変化を起こすのかわかっていない。
復活しようが倒せばオッケー、ないだろうけど魔王本人が融和派だったら国交結んでもいいぞ、貴様の首と引き換えにな! が人間勢力の見方。私も概ね同意であるが、美少女魔王だったら隠れて囲ってもいいな。囲えるかわからんけど。まああれだ、全体的に、なんとかなれー。
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というわけで勇者召喚から一週間経ちました。
勇者、めっちゃシゴかれてる。あ、もちろんスパルタ教育的な意味だよ。
一応、死の危険は無さそう。そこはいい、いいけど
なんとなーくどんくさくて結果が追いついてくるのが遅いし、大人に対する敬意を表に出すとか、そういうのたりてないんだよねー。
訓練担当の騎士団の皆さんに腹パンされて反抗的な目つき向けるけど実力で勝てる相手じゃないからすぐに目を逸らして、騎士団の皆さんに「トロいくせに目上に対する態度がなってねえけど俺たちはそんなお前に賭けざるをえないんだよもっと真面目にやれ」って言われたら、
騎士団の皆さんは前世日本の世の「体罰と精神論は良くない」とかそういう倫理観がある環境にいない。殺すか殺されるか、素人は引っ込んでろの世界だ。だからこれは指導を受ける側の覚悟とか決意が足りてない、ということになる。そらつい先日までへいわなにほんでのほほんと高校生やってたしインターネットで知り合った女の子に好き好き言ってただけの軟弱パソコン部、仕方ないところもあるけどな。
それを見るのが辛え。昔の自分は好きになれないが、かといってモロに自分がボコボコにされてんのはそれ以上にヤなんだよな。
ときに、ギフト《勇者》の恩恵として成長上限の上昇と被ダメージ軽減があることがわかっている。
被ダメージ軽減があるから安心して腹パンとかできるという闇。一般人なら1.5回ほど即死だろうって威力で腹パンしたらしいよ。それがねんざもうちみもせずにピンピンしてる。骨折イコール1ダメージという古来のダメージ表現方法に頼るなら、ノーダメということ。《勇者》超つええ。
「ただ実耐久以外の見た目上の能力がすっごい低いのがね……」
筋力、運動性、器用さ、集中力、丈夫さ。
【鑑定】を使うとこの5つのステータスについてその人間の成長限界に対する比率が五角形のグラフで表示されるのだが、最新の【鑑定】結果では勇者の現在値は限界の30分の1もない。成長限界が仮に100だとするなら現在値が3か2なのだ。初回の鑑定ではALL1クラスだったので、成長はしてるのだが。
《勇者》持ちの成長限界がバカみたいに高いのは国の上層部には伝承として知られており、上層部的には「限界値にこれだけの余裕があるということは間違いなく勇者だ」となるのだが、現場に【鑑定】結果だけ共有すると「ただただサボってるカスだけど上からは勇者扱いされる気に食わないやつ」になる。最悪じゃん。なので共有はされてない。「順調だからそのままシゴいてくれ」と言う指示だけが伝わっている。
「走り込みとかの基礎訓練だけやらせるわけにもいかないからなあ」
実際私がちょっと悪い。高校時代に至るまで、普段からまったく鍛えてなかったからなー。毎日片道25分学校にチャリ通してただけで一国の兵士レベルの筋力がついてるはずもなく、へにょへにょ一般人なのだ。ややもすれば肉体労働してる町娘に劣りかねない。今はもうちょっとマシだろうけど。
ただ、「そのへんのつよいてき」を倒すのであればイグナスに前衛を張ってもらって私が後ろから魔法をぼんがぼんが撃つだけで勝つ自信がある。
勇者パーティ(予定)はそうしない。実のところ今回勇者を呼んだのは威力偵察、可能なら暗殺目的の勇者パーティにおけるタンク役及び捨て駒で、さらにはプロパガンダの駒だ。「勇者は勇敢かつ懸命に魔族・魔王に立ち向かいましたが力及ばず、味方を逃すための
ここんとこ、美少女が召喚された際にこっそり救出し手駒(いみしん)にするつもりで私はパーティ入りを志願したのだが。
今となっては事情はさらにめんどくさい。「勇者が死んだら私も連鎖的に消滅する可能性」があるので、それがゼロである確約が取れない限り捨て駒にはできなくなってしまった。
「はー……」
こまった。