今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。 作:一宮 千歳
領主の館。メルムの街の緊迫した雰囲気は、ある意味この館から発せられている、と言っても過言ではない。
衛兵の開けた門を潜れば、見事な庭園が広がっている。
「わあ、すごいですね」
「庭の景観に気を配り、かつ、維持できているというのは、統制の表れです。最前線にほど近いメルムにおいてそれができるのは、統治者の力が並外れている証拠。……緊張します」
「そ、そうなの?」
「……まあ、マエミチ君はちょっと気を引き締めたほうがいいな」
……私はこの庭園の完璧さが、気が重い。前に居た時と何ら変わりない姿であるということは、変わらず主の意思によって整えられているということ。おばあちゃんの一見優しいけど、その芯、つまり忠義から外れるものを拒絶する意志は、今も健在なんだと悟る。
「5年で柔らかくなっていらっしゃらないかしら」
「リース辺境伯は十分物腰穏やかな方だから、期待するだけ無駄だな」
何とも言えない表情で、イグナスが私を見る。
お前も6年前、私をここにつれてきたからなあ。
「二人は、ここに来たことが?」
「ヘーゼル嬢がさっき話した内容を含むんだが、ヘーゼル嬢は10歳の時に親を亡くしている。その時、住んでいた場所の近くの街が魔族の奸計で消し飛ばされ、一人でいたヘーゼル嬢を発見したのが僕で、リース辺境伯に保護を願い出たのさ」
先を行く衛兵に案内されて館の中に入りつつ、
そう、街ごと親の仇を吹っ飛ばした後イグナスに見つかって、イグナスとガチ
「一年ほどこの館、おばあさま……リース辺境伯の元にいましたの。礼儀作法を叩き込まれましたわ」
「あ、もしかして、お嬢様口調なのもそれで?」
「ええ、淑女たるもの優雅たれと。……『私はいいの』といって、おばあさま自身はあまりこう言った口調は使いませんけれど」
「へえ……言葉遣い、綺麗でかわいいですよ」
「ありがとうございます」
急に褒めてきたな
「皆様、そろそろお館様の居室でございます。おおらかな方でいらっしゃいますが、ご無礼のないようお願い申し上げます」
「承知している」
「心得ておりますわ」
私とイグナスが頷けば、あんたらはそうだろうよみたいな顔で衛兵も頷く。
「……では。
お館様! 勇者一行、参りましてございます!」
中から侍従の声がする。
「通して良いと仰せだ」
ドアが開く。
「失礼いたします」
「ようこそ。名を名乗りなさい。」
おばあちゃんの声。
「おばあさま、お変わりないようで何よりでございます。勇者一行、タカアキ=マエミチ、イグナス=ファーロン、騎士ヴィサーラ、私リリアナ=ヘーゼル、罷り越しました」
儀礼上のやり取り、こっちが目下なので丁寧にやらんといかん。
「……イグナスちゃん、リリアナちゃん、久しぶりねえ。そちらこそ変わりない? ヴィサーラちゃんとタカアキちゃんは初めましてね。サルガ=リースです。気軽におばあちゃんって呼んで?」
これだよ。
「お戯れを。辺境伯にそのような言葉遣い、恐れ多く」
「……楽にしていいわよ。……引っかからないの、タカアキちゃんも、ヴィサーラちゃんも偉いわね。飴たべる?」
「いただきます」
「ヴィサーラ!」
イグナスが引き止めるが、もう遅い。ヴィサーラはぱたぱたとおばあちゃんの元へ小走りに近寄り、飴をもらってしまった。
「自由すぎる……!」
「わたしが許したからいいの。ヴィサーラちゃん、おいしい?」
「
「即食べるな、食べながら喋るなーッ!」
「あ、あはは……なんだこれ」
「おばあさま、私たちに気を遣ってくださっているのです。辺境伯という立場に肩肘張って緊張してやり取りが進まないより、自由に言葉を発することを望む。そういう方ですわ」
おばあちゃんがにっこりとこちらを見る。
「リリアナちゃんには、褒めても何も出さないわよ」
さよけ。きたいしてないけど。
「王都のお仕事で、過分なる報酬をいただいておりますから」
「過分なら、ちょっと分けて? 戦費がね……」
「融通しましょう。金で500分でいかがです?」
「助かるわあ。持つべきものは稼ぎのいい孫ね」
「配分はおばあさまが決めて、ヘーゼルに請求だけを回して下さい。あと、これ以上はしばらく出ませんからね」
「ちぇっ」
ちぇっじゃないのよ。こっちはいきなり500万円飛んだんだぞ。
「それでイグナスちゃん、あなたたちは戦線にはどのように加わってくれるの?」
「指揮下には入らず、敵指揮官を狙う遊撃を。一撃で討ち取ることを目的とし、成否に関わらず即離脱。どちらにせよ混乱が生まれ、我が方有利の流れを作る一助になるかと」
「そうね、あなた方は個の武勇が強すぎ、編制に含めると指揮が乱れるか。その動きが一番良いわね、任せます」
「はっ」
「それじゃあ、お話し終わり。早速で悪いけど、前線に移動して」
「承知いたしました」
「え、終わり、ですか?」
5分と経ってないが、既に退室準備を進めるヴィサーラとイグナス、私をよそに、
おばあちゃんがふむ、という顔をした。
「タカアキちゃん、速さは強さよ」
「はやさはつよさ……」
何となくピンときてない顔だな。まあいいや、後で説明してやろ。
「勇者様への説明は私からしましょう。……おばあさま、ありがとうございました」
「こちらこそ助かったわ。ひと段落したら、また会いましょう」
納得しきれてない顔の
……街を吹っ飛ばしたの、つつかれなかったな。ヴィサーラと
全く、おそろしいおばあちゃんですこと。