今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第21話

「『速さは強さ』について、解説いたします」

 

最前線に向かう馬車の中で、勇者(おれ)くんへの説明が始まる。

 

「総合的に『速い』ことはいいことです。足の速さ、剣速、魔法の発動速度、意思決定、成長速度。結果が同じなら、遅くていいもの、あまりありませんよね?」

「確かにそうですね。……でも、それだけですか?」

「それ以外の意味があるなら、おばあさまはあの場で言っていますわよ。『馬車で移動する最中、簡単に説明できる。その方が時間の無駄にならない』ぐらいの計算は、していると思いますわ」

 

イグナスが割り込んでくる。

 

「まあ、強いていうなら、我々の暗殺作戦が実行されるのも、速い方がいい。その程度の意味は、籠っているだろう」

「戦費が、と言っていましたからね」

「戦いには、お金がかかる……」

「戦は長引いて嬉しいものではありません。長く続いていますし、治安も今は悪くないようですが、この先どうなるかわかりませんもの」

 

私は息を吸い、言葉を続ける。

 

「現状このあたりは魔族に勝てもしないが、負けていません。悪くはないのですが、良くはない。この膠着を打破するために我々はここにいます。……成し遂げますわよ」

 

勇者(おれ)くんとヴィサーラがうなずいた。

 

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兵5000を束ねる、リース領騎士団長のダールトン=レイモスと挨拶した。本来前線から離れて書類仕事をしているべき騎士団長が前線にいるというのは、それだけ非常事態である。

顔見知りの上、騎士同士で話すのが一番共通言語が多く情報交換が速いということで、イグナスがレイモス騎士団長と話したのだが、その中で気になる話が出た。

 

「前線の魔族に、最近見慣れない類が加わっている」

「見慣れない、ですか」

「ああ。人と比べると半分ほどしかない小柄なゴブリンとも、オオカミ人間のワーウルフとも違う集団だ。……ローブを被っていて詳しくはわからんが、まるで人みたいなんだよ。そして連中、【挑発】の届かない後方でじっとしている。おそらく魔法か何かを使っているんだが、効果がわからん」

「魔法を使われているのに、効果がわからないんですか」

「ああ。結果的に、『何をされてるのかわからんが、ただそこにいる』だけなんだが、それだけで騎士たちの士気が下がりつつある。不気味だ、何か悪いことが起こるのでは、とな。……イグナス殿たちは敵将を討つ役目とは聴いているが、まずはこいつらを大きく回り込んで側背(そくはい)から突き、我が方の士気を取り戻してほしい」

 

そんなような話だった。

 

「士気を取り戻すのは、重要ですね。そのために無双する必要があるってことですか」

 

士気の重要性を理解してるのがちょっと意外に思えたが、続く言葉で納得した。良く考えればゲームとしての『無双』が、もう勇者(おれ)くんの時にはあるもんな。なつかしいなあ、士気がボロボロになってすぐに敗退する味方部隊……。

 

「その、謎のローブ集団を倒したら、どうするんですか?」

「敵将が出てきていないという話だから、ローブ集団の側からゴブリンとワーウルフを討つ。味方に誤認されないように、目印はちゃんと付けておけよ」

 

目印、リース辺境伯軍は赤いバンダナのような布だ。これを右腕に巻く。

 

「この布にかけられた魔法で、軍団の全員を魔法的に確認する。無くしたらどうなるか、わかるな」

「敵と見做される、ですか」

「いや、それより悪い。敵がそれを拾う可能性があるのはわかるな?」

「うわあ……」

 

魔族側にも、少数ながら人間がいるのは既に話してある。その人間が目印をつけて、何食わぬ顔で混ざっていたら? 勇者(おれ)くんにも、その先の想像がついたらしい。

 

「いいか、布は絶対に無くすな。無くした瞬間、自分と味方が死ぬものと思え」

「……布狙いの敵とかいたらどうするんですか」

「……(にっこり)」

 

諦めろ、って顔だな。

 

「まあ、これだけ脅したが、実は無くしても毎朝変わる符牒にちゃんと覚えてれば大丈夫だ。安心してくれ、僕だって味方識別の布は何度も落としてきた」

「あ、あんまり脅かさないでくださいよ!」

「気持ちは引き締めておいた方がいい。……タカアキ、(きみ)、初陣だろ」

「そうです」

「……これから僕たちは、殺し、殺されをやるんだ。緊張感は持っておけ」

「……はい」

 

イグナスの言葉は、勇者(おれ)くんに沁みたみたいだ。

まあ、当時から物騒なゲームもそこそこやってるし、《勇者》のギフトの被ダメージ軽減があるから、問題になるのは殺しのショックにどれだけ耐えられるか、かな。

 

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翌朝早く、私たちは動き出す。

 

「【姿隠し】【音消し】【匂い紛れ】」

 

隠密行動三点セットの魔法を、同時がけ。

 

「……何にも変わってないように思えますけど」

「これは相手から見えなく、聞こえなく、周りの匂いと同じように感じるようにする魔法ですの。効果範囲は、私たち四人以外」

 

効果の分かってない勇者(おれ)くんに解説。

 

「ヘーゼル嬢はサラッとやってるけど、これをやろうとしてぶっ倒れる魔法使いは後をたたない。気絶すると魔法は解けるから、何の効果もなくただ倒れることになる」

「でも、3人いれば実用なんじゃ?」

「……普通の魔法使い、【姿隠し】一つでぶっ倒れるんだよ」

「……んん?」

 

そこまで言われると照れるな。

 

「そのぐらいにしてくださいませ。効果はさほど長くもちませんから、早く移動しますわよ」

「速さは強さ。いきましょう」

 

うちのパーティは女性が好戦的で困るね、というイグナスの軽口に、勇者(おれ)くんはどう答えていいものか悩んでいるようだった。

 

移動も始まってすぐに、勇者(おれ)くんが疑問を言う。

 

「この魔法、敵将を直接討つのに使えるのでは? ほら、本陣まで敵を無視して突っ切れますよね?」

 

まあ、それ自体は誰だって思いつくよな。

 

「散々やったので相手も対策済みだな」

「ええ、現在魔族においてゴブリンとワーウルフが雑兵扱いされているのは、私が、ゴブリンとワーウルフの上級将クラスを根絶やしにしたからですわ」

「リリアナさんがつよかった」

 

TSつよつよ美少女魔法使いですので、おほほ。

 

「そうだ、ヴィサーラさんにもこれを」

 

ゴソゴソと懐からメガネを取り出す。

 

「ダサいメガネですか、いりません」

 

失礼な。

 

「私のと同じ、【遠視】がかかっています。斥候ですわよね、ヴィサーラさん?」

「いりました。ごめんなさい」

 

これで戦闘準備の準備よし。

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