今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。 作:一宮 千歳
大きく回り込んで戦場側方とも言える場所に陣取った私たち。めがねヴィサーラがローブ集団を見つめる。
「……100ほどの集団です。姿勢がワーウルフほど前傾ではないため、種族偽装という線はないです。前線に出てくる連中としては、本当に新種です」
「魔法を使っている様子はあるか?」
「流石にわかりません。ローブがなければわかったかもしれませんが」
「武器の類は?」
「……目視できる限りでは、なさそうです」
「魔法使い系っぽいか?」
イグナスが矢継ぎ早に尋ね、ヴィサーラがその全てに迅速に答える。こいつらいいコンビだな。元々上司と部下だからか。
「……断定しかねます。ローブの中に、何か隠し持てるかと」
「……なるほど、そりゃそうか」
「たとえば、剣を持ってるとかでしょうか?」
「投入しない理由がない」
「じゃあ、メイスみたいな」
「剣と同じ理由が通じる。これも多分、ない」
「みなさま。議論もいいですが、魔法の効果時間をお忘れなく」
「……そうだな、一当てしてみるか」
「どうせ殺すんです、武装は問題ではありません」
「そうだな」
「物騒……」
そろりそろりと近づく私たち。
二百m、百m、五十m、近づいても敵は気づかない。気付けない。
私もショートソードを抜く。魔法が使えない時に備えての訓練をしていたから、多少剣は扱える。
四十m、二十m、五m。
「そろそろ魔法が切れます。その前に仕掛けて、混乱しているところを刈り取りますわよ」
「「了解」です」
イグナスとヴィサーラは返事をしてくれたが、
「勇者様、どうされました?」
「緊張で……これからこの相手を殺すんだって思うと、震えて……」
「えい」
ヴィサーラが敵の喉を刺す。フードが剥がれ、顔があらわになる。あらまあ、普通のこっち人顔。だが、黒い粒子になって消え去る。これは魔族の死んだ時の特徴。ふむ?
「なっ」
「やらなきゃやられますよう」
ヴィサーラの言う通りではあるのだが、合理的すぎるだろ。人が横で葛藤してるんだぞ。
まあいいか、私も刺す。同じようにフードが剥がれ、同じように粒子になって消え去る。
「
「騒いだ奴から殺す」
イグナスが駆け寄り、何事か叫んだローブを斬り倒す。
そのまま回転するかのように敵をバッサバッサと斬り伏せ、黒い粒子が舞い散る。
「勇者様、【挑発】と【威嚇】を!」
「あ、あ、ああ!」
まったく、しょうがない奴だ。
【挑発】が効き、使用した
その間に、安全に狩れるってわけ。これはイグナスと二人で隠密した時に発見したハメ手だ。
体重を乗せてもう一突き。粒子になるローブ。
ああ、一人拘束して、殺しの童貞卒業させてやるか。
「魔法が切れます! あと三十秒! 一人だけ逃げられないようにして、生かして残してください!」
「承知!」
複数体をまとめて風のように斬り裂くイグナスと、着実に一体ずつ始末していくヴィサーラ。敵の残りはまだまだいるが、混乱し切っているし、ほどなく始末できるだろう。
「勇者様、魔法が切れたら敵は襲いかかってきますから、心の準備を。大丈夫、あなたは滅多なことでは傷を負わないギフトがあります。死にはしません。逃げなければ、それでいいのです」
「は、はい」
これでよし。【威嚇】の試験の時、騎士たちは本気で
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……そうして残った一人は、見た目女だった。うーん、男の方が良かったが、まあいいだろ。
「
「人型だったもんで、両手両足の腱を切ってある。まともな抵抗はできないだろう」
「ありがとうございます」
無力化した敵への興味を失ったヴィサーラが、味方のいる方を眺め、報告してくる。
「さっきまで互角だったんですが、今は味方が押してますね」
「何? ……もしやこいつら、ゴブリンやワーウルフの支援担当だったか?」
あー。バフ役ね。そら戦闘参加させられませんわ。一つ謎が消えた。
「その可能性は高いですわね。……と言うわけで、こいつは生かしておくと有害な敵ですわ。勇者様、覚悟を決めてやってください」
「ぼ、僕が殺すの? この女の人を?」
「敵ですわ。男、女はないものとして考えてください」
「英雄譚みたいに、女は斬らない、とかはなしだぞ」
「そんなあ」
そんなあじゃなくて……。
「殺しの童貞を卒業できたら、童貞も卒業させてあげましょうか?」
「ヴィサーラさん、何言ってるんですか!?
「ヴィサーラ……」
おまっ。私にガチ恋させて操る上の計画がダメになるだろ! 童貞は初めての女に執着するんだぞ!
「リリアナ様に恋してるのは知ってますが、動機になる即物的な報酬は必要かと思いました。どうですか?」
「いや、きもちは嬉しいけど、それはいいです」
あら意外。断った。……私で童貞卒業したいとか考えてないだろうな? うわやば、鳥肌立つ。
「じゃあ、やれますか」
「……やります」
「首を突いて殺すのは、慣れて正確に突けないと難しいです。草を払うように、首を斬り落とすといいです」
「はい」
ヴィサーラのアドバイスで、
「よく頑張ったな」
「……人を殺す手ごたえって、あるんですね」
「人ではありません。魔族です」
イグナスの励ましと、ヴィサーラの断言。まあ、死ぬと黒い粒子になる生き物は、人と同じものとは考えづらいからなあ。そういう言い方にもなる。
「では、味方の救援に移りましょう。勇者様、こんどは斬れますね? 一体も二体も同じです」
「……できる、と思う。やります」
私たちは、乱戦になっている集団に向かって駆けた。