今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第23話

5000対同数規模の戦いは、迫力がある。

とはいえ乱戦になっており、もはや陣形もクソもない。兵がやっていることはほとんど乱暴に剣を振り回すだけ。

ここから将とは言わずとも指揮官級、あるいは旗振り役を仕留めていくだけで、労せずに勝てるだろう。

 

「敵の旗目指して突っ込め! あれらを全て地に伏せさせてしまえばまともに指示は飛ばなくなり、勝利は揺るぎない!」

 

私が【伝令】の魔法でこちらがわの指揮官に戦闘介入の意思を伝えている間に、イグナスが多分わかっていない勇者くんに指示する。

 

「30本くらい立ってますよ!?」

「最低30人殺せば勝ちということだ! やるぞ!」

「ああもう、わかりました!」

 

うん、童貞卒業(殺しを経験)したことで返事がよくなったな。

あとイグナス、経路上の敵倒さないといけないから最低30人は無理があるぞ。

 

さて、そろそろ魔法使うか。今日の魔法はなーにっかなー。

 

「【氷の茨壁】!」

 

2枚の、とげとげした茨を纏った氷の壁が地面からせり上がるように形成された。最寄の旗持ちに向かう経路を、通路を作り繋いだのだ。これで敵の防衛スイッチは防げる。壁生成時に雑魚が巻き添えになったが、まあ許して欲しい。

 

「味方を巻き込んでますよ!?」

「まともな騎士ならこれじゃ死なないから安心して!」

「本当かなぁ!? 僕死ぬ自信ありますよ!」

 

まあ勇者(おれ)くんは大丈夫、私が死なせないから。デレとかじゃなく、私という存在が消滅しないために。

 

----

 

通路を作る、突っ込む、旗持ちを殺す、次。

それの繰り返しだ。

体感一時間も経ってないが、いま10ほどは潰したか。

敵はかなり浮き足立っており、まともな抵抗ができていない。目立つ氷の壁は、敵兵への死のカウントダウンに他ならない。

奴ら側に撤退指示も出そうだが、まだその気配はない。あと5は潰せるか?

 

しかし、ローブ集団の推定バフ効果と、この敵の強さはチグハグだ。これまではローブ集団のバフなしで互角の戦いになっていたはず。敵兵の質が同じなら、バフの分で魔族側が優勢になっていたはず。理屈に合わない。

 

敵の質が悪いのは間違いない。チラリとみたところ、味方にさしたる被害はない。死人は少なく、けが人は随時後送されており、ずいぶん余裕のある戦況だ。

 

「ヴィサーラさん、戦況分析を」

 

手は止めないが、頭の隅で考える余裕はある」

 

「……分析するまでもなく、優位ですが?」

「いえ、この戦場だけではなく。もっと広い視野で」

 

ローブ集団を討つ前、『支援込みで互角』だったのが変なのだ。不気味な敵にこちらの士気も下がっていた。それなのに互角。何か敵の策があるのではないかという仮定で、ヴィサーラには考え直して欲しい。

そう伝えると、ヴィサーラは顔を青くした。

 

「本来戦力にならないような弱兵をこちらに当て、別の戦線に、本来こちらにいるべき戦力を投入している可能性が!」

 

……チッ、そういうことか、やられたな。

 

「ファーロン副団長!」

「聞こえた! この戦線から離脱して、よそ……隣のレベリアの救援に向かうぞ!」

「ちょっと待ってください、どうやって!?」

走るんだよ!(・・・・・・)

 

歩兵は走るのが仕事って、前世でゲーム(TRPG)やってる時によく実感したなあ。まさか自分が走る側になるとは。

 

「どんくらい離れてるんですか!?」

「レベリアは一つ隣の国、国境を挟んで30キロだ!」

「さんじゅっ……!?」

「【脚力強化】をかけます! 一時間走る準備はよろしくて!?」

「否定する権利ないでしょ!」

「わかっているようで何より!」

 

再び私たちは駆ける。味方の無事を祈って。

 

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風景が、溶けるように流れる。

隣の戦場には大きな森を挟んでいる。木々が、岩が、動物が、猛烈な速度で後方に過ぎ去る。

 

「よ、よ、酔う!」

「前だけ、遠くだけ見てろ! 足はしっかり回ってる!」

 

勇者(おれ)くんの弱音と、イグナスの励まし。

 

「これ、凄いですね。なんでさっきは使わなかったんですか?」

 

ヴィサーラの問いかけ。私もポンポン使えたらなー、と思うよ。でも制限があるんだ。

 

「かけきりでよい【姿隠し】などと違って、常時発動です。結構な負担になるので、この後魔法支援は期待なさらないで」

「なるほど、わかりました」

 

他人の身体に干渉する魔法は、かけられる人物の意思に抵抗されるため難度が高い。バフ系のローブ連中も敵の虎の子だったろうに、囮に使うか、普通? 過ぎたことかもしれないが、そこも気にかかるな。

 

「とにかく走り続けて、隣の国が担当している戦域までたどり着くぞ」

「はい」

 

45分ほどで森を抜けた。が、あと15分かかる。

【遠視】を最大限発揮して見た戦場は、ゴブリンとワーウルフたちが押しているように見えた。

 

「味方旗約20! ……いや、一本倒れた!」

「敵方……うそ、約150!? 想定よりも多いです!」

 

旗一つで100の兵というのは敵味方変わらないので、現在2000対15000。

なるほど、敵方はメルム側の戦線だけじゃなく、もう一つ分の戦線からも引っこ抜いてきたな。よくみれば、ワーウルフとゴブリンだけじゃなく、ちらほらデカブツがいる。

巨人種(ジャイアント)だ。奴らは微弱な魔法耐性を持つが故に、魔法大国であるポリヘドラの戦線にのみ投入されていたはず。それがここにいるのか。

 

「ファーロン副団長!ジャイアント狩りの経験はありまして!?」

「流石に国一つ跨いだ戦線にしかいないヤツの倒し方は知らん! ……まさか、居るのか!?」

「残念ながら! 任されてくれますか!?」

「承知した!」

 

イグナスが加速し、私たちから離れていく。

え、お前もっと早く走れんのかよ。まあいいんだけど。

 

「私たちはゴブリンとワーウルフを相手取ります!各自、死なないように自由戦闘で!」

「ちょっと待って、実質初陣なんですけど!?」

「勇者様は奴等程度の攻撃では死なないから敵陣のど真ん中に突っ込んで大暴れしなさい! ジャイアントは我々で安定して勝てるかわかりませんから、距離を取るように!」

「ええーっ!?」

「人助けです! あなたがやらないと大勢死にます! 良いんですか! 良くないでしょう!」

「……やります!」

 

「ヴィサーラ、あなたは」

「味方司令官に4人とはいえ救援の連絡、そして統制を失っている兵には撤退の喚呼、ですね」

「よろしい。では、いきますわよ!」

 

まあ、大枠が決まっても、あと10分は走り続けないとならんわけだが。キツイな、精神的に。

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