今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第24話

少しずつ、だが確実に倒れていく味方の軍旗。

潰走はしょうがない。だがせめて、一人でも多く犠牲を減らす。でないと、ここに来た意味が無い。

 

焦りながら走るが、距離は一定間隔でしか縮まらない。もどかしい。

 

「目測、あと500!」

「ファーロン副団長が先に突っ込んで、相手も流石に気づきました!! 散らばって役目を果たしてください!」

「「はい!」」

「【脚力強化】、切ります!」

 

がくん、と脚がもつれる。クソ、この切れぎわの元に戻った感覚、キツい!

なんとか倒れずに踏みとどまり、慣性のついた速度で走り続ける。

 

「私はリリアナ! レジーナ=ヘーゼルの子、リリアナ=ヘーゼル! 我がダイスロ王国の友邦にして母の故郷、レベリアの同胞の救援に参りました!」

 

レベリアはレジーナ母様の故郷でもある。負けっぱなしは、みてられないのだ。

そのためには使えるものはなんでも使う、私の名前、母の名前、国の名前。なんでもいいから、巻き返しに使われろ。

私の名乗りは、味方に届いたようだ。ざわめきが広がる。

なんとか一石を投じることができたようだ。あとは、この波紋を際限なく大きくする!

 

ヴィサーラはすでにこの軍の指揮官のもとに動いている。退却する時間を稼ぐから、早く統率を取り戻してほしい。

 

「勇者様!」

「……怖いけど、わかってる!」

 

だん、と勇者(おれ)くんが一歩踏み出す。

その踏み出しは、一万五千の魔族の視線を独り占めした。

わお。【挑発】の、火事場の馬鹿力?

すごいなあ、さすが私。

 

さらに踏み出す。駆ける。

遮二無二剣を振り回しながら、敵の群れに突っ込む。

 

潰走する味方を追いかけていた魔族が、振り返る。

逃げる隙が、出来た。ここだ。

 

「ここは任せて、皆様はお逃げになって!殿(しんがり)は、勇者タカアキ=マエミチがつとめます!」

 

「勇者……」「勇者だと?」「ダイスロは、勇者を召喚したのか!?」

 

あ、今気づいたけどこれ、プロパガンダの前振りとして上が想定してた流れとまるっきり同じだな。

初陣でえ? 持ってるなあ。

ヴィサーラがいないから、3対15000か。

ま、なんとかなるでしょ。

 

----

 

剣をふるえば黒い粒子が舞う。しかし敵は勇者(おれ)くんから目を離せない。地獄のようなキルゾーン。

無双、勇者(おれ)くん無双しております。

一万五千のヘイトが向いてるが、何をされてもノーダメ確定というのは強い。

 

◾️()◾️◾️(ばけもの)!」

◾️◾️(くそっ)◾️◾️◾️◾️(なんでこんなのが居るんだ)!」

 

これはもう良いだろう。イグナスの救援に向かう。

巨人種(ジャイアント)、20は居たからな……

 

「私はファーロン副団長の救援に向かいます!」

「リリアナさん、無理はしないでください!」

「今この戦場で一番無理してるのはあなたですわ! でも、負けないで!」

「応援してもらったので頑張れますよ!」

 

あ、これちょっと血を見過ぎてハイになってるわ。ほっとこ。

 

イグナスの元に向かうと、こっちも案外平気そうだった。

なんか巨人種(ジャイアント)の数、けっこう減ってない?

 

「救援に来ましたわ!

「ヘーゼル嬢! 雑兵はいいのか!?」

「それは勇者様が一人で捌いています! こちらは!?」

「連中、(かかと)を切ればすっ転ぶ! そこから耳の穴を突けば死ぬぞ!」

 

わーお。ずいぶん効率的な殺し方見つけてるじゃん。流石王国最強の噂もある男だこと。

 

「ずいぶん簡単に殺し方を見つけていらっしゃるのね?」

「ああ、だが君のショートソードでは難しい倒し方だろう?」

「……その魔法耐性、確認させていただきますわ。【氷の強矢・連射】ッ!」

 

巨人種(ジャイアント)の耳の辺りを狙って連射する。数発が耳の穴に入り、貫通。その後、絶叫を上げながら巨人種(ジャイアント)の形が崩れ、黒い粒子が舞い散った。

 

「おいおい、魔法耐性をブチ抜いたのか?」

「一度試してみようと思いまして。効かない、のではなく効きにくいだけですのね。むしろ大得意の相手かもしれませんわ」

「そうかい、頼もしい事で!」

 

イグナスが別の巨人種(ジャイアント)に襲いかかり、瞬く間に両踵を斬りつける。するとバランスを崩し、尻餅をついた。

なんか、でかいだけでそこまで脅威じゃないな。【氷の強矢】が通用してよかった。

イグナスが腕、肩を駆け上がり、耳にロングソードを突き刺すと、やはり絶叫と共に黒い粒子へと変わる。

 

「ファーロン副団長、トドメは私が刺しますから、踵切りを優先していただけますか?」

「ああ、その方が効率が良さそうだな」

 

この調子なら。そう思ったところで、悪寒がした。

 

「あきまへんえ」

 

背後からかけられた言葉に、思わず振り返る。

……バカみたいな露出度をした、人間の女に見える魔族が立っていた。

 

「うちのあのおっきいの、そりゃもうようさんおカネかかっとるんよ。そんな簡単にぱたぱた倒されたら、ようかなわん」

「何者だ」

「ああ、魔族なのはこの戦況で出てきた事でわかりますから。名を名乗っていただけるなら、覚えておきますが?」

 

女はころころと笑う。チ、この鉄火場で笑う余裕のある相手、いかにも強敵だ。エセ京都弁が、癪に触る。

 

「名乗るほどのものやありんせん。……でもそやね、うちら陣営のこっち方面担当です、とだけ伝えさせてもらおか」

 

「ヘーゼル嬢。こいつに会話は無意味だ」

「いえ、言葉の通じる魔族は私たちにとって初めてです。乗ってもいいでしょう」

 

まずいな、意見が割れてる。私が平気そうに立ってるからイグナスは強気だが、実のところ余裕はそんなにない。

 

「あらあら、そんな警戒せんといてえな。あちきはこっちが不利なんで、交渉に来ただけだけどす」

「交渉には応じない!」

「ファーロン副団長!」

「だが!」

 

私はイグナスを制止する。

 

「巨人は私にとっては脅威ではない。それが分かっている以上、いくらでも投入されて構わない。ですが、この女は底が知れない。私たちも疲弊している。交渉とやら、聞きましょう」

「ふふ、かいらしいお嬢さん、頭もいいとなると、好きになってまいそうやわあ」

「ありがとうございます。好きになってくれるくらいなら、そっちの陣営を裏切ってくれると助かるんですが」

 

女はまたころころと笑う。

 

「わちきはお嬢さんが裏切り者は許さないの、知っとりますえ」

「……何を知ってる?」

 

私が尋ねると、女が口を開く。

 

「6年前。不幸な事件やったねえ? お悔やみ申し上げます」

 

「殺すッ!!!!!」

 

最速で放った(ありったけを込めた)氷の剛矢(今の全力)】は、しかし女をすり抜けた。

 

「あはははは! わちきはその場におらんよ!」

「幻かッ!」

「そうそう、話したいだけやさかいに。やり合うなら本体でうかがいますわ。短気は損気、やで?」

 

笑う女。……悔しいが、今はコイツに打撃を与える方法がない。

 

「要求を聞こう」

「あら、偉丈夫さんも聞き分けよくなって。どういう風の吹き回し? わちき、風邪ひきそう」

「黙れ。要求だけを言え」

 

「あらそう? じゃあ、ここで退いてくださいな。変わりに、今は残りのでっかいのを見逃してもろて、一万五千の兵……もうそんなおらんけど、これも下げます。どうどす?」

「不当だな」

「ほな、あちきが本体でそっちに乗り込んでも?」

 

……悩ましいな。

 

「わかりました、いいでしょう」

「ヘーゼル嬢!?」

「私はこの女の幻術を見破れなかった。つまり、現有戦力ではこの女に勝てません」

 

幻術舐めてると死ぬんだよ。最悪、幻術で味方同士の殺し合いをさせられるだろう。

 

「ほんま賢い! 好っきやわぁ! なな、そっちこそ裏切ってこっちにつかん? 好待遇で迎えてもらえるよう、上にお願いするさかいに!」

 

喜色満面、という顔で女が提案してくる。まあ、答えはノーだ。

 

「裏切りは好きではないので」

「あら残念。ほな、今日のとこはこの程度で。しつこい女は嫌われますさかいにねぇ……」

 

そういうと、女の姿は掻き消えた。間をおかず角笛の音が響くが、これは魔族たちの撤退の合図だろう。

 

「ヘーゼル嬢、正気か?」

「……正直、限界が近いんです。あとは任せても?」

「……そうか、なら、いい」

 

あーやば、これ、気を失うわ。

視界が暗い。

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