今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第26話

はーどっこいしょ。寝かせられていた簡易ベッド(起き上がってみれば木箱を並べてマントを敷いただけだ。簡易すぎて涙がでる)から立ち上がり、勇者(おれ)くんのいる陣幕に向かう。

 

「勇者様、お加減は?」

「……よくないね」

 

あーらら、だいぶ凹んでる。

うーん。2025年のラノベ常識だと「人殺しの葛藤なんてきょうび流行んねえんだよボケが」で済むんだけど、なあ。

こいつの常識の源泉、2002年〜2003年ごろだとweb小説なんてまだまだ認知されてないからな。なんなら9.11事件のせいで、「悪を許すな」という論調が世界を席巻していた。もちろんそれ自体は悪くないのだが、異世界においてはそれは足枷にもなる。なんなら本人(私自身)も、反テロでありながらも反戦にもかぶれてたはずなんだよな。どうしたもんかね。

 

「……理屈では、判るんです。魔族が攻めてきた。だから守るためには力が必要で、僕が呼ばれて、期待されてる」

「ええ、そうですわね。……有無を言わさない召喚という方法に頼っているのは、我が国の恥でもあるんですけど」

「いや、そこはいいんです。毎日毎日、ほとんど同じことの繰り返しで。たまたま入試の成績が良くて、奨学生……ええと、お金の補助をもらいながら勉強できる身分になれましたけど、勉強についていけなくなってて」

 

おっ、自己批判は手短に頼むぞ。全部知ってるからな。

 

「この世界に来たとき、チャンスだ、って思ったんです。できない勉強より、運動はもっとできないんですけど。ギフトが有るから。ダメージを受けないなんて、そんなの絶対に役に立てるって。敵を倒すのなんて、ゲームで散々やってきた、実際にやることもできるって、思い上がってました」

 

はいはい。聞くのめんどくさいな。

 

「でも、無理です。結局のところ、敵を倒すってことは、殺しにほかならない。命を奪ってるんです。それに、耐えられそうにない」

 

私は返す。

 

「まあ、義務感でやってると、そうなりますわよね」

「義務だなんて、そんな」

「やりたくない事をやらされる理由。大体において、それは義務と表現しますわよ」

「僕は、リリアナさんのためにも!」

 

ああ、私の「復讐を手伝って」にイエスと答えたね。けど。

 

「手伝わないと死ぬわけではないでしょう?」

「それ、は」

「だから『義務感』と言ったのです。私のために、と言ってくれるのは嬉しいですが、絶対の原動力ではない。だからこそ、今動けない。そうでしょう?」

 

私、場に応じて口は回るけど、普通にめんどくさがりだもんな。私と同一人物で有るお前も、そうだ。

 

「ですが、動いてもらわなければ、国も、私も困ります。『自分は日本人だから、意に反する殺しはできない』なんて、克服してもらわないと」

「そんな……人を、道具みたいに」

「違いますわ」

 

私は断じる。

 

「その殺しの忌避感は、克服できると知っていますから」

「何を根拠に……同じ日本人でもなけりゃ、わかんないでしょう!」

 

ああ、自分から振ってくれて助かる。

 

「ええ、私、日本人ですから」

「え?」

 

「……書くもの……ありますわね。ほら。『♪まるかいて おまめがふたつ おむすびひとつ あーっというまに』」

 

まんまるピンクの一頭身、できあがり。まあ、色は付いてないが。

 

「……嘘だ」

「……リバーシが最大の娯楽であるこの世界で、この絵描き歌を知っている理由、『元日本人』だから以外に、ありまして?」

「偶然だ!」

 

しょうがねえなあ。

「これは私もやったことがあるゲームなんですけど」

といい、魔法で立体投影映像を産み出す。

別に操作できるわけではなく、音もない。

ロボットがすいーと地上移動、あわせてぴょんこぴょんこ小ジャンプしながら銃やミサイルを撃つ。

勇者(おれ)くんも、コレの元のゲームがなんなのか、分かるはずだ。

 

「この世界、『ロボット』もありませんよ?」

「……本当に、本当に日本人なんですか……」

「まんまるピンクの一頭身にでも誓いましょうか?」

 

いや、結構です、と勇者(おれ)くんが言う。

 

「……どうやって、殺しの忌避感を克服しましたか?」

「相手をどうでもいいゴミだと思うことです」

「それは!?」

「相手のことを知るからいけないんですよ。知らずに、そのまま、単に目の前の相手だけを殺すべき敵として処理する。コレが一番効果的です」

 

心を動かさず、淡々と処理する。それが必要なのに、できていない。だから苦しむ。

 

「良心は、痛まないんですか」

「痛みません。敵相手ですから」

「狂ってる……」

「穏やかな日本では、そうでしょう。でも、ここは異世界ですよ? 郷に入っては郷に従え。その古くからの教えを、忠実に実行しているだけです」

 

簡単なことだと思うんだけどな。

 

「……あなたは、魔族が敵だとは思えていない。それは、身内や自分に犠牲が出ていないからです」

「……それは」

「考え方を変えてください。あなたは、私が好きだと言っていますね」

「……はい」

「あなたが戦わないと、私が死にます。 どうです? ちょっとやる気、出ました?」

「……卑怯ですね、それ」

「私は仇を取るためにならなんでもします。見損ないました?」

 

首を傾げる。でも私は知ってるよ。戦う女、好きでしょ。

 

「見損ないません。……わかりました、やります。心を殺す、ですね」

 

ほらね。

 

「さあ、改めてお願いします。共に地獄へ参りましょう。私の手を取れば深入り決定、ですよ」

 

少しの逡巡の後、勇者(おれ)くんは、私の手を取った。

 

「狂ってるなんて言って、すみません。僕も、狂ってるみたいです」

 

それでいいのです。と私は答えた。

自分の狂気を、自分自身で否定できるものか。

まあ、ガチ恋されてるのは困るんだが。

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