今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。 作:一宮 千歳
「……マエミチ、いいのか?」
「覚悟が決まりました。僕がやらなきゃ、リリアナさんが困る。なら、なんとかやるだけです」
陣幕から出てきた
「ヘーゼル嬢、何を話したんだ?」
「ファーロン副団長とヴィサーラさんも知っている私の秘密を、少し話しただけですわ」
訝しむイグナス。しんじてよー。
「……本当か? それにしては顔つきが随分……」
「リリアナさんの復讐のお手伝いを、することにしました」
「それは前に、『銅の鎧亭』で誓ったアレかい?」
あんときイグナスもいたねえ。要するにあの時、口先だけで誓っただけで、全然覚悟ができてなかったんだよ。
「はい。それです。でもあの時は、『リリアナさんにお願いされたから』で舞い上がって承諾しただけでした」
「今は違うと?」
「はい。魔族を殺す、ということがどういうことか実感した今こそ、改めて誓いました」
「……ならいいが」
イグナス、不満そうだな。
「何かご不満が?」
「理由が主体的ではない、というところかな。ヘーゼル嬢がもし戦線離脱した時、マエミチは戦えるか?」
「戦います。リリアナさんが望むなら」
「その妄信は危険だ。考え直せ」
イグナスの強い言葉に、
「じゃあ、なんで僕なんか
「ぐっ……」
「ダイスロ王国は、僕を勇者として喚んだ。それはいいです。でも、僕に何か報酬とか、守るべきものとか、そういうものは与えようとしなかった」
ガチ恋だけがモチベーションなんだよな。歪だけど、それしかない。
「私のおっぱいなら提供しますよ」
ヴィサーラの ばくだんはつげん!
……いや待て、案外正しいのか?
「ヴィサーラ、ややこしくなるから黙っててくれ」
「いいえ。勇者様が報酬が必要だというなら、提供するべきです。それが合理というものでは」
「ヴィサーラさんのおっぱい、魅力的ですがお断りします」
「振られた……しょんぼり」
ヴィサーラは頑張ったよ。よちよちしてあげたいが、今ちょっとそういう空気じゃない。
「イグナスさん、『銅の鎧亭』で、我々は捨て駒だ、って言いましたよね。僕に、情報を持ち帰る斥候役を逃がす時間を稼いでほしい、とも。イグナスさんは、国は、捨て駒になるだけの理由、僕にくれてますか?」
答えはノーだ。
イグナスが苦虫を噛み潰したような顔で答える。
「……提供できていない」
「でしょう。僕が被ダメージ軽減のギフトを持つから、盾役として使う。それ以上のことは、国やイグナスさんは考えてなかった。リリアナさんだけが僕の希望で、リリアナさんは『それなら復讐を手伝って』って理由をくれたんです。それに縋って何が悪いんです」
「ヘーゼル嬢が、きみに振り向くとは限らんぞ」
「それはそうかもしれませんが、余計なお世話です」
イグナスが両手を挙げる。この世界でも降参のポーズ、これなんだよな。
「……わかった。私が誤っていたことを認める」
「随分素直ですね?」
「子供ではないのでね」
うわお。なんかイグナスと
なんだろな、私の方もイグナスと険悪になっちゃった感じがしちゃう。これは良くない、困る。仲直りしてくれ。
「二人とも、言いたいことは言い終わりましたか?」
私が静かに尋ねると、イグナスが先に折れた。
「……ヘーゼル嬢。……すまない、タカミチ。感情的になった」
「僕も、すみません。イグナスさんが、僕のことを気にかけてくれているのも分かっています。でも、僕の覚悟は、僕のものですから」
まあぶっちゃけ、本当に私へのガチ恋以外に動機がない。
初陣までに用意するもんかと思ってたが、全然そんなことないんだもんな。
「即物的な報酬も、国に掛け合ってみます」
「私とか」
ヴィサーラはなんでこういう時に積極的なんだろう。
「ややこしくなるから、それ以上のアピールはおやめになって」
「じゃあリリアナ様のものになります」
「あら嬉しい。……じゃなくて」
なんか男からの目線がきつい。なんだよさっきまで喧嘩してたくせに。
……ヴィサーラの突拍子もない発言、いつも場の空気をユルくするな。もしかして、狙ってやってる? そんなことないか。
「こほん。さておき、次の目標はどうなりますか?」
「この戦線の統制は戻った。だが、そもそもの戦力が足りていない。国を飛び越えて、無断で支援する形になっているものの、ここレベリアに留まるのは一つの手だ」
イグナスの言葉に、ヴィサーラが言葉を添える。
「というより、それしかないのでは? メルム戦線に戻るのは、ほぼ『友邦を見捨てる』ということにほかなりませんよ」
「選択肢はありませんでしたね。ここに留まりましょう」
「レベリアの指揮系統に組み込まれてはたまらん。独立して動くことを宣言してくる」
イグナスはそう言って去っていき、私と、
「敵、どう出ますかね」
「……ここに我々がいる限り、戦力投入は避けるのではないですかね。ゴブリンとワーウルフも、ジャイアントも、敵ではないことを証明してしまいましたし」
「となると、待ちぼうけ?」
「いえ、あの露出度の高い女が来る可能性があります」
「「言い方」」
だって露出度高かったんだもん……。
「では、幻術使いの女、と。まあ、本質はそこではないように思いますが」
「本質?」
「……二人は見ていないからわからないかもしれませんが、あの露出度の高い女の格好を見て、異世界で馴染みのある架空の化け物と、雰囲気が近いな、と思ったんです」
「……それは?」
すなわち、夢魔。
「夢魔……なるほど……」
「すみません、わかりません。それはどういった種族なのですか、リリアナ様?」
「私が以前いた世界に伝わる、架空の化け物の一種です。その名の通り、人の夢に入り込み、精神を弄ぶ魔、として語られます。特に性的な夢を見せて精力を吸い取る、という性質が有名ですわね」
「勇者様に強そうですね」
「ヴィサーラ、世の中に言っていいことといけないことがあるのよ?」
「知っていますよ?」
「気にしてませんから……」
さておき、その性質と、幻術使いの女。どうも一致するところが多い。なら、精神攻撃系の手段で我々を襲ってくるのではないか、と思うわけ。
「……幻術使いの女が夢魔であれば、間違いなく精神的弱点を突いてくる。勇者様は殺しの恐怖を克服したばかりですし、恋している、というのも弱点になりうる。私に関しては、六年前の出来事を突かれると、どうしても冷静にはなれません。……ヴィサーラ、あなたは?」
ヴィサーラは一瞬考え込んだ。
「私は特に……いえ、強いて言えば、リリアナ様のお眼鏡にかなわなくなること、でしょうか。でもそれが攻撃に?」
「なりますわね。ですから、心を鍛える。難しいけれど、それが今やるべきことですわ」
「心を、鍛える……どうやって?」
本当にどうするんだろうね。無計画です。