今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第27話

「……マエミチ、いいのか?」

「覚悟が決まりました。僕がやらなきゃ、リリアナさんが困る。なら、なんとかやるだけです」

 

陣幕から出てきた勇者(おれ)くんに、イグナスが声を掛ける。覚悟を決めたと語る勇者(おれ)くんに、イグナスが困惑してる。

 

「ヘーゼル嬢、何を話したんだ?」

「ファーロン副団長とヴィサーラさんも知っている私の秘密を、少し話しただけですわ」

 

訝しむイグナス。しんじてよー。

 

「……本当か? それにしては顔つきが随分……」

「リリアナさんの復讐のお手伝いを、することにしました」

「それは前に、『銅の鎧亭』で誓ったアレかい?」

 

あんときイグナスもいたねえ。要するにあの時、口先だけで誓っただけで、全然覚悟ができてなかったんだよ。

 

「はい。それです。でもあの時は、『リリアナさんにお願いされたから』で舞い上がって承諾しただけでした」

「今は違うと?」

「はい。魔族を殺す、ということがどういうことか実感した今こそ、改めて誓いました」

「……ならいいが」

 

イグナス、不満そうだな。

 

「何かご不満が?」

「理由が主体的ではない、というところかな。ヘーゼル嬢がもし戦線離脱した時、マエミチは戦えるか?」

「戦います。リリアナさんが望むなら」

「その妄信は危険だ。考え直せ」

 

イグナスの強い言葉に、勇者(おれ)くんが反発する。

 

「じゃあ、なんで僕なんか()んだんですか!」

「ぐっ……」

「ダイスロ王国は、僕を勇者として喚んだ。それはいいです。でも、僕に何か報酬とか、守るべきものとか、そういうものは与えようとしなかった」

 

ガチ恋だけがモチベーションなんだよな。歪だけど、それしかない。

 

「私のおっぱいなら提供しますよ」

 

ヴィサーラの ばくだんはつげん!

……いや待て、案外正しいのか?

 

「ヴィサーラ、ややこしくなるから黙っててくれ」

「いいえ。勇者様が報酬が必要だというなら、提供するべきです。それが合理というものでは」

「ヴィサーラさんのおっぱい、魅力的ですがお断りします」

「振られた……しょんぼり」

 

ヴィサーラは頑張ったよ。よちよちしてあげたいが、今ちょっとそういう空気じゃない。

 

「イグナスさん、『銅の鎧亭』で、我々は捨て駒だ、って言いましたよね。僕に、情報を持ち帰る斥候役を逃がす時間を稼いでほしい、とも。イグナスさんは、国は、捨て駒になるだけの理由、僕にくれてますか?」

 

答えはノーだ。

イグナスが苦虫を噛み潰したような顔で答える。

 

「……提供できていない」

「でしょう。僕が被ダメージ軽減のギフトを持つから、盾役として使う。それ以上のことは、国やイグナスさんは考えてなかった。リリアナさんだけが僕の希望で、リリアナさんは『それなら復讐を手伝って』って理由をくれたんです。それに縋って何が悪いんです」

「ヘーゼル嬢が、きみに振り向くとは限らんぞ」

「それはそうかもしれませんが、余計なお世話です」

 

イグナスが両手を挙げる。この世界でも降参のポーズ、これなんだよな。

 

「……わかった。私が誤っていたことを認める」

「随分素直ですね?」

「子供ではないのでね」

 

うわお。なんかイグナスと勇者(おれ)くんが険悪になっちゃった件について。

なんだろな、私の方もイグナスと険悪になっちゃった感じがしちゃう。これは良くない、困る。仲直りしてくれ。

 

「二人とも、言いたいことは言い終わりましたか?」

 

私が静かに尋ねると、イグナスが先に折れた。

 

「……ヘーゼル嬢。……すまない、タカミチ。感情的になった」

「僕も、すみません。イグナスさんが、僕のことを気にかけてくれているのも分かっています。でも、僕の覚悟は、僕のものですから」

 

勇者(おれ)くんも続くが、その声にはまだ棘がある。

まあぶっちゃけ、本当に私へのガチ恋以外に動機がない。

初陣までに用意するもんかと思ってたが、全然そんなことないんだもんな。

 

「即物的な報酬も、国に掛け合ってみます」

「私とか」

 

ヴィサーラはなんでこういう時に積極的なんだろう。

 

「ややこしくなるから、それ以上のアピールはおやめになって」

「じゃあリリアナ様のものになります」

「あら嬉しい。……じゃなくて」

 

なんか男からの目線がきつい。なんだよさっきまで喧嘩してたくせに。

……ヴィサーラの突拍子もない発言、いつも場の空気をユルくするな。もしかして、狙ってやってる? そんなことないか。

 

「こほん。さておき、次の目標はどうなりますか?」

「この戦線の統制は戻った。だが、そもそもの戦力が足りていない。国を飛び越えて、無断で支援する形になっているものの、ここレベリアに留まるのは一つの手だ」

 

イグナスの言葉に、ヴィサーラが言葉を添える。

 

「というより、それしかないのでは? メルム戦線に戻るのは、ほぼ『友邦を見捨てる』ということにほかなりませんよ」

「選択肢はありませんでしたね。ここに留まりましょう」

「レベリアの指揮系統に組み込まれてはたまらん。独立して動くことを宣言してくる」

 

イグナスはそう言って去っていき、私と、勇者(おれ)くん、そしてヴィサーラが残った。

 

「敵、どう出ますかね」

「……ここに我々がいる限り、戦力投入は避けるのではないですかね。ゴブリンとワーウルフも、ジャイアントも、敵ではないことを証明してしまいましたし」

「となると、待ちぼうけ?」

「いえ、あの露出度の高い女が来る可能性があります」

「「言い方」」

 

だって露出度高かったんだもん……。

 

「では、幻術使いの女、と。まあ、本質はそこではないように思いますが」

「本質?」

「……二人は見ていないからわからないかもしれませんが、あの露出度の高い女の格好を見て、異世界で馴染みのある架空の化け物と、雰囲気が近いな、と思ったんです」

「……それは?」

 

すなわち、夢魔。

 

「夢魔……なるほど……」

「すみません、わかりません。それはどういった種族なのですか、リリアナ様?」

 

「私が以前いた世界に伝わる、架空の化け物の一種です。その名の通り、人の夢に入り込み、精神を弄ぶ魔、として語られます。特に性的な夢を見せて精力を吸い取る、という性質が有名ですわね」

 

勇者(おれ)くんもうなずく。きみも馴染みあるよね。

 

「勇者様に強そうですね」

「ヴィサーラ、世の中に言っていいことといけないことがあるのよ?」

「知っていますよ?」

「気にしてませんから……」

 

さておき、その性質と、幻術使いの女。どうも一致するところが多い。なら、精神攻撃系の手段で我々を襲ってくるのではないか、と思うわけ。

 

「……幻術使いの女が夢魔であれば、間違いなく精神的弱点を突いてくる。勇者様は殺しの恐怖を克服したばかりですし、恋している、というのも弱点になりうる。私に関しては、六年前の出来事を突かれると、どうしても冷静にはなれません。……ヴィサーラ、あなたは?」

 

ヴィサーラは一瞬考え込んだ。

 

「私は特に……いえ、強いて言えば、リリアナ様のお眼鏡にかなわなくなること、でしょうか。でもそれが攻撃に?」

「なりますわね。ですから、心を鍛える。難しいけれど、それが今やるべきことですわ」

「心を、鍛える……どうやって?」

 

本当にどうするんだろうね。無計画です。

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