今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第29話

「その部下さん、私たちで勝てる相手ですか?」

「ヴィサーラ!」

 

おっ、ヴィサーラも幻術使いの女から情報を絞ろうとしてるね。いいぞ。

 

「そやねえ、みたとこ十回やり合ったら十回、そっちが勝つんやない?」

「あら、だいぶ弱いのでは」

「けど、いかんせん上の言うことやからねえ」

 

上、かあ。

 

「上の言うことに文句はないの?」

「ぜーんぜん。これっぽっちも。負けるけど、負ける以上の価値があるんやと、わちきは信じておりますえ」

 

そう言って、女はころころと笑う。そして、そのまま姿を消した。

 

「……なんなんだ、あいつは」

「敵のはずですけどねえ」

 

イグナスが顔をしかめた。

 

「十回やり合って十回勝てる相手を、わざわざこちらに差し向ける、か。しかも、あの女はそれを『負ける以上の価値がある』と評した」

「つまり、僕たちが勝ったところで、こちらに不利になる要素が潜んでいる、ということですか」

 

勇者(おれ)くん、珍しく理性的で頭が回るね。いや、こんなもんか? 腐っても私なんだし。

 

「ええ、その可能性が極めて高いですわ」

「考えても無駄ですよ」

 

ヴィサーラがバッサリと断じる。

まあ、「こちらが勝っても不利になる」というのはあくまで想像。実際に不利になるかはわからない。

 

「目の前の敵を倒して、それから考えるしかないと?」

「斥候役としては失格の発想ですが、そうです」

「ヘーゼル嬢、敵の傾向の予測はつくか?」

「アレの下、ですわよね……正直、どのような敵もあり得るかと」

「ほう?」

 

イグナスが続けろ、と言う顔をする。

 

「第一に、あの女と同系統の幻術使い、あるいは魔法使いである可能性。第二に、全く正反対の力技でくる可能性。第三、本人は計略や策略を弄する、裏方。どのような敵でも、ありえますわ」

「なぜそうも言い切れる?」

「『上のやることに文句がないから』ですわ。あの手の輩は、上から言われたことをなんでも柔軟にこなす。故に、なんでもありえる、と推定できます」

「なるほど、理屈だ」

 

納得いただけたようで何より。

このうち最もありえるのは、力技の相手。他の類は十回中十回、と言い切れるほどの戦いをしない。魔法は対応を誤れば致死なわけだし、策略はさまざまな要素が不確定に襲いかかり、その全てを私たちが跳ね除けられるとは限らない。しかし力技の相手なら、実力差がそのまま結果になる。十回中十回とは、そういうことだ。

 

「ただ、ワーウルフ以外の獣人種、が一番ありえますわね」

「おい、そんなものがいるのか?」

「想像力、ですわ」

 

私は自分のこめかみをとんとん、と叩きながら、イグナスに笑顔を向ける。

 

「私たちの知る限り、魔族がこちらに送り込んでいるのはゴブリン、ワーウルフ、そして巨人種(ジャイアント)です。しかし例えば、虎や熊のように、狼よりも強大な獣の特徴を持つ種族がいる、というのは、それほどおかしくないのでは?」

「虎や熊か……」

 

イグナスが唸った。

 

「確かに、ワーウルフの延長線上の魔族なら、個人の戦闘能力がそのまま結果に結びつくだろう。ヤツが十回中十回勝てる、と言い切ったのも納得だ」

 

そして、ヴィサーラが話を変える。

 

「上の言うこと、が気になりますね」

「本来魔族というのは、我々の領土、肥沃な土地を求めて宣戦布告してきた存在だが、いまいちその実態がわかっていなかったからな」

「領土以外に、何か目的がある?」

「と、見るのが妥当だろう」

「……ですが、それ以上は推定できかねますね」

「ああ。結局、やってくる敵を倒す。それしかない」

 

防戦かー。数が互角なら、有利なんですけど。

 

「いかんせんレベリアの騎士団、兵たちは消耗しすぎている。さっき話を聞いたら、今の正確な数は1593人だそうだ」

「対して相手方は、相変わらず一万五千ほどの数を投入できるでしょう」

「勇者様が多少削ったとはいえ、一人で倒せた数には限度もありますからね」

「一万五千の兵に、あの女の部下か……だが、負けることはない、か」

「兵は私が魔法でどうにかします。女の部下をまかせたいのですが、ファーロン副団長と勇者様、ヴィサーラさんはよろしくて?」

「任せろ」

「大丈夫です!」

「不安ですけど……」

 

ヴィサーラが不安そう。うんまあ、イグナスとバカ防御力の勇者(おれ)くんと並べたらなあ。

 

「大丈夫だと思いますわよ。あの【隠密】があるんですもの。撹乱してやればいいのです」

「……通用しますかね?」

「大丈夫ですよ」

 

あの時のゴリマッチョ団長と騎士の皆さん、『あれ急にどこいった?』みたいな顔してたもん。よほど格上でなければ通じると思うよ。

 

「あとは、相手の指揮の引き継ぎがどのくらいかかるか、ですわね」

「それがそんなに大事なんですか?」

 

勇者(おれ)くんが尋ねる。いや、勇者(おれ)くんもこのぐらいわかっといてくれよ。

 

「ええ、単純に指揮の引き継ぎが遅れれば、攻めてくる時期が遅れる。そうすれば、我々が準備に使える期間も増える。【罠魔法】の大量設置で、雑兵を削れるかもしれません」

「【罠魔法】なんてあるんですね!」

 

ゴブリンとワーウルフ相手に有効な魔法を、『生物の接近』を起動トリガーにして設置するのが今回の【罠魔法】だろう。

設置場所、どうしようかな。

 

「相手の進軍経路を見定める必要がありますね」

「それなのですが、このあたりはなだらかな丘になっています。そこを取られており、もはやどこから攻めてきてもおかしくありませんので、まずそれ(進軍ルート)を限定する仕掛けを作ります」

「そんなことができるのか?」

「できますとも。私はリリアナ=ヘーゼルですのよ」

 

心の底から疑問だという顔をする三人。

なんだよう。信じろよう。

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