今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第3話

アレが私である場合、アレの体験した事実が私の記憶にないのはおかしい。ので、アレが今の私に至るまでに考えられる物語パターンはおおきくわけてみっつある、と思う。

 

1、同根の世界から来ているが、記憶を失って現代世界に送還される説。

私は高校生当時そりゃあもうとてもボンクラ男子高校生してた。なんとなく不登校気味になって学業についていけなくなり、大学へは行かず学校見学した後自己推薦文書くだけで入学できる某四年制専門学校でやはりボンクラ専門学生をしていた。そしてこの記憶が異世界パゥワーによる記憶偽装・世界改変であってもあんまり不都合がなさそうなところがきになる。そんなのがこの世界にあるかは謎だが。

 

2、外見こそ似通っているが分岐地点がかなり前であり、お互いに完全パラレルである説。できればこれであってほしい。

 

3、世界が同根であり、不確定未来の最新時間軸が今で、奴が元の世界に帰ったらそれを起因にして私に存在しない(する)記憶がブワッと生えるパターン説。このパターンが一番嫌だな。私とアレは同一人物だが、自分に発情して恋してる記憶なんていらん。いや、確かに可愛いんだけどさあ私。なんなら自分の美しさに身惚れて夜に……ごほん。

 

うーん。希望でいうと2が一番無難で安心して暗殺もできるのだが、3の可能性が否定できないんだよな。だから何もできない。なんなら最大限生存できるように力を尽くしてやる必要があるし、それには勇者本人にその尽力を知られる可能性だって考慮しなきゃいけない。

 

やだよー。「初見付き合ってくださいって言ったのを断ったのに、政治的にも物理的にも俺を守ろうとしてくれてる…キュン…!」の未来が見えるよー。だって俺だもんー。

こっぴどく振ればいい、というわけではない。むしろ私に惚れてる状況を利用する流れができつつあるので、なんとか明確に振らないように振り回しつつ籠絡させて操ってくれ、というオーダーが出ている。やんなるね。

 

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悩みがあっても日常生活はやってくる。

今日は仕事でぽくしゅり(お薬)づくりだ。

 

この世界、ちょっとばかし安っぽい作りのメガネはあるが、まだ顕微鏡がない。なので微生物は発見できておらず、ウイルスなんてもってのほかだ。自動的に抗生物質なんてものも未発見で(民間療法でカビを利用する、みたいなのはあるっぽい)、原理不明瞭の魔法的効用で傷の回復を早めるポーションが主流。

 

そのポーション作りに欠かせないのが魔法使い。

魔力を受け取る力があるとされる薬草を、携行用皮袋に入れた水にひとつまみ。そしてその草入り水に向かって「ポーションになれー」とむにゃむにゃと念じる。するとみるみるうちに色が変わって…テーレッテレー!

軽傷治癒ポーションができる。あとは飲みやすいように草を取り除いて完成。これは飲んでもよし塗って(かけて)もよしである。あ、傷は治るけど病気は治りません。病気治癒ポーション、今のところ市場流通してないんだよね。

 

このように、魔法は基本的にイマジネーションと意志の力が反映される、理論であって理論でない世界である。INTやEDUじゃなくてWILなんですね。魔法使い個人の素養に魔法行使の全てがかかっているので、優れた魔法使いは国が囲うんですねえ。粗悪な魔法使い? 討伐対象です。

 

そしてこれを朝ご飯後から夕ご飯の時間まで、体感10時間ほどやる。休憩は適宜とって良いのだが、ポーション作成一本あたりにかかる時間は把握されているし、おちんぎんはポーション作成量に対する出来高払いである。なのであまりサボれず、激務(当社比)である。草くさい部屋でじーっとこれをやるのは本当に飽きる。

ちょくちょく部屋を出て息抜きしてもいいが、うまいこと集中してやれればそれだけお金になるので痛し痒し。……今日はどうしようかな。

 

勇者くんは現状、見せ物としての質はあんまり良くない。奴の訓練はいま素振りと持久走、筋トレが基本だ。なので本当に見る意味がない。むしろ見に行って「俺に気があるのかも」とかされたらやだし。

 

よし、今日はポーション作りに励もう。

 

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ポーションを作ると、軽傷治癒ではなく重傷治癒ポーションになることがある。軽傷治癒ポーションはかなり青いのだが、重傷治癒ポーションは緑がかった青になる。

256色のグラデーションとかではなく、「軽傷治癒ポーション色」と「重傷治癒ポーション色」なので、判別は容易だ。

重傷治癒はもちろん高値買取してもらえるので、たくさんできればできるほど嬉しい。

 

……だが、今日。判別は容易なのだが、いつもの(というか、勇者召喚前の)自分と比べて重傷治癒ポーションができる割合が悪いのが一目でわかる気がする。

 

あれ? 念じ方はいつもと一緒、草を【鑑定】しても特に質の変化はなさそう。……となると、ストレス?

 

うーん、どう考えても俺のせいです。本当にありがとうございました。

 

「怪我人が出たぞー!」

「ポーションもらってこーい!」

「今日確かリリアナちゃんの当番だぞ!」

 

……はあ。まあ怪我したのが俺じゃないのはギフト的に確定的に明らかなんだが、まさかポーション受け取り役に俺が来るとかないよな?

 

どたどたどた。ごんごんごん。

 

おいこの品のない足音とノックは。

 

「リリアナちゃん!ポーション頂戴!」

 

ボサボサ髪とドブの瞳。俺じゃん。くすんだ肌が汗でテカリ、そのくせ俺に会えた幸せで顔面ニッコニコに変化。俺自分のその顔嫌い! コンプレックス!!

やな予測が当たっても嬉しくねえ!!!

 

「はい、どうぞ」

 

なのでさっさと軽傷治癒ポーションを押し付けて戻ってもらう。

うんうん、最低限の接触で済ませんのが一番いいよね。

 

「リリアナちゃんかわいいなああ!」

 

声でけえんだよ。ドア越しに聞こえてんぞ。はよいけ。

ていうかこの一瞬でまたガチ恋度とか上がった?まじで?

めんどくさ。

 

ポーション作成にもどる。

 

水とぽとぽ。草ぱらぱら。念じむにゃむにゃ。青色。

水とぽとぽ。草ぱらぱら。念じむにゃむにゃ。青色。

水とぽとぽ。草ぱらぱら。念じむにゃむにゃ。青緑。

水とぽとぽ。草ぱらぱら。念じむにゃむにゃ。青色。

水とぽとぽ。草ぱらぱら。念じむにゃむにゃ。青緑。

 

……小説かなんかだったら作者によっては文字数稼ぎしてそうだな、ここ。

まあこういうリピート動作をわざわざ同じ文字列にするのって、小説技法として原則カスなんだよな。

繰り返すことでイメージを強く焼き付けたいとか、そう言う意味でわざとやるならいいかもしれないけど。

 

青緑。

青色。

……青色。

…………青色。

………………青色。

 

うーん、やっぱ微妙。十連ガチャでSR三つ相当って考えたら全然喜べねえ。このやり方でSSR(致命傷治癒)見たことないけどさ。

意識すると重傷治癒ポーションができる気がしなくなってきたので、たぶんそれもポーション作成結果に悪い影響を与えている。

なんもかんも俺が悪い。私は悪くない。

 

気晴らしに魔法で遊ぶか、外に出るとなんか追われそうだから。

転生してからこっち、娯楽はあまりない。

だってあなたリバーシが全世界的大ヒットしてる世界ですよ。ニンテン◯ースイッチ2とかゲーミングPCで遊んでたゲームが恋しくてたまりません。

魔法で立体投影映像を産み出し、昔遊んだゲームを限定的に再現する。別に操作できるわけではなく、音もない。

ロボットがすいーと地上移動、あわせてぴょんこぴょんこ小ジャンプしながら銃やミサイルを撃つ。このシリーズ、ちょうど俺があのぐらいの歳に対人対戦初めてやったよな、と思いながら。効果音欲しいなー。あの最強武器の独特の発射音、クセになってるんだよなー、と、ひとしきり火星人の血を滾らせた。うーん、郷愁。

 

郷愁で思い出したが、アイツが高一ぐらいなら初ネット恋愛の女の子とまだ続いてる時期のはずなんだよな。恋愛的にどうしても意識されてなかった気がするし、縁は切れたけどあの当時ならまだ「私リアル彼氏いるから」で玉砕するには早いはず。あと召喚時に冬服ブレザー着てたけど、夏頃以降なら、ペンケースに入れられた「明日中庭に来てください」呼び出しラブレターを学校休んだ日に見つけるとか言うオモロエピソードも保持してるはず。……うーん、昔のことは懐かしいけど、思い出す原因が本人降臨というのがなんともな。アイツがいなければ俺はそこそこ安穏と暮らしていたはずだったのに!

 

いかんな。気晴らしのはずが奴への憎悪をたぎらせる結果になってしまった。

ポーション作成にもどろうか。

 

水とぽとぽ。草ぱらぱら。念じむにゃむにゃ。青色。

 

はー……こまった。

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