今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第30話

「レベリアの皆様は、この陣地を引き払う準備をしてくださいませ」

「馬鹿な! 我々にこれ以上下がれというのか!?」

「逆に、ですが。陣地があれば守れると?」

「ぐむむむむ……」

 

守れんだろ。十倍の数の差は、通常の戦術では覆せない。

しかし一騎当千の個がいれば、その限りではない。

だが一騎当千の個は、周りと合わせる集団戦術に向かない。要するにここにレベリアの連中がいてもらっては困るのだ。

 

「指揮官殿、あなたは今、この陣地を守りきれるとお考えですか? 一万五千の敵兵に対し、残存兵力1593人。差は十倍です。まともに戦えば、この陣地はレベリア人の墓場になるだけですわ」

「ならばどうするというのです!」

「逃げてください。あなたがたの救援の軍の位置まで、ずっと」

「馬鹿な! そのようなことを許せば、レベリアは……」

「友邦のために、私たちは来ました。レベリアでどうにかならない、なら、ダイスロの力を頼る。それでいいではありませんか」

「そのような恥、晒せるものか!」

 

思ったより頑固だなあ。いや、愛国心か。それそのものは悪いことじゃないんだけど、状況がよくないよ。

 

「ですが、ただ死ぬよりマシですわ。兵たちに聞いてごらんなさい。名誉のために無駄死にするか、私たちに任せて生き延びるか。騎士はともかく、ほとんどの兵は、後者と答えると思いますわよ」

「ぐむむむむむむむ」

「私たちに任せて退くのであれば、敵は一兵たりとも通さず、ここは守り通してみせます。我が母、レジーナ=ヘーゼルの名に誓いましょう」

「親の名、しかもレジーナ様に誓うとは……本気か……」

 

本気も本気、大真面目に言ってる。だから早く退く準備をして欲しい。1600人と、ここにいる非戦闘員が大真面目に逃げるなら、それなりに準備が必要だし。

 

「いいですか、相手が攻めてくる時分より少し前に、この陣地を明け渡し退きます。そしてあなた方の追撃に来る隊、これをまず我々で撃破します。それと同時に、この陣地ごと敵本隊を叩く。シンプルですが、これが一番有効かと」

「できるのか」

「できるのか、ではなく、やるのですわ」

 

レベリアの指揮官たちの葛藤の末、話は決まった。

 

「ということで、敵方が追撃に3倍の数を出すとして、概数5000ほどの追撃をファーロン副団長と勇者様で全部倒してくださいませ」

「ごせんほどを」

「ぜんぶ」

 

勇者くんとヴィサーラの反応、おもろ。

しかしイグナスはちょっと冷静だ。

 

「流石に、【罠魔法】で減らすよな?」

「ええ。逃走ルートとしてはまっすぐ本国へ逃げる予定、と聞きました。そのルートに【罠魔法】を仕掛けて数を減らします。幸い魔法使いが若干名いるようですから、それらにも【罠魔法】を教えてあらかじめ仕掛けてもらおうかと」

「どのくらい減らせる?」

「未知数ですが、まあ半分くらいになるかと」

「2500か……いけるな」

 

イグナスは勝算ありとしたなら、まあいけるだろう。

 

「イグナスさん、本気ですか」

「一人頭1250だ、いけない理由がない」

「僕自信ないですけど……」

「君は雑兵の攻撃では傷一つつかないから、時間無制限ならなんとかなるだろう」

「敵が逃げたら?」

「【挑発】と【威嚇】で逃すな」

「あ、そういう使い方していいんだ……じゃあできます」

 

前衛は頼もしいねえ。

 

「リリアナ様、私は」

「もちろん敵を観察して、報告する役目だね」

「立派に成し遂げてみせます!」

 

ヴィサーラもokと。

 

「じゃあ、敵が予定通り動くよう、仕掛けをしてきますわ」

「仕掛け?」

 

私にしかできない単独行動の、はじまりはじまり。

 

----

 

【姿隠し】【音消し】【匂い紛れ】隠密行動三点セットの魔法をかけて、駆ける、駆ける。いざ進めや敵陣。

とはいえ、敵陣には隠密対策が施されているはずだ。【遠視】の眼鏡と合わせて、まずは見つからないであろう距離からの嫌がらせを実行するつもり。

レベリアの陣地から3キロも進めば、いた。いるわいるわ、丘の上にうじゃうじゃと。

ローブ姿の奴らも少なからず見えて、バフ付きで一万五千を動かす気のよう。

空を見れば、雨が降りそうな天気。

じゃあ、アレしかないな。

 

「【雷雨よ降り注げ】」

 

ぽつぽつと雨が降り出し、それはほどなくざあざあと間断なく降り注ぐようになる。ごろごろと雷鳴も轟きはじめた。

私ほどの魔法使いになれば、天候操作も余裕ってね。

 

「からの〜【招雷(しょうらい)】〜」

 

がしゃん。

【遠視】で見ればローブ姿の魔族がまとめて黒い粒子と化している。あはははは、敵陣に意図的に落とす雷、サイコ〜!

普段氷系統しか使ってない上、私が天候操作できることは秘中の秘。魔族ども、自然が牙を剥いたと勘違いしてくれることでしょう。まあ、隠密性が最高な代わりに、効率が悪いんだけど。

 

「じゃあ、戻りがてらでっかい【泥の沼】を作るか〜。ほい、ほい、ほいと」

 

そしてさも「雨で出来ました」と言わんばかりの進軍ルートを削る小細工。ゴブリンとワーウルフはわりとアホなので、こういう荒れた地形をすぐ嫌がる。すると進軍ルートが限定される、というわけ。

 

限定した進軍ルートを辿らせるが、レベリアの陣地までは罠を仕掛けない。「この辺りの地形はそういうものだ」という意識をつけさせてから、陣地から先のレベリアの撤退ルートで、同じように限定したルートを通らせ、罠にかけて殺す。

うん、理論的には完璧。あとは想定した通りにアホかどうかだけど……まあ大丈夫、だろう。

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