今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。 作:一宮 千歳
待ち続けるうち、陣地跡の魔族共の旗の数が120を超えた。つまり、およそ12000の数が
ライオン獣人も見かけた。オスが1、メスが…えーと、11? メス多いな。
ここまで集結してるなら、予定より早いが、もう打つか。はい、【人罰・震雷】どーん。
電光が、陣地跡に突き刺さる。そして突き刺さった電光が枝分かれし、四方八方に広がり、その場にいるゴブリンやワーウルフ、そしてライオン獣人を無差別に焼き尽くす。遅れてがしゃん、とも、ずどん、とも言い難い音が響き渡る。
響いた音が先か後か、影響を受けた魔族は黒い粒子と化す。うーん、旗の数だけみると残りは40。半分以上が削れたね。しかも、なんと、オスのライオン獣人はもはやどこにも見当たらない。たぶん死んだ。メスのライオン獣人は7匹残っているが、まだ何が起きたのか理解できてない様子。戦う前に天災(まあ本当は人為的にやったが)で味方が消し飛んだ、それを理解するまでどのくらいかかるものか。そして、立て直せるか。
思わず笑いそうになった、いや、笑ってるかもしれない。これだよこれこれ。圧倒的な理不尽を押し付ける。これがやりたくて魔法を覚えた、という面もある。人がいるところでは口には出さないが。
しかし、いまだに合流し損ねていると思しき3000と合わせて、残りは7000。ちょっと多い。惜しむらくは、これなら連中が丘にいる時にやっておけばよかったってとこか。とはいえ、【人罰・震雷】もう一発は撃ちたくない。それで起きることがこちらに都合が良すぎる。まあ今の時点で都合が良すぎるけど。罠魔法で2500、イグナスと勇者くんとヴィサーラで2500の予定を変えないなら、私のノルマは2000ある。うーん、なかなかだぞ、これ。とりあえずイグナス、
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「こればっかり言ってる気がしますけど、戻りましたわ」
「ヘーゼル嬢」
「リリアナさん、無事でしたか。
「それなのですけど、敵に直撃したのを見届けてきましたわ」
「「敵に!?」」
「大規模魔法を用意していたところでしたが、おかげで必要なくなりました。カルチケ聖教国であれば、天の裁きだと言っていたことでしょうね」
思い切り嘘をつく。味方にも天候魔法は秘密にしておきたい。敵を騙すならまず味方からってね。
「ヘーゼル嬢、その、本当に君の魔法ではないんだな?」
「違いますわ。なぜそんな疑いを?」
「魔法でなんとかする、と言っていた」
ちっ。乙女には秘密にしたいことの一つや二つはあるんだぞ。そんなんだから29でまだ独り身なんだ。ブーメランざくー。死にそう。いいもん、今世は美少女だから。
「仮に私の魔法だとしても、乙女が秘密にしようとしているんですのよ。察してくださいませ」
「ぐ」
なんかクリティカルヒットしたみたい。ふむ、今度これでイジるか。
さておき。
「雷で、敵の数はほぼ半数まで減りました。残りはおそらく、およそ7000」
「ななせん……」
「もしかすると全数を追撃に出してくるかもしれませんわね」
「となると、想定より2000多く倒さねばならんか」
「とはいえ、敵は今、混乱しているはずです。オスの指揮官はおそらく死にました。メスライオン獣人たちが、冷静に判断を下せるかどうか」
そう話していると、ヴィサーラが戻ってきた。
「敵、動きました。全数およそ7000でレベリアを追撃にかかる模様。ライオンの獣人の数は10、そのほかローブ姿の魔族が200」
「……混乱をどう収めたのかしら」
「それが、メスライオン獣人の一体が吠えたと思ったら、それだけで全体が統制を取り戻して……」
「名目上の指揮官はオスだったけれど、実質的な指揮官はそのメスだった、ということね……」
ライオンならそういうこともありえるか。面倒くさいなあ。
「まあ、五千でも七千でも変わりませんよ」
「本当かあ?」
イグナスが疑いの目を向ける。本当本当。
「追撃戦で複雑な陣形を組むのは難しい。相手が全力で逃げてるわけですからね。そして兵の足の速さもどう頑張っても均一にはならない。だからどうしても間延びした縦陣になります。ここはいいですね」
「まあ、理屈ではそうだな」
「私たちはそれを横から突いて、一撃離脱します。目の前の敵だけをとりあえず殺し、逃げる。相手の主目的は追撃ですから、すぐに逃げる小勢に拘ってる暇は本来ないはずです。そこをつく」
「別動隊を出されたら?」
「そこで罠、というか私の魔法です。私たちの動きに誘導された敵を粉砕する魔法なら、【氷の強矢・貫通】とか、いろいろありますよ」
「理論の上では完璧だが……」
まあ、理論の上で完璧なだけで、実際はうまくいかないこともあるだろう。そこを吸収する壁が
「ゴブリンやワーウルフの攻撃では傷ひとつつかない勇者様がいらっしゃいますので。最悪、敵の群れに突っ込んで【挑発】してもらいます」
「急に策もクソもないな……」
「それだけ《勇者》が強力なのだけれど、傷を負わないにしても本人には負担でしょう? あまり実行しない方向で考えてはいます」
「リリアナさん……!」
あっやべ余計なこと口走った。目がハートだ。ええいキモいキモい。
「ヴィサーラさん、ライオン獣人について、わかることはありますか?」
「いえ、遠目で見ただけですので。『吠えた』ことについては、アレが魔族特有の魔法である可能性もありますが、単なる統率力の発露ではないかと」
「同じことを他のライオン獣人ができる可能性は?」
「わかりませんが、特別なことをしているふうには見せませんでした。前線指揮官のよく行う大喝として考えれば、可能性は高いかと」
ふむ。
「負ける以上の価値、というのは、ライオン獣人の実戦の指揮能力の確認、ではないか?」
イグナスが顔を曇らせる。
「そうかもしれませんが、どちらにせよ、殺すのみ、ですわよ」
「わたしも同意します……来ました、先頭、ワーウルフ! やはり縦陣です!」
わたしもそちらを見れば、ワーウルフたちは追撃の勢いを失わないために、先頭の足の速い個体によって陣が引き延ばされ、一本の細い線のようになっている。ヴィサーラの報告通り、ある程度の統制は取れているものの、効率的な攻撃には向かない縦陣だ。
「さあ魔族どもに、狩られるのはどちらか思い知らせてやりましょう。皆殺しです!」
「血気盛んなリリアナさんも素敵だ……」
「素敵ですね……」
ええい、気が抜ける。ヴィサーラも乗るな。