今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。 作:一宮 千歳
まあ、ゴブリンやワーウルフごときが気合を入れ直したところでなんだって話だが。
【氷剣・絢爛】は冴えに冴え、イグナスの援護もバッチリ。
ライオン獣人が前に出てこない限り、負けはない。
そのライオン獣人も、2、3体が前に出てくる気配があったので、先手を打って【氷の強矢】のヘッドショットで始末した。なんか言おうとしてたくさいが、どうでもいいことだ。
頼れる指揮官たちが相手の攻撃で即死する。魔族にとってその精神的ダメージは甚大なようで、ゴブリンとワーウルフは及び腰になった。
「今です! 逃さないよう、【挑発】を!」
「あ、は、はい!」
ライオン獣人のカリスマなりなんなりを失った結果、今は雑魚どもに【挑発】が通るみたいだ。じゃあ、逃げられない連中はゆっくり始末するか。
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結局、メスライオン獣人は指揮能力こそ高そうではあった。だが、私のようなスーパーつよつよ魔法使いへの対抗策を持っていなかったために軍ごと全滅した。……いや、一匹とローブ集団は逃げたのか。
酷かった雷雨も上がりつつあり、一息つきたかった私たちは、下がらせたレベリアの陣に合流した。
が、そのせいというか、それ以前ではあったのだが、戦後処理が面倒くさいことになった。
よその国から勝手に救援に駆けつけて、勝手に下がれと命じて、勝手に敵を全滅させてしまった、というのは十分に問題で。レベリアの上のひとたちとお話が発生することになった。
まあ、それはいい。だってイグナスに丸投げしたから。
した結果、なんというか、信じがたい結果になったのだ。
「『救援など不要だった、帰れ』〜?」
「ああ、なんでも『一万五千の敵が本当にいたか疑問であるし、救援など要らなかった』だそうだ」
「その言葉、自身の軍も馬鹿にしているのでは?」
「僕も言ったさ。しかし『一万五千の魔族などいるはずがない。魔族に
「……同じ質・量の軍がまた来たらどうするんでしょう?」
「『減った分に増して数を増やす、問題にならん』だとさ」
イグナスが肩をすくめる。
「僕でも分かります、いくらなんでも無茶苦茶だ」
「レベリア、馬鹿なんでしょうか」
ヴィサーラが身もふたもないことを言う。いやまあ、そうとしか言いようがないんだろうけどさ。
「馬鹿というより名誉や面子を気にしたのでしょう。もっとも、魔族相手にそんなものは通用しませんが」
「それを馬鹿と言います」
「ヴィサーラ、友邦だ、容赦してやれ」
「では、無能と」
「ひどくなってるからな?」
私はこの話はおしまいにしましょうと手を叩く。
「帰れ、というなら帰るだけです。帰還はどのようにすれば良いのでしょう?」
「……それが」
イグナスが言葉を濁す。ははーん。厄介ごとだな?
「街道を通って、歩けと」
「……正気ですか?」
まあ、レベリア内地は安全なのはわかってるんだけどさ。せめて馬車の一つも出してくんないかな。
「魔族の影響を受けてるようには見えなかったな」
「なんでそんな雑な扱いを受けなきゃいけないんですか、僕たち」
「一万五千を退けたのに、ですか?」
「逆だ。一万五千を退けたからこそ、だよ。四人でそれを成した事を、彼らは
「
イグナスは頷く。
「ヘーゼル嬢は人も殺せる、とあちらは考えていると思うよ」
「まあ、
「そんな」
「失礼ですね。人間同士争うなんて意味のないこと、我が国がやると思っているんでしょうか」
「自分がやろうと思っていることは、やると思うものじゃないかな」
「……つまり、レベリアは対魔族だけでなく、対人にも戦争を仕掛ける気があると?」
「想像だけどね。ま、その予定は大幅に伸びただろう。何せ魔族に散々に打ち果たされてるからね」
戦力を減らした先からさらに戦線を広げようとはしないはず、か。
「……あと根本的に、私たちを危険だと思うなら領地を歩かせるべきではないでしょうに」
「そこはヘーゼル嬢言うところの想像力の限界かもしれない。『まさか罪もない市民相手に何かしないだろう』ぐらいの」
「……馬鹿もここに極まれりと言ったところでしょうか」
ちょっと馬鹿馬鹿しすぎて頭痛いんだよな。
「……あんまりやりたくないのですが、【脚力強化】で来た道を帰ります? それなら1時間で済みますし」
「いいのか?」
「あまり長居したい国ではないことは分かりましたし」
それに、レジーナ母様がよっぽどのことがなければ関わるなと言ってたのもこういうことだったのでしょうね、とつけ加えれば、三人とも苦笑するしかなかったようだ。
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帰路の森の中。イグナスがスピードを落とし、変な事を言う。
「待て、何か音というか、声がしないか?」
「声ぇ? 全然何も聞こえませんよ」
「いや、僕には聞こえる。子供の泣き声のような……」
気にしてみると、確かに聞こえる。
「私にも聞こえますわ。方角までは分かりにくいですが……」
「左手方面だ。北だな」
「罠かもしれませんよ?」
「そうではないかもしれない。それならば、放って置けない」
「正義感逞しいですよね、イグナスさん」
「人として当然のことだよ、ヴィサーラ」
泣き声のする方向に向かうと、
だいたい小学校上がりたてぐらいだろうか。
赤い髪のストレートロング、腰くらいまであるかな? 泣いてて瞳の色はわからない。あと服がボロ切れ。捨て子か? いや、こんなところに子供捨てるか普通?
「えーん! えーん!」
泣いている子供は庇護欲を誘うなあ。
まずイグナスが近寄ると、少女はさらに大きく泣き出した。
「えーん! えーん! くちゃいおじちゃんが近寄ってくる!」
「く、くちゃい……おじちゃん……っ!」
子供の心無い言葉に崩れ落ちるイグナスを尻目に、今度は
「ほーら、おにいさんはくちゃくないよー?」
「おじちゃんもくちゃい!!! びえー!!!!!」
「おじちゃん……」
勇者くんも一撃ノックアウト。男がダメなのかな。
「ヴィサーラ、いけそう?」
「こどもこわいです。何するかわからない。合理的じゃないです」
「じゃあ、必然的に私か……」
ため息をつきながら少女に近づく。
「ほら、お嬢さん、どうしたのかしら?」
私が声をかけると、少女はぱあっと表情を明るくした。あら、桜色の目。
しかし瞳が綺麗だなあと思う間もなく、信じられない言葉を口にした。
「ママ!」
なんて?
コメディ「びっくりしたよね、急にシリアスくんきちゃうんだもんね。クリスマスは二人でイチャイチャ……しよ?」