今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。 作:一宮 千歳
美少女は目立つが、複数いるとさらに目立つ。
超絶かわかわ夢魔少女たるヴェンちゃんと手を繋いで歩く私(たち)は、王都でとても目立っていた。
「おうきゅう! すごい!」
「あとで王宮にもむかいますからね」
「ヴェンは魔族ですよ? リリアナ様、本当に王宮に連れて入るんですか?」
ヴィサーラが不安そうに囁いてくるが、杞憂だよ。
「これまで敵対していたゴブリンやワーウルフとは姿形が全然違うでしょう? しかも弱そうな少女の姿で、実際にとても弱い。安全ですわ」
「それは、そうかもしれませんが……」
まあヴェンちゃんに問題があるとしたら、「魔族である」というところだよなあ。人間の子供と変わらない外見をしているが、【鑑定】されると種族が夢魔、つまり魔族だとバレる。
なので王宮の中には基本入れてもらえない、とわかっている。中に入れてもらうためには無害である証明が必要だ。
どうしようかなー、と思っていると、王宮方面から人がやってきた。マギータおじいちゃんだ。お昼でも食べに出てるんだろうか。
「おや、偶然ですな。……リリアナ嬢、その
「北の、レベリアとの国境の森で拾いました魔族ですわ。人間に友好的であり、懐かれたので、娘として育てようかと」
「魔族!? リリアナ嬢よ、【正気に戻れ】!」
「正気ですわよ!」
判断が早い。でも正気だから効果ないよ。
ヴェンちゃんはぽへーとした顔をしてる。戦闘? ならんならん。
「なるほど敵対心はない、では、【
【破幻】は幻術看破の魔法だが、もちろんそんなものにもかかっていない。そして【鑑定】されたので、マギータおじいちゃんにはヴェンが夢魔であることはバレた。
「どうです?」
「リリアナ嬢、この夢魔という種族について、何か知っておるのかの? じじいもはじめてみるので、なんともいえぬ」
かくかくしかじか。マギータおじいちゃんも私が異世界転生者であることは知っているので、さらっと夢魔について説明した。
「その生態は、じゅうぶん危険ではないかのお……?」
「僕もそう考えてはいるのですが、ヘーゼル嬢が聞かず」
イグナスが口を挟んでくる。うるさいな、くちゃいおじちゃん一号のくせに。二号は
「種族特性が危険でも、私が無害であるよう教育してみせますわ」
「……じじいだけでは判断できかねますな。陛下と宰相閣下に伺ってまいる」
「よろしくお願いいたしますわ」
「ああすまない、ぼくはマギータ翁と共に行く」
どうしたイグナス。
「何か気にかかることでも?」
「いや、マギータ翁に限って偏見の入った言い方をすることはないと思うが、一応彼女と共に時間を過ごした僕の意見もあった方がいいのでは? と思ってね」
「なるほど、道理ですわね」
「でもくちゃいおじちゃん、わたしのこときらいでしょ」
「嫌いではないが……好きと言うには、ちょっとね」
「わたしもくちゃいおじちゃんすきじゃない! いっしょだね!」
イグナスはもんどりうって倒れた。王都一の面白イケメンの座を欲しいままにできそうだな。
そんなイグナスをマギータ翁がずるずる引きずっていき、後には私、ヴェンちゃん、ヴィサーラ、
「さて、当初の予定通り、ヴェンちゃんの服を買わないと。今の格好は、街を歩くのにふさわしくありませんものね」
「ご案内します」
「おようふく!? わたし、
「めー、ですよ」
「しゅん……」
歩きながら話をする。きわどい服を要求するのは夢魔の特性だろうか。
私としてはむしろヴェンの肌面積はゼロにしたいところだが。
「ごめんねヴェンちゃん。でもね、肌面積が大きい服は、いけないおじちゃんを引き寄せるからダメなんですよ」
「
難しい言葉知ってるねえと頭をなでなですると、きゃはー! とヴェンちゃんのテンションが上がる。うんうん、よきかな。
「ヴェンの育成方針は王都一の淑女、といったところですか?」
「いえ、ヴェンちゃんには自由に育ってもらいたいです。最悪の想定として、ダイスロに住めなくなるほどでなければなんでもよし、の方針です。まあ、独り立ちするまでは気になるところにはどんどん口出しいたしますが」
「自由を押し付ける歪んだ親にならないように気をつけてくださいね?」
うーん、ならないとも言い切れない。ヴィサーラはやはり鋭いところがある。
「ご忠告ありがとうございますわ。そうならないように見張っていただけますか?」
「ええ、リリアナ様のお望みなら。……なんだか、リリアナ様の旦那様になったような感じがしますね」
なんでやねん。
「ヴィサーラ、パパになるの?」
「なってもいいんですか?」
「かもなくふかもなく……」
どこから突っ込めばいいんだ。
「さておき、そろそろ目的の仕立て屋に着きますよ」
「……ところで勇者様、一言も喋りませんでしたわね?」
「いやあ、女の子が楽しそうにしてるなら、僕はそれに茶々を入れず眺めてるだけがいいかなって」
男が百合に混ざるのは犯罪なのでまあいい判断ではあるのだが、釈然としない。というか。
「衣服の話題、わからないから口を出したくない、というやつではないですか?」
「ぎっくー」
口で言うなよ。まあ明後日の方向を向いて口笛(ふけてない)しだしたやつはほっとこう。
「ほら、ここですよ」
ヴィサーラに続いて仕立て屋に入ると、気の良さそうな店主らしきおじさんがにこにこと迎え入れてくれた。
「ヘーゼルさんとその娘さん、勇者様を連れてきましたよ」
「娘さんだって!? 産んだのですか!?」
驚く店主らしきおじさん。産んだらこんないきなりデカくねえよ。てか産むと思われてんのかよ。
「孤児を引き取りましたの」
「へえ、孤児を……かわいらしいお嬢さんだ」
「ああ、ヴィサーラはよくうちに来てくれるんですよ。私服は全部うちで仕立てますなんて言ってくれてますね」
「品質が良く、しかし品質からすると値が安いです。王都で最も良い仕立て屋はここ『木の鋏』だと確信しています」
「木の鋏ってすごい名前ですわよね……」
「創業者、先先代がニホンジンでね。『仕事自体に派手さはいらん、が、看板にはインパクトのある名前が必要なんだ』って言ってたらしいよ」
「ああー……」
ちなみにこの店、この世界の仕立て屋には珍しく
「ああ、仕立て済みのものがたくさん。あれも売り物ですか?」
「ええ、ちょっとゆったりしてしまうと思いますが、『今すぐ服が欲しい』とか、布だけ見て『着ている想像がつかない』といったお客さんに好評ですね」
性根逞しいなあ。服を作って売る、と言うことに命、魂を賭けている。
「ヴェン、気にいるものはあるかしら?」
「これ!」
ヴェンが取り出しましたるはスリングショット。紐じゃん。
「ヴェン、服を選ぶのよ?」
「スリングショットは
だめだ、常識が違う。あと夢魔を盛大に自白するな。店主、「?」って顔してるけど。
「だめです。(こしょこしょ)……あの、アレ、売れるんですか?」
「(ひそひそ)……ここだけの話、結構な夫婦が夜『使う』そうで……そこそこ売れます」
あー。でもお前、子供が手に取れるところに置くなよ、と思ったが、子供はアレを服と認識できませんから、と引かない。さいで。