今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。 作:一宮 千歳
とりあえずヴェンちゃんを今のボロ切れからまともな服にしてやらにゃいかん。
『木の鋏』には既製品売り場があって助かるが、子供向けがあまりない。
ヴィサーラと一緒にありったけの子供服をかき集め、アレでもないこれでもないと弾いていった結果残ったのはふつうの白無地のワンピース。これはサイズ違いが何着もあったので、丈を合わせやすいのも功を奏した。着せられたヴェンちゃんは、デザインがきわどいとは程遠いせいかちょっと不満そう。
「むー」
「言っちゃなんですが、無難すぎますわね」
「無難が一番強いと言うものですよ、リリアナ様」
まあ量販店でめちゃくちゃモードな服売るわけにもいかんしな。それに、習作という面もあるのだろう。
「まあいいですわ、おいくら?」
「一から仕立てではない服は、
「大丈夫? 儲け、出てますの?」
「仕立て物を買ってもらえれば」
店主のおじさんはにこにこしている。まあそうだよね。
「では、
私の申し出に、店主が恐る恐ると言う感じで聞いてくる。
「……うちはそれほど出していただける品を作っておりませんが、よろしいので?」
「この機会に作れるようになればいいのです。ああ、とはいっても別に無理をしろ、と言うわけではありませんから。"今の限界"への挑戦、してみたくありませんか?」
私が挑発的に問うと、店主のおじさんは職人の顔つきになった。
「そこまで言われたら、やらざるを得ないではないですか。一着につき、一月いただきます。受け取りはいつになさいますか?」
「そうですわね、では一月ごとに受け取らせていただいても?」
「かしこまりました。となると、採寸も一月ごとに改めたほうがいいですな。この年頃の娘さんは、成長が早いですから」
「そうね、そうしましょう」
「では、一着目の採寸をいたします」
店主は奥に人を呼びに行った。多分女性に採寸させるんだろう。
多額のお金を払い、ぽんぽんと話が決まることに、
「リリアナさん、服に、それも自分のではないのに、そんなにお金を使うんですね……」
安心しろ、お前も25になったら原宿で上から下まで全部買いそろえて女に贈るようになるから。
「服にお金をかける、家にお金をかける、ご飯にお金をかける。この辺りは人の基本的な営みですよ」
「衣食住は、確かに、そうなんですが……」
まあ
「まあ、勇者様はまだお若いから」
「リリアナさんだって若いじゃないですか!」
あー。そうでした。
さて、奥から出てきたのは優しそうな若いおねーさんだった。私以上、ヴィサーラ以下って年頃。
ヴェンちゃんはおねーさんの指示に従ってばんざいしたりして採寸をすすめてる。かわいいね。
「いい子ね、ヴェンちゃん」
「むみゅー」
おねーさんがヴェンちゃんの頭を撫でると、嬉しそうに目を細めた。こっちまでにっこりしちゃうね。
にっこりしているとヴィサーラが近づいてきた。
「機嫌のいいところ失礼します。私も服が欲しいです」
「ヴィサーラさんも買えばいいじゃないですの」
「リリアナ様に買っていただきたく」
なんでだよ。
「だって私、ヴェンのパパですよね?」
「ヴェンちゃんが勝手に言ってるだけ……どころか、言われてないと思いますが」
「いえ、かもなくふかもなくと言う言葉はもらっています。ならば、実質パパと言っても過言ではない」
「過言だよ。百歩譲ってパパと認めても、なんでヴィサーラに服を買ってあげなくちゃいけないの」
「私より稼いでますよね?」
「そうだけど……」
「つまり、養ってください」
「要求がさっきより過大になってるんだけど!?」
「これが交渉術です」
「捨てちまえそんな術」
私にまとわりついていたヴィサーラをぺっと引き剥がす。
なんか一瞬でやたらと疲れた。
そして
「そうです、その理屈はおかしいですヴィサーラさん」
「なんですと」
「リリアナさんの旦那様に立候補しているのは僕です。ならば、ヴェンちゃんのパパも僕になるはず」
「「ちょっと何言ってるかわかりません」」
「あれぇ!?」
寝言を言う奴が増えるのはやめて欲しい。切実に。
「付き合って欲しいっておっしゃったの、断りましたよね?」
「何度でも言います! 付き合ってください!」
「何度でも断りますけれど……」
でも断られても好きなのは変わらない、だろ。
「断られても好きなのは変わりませんから!」
ほらね。
「採寸、終わりましたよお」
おねーさんの声がする。ヴェンちゃんは採寸を終え、とてとてと私に寄ってきてぎゅっとしがみついてきた。ああ、可愛いの化身かよ。
「ヴェンはかわいいですねえ。それに比べて
「ママ」
ヴェンちゃんが私の服を引っ張る。なんだね。
「ひかくたいしょーがわるい」
ヴェンちゃんのその一言に、ヴィサーラと勇者くん、そして店員のおねーさん、店主のおじさんも含め、その場にいた全員が沈黙した。
「ヴェンちゃん……」
「だって、ヴェンが世界でいちばんかわいいもん! ママもかわいい! ふたりでいちばん!」
いや、それには誤りがある。
「世界で一番可愛いのは、ママでもヴェンちゃんでもないのよ」
「えーっ!」
「世界で一番可愛いのは、リン殿下だから」
いやもう、出自の尊さと比例する可愛さをお持ちなので、あんまり比べちゃいかんと思うのよね。私としては。
「それはせいじまたー? かくこたるえびでんすは?」
「政治ではないのよ。私が私より可愛いと思ったから。わかりやすいでしょう?」
「むー」
納得できないなら、今度リン殿下と面会する機会ができればいいな。流石に実物を見ればヴェンちゃんも納得するだろう。
「ママとヴェンがいちばんなのー……」
頭をぐりぐり押し付けてきた。かわいい。なでなでしてあげた。