今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第39話

およふくのあとはごはんだ。『銅の鎧亭』、あそこなら問題なかろ。

 

「あれ、ここから『銅の鎧亭』だとどの道がいいのかしら」

「こっちです、リリアナ様」

 

ヴィサーラが先導し、私がヴェンちゃんと手を繋ぎ、勇者(おれ)くんが最後尾を歩く。が、なんか人通りが明らかに少なそうな道に入っていくヴィサーラ。大丈夫かしらん?

 

結論から言うと大丈夫だった。通りに面した家の住人が歩くくらいだが、後ろ暗いことが起きるような道ではないとヴィサーラから説明を受ける。なんでこんな道を知ってるのかとヴィサーラに問うと、「街歩きが趣味なので」と回答された。まあ、人の趣味に口出しはしないけど。

 

「街歩きって、素敵な趣味ですね」

「わたし、この王都が好きですから」

 

勇者(おれ)くんの言葉に、ヴィサーラが振り返って微笑む。

うーん、なんかギャルゲヒロインみたいな振り向き方。

というかまあ、首から上は平均的とはいえ、下が男の妄想を形にしましたみたいなヴィサーラにやられると、破壊力がすごい。

ちら、と後ろを振り返り勇者(おれ)くんの様子を見ると、そっぽむいていた。ほらね。

 

「どうしましたか? 後ろに追手などの気配はありませんが」

「なんでもないですわ。ね、勇者様」

「そうそう、なんでもないです」

「くちゃいおじちゃん、ヴィサーラのおしりみてた!」

「まあ」

 

ヴェンちゃんの容赦ない告発、勇者(おれ)くんはしどろもどろ。

 

「そんんなことない、です、よ?」

「勇者様、見てもいいですが、見物料を支払っていただいても?」

「は、はらいます!」

「ダメに決まってるでしょう!? ヴィサーラさんも勇者様も何を言ってるんですか!?」

 

私は慌てて財布を取り出そうとする勇者(おれ)くんを止めた。コンプラ意識ねえのかこいつら。ねえわ、異世界人と2000年代の高校生(性欲サル)だったわ。

 

ふうき(風紀)がみだれるねー」

「ほら、よりによって夢魔(ヴェンちゃん)に言われてますわよ」

「うえっ」

「ふふふ、冗談ですよ」

 

いや、勇者(おれ)くん、冗談を本気にするタイプだから……。

さて、アホなこと言ってたら、『銅の鎧亭』に着いた。

いらっしゃいませという店員さんの声がフロアに響く。

この店に来るのは二度目だが、なかなか気に入っている。なにより店員のおねーちゃんが生足出してるのがいい。眼福。

 

「ママ、女の人の足みてる?」

 

ヴェンちゃんにバレた。不満そうに私の服を引っ張ってくる。

 

「ええ、みてました。内緒ですよ」

「わかった、ママはおんなずき。ないしょ」

「? どうしたんです?」

「母と娘の内緒の会話ですわ」

 

ヴィサーラが振り返って訊ねてきたが、しらばっくれる。

と、奥の方から店員さんがやってきた。「お席にご案内いたします、こちらへどうぞー」という声に続く。

案内されたのは店の奥の方の四人掛けテーブル。仕切りで囲われており、話し声が他のお客さんに漏れづらい仕様だ。ファミリー向けにこういう席用意してるのかな。いい気配りだ。

 

「いい席ですね」

「いいお店です」

 

ヴィサーラが席を褒め、私が店を褒めた。ヴェンちゃんと勇者(おれ)くんはすでにウキウキでメニューを見ている。

 

「ヴェンちゃん、何か気になるのはありますか?」

「これ!」

 

指さされたのは『光り鶏丸ごと一羽のロースト』。

光り鶏というのは、鶏冠が光るニワトリだ。人に害はなく、おとなしいがやたら死にやすい。なので高級。値段は……うへぇ。払えるけど。

 

「これがいいの?」

「こういうおみせのこうきゅうひんははずれがない!」

 

何のどこ知識だそれ。

まあ、ここではなく『黄金の御手』で食べたが、光り鶏自体は間違い無く美味しい。ささみですら鶏肉とは思えないジューシーさがあった。多分この世界固有のファンタジー生物だからだろう。

 

「でも、丸ごと一羽よ? 食べられそう?」

「むりかも……わけわけしよ?」

 

わけわけ。シェアのことかな? かわいい。

 

「じゃあ、ママとわけわけしましょうね」

「わーい! ママだいすき!」

「僕もコレをリリアナさんと分けたいです!」

 

勇者(おれ)くんが指差すのは、ジャーマンポテトの盛り合わせ。

 

「高校生ですか? ……高校生でしたね」

「はい!」

「光り鶏と合わせるとちょっと重いので、遠慮しますわ」

「そんなあ……」

「肉と肉を合わせて食べられるのは男性だけですわよ」

 

いやまあ健啖家の女の子も食べられるだろうけどさ。と思っているとヴィサーラが「わたしは食べられますよ。分けますか?」とか言ってる。

 

「うっ。えっと、リリアナさんと同じものを食べたかったというか……」

「なるほど。じゃあ、わたしと勇者様で分ける分として光り鶏を二つ頼みましょう」

「ヴィサーラさん、大丈夫ですの?」

「勇者様が同じものを食べてみたいというなら、それに合わせるのが合理的かと。あとおいしいですし、光り鶏」

 

後半が本音だろ。さておきメインは光り鶏に決まった。サラダとかどうしようね?

 

「ヴィサーラさん、サラダのおすすめはありますか?」

「サラダですか。それなら王都サラダでどうでしょう。葉物野菜のサラダに彩り豊かな野菜が華やかですよ」

「はなやか!」

「ではそれと白パン、果実水を人数分」

「え、僕サラダは別に……」

「人数分、ですわ」

 

野菜を食べる習慣をつけろ、と圧をかける。

 

「くちゃいおじちゃん、くちゃいだけじゃなくすききらいまであるの? さいてー」

 

勇者(おれ)くんがテーブルに突っ伏した。

 

「容赦なさすぎて笑えますね、ヴェンは」

「ヴィサーラさん、笑わないであげてくださいまし」

 

かくいう私もちょっと笑ってるが。

 

「ヴェンちゃん、おにいさん、野菜も食べるね……」

「おにいさん? おじちゃんだよー!」

 

勇者(おれ)くんがテーブルに突っ伏した。30秒ぶり二度目。

うごかなくなったからさっきよりひどい。

 

「気になってるんですけど、ヴェンはなぜ勇者様をくさいというのですか?」

 

それは私も気になる。

 

「んー。なんか、せいりてき(生理的)に、むり! 逆にママは、せいりてき(生理的)に、すき!」

 

うーん。魂は同一人物なんだけどな。ガワに問題がある? あと、イグナスもくちゃいおじちゃん扱いなのが気になる。

 

「もうひとりのくちゃいおじちゃんも、生理的に無理なのかしら?」

「うん! あのね、こっちのおじちゃんはしんせん(新鮮)なくささ! いまいないほうのおじちゃんは、じかん(時間)のたったくささ!」

 

……ははーん、第二次性徴以降に起きる男性特有の体臭、つまり加齢臭か?

 

「はいか違うかで答えてね。加齢臭ですか?」

「たぶんちがう」

「そのくちゃいにおいは男性全てからしていますか?」

「ちがう」

「いまのところ二人だけからしていますか?」

「はい」

「……うーん?」

「わかんないけど、ふたりだけくちゃいの」

 

謎すぎる。答えに辿り着けない謎は謎のまま置いておこう。

 

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