今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。 作:一宮 千歳
およふくのあとはごはんだ。『銅の鎧亭』、あそこなら問題なかろ。
「あれ、ここから『銅の鎧亭』だとどの道がいいのかしら」
「こっちです、リリアナ様」
ヴィサーラが先導し、私がヴェンちゃんと手を繋ぎ、
結論から言うと大丈夫だった。通りに面した家の住人が歩くくらいだが、後ろ暗いことが起きるような道ではないとヴィサーラから説明を受ける。なんでこんな道を知ってるのかとヴィサーラに問うと、「街歩きが趣味なので」と回答された。まあ、人の趣味に口出しはしないけど。
「街歩きって、素敵な趣味ですね」
「わたし、この王都が好きですから」
うーん、なんかギャルゲヒロインみたいな振り向き方。
というかまあ、首から上は平均的とはいえ、下が男の妄想を形にしましたみたいなヴィサーラにやられると、破壊力がすごい。
ちら、と後ろを振り返り
「どうしましたか? 後ろに追手などの気配はありませんが」
「なんでもないですわ。ね、勇者様」
「そうそう、なんでもないです」
「くちゃいおじちゃん、ヴィサーラのおしりみてた!」
「まあ」
ヴェンちゃんの容赦ない告発、
「そんんなことない、です、よ?」
「勇者様、見てもいいですが、見物料を支払っていただいても?」
「は、はらいます!」
「ダメに決まってるでしょう!? ヴィサーラさんも勇者様も何を言ってるんですか!?」
私は慌てて財布を取り出そうとする
「
「ほら、よりによって
「うえっ」
「ふふふ、冗談ですよ」
いや、
さて、アホなこと言ってたら、『銅の鎧亭』に着いた。
いらっしゃいませという店員さんの声がフロアに響く。
この店に来るのは二度目だが、なかなか気に入っている。なにより店員のおねーちゃんが生足出してるのがいい。眼福。
「ママ、女の人の足みてる?」
ヴェンちゃんにバレた。不満そうに私の服を引っ張ってくる。
「ええ、みてました。内緒ですよ」
「わかった、ママはおんなずき。ないしょ」
「? どうしたんです?」
「母と娘の内緒の会話ですわ」
ヴィサーラが振り返って訊ねてきたが、しらばっくれる。
と、奥の方から店員さんがやってきた。「お席にご案内いたします、こちらへどうぞー」という声に続く。
案内されたのは店の奥の方の四人掛けテーブル。仕切りで囲われており、話し声が他のお客さんに漏れづらい仕様だ。ファミリー向けにこういう席用意してるのかな。いい気配りだ。
「いい席ですね」
「いいお店です」
ヴィサーラが席を褒め、私が店を褒めた。ヴェンちゃんと
「ヴェンちゃん、何か気になるのはありますか?」
「これ!」
指さされたのは『光り鶏丸ごと一羽のロースト』。
光り鶏というのは、鶏冠が光るニワトリだ。人に害はなく、おとなしいがやたら死にやすい。なので高級。値段は……うへぇ。払えるけど。
「これがいいの?」
「こういうおみせのこうきゅうひんははずれがない!」
何のどこ知識だそれ。
まあ、ここではなく『黄金の御手』で食べたが、光り鶏自体は間違い無く美味しい。ささみですら鶏肉とは思えないジューシーさがあった。多分この世界固有のファンタジー生物だからだろう。
「でも、丸ごと一羽よ? 食べられそう?」
「むりかも……わけわけしよ?」
わけわけ。シェアのことかな? かわいい。
「じゃあ、ママとわけわけしましょうね」
「わーい! ママだいすき!」
「僕もコレをリリアナさんと分けたいです!」
「高校生ですか? ……高校生でしたね」
「はい!」
「光り鶏と合わせるとちょっと重いので、遠慮しますわ」
「そんなあ……」
「肉と肉を合わせて食べられるのは男性だけですわよ」
いやまあ健啖家の女の子も食べられるだろうけどさ。と思っているとヴィサーラが「わたしは食べられますよ。分けますか?」とか言ってる。
「うっ。えっと、リリアナさんと同じものを食べたかったというか……」
「なるほど。じゃあ、わたしと勇者様で分ける分として光り鶏を二つ頼みましょう」
「ヴィサーラさん、大丈夫ですの?」
「勇者様が同じものを食べてみたいというなら、それに合わせるのが合理的かと。あとおいしいですし、光り鶏」
後半が本音だろ。さておきメインは光り鶏に決まった。サラダとかどうしようね?
「ヴィサーラさん、サラダのおすすめはありますか?」
「サラダですか。それなら王都サラダでどうでしょう。葉物野菜のサラダに彩り豊かな野菜が華やかですよ」
「はなやか!」
「ではそれと白パン、果実水を人数分」
「え、僕サラダは別に……」
「人数分、ですわ」
野菜を食べる習慣をつけろ、と圧をかける。
「くちゃいおじちゃん、くちゃいだけじゃなくすききらいまであるの? さいてー」
「容赦なさすぎて笑えますね、ヴェンは」
「ヴィサーラさん、笑わないであげてくださいまし」
かくいう私もちょっと笑ってるが。
「ヴェンちゃん、おにいさん、野菜も食べるね……」
「おにいさん? おじちゃんだよー!」
うごかなくなったからさっきよりひどい。
「気になってるんですけど、ヴェンはなぜ勇者様をくさいというのですか?」
それは私も気になる。
「んー。なんか、
うーん。魂は同一人物なんだけどな。ガワに問題がある? あと、イグナスもくちゃいおじちゃん扱いなのが気になる。
「もうひとりのくちゃいおじちゃんも、生理的に無理なのかしら?」
「うん! あのね、こっちのおじちゃんは
……ははーん、第二次性徴以降に起きる男性特有の体臭、つまり加齢臭か?
「はいか違うかで答えてね。加齢臭ですか?」
「たぶんちがう」
「そのくちゃいにおいは男性全てからしていますか?」
「ちがう」
「いまのところ二人だけからしていますか?」
「はい」
「……うーん?」
「わかんないけど、ふたりだけくちゃいの」
謎すぎる。答えに辿り着けない謎は謎のまま置いておこう。