今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。 作:一宮 千歳
さて、鐘が鳴ったし、イグナスのとこの第二騎士団勢と夕飯の時間だ。それには服についた土埃をきれいに払い、一旦自室に引き上げたい、のだが。
「……勇者様、なにか?」
「……やっぱりかわいい……はっ。なんでもありません!」
いや、誤魔化されてもこっちはなんでもあるんだよ。
「……異性を見つめるのは程々になさいませ。私も男性からのそういった視線、あまり好きではありませんの」
「あぅ、はい……」
こいつオブラート効かないんだよな。直接言うのは美少女パワーが低いが言わなきゃ絶対治さないし、うーんやっぱこいつ私と相性悪すぎ。同族嫌悪という言葉が頭をよぎる。
そう、この気持ち悪い粘着質で性欲の籠った目線はかつて自分が美少女キャラクターや気になる女の子にむけていたそれそのものだ。それが今自分に向けられたことで、過去の自分の醜さ、身勝手さがよくわかる。いやほんとなんで生きてんだこいつ? 周りの優しさに感謝しろよ? はい。まあ生まれ変わった私は美少女特権をフル活用していきますが。
「勇者様、これから私は会食がございますの。ご用件がなければ自室に引き上げさせていただきますわ」
「それなんですけど!」
どれだよ。
「イグナスさんから誘われたんです!『ヘーゼル嬢も来るんだが、君も夕食に来ないか?』って!」
私大激怒。いや、表には出さないけど。
イグナスゥゥゥゥゥ!
何やってんだテメエエエエエエ!!!
私に話持ってきたのが騎士団(たぶん男の若手)のガス抜き名目だよな? お前私が内面男なの知ってるよな? いわば私からイグナスへの借しだよな? なんでそこに歩く地雷まで置きに来るの?
……いや、違う。末端へのプロパガンダだなこれ。「勇者様とヘーゼル様は一緒にいることが多い」を印象付けて、その先を想像させるやつだ。となると、イグナスは悪くない説がある。すまんイグナス、お前の好きな杏仁豆腐で許せ。
「……そうですか。勇者様も会食に。ええ、わかりました。お店にはファーロン副団長とご一緒に、ですわよね? 私もご一緒します」
「はい! 俺、すぐに着替えます!」
ふう、
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さて、自室で入念に美少女みを整えた。
今日のご飯の店がどこになるのか聞いてないが、いちおうどんな店でも浮きすぎない程度になる、質素だが作りの良い浅葱色のローブを羽織る。あとは軽くチークを乗せて健康そうにみえるようにしておいた。
私自身不健康なわけじゃないはずなんだけど、色白を心配されることがたまにあるので。騎士団の若手くんには素直に「リリアナちゃんかわいいな〜」と思ってもらいたく存じます。
……おめかしすると
さておき、今は連れ立って会食会場の店に向かっている最中だ。私とイグナス、
「ヘーゼルちゃん、本当にすっごくかわいいな!」
「ヘーゼルさん、素敵なローブですね」
「うふふ、ありがとうございます」
騎士団の若手くん2名、本日の主賓(彼らに主賓自覚はないが)が素直に私の外見の良さを素直に褒めてくれると気分がいい。性欲に塗れた目ではなく純粋にかわいいと言われると心が華やぐ。美少女は美少女と認められて花開くものよ。
で、一方
「勇者様も、なにか騎士団の方とお話ししたいことが?」
とりあえず水を向ける。このネタフリでパッと回答できるとは思ってないが、それでもお前も会話の輪に入ってこい。
「あ、あの、騎士さんの強さって、どこからきてるのかなって……」
あれ、なかなかいい質問するじゃん。強さ自慢はみんなしたいやつだぞ。
「ほほう、勇者殿は強さに興味があるかい?」
イグナスが乗ってきた。こいつ話好きだからな。
しかも若手騎士たちもニコニコで乗っかってくる。
「我々の強さは……やはり努力によるものですね」
「いやいや、方法じゃなく、騎士の精神について触れるべきだろ」
私がまあ皆さま、そのお話はお店でしましょう? と言えば、そういうことになった。
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あーここね。『銅の鎧亭』。酒場ながら子供が好むようなメニューをなぜか置いていることから家族連れの客も多く来るというし、さらに安価。騎士団員も多く利用し、結果ならずものが近づかない、王都でも屈指の良店といわれている店だ。そこに私が同席すればなるほど、騎士団員のガス抜きには最適となるだろう。
イグナスがにこやかに入店すると、「いらっしゃいませー」の声が響く。私がイグナスに続き、そのあと
私はこの店初めてなのだが、店内は賑わっており、老若男女問わず談笑する姿が多く見られる。木製の丸テーブルと椅子が並び、店員さんが空き皿とオーダーを狙って店内を巡回している。あーあーなつかしいな、飲食店バイトの時の記憶が蘇る。タブレット注文と猫ロボによる配膳にはないタイプのある種の温かみだ。
さらにここ、制服があるようで、女子は膝上丈のスカートなので女性店員のきれいなおみあしが拝めるのがちょうポイント高い。雰囲気いいし通いワンチャンあるな。……でもこれ、家族連れで来た子どもの性癖歪まないかしらん?
あ、男性のみで来てる客が店員さんのお尻見て鼻の下伸ばしてる。まあ自分も可愛い女の子は目で追っちゃうんで、とやかく言えないのだが……あ、こっち見た。気まずそう。
入店アテンド担当の褐色栗髪おねーさんが席に案内してくれた。そのままイグナスがエール3と果実水2、かんたんなつまみを注文する。果実水は私と
程なくドリンクが来て乾杯。イグナスの「美少女に乾杯!」に「え、ええー?」と返してみたりした。他の3人はノリノリで乾杯!言ってた。男ってアホだ。いや、私も自認男だけど。
エールをグビリと飲んだちょっと荒っぽい口調の方の若手、アルベルトくんが「先刻の騎士の強さだが、やはりその精神に由来するモノだと俺は思う」と話をふる。
「何者にも負けぬという意志! 魔族を目の前にしても恐れない心! 王と民を守り抜くと誓った覚悟!そういうものが俺たちを形作っているのだ!」と熱弁する。
しかし丁寧な口調の方のブライアンが「いや、精神論ではなく、努力と集団戦術によるモノです」とバッサリ反論する。
「日々の鍛錬、連携を重視した戦術。この二つを欠いた我々が我々であるとは思えない。」
うーん正論。これはアルベルトくん分が悪いか? と思ったところにイグナスが助け舟を出す。
「我々騎士はどちらかだけでは立ち行かないよ。努力と集団戦術、これは単なる兵士でも訓練次第で身につくモノだ。そして精神だけでは立ち行かないのはブライアンも指摘しているところだね。精神と肉体で人はできている、ということかな。
あ、おねーさん、肉料理4人分。あと葉野菜の盛り合わせを彼女に。」
おねーさんと呼ばれたちょっとお年を召した店員さんが嬉しそうに応える。んーまあ、私も同意だ。
「私もファーロン副団長のお言葉に同意いたします。ついでに強さについて、魔法使いの目から語ってもよろしいでしょうか?」
どうぞ、と目で語る騎士三人。
「結局のところ魔法使いは『なんでもできる』者ですの。ですが、魔法でできると思えないことはできません。なので、自ら可能性を狭めないこと、想像力があることが魔法使いにおける『強さ』だと思っていますわ」
このあたり「なれ」と念じるこの世界の魔法の強さでもあり弱さでもある。この世界の魔法、水や氷を"燃やす"ことも可能なのだが、その意識がないときはできなかったし。
「なるほど、想像力か。……ああお前たち、魔法使いの話だと思っているかもしれんが、たとえば木陰に隠れた敵がいるかもしれない、とかも想像力だからな。強さには直接影響しないが、騎士にも重要だ」
とこれもイグナス。なるほど、と頷く騎士。おい、ほへーという顔の
「強さ、について気にしていらっしゃったのは勇者様ですわよね。なぜでしょう?」
「あ、いや、その。強くなって、リリ……ヘーゼルさんと並び立てるようになりたいなって」
なりたいなじゃねえんだわ。なるんだよ。
「なりたい。ではなくなっていただかないと私としては困りますわね」
「ああ、僕としても困るね。だって
イグナスも口を添えてきた。んまあそうだよね。一方
「パーティ……? イグナスさんと?」
「なんだ、ヘーゼル嬢とだけ組むつもりでいたのか?」
あれ。そういやその話してねえのかも。