今異世界転生TSつよつよ美少女魔法使いなんだけど、若い頃の自分に告白されて困ってる。   作:一宮 千歳

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第9話

「僕と、ヘーゼル嬢、マエミチ君、そして斥候役が一名選出され、4人でパーティになる。聞いていなかったのか?」

「いや、言われてみればそんな話、あったような……」

 

記憶力悪いな……いや高校生の頃そんなもんだったか。でも本当の原因は他だろ。

 

「そうか、マエミチ君にはまだ正式に伝わっていなかったか……?」

「ああいえ、俺が忘れてただけで……」

 

勇者(おれ)くんの弁明が入る。が、説得力はない。どうせ「私とパーティ」のところだけ頭で切り取られてたんだろ。

 

「ふふ、ヘーゼルさんの美貌にやられたんでしょう?」

「わはは、まあヘーゼルちゃんほど可愛い女の子と旅なんて言われたらそれ以外頭に入らなくなるな!俺も多分そうだ!」

「うっ……」

 

若手騎士くん、容赦なくイジってるな。まあ? 私ほど美少女なら仕方ないですけど? けど勇者(おれ)くんがそうなってると途端にキショく感じる。このあたり本当に勇者が過去の私じゃなかったら私は呑気に捨て駒にする計画(或いは美少女勇者を手籠めにする計画)練れてたと思うんだよな。

そうこう考えていると肉料理と葉物野菜のサラダが到着し、とりあえず食べよう、となった。

 

「そう言えば勇者様、こちらの食べ物には慣れました?」

「あっ、はい! こちらの料理、すごく美味しいです! 元の世界の味が恋しくなることもあるんですけど、この肉料理とか美味しくて!」

 

だよねこの世界ご飯美味しいよね。肉料理もだいたいにおいて脂肪が少ないのが良し悪しだが、ここのは肉汁垂れててジューシーで美味しそう。まあ私は清楚に葉っぱもぐもぐするんですが。イメージ戦略である。

 

「ふふ、それはようございましたわ。たくさん食べて、我が国に馴染んでくださいね」

「はい! なんならこの国に骨を埋めてもいいです!」

 

勇者(おれ)くんは肉を頬張り嬉しそう。この世界で死ぬことに前向きなのはまあいいが(良くない)、お前好きな子いただろ。その子についてはどうすんだよ、感は強い。まあ、その子とは比べ物になんないくらい美少女ではあるよ? けどさー。

 

「故郷に残してきたご家族などは……?」

「あーいいんです。親は俺の気持ちわかってくれないんで。目標がある分、自分の力でなんとかしなきゃいけない分、こっちの世界の方がやりがいありますよ」

 

もにょる。……気持ちはわかるんだけどな。気持ちはわかるんだけど、異世界で口に出すこっちゃない。

 

「……そうですか。ご自身の意思で、この世界に全てを捧げるのですね」

「故郷、家族のことが、重要ではないと?」

 

私が少し冷めた口調で言うと、イグナスが追撃をかける。

イグナス目ェこわっ。ていうか騎士くん2名も人間じゃないものを見る目してるな。

 

この辺、4人の社会常識の違いである。

勇者(おれ)くんは平和な日本暮らし。我々は魔族の脅威があるダイスロ王国暮らし。そこで価値観が違ってしまうのはしょうがないのだ。しょうがないのだが、この失言はなかなかだぞ。

 

「いや、そういうわけじゃなくて……」

「庇護してくれているご両親が、あなたがいなくなってどう思っているか、考えたことがあるのですか?」

 

ブライアン、それ盛大に私らが言うな案件。あでも勇者(おれ)くん、結構効いてるみたい。

 

「そりゃあ親からすれば俺を育てるために愛情をかけた、金もかけた、それが居なくなったらどう思うかなんて、悲しいに決まってるのはわかりますよ、でも……」

 

高校生時代の私、根本的に拗らせメンヘラなんだよな〜〜。どうすっか。私の話でもして話の腰を折ろう。

 

「勇者様にもお話ししましょうか。私、育ての親を魔族と、それに()する邪悪な人間に殺されておりますの」

 

突然の私の言葉は、テーブルに静寂をもたらした。騎士団の若手2人、勇者(おれ)くんはもちろん、こちらに転生してからの私のことを良く知るイグナスですら、私の口からこの話が出たことに驚いていた。

 

「……ヘーゼル嬢、それは」

「いいのです。勇者様とは、共に旅をすることが決まっている、仲間ですから」

 

にこりと儚げな笑みを加えてこれから重要なことを話しますよというアピール。

 

「私の育ての親であるレジーナ=ヘーゼルとリムステラ=ヘーゼルはそれはそれは仲のいいカップルでした」

「女性同士の冒険者コンビとして有名ですね、レジーナさんとリムステラさんは。……家名が同じだとは思っていましたが、養子だったとは」

 

ブライアンが語る。そうね、メチャクチャ有名らしい。

 

「ええ、自慢の母たちですわ。ですが、私が推定10歳になろうかというところで、魔族に取引を持ちかけようとした心無い街の長が……それ以来、復讐を誓っておりますの」

「……そういえば、魔族の策謀で街が一つ消し飛んだって聞いたことがあるぜ」

「ああ、私が暮らしていた所の近くの街でしょうね……たしか、リース領のテセラ、でしたか」

 

まあ消し飛ばしたのは私なんだけど、世間的には魔族の策謀で通ってるからなあ。イグナスは知ってる、というか街を消し飛ばした私を保護した当人だけど、神妙な顔するの上手いわ。

 

「そこで唯一の生存者であるヘーゼル嬢を保護したのが僕、というわけだ。……ところでこの話をしたのは、何故だい?」

 

イグナスの問いかけ、ナイスパス。

 

「親は動機になるのですわ、勇者様。」

 

私は真っ直ぐに勇者(おれ)くんを見つめた。

 

「元の世界のご両親が大事ではないというのなら、それもいいと思います。個人の考え方の自由は尊重いたします……ですが、貴方は、私の気を惹きたい。そうでしょう?」

「は、はい」

 

私は言葉を続ける。

 

「なら。私の復讐を、手伝ってくださいませ。絶対に、生き延びて。邪悪をこの世から根絶するまで」

 

決まった。お前こういうの好きだろ。ほら、出してやったぞ。食い付け。絶対に離すな、好みの女からのお願いだぞ?

 

「手伝います!」

 

勝ったな。風呂入って……これない。でも今日は気分よく過ごせそうだ。

 

「マエミチ。一つ言っておくべきことがある。」

「は、はい?」

 

イグナス〜。お前何言うつもりだよ〜。

 

「我々は捨て駒だ。僕もヘーゼル嬢も、君も。勇者パーティの真の使命は、魔王軍の幹部級がどの程度力を持っているかの情報収集であり、我々はそのために、命を惜しんではならない」

「え、捨て駒……」

 

言っちゃうとは思わなかったぜ。若手騎士2人も驚いて考え込んじゃってるぞ。

 

「ああ、マエミチの覚悟ができたようだから、ことここに至っては言ったほうがいいと思ってね。……何、僕の剣技とヘーゼル嬢の魔法、この突破力で勝てないのであれば戦術戦略を変えざるを得ない、と言うだけの話。マエミチはそのギフトを活用して、情報を持ち帰る斥候役を逃がす時間を稼いでほしい。それを覚えておいてほしいんだ」

 

……と言うのは真っ赤な嘘で、私の魔法とイグナスの剣技が通用しなかったら通常戦力じゃまず勝てねえ。私らは超強力な威力偵察のつもりで使われているが、それで失うには惜しすぎるので、召喚さえすれば換えが効く勇者だけを捨て駒にするのが上のプランである。お上って怖いね。

 

その上で勇者(おれ)くんは私の消滅の可能性がある以上死んでもらっては困るので、多分実戦では私もギリギリまで残ってから逃げ切るつもりでいる。イグナスも残る。そういう話がイグナスとついている。

格上と当たって逃げるプランなんて組んだことないんだけど、それをやらないといけない。あー気が重い。

 

「……今日は本当は、ファーロン副団長から『騎士団の有望な若手2人を労ってやってほしい』って言われていたのをすっかり忘れていましたわ! アルベルト様、ブライアン様、思う存分楽しんでくださいませ! 今日はファーロン副団長の奢りなのですから!」

 

ドロッドロの内幕聞かせといてなんやねん感はあるものの、若手2人はこのあとメチャクチャ肉食ってた。有望な若手、割り切りもはえーわ。人は死ぬ時は死ぬってわかってるからかね。いや、人の金で食う肉がうまいからかも。

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