オラリオの黄金鳥   作:逆戲愛薙

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どぞ〜


10話

 

 

 

 

早朝から大勢の冒険者達が入団希望に訪れている、ここ【ロキ・ファミリア】主導の元、貸し切られているギルドの大広間。

大広間、と言っても天井はなく吹き抜けになっているので巨大なホールのような所に集められている。

見回すだけでざっと自分を含めて300以上の冒険者が1箇所に集められている。それもそのはず、今や天下の【ロキ・ファミリア】入りたい人間は山のようにいる。

 

今回は、改宗は受け付けておらず未所属の冒険者が集められている。

 

そう、ここは今より8年前、暗黒期と呼ばれるオラリオ始まって以来の闇派閥が勢力を増していた最盛期。

 

ひょっとしたら、とんでもない時期に来てしまったのでは?

 

田舎の農家から飛び出してきたラウル・ノールドは集められた自分よりも筋骨隆々の男や容姿の整った女性エルフなど、見るからに装備の質がいい冒険者達の前に圧倒されつつあった。

それと同時に視界に入る自分と同じくらいの猫人の女の子もいて自分も頑張らなきゃと気持ちを奮い立たせる。

 

そんなことを考えていた矢先、壇上に上がってきた着物?にしては短すぎるスカートに羽織を纏った少女が現れる。

 

 

「今回の入団試験を執り行う。フェリア・アーディライトだ、よろしくね」

 

 

田舎暮らしであった自分でもその名を知っている。次代の剣神、フェリア・アーディライト。Lv3にして生きて【三大クエスト】から生還した英雄。初めて目にした、生ける伝説。

 

彼女と肩を並べて戦うことを少しだけ夢見てここに来たという面も本当に少しだけある。

 

凛々しい佇まいはさることながら、身長が高い。すでに彼女の身長は自分と変わらない。

壇上から見下ろす彼女。

 

そんな、彼女の入団試験には一つだけある噂があった。それは、今の今まで彼女の試験で合格した者がいないということ。

 

それも相まって、憧れの存在を目にできたことと絶望でラウルの心情はぐちゃぐちゃだ。

 

 

「さて、さっそくだが入団試験を始める」

 

 

どんな内容なのか、どんな試練なのか。ラウル同様その他の冒険者達の緊張が高まる。

 

 

「、、、いや、やるっす!ここで変わらなきゃ」

 

 

改めて帯を締め直す。

 

 

そして、、、

 

 

彼女の口から告げられた、試験の内容とは、、

 

 

「今から、君達には殺し合いをしてもらいま、、

 

 

「ちょっとまったーーー!!」

 

 

ボコ!

 

 

「ぴぎゅ」

 

 

マイクが拾う特大の打撃音と共に壇上に乱入する赤髪の少女がフェリアにチョークスリーパーを決めながら引きずり下ろして連れて行ってしまった。

 

 

「「「「え?」」」」

 

 

「おい、今の【紅の正花】(スカーレットハーネル)じゃねぇか?」

 

 

【紅の正花】とは確か【アストレア・ファミリア】の第二級冒険者だ。そういえば、用心深く当たりを見回せばホールの外側。柱の影や客席にはアストレアの紋章を背負った眷属がチラホラ見える。

 

 

「ちょっと、、フェリア、なにか、、」

 

 

「だって、師匠が、、、って、、、言えって」

 

 

「あん、、師匠は、、なのか?」

 

 

何やら後ろで会話が繰り広げられているのを壇上のマイクが、拾っているが途切れ途切れで内容までは分からない。

数分ほど待った頃だろうか、カキーン!!と数度金属が打ち合わされるような音が響いた。

 

 

 

そして、ラウル・ノールドはこの試験会場に来たことを深く、深く後悔した。

 

 

 

壇上を登る足音が鼓膜の奥まで響くように頭の中まで響いてくる。

 

今の今まで希望と夢に目線を高く保っていたはずのラウルはいつの間にか壇上を見ることすら、出来ずその視線は自然と地面に向かっている。

 

何を言っているのか分からないかもしれない。ただ実際それは他の入団希望者ももれなく全員が今壇上の上にいる化け物と視線を合わせることすら出来なかった。

 

視界に入れなくても感覚が、頭が自ずと理解する。今壇上に上がっているのは人間では無い、得体の知れないものだ。

 

その圧力か、存在感とでも言えば伝わりやすいだろうか?大気が震えていると錯覚するほどの脅威が目の前にいる。

自ずと体は頭を垂れるように深く頭を下げ自らの無抵抗の意思表示を始めている。自分の生命の一存を強者に委ねるように。

 

ガタガタと震える体と鳴り響く歯音。圧力に耐えられず倒れた者が何人も【アストレア・ファミリア】に回収されていく。ここにいる全員が化け物の言葉を待っている。

 

 

「『試験内容は簡単にする』」

 

 

「『はぁ、、、失せろ』」

 

 

その一言で一人が走り出した。もうすでに限界だった彼らの心と体は、その強者の許可によって逃走という選択肢が許される。

 

そうすれば後は簡単だった。

 

狂気は伝播する。

 

その一人を皮切りに大量の人間が一斉に走り出した。ラウルのことなどお構い無しに突き飛ばし全員が出口に向かって走り出す。我先に一刻も早くこの場から逃げ出すことだけを考えた逃走。

 

 

「いってて」

 

 

突き飛ばされ、蹴り飛ばされとまさに踏んだり蹴ったりだったラウルは気が付けば周りにあれだけいた冒険者達が綺麗さっぱりいなくなっていた。

そして、その中であの猫人の女の子だけが残っていた。

いや、よく見たら尻もちをついたまま後ずさるようにしているのを見ると腰が抜けてしまったのだろう。

 

そんなことを考えた一瞬のうちにラウルは逃げるべきだったのだ。

 

 

「『聞こえなかったのかな』」

 

 

そう、もはや周りに残る入団希望者は自分と猫人の女の子だけ。なら化け物の視線は自分たちに向かうのは分かっていたはずなのに。

 

その声に今まさに走り出そうとした時だ。ほんの一瞬だけ今も腰が抜けてしまっている猫人の女の子が視界に入る。

 

 

「ッ!」

 

 

柄じゃない。

 

こんななんの取り柄もない自分が、英雄には決してなれない自分なんかが。

でも、今だけはほんの少しだけ。一歩を踏み出したっていいはずなのだ。

 

 

「『えっと、、そこをどく気は?』」

 

 

「すいません。ないっす」

 

 

「ーー!ちょっと、なにして!」

 

 

「俺は、ここに変わりに来たっす!だから、、どかないっす」

 

 

「ッ!」

 

 

フェリア・アーディライトから更に圧力が増す。先程とは違い、ほぼ、目と鼻の先にいる。だからこそひしひしと伝わる強者の覇気。全身の穴という穴から汗が滝のように落ちる。

体が、頭が、今すぐ逃げだせと発する中、心がラウル・ノールドという男をここに立たせ続けている。

 

 

「私、、助けてなんて言ってない」

 

 

猫人の女の子も同様に立ち上がりラウルの横に立つ。

震える足で、睨む瞳でフェリアを穿つ。

 

 

「『そっか、それが答えね』」

 

 

死ぬ。

 

ラウルはそう思って目を閉じて。

家に残した家族に申し訳なさを感じながら死を待つ。

 

 

「合格」

 

 

「「え?」」

 

 

突如として先程まで感じていた圧力がなくなりラウル達の前にいるのは最初に壇上に上がった時に現れた少女。フェリア・アーディライトに戻っていた。

 

 

「私は君たちみたいな子を待ってたんだ。よろしくね」

 

 

無表情で手を差し出す彼女。

 

 

それが、【ロキ・ファミリア】現代の剣神、フェリア・アーディライトとのファーストコンタクトだった。

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんでアイズは不貞腐れてるの?」

 

 

「ふふ、それがな」

 

 

「むぅう!!」

 

 

場所は手狭な通路に面した応接間だ。橙を主とした暖色で彩られ、丸テーブルやソファー、アームチェアが数多く並べられている。骨董品で溢れる部屋は広く、身内の中では談話室としてもよく利用されていた。

 

そこで先程までアームチェアの上で体を丸めて落ち込んでいたアイズの原因をリヴェリアがフェリアに話そうとして本日二度目になるリヴェリアはアイズに突き飛ばされる。

 

 

「、、、逃げられたんだ」

 

 

「うぐっ」

 

 

事情を聞かれたフェリアの追撃によってぐすんと涙ぐみながら心の中の幼いアイズ共々、両膝を抱えていじけてしまった。

 

 

「、、怖がられてるんだ」

 

 

うにゅう、という音を立ててアイズはさらにしおれて原型を留められないようにスライムになってしまった。

 

 

「白髪、兎、、、あぁ、酒場の時の少年か」

 

 

あの日、あの場所でうちの狼人が焚き付けた少年だ。

 

フェリアも視線の端で捉えていた。逃げ帰る訳でもなく、泣きわめく訳でもなく。ダンジョンに弱者たらんと奮起して立ち上がった少年だ。

 

確かにここに、フェリアは感じ取っていた。か細く不確実で不確定な、そんな確信。

フィンの親指ほどの確証もない、ただフェリアの勘は確かに英雄の産声を聞いた気がした。

 

 

「そうか、、それにLv6、、私もLv7になったし。待ってるよアイズ」

 

 

「え?」

 

 

「なっ!」

 

 

「あー、なんでもう言うてまうの〜フェリアたんっ!夜の秘密やったのに〜」

 

 

先程まで落ち込んでいたアイズが急に輪郭を取り戻し立ち上がる。

唐突に投下された爆弾。今まだ誰も知りえていなかったフェリアの【ランクアップ】にリヴェリアも動揺が走る。

 

 

「また、、離された……」

 

 

「早く追い付いておいで、アイズ」

 

 

項垂れるように膝を着くアイズにフォローを入れるようにしゃがむフェリア。

 

 

「それにしても、あのフェリアがLv7か」

 

 

項垂れるアイズに変わってリヴェリアが考え深そうに呟く。

 

 

「ごめん、まだ当分あげる気が無かったから」

 

 

「そうか、、先を越されてしまったな」

 

 

昔は自分の後ろを付いてくる可愛い娘だったフェリア、今でも瞼を閉じれば思い出す。

よく、私の服の裾を摘んでいた。そんな彼女も今では身長はとうに自分を超え、180Cという高身長に育った我が娘。アイナあたりがフェリアを見ればその昔とのギャップに腰を抜かしてしまうかもしれない。

 

 

「よく頑張ったな」

 

 

昔からの癖、ボロボロになってまで突き進む彼女を褒めるために頭を撫でていたリヴェリアは手を伸ばす。そうしてそれを途中で止める。

もうフェリアも年頃の女の子を超えて立派な成人女性。

今更子供扱いは嫌がるのではないかと既のところで手を止める。

だがしかし、それをフェリアは見逃さなかった。身長が高いフェリアはそれを見た瞬間、少し屈むようにして自分から手に頭を擦り付けて撫でられに来た。

 

 

「リヴェリア、私もう子供じゃないよ」

 

 

そういう彼女をリヴェリアは可愛い娘を見るような暖かい表情を作る。

 

 

「そうだったな。すまない」

 

 

「うん、でも時々なら、、していいよ」

 

 

「そうか、、そうするよ」

 

 

 

 

 

 

そして、その晩。【ロキ・ファミリア】では都市最強にならぶ眷属の誕生とアイズのLv6の宴会が盛大に行われた。

 

団員達の反応は様々で、多くの団員が祝福と賞賛と畏怖を口にした。一人の狼人を除いて。

 

現在、世界最高位の【ステイタス】はLv7。そして、世界に三人しか存在しない絶対強者。

【フレイヤ・ファミリア】の【猛者】。学区所属の【ナイト・オブ・ナイト】 そうして、今宵誕生した【ロキ・ファミリア】の【夜の黄金鳥】(カナリア)

 

これでいよいよ、【フレイヤ・ファミリア】に追いついた。

 

この言葉が、【ファミリア】全体を浮かれさせている一因でもある。

 

『個々の力では【フレイヤ・ファミリア】の方が上』

『【猛者】率いる強靭な勇士は誰も倒せない』

 

そう陰口を言わせ続けてきた彼らは、今回の今回の力関係の変化は、大いに盛り上がりを見せた。

それに、フェリアの持つ剣神の称号はオラリオにとって引いては世界に大きな意味を持つ。

 

その名の由来である【ヘラ・ファミリア】初代剣神、レオナ・フェリディスが神より与えられた称号。

そうして、【三大クエスト】 陸の王(ベヒーモス)に【暴食】と同様に致命傷を与えた功労者。

 

彼女の強さは、当時の時代を知るもの達ならば強烈かつ衝撃的だろう。

 

 

『一太刀で空を割る』

 

『その一振りで大いなる獣を両断した』

 

『振り抜く剣すら見えず』

 

『古の英雄に最も近い者』

 

 

この全ては初代剣神の名声であり、事実である。

 

その昔、極東でタケミカヅチを技で制し、数々の剣の達人を制して勝ち取った正真正銘の神越えを添えた剣の神。

 

絶対必殺の一振。

 

 

『至る剣』

 

 

一人の人間が到底その人生をつぎ込んだ程度ではたどり着けない極地。

概念を切り裂き、因果さえも置き去りにする神の御業にして剣の頂き。

 

空にして零の剣。

 

その技の正当後継者にして、唯一の使い手であるフェリア・アーディライトは正に世界で最強の剣士である。

 

 

ワイワイガヤガヤと特にロキが騒ぎ立てた宴会をそつなくこなし。

 

 

そして、興奮冷めやらぬ早朝。

騒がしいさが途切れない、そんな【ファミリア】を感じながら。

 

派閥の首脳陣は、朝食を終えて首領の執務室に集まっていた。

 

 

「アイズもとうとうLv6になりおったか。それにフェリアまでとはのぉ」

 

 

「あの娘やフェリアに触発され、ティオナ達もすぐに続くだろうな。……アイズやフェリアのように無茶をやらかさなければいいが」

 

 

「はは、まぁ周囲の士気が上がるのはいいことだよ」

 

 

「うん、戦力アップは必要」

 

 

ガレス、リヴェリア、フィン、そうしてフェリアがそれぞれ言葉を交わす。

フィンは己の執務机につき、リヴェリアとフェリアは隣同士で壁際にたたずみ、ガレスは木製の丸椅子に腰を落としていた。

 

 

「フィン達もうかうかしておれんとちゃう? 古参の面子を潰されんようにな~」

 

 

「な〜」

 

 

そうして、神ロキを含めた5人。

とリヴェリアに寄りかかりながら野次を飛ばすフェリア。

 

それに対しては瞑目や苦笑など、それぞれの反応を返す。

 

 

「じゃ、そろそろ始めようか、極彩色の『魔石』にまつわる話。最近どたばたしとったし、詳しい情報を交換しとこ」

 

 

まとめるとこうだ。

 

 

50階層の新種、並びにフィリア際のモンスター、それを操る調教師の女。

そうしてモンスターに寄生する宝玉と黒ローブの存在。

 

『アリア』の名を知る理由。

 

 

「大量のモンスターを手懐け、一般的な知識には疎い……まるで」

 

 

そう、まるでモンスターだと。フェリアは口には出さなかったが、追求したリヴェリアを断ったところを見ると私の考えていることと同じようだ。

本当に、絵空事。荒唐無稽で論議に値しない。

 

 

「んー、黒ローブの方はどうなん?」

 

 

そう私を見ながら尋ねるロキ。

 

 

「多分、Lv8、、に届くと思う」

 

 

「「「「ーー!」」」」

 

 

そのフェリアの回答に驚愕が生まれる。フェリアの戦闘経験からなる観察眼は【ファミリア】随一だ。

フィンもリヴェリアも最後に見た雷だけでは判断材料が少なかった。

それ故にフェリアの言葉に全員の瞳に真剣さが宿る。

 

Lv8ともなれば脅威どは跳ね上がる。あの時代でも上澄みも上澄み。一人で戦況をひっくり返してあまりある戦力であることは明白だ。

 

 

「分かった。その対策は後に考えよう」

 

 

「うん、その方がいい」

 

 

その後も話は続き、今後の遠征計画も話し合った。

アイズも呼んで話を聞こうとしたがなにやらダンジョンに向かってしまったようだった。

 

 

「『魔剣』と人数分の特殊武装……ははっ、わかっとったけど、こりゃ相当金が飛ぶなー」

 

 

「すまないね、ロキ」

 

 

「ええって、全部フィン達に任せっきりやしな」

 

 

「大丈夫、、ロキ。私稼ぐよ」

 

 

「あかん、フェリアたんっにそんな卑猥なことさせられへ、、」

 

 

「何を考えている!馬鹿者」

 

 

今もリヴェリアの横で肩にもたれかかっていたフェリアを気ずかいながらも不埒な発言をする神に向かってその護身用の杖をもって脛を叩く。『撫でた』だけとはいえLv6の膂力をもってして行われる早業に「〜〜〜〜〜〜!!!!」と声にならない絶叫を上げながらのたうち回るロキ。

 

 

「はは、さて、僕達もそれぞれの役割をこなそう」

 

 

「私達も『遠征』の準備に取りかかるか」

 

 

「うん」

 

 

そういって私達は解散してリヴェリアと遠征の費用や書類整理を行っている時だ。

 

ふと、フェリアの頭の中に先程の会話が蘇る。

 

 

『でも、アイズを『アリア』と呼んだ……母親と間違えたのは気になるな』

 

 

アイズの母親である風の大精霊アリア。

 

何故敵はアリアを知っている?どうしてアイズをそう呼んだ?

 

1000年以上前に存在した精霊の名を知る、、そして己の右腕が痛む原因。

 

アイズ、、アリア、、赤髪の女、、黒ローブ、、宝玉、、。

 

 

「精霊?」

 

 

「ん?精霊がどうした?」

 

 

霞がかった思考の中でたどり着いた答え。

全くもって確信のないそれ、思考が頭の中の自分がそんなことあるはずないと叫んでいる。

 

「ううん、大丈夫」

 

 

私は、その考えをありえない話と断じて懐にしまい込んだ。

 

 

 




ね、眠い。

走り書きで所々おかしい所があるかもしれません。

また、気が付きしましたら教えてください。

感想励みになります。ありがとう!!
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