オラリオの黄金鳥   作:逆戲愛薙

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最近何を綴っても上手くかけていない気がして消しては書いての繰り返し……。

とりあえず、物語を進めることを意識しているので早足です。


暇な時にでもどうぞ。


11話

 

燃える灼熱。

 

 

外界と閉ざされた別世界。

 

 

地上よりはるか底。

 

ダンジョン59階層。

 

 

そこは幻想的に揺れる赤紫の獄炎が地面を今も焼き続ける。

 

 

地獄と化している。

 

 

 

地面から突き出した無数の杭の様な触手からは無造作に浮かび上がる魔法円が今か今かと高まる魔力で臨界を迎え、まるで花畑のように花を咲かせている。

 

喉と肺が焼けつく感覚が、息をすることさえも億劫にさせる。

 

凍てつく氷柱が肌を通り抜け瞬時に凍結し突き刺すような痛みが走る。

 

 

全てを塗りつぶす火砲の轟音。

 

 

七色の光が世界を覆う。

 

 

 

最高峰の魔道士の砲撃? 戦いの野?

 

 

 

否、、

 

 

人という括りでは到底引き合いに出すことは許されぬ超砲撃。

 

 

四方八方上下を含む360°全方位砲撃。

 

 

そしてその最奥に鎮座する穢れた■■。

 

 

分断された逆サイド。

 

 

今も轟音が鳴り止まぬ壁の向こうを睨み敵に向き直る。

 

腰を落とし、刀を上段に構えをとる。

 

血液が沸騰するような感覚と共に体から湯気が立ち上り、心臓の音は次第に大きくなっていく。

 

 

だからこそ最速、最短、一直線で削り殺さなければこちらが殺される。

 

 

 

「剣神、、フェリア・アーディライト。押して通る」

 

 

 

 

 

 

 

時は進み遠征当日。

 

 

 

「準備は済ませたか?」

 

 

「うん、、リヴェリアの方は?」

 

 

「問題ない」

 

 

「じゃ、行こっか」

 

 

私の私室まで迎えに来てくれたらリヴェリアと共に本拠を出発する。

 

街を歩くだけで私達【ロキ・ファミリア】は視線を嫌でも引く。少しリヴェリアの影に隠れながら歩くこと数十分。

 

オラリオの中央区。巨大な塔が空高く伸び中央に存在するダンジョンに蓋をしている。

 

今回の目的は到達階層の更新。今世界は男神と女神の失脚後、ダンジョン攻略という命題は誰もが望む悲願の一つでもある。

 

 

それに、あの女の言葉。

 

 

『アリア、59階層に行け』

 

 

何が待ち構えていたとしても、、

 

 

左腰に刺さる愛刀に手を乗せる。アイズ達に降りかかる火の粉は私が斬払う。

 

 

「遠征隊、出発だ!!」

 

 

フィンの掛け声と共に【ロキ・ファミリア】の遠征がスタートした。

 

 

ダンジョン遠征において先遣隊の第一部隊は錚々たるメンバーで構成されている。

 

 

私、を初め第一級冒険者が八名。それと第二級冒険者が複数名で構成されている。

 

このメンバーならば深層のイレギュラーにだって対応できるだけの戦力がある。

 

まぁ、こんな上層でそんなイレギュラーが起こる訳もなく。

 

それに、今回の遠征に至っては他派閥の力も借りる合同遠征の意味合いも大きい。

前回の遠征で武器の摩耗による遠征の断念からフィンが神ヘファイストスに協力をしてもらい。複数の上級鍛冶師を借り受けている。

 

とりあえずは、何事もなく50階層まで着ければ、、、

 

 

「ほー、【ヘファイストス・ファミリア】の連中なら、間違っても足手纏いにはならねえな。安心した」

 

 

「はい出たー。ベートの高慢ちき」

 

 

ほら、始まった。

 

 

こうしていつもベートが反感を招くような言動を取り周りがそれに噛み付く。

 

いつもの光景が繰り広げられている。

 

 

「俺は弱ぇ奴が大っ嫌いなだけだ。何もできないくせにヘラヘラしやがって、吐き気が止まらねえ」

 

 

「強者の位置に立った者の驕りにしか、私には聞こえんな」

 

 

「そうだよ、ベートだって弱っちい時があったくせにぃ」

 

 

「身の程を知れって言ってんだよ。俺は、なぁフェリア」

 

 

「私に振らないでよ」

 

 

「フェリアはどう思う?ベートの方が間違ってるよね!」

 

 

ほら、めんどくさい。

 

ブーブーと口を窄めながらティオナが私に詰め寄ってくる。

 

 

「私は、弱い者でも、強い者でも、どちらの味方でもないよ。ただ、私は立ち上がる者の味方なだけ」

 

 

「立ち上がる者?」

 

 

「、、、、、」

 

 

英雄達の時代から続く、試練の系譜。

 

どんなに打ち砕かれようが壊されようが踏みつけられようが、最後に立ち上がる物が前に進めるのだ。

 

 

「ベートと私の考えは本質的には似ているよ。泥を啜ってでも立ち上がった者にだけ明日があるんだ。私はそんな者の味方だよ」

 

 

「えー、絶対ベートはそんなこと考えてないよ」

 

 

「おい、バカゾネス。誰が何も考えてねぇだって?」

 

 

「いい加減辞めろ2人共」

 

 

ママの雷が落ちる前に撤退だ。

 

 

そんなこんなで後ろで狼とアマゾネスがわちゃわちゃと喧嘩を繰り広げる楽しい楽しい遠征は50階層まで続くと思われたそんな時だった。

 

 

「あの、白髪のガキが、、、」

 

 

少し前方でフィン達がなにやら冒険者と会話をしているのを遠目で見ていた時だった。

 

 

駆け出す。金の閃光がダンジョンを疾走する。

Lv6の加速は容易に部隊を置き去りにする。

 

 

「アイズ!」

 

 

「何やってやがる!?」

 

 

遥か後方に置き去りになるティオナとベートの声。鬼気迫るその横顔を見たフェリアは瞬時にフィンとアイコンタクトを取る。

 

頷くフィンをその視界に収めた直後。

 

Lv7の俊敏が開放される。

 

都市最速と歌われるベートでさえもその姿が霞むほどのスタート。一歩で最高速度に到達した私は、正規ルートを恐ろしい速度で進むアイズをすぐ視界に捉える。

 

ひたすらに地面を蹴り加速し続けるアイズ。

 

その隣に並ぶように走る。

 

 

「ん、、!フェリア」

 

 

明らかに動揺が見えるアイズの表情。

 

どうやら、先程の会話がアイズにとっ部隊を離れてでも先行する理由なのだろう。

 

今までこんな顔を見たことがない。

 

 

だから私は、、

 

 

「理由は、、聞かない」

 

 

「ーーー!」

 

 

「一刻を争うんでしょ。走って」

 

 

「うん!」

 

 

信じることにした。可愛い妹の事を。

 

きっとこれを聞いていたらフィンとりヴェリアは頭を抱えるだろうが仕方がない。

 

後で私がしっかり怒られるとする。

 

 

恐ろしいまでの速度で進軍する二人は最速で9階層に到着する。

 

外壁の構造が変わった直後、明らかに不自然なまでの静寂。

元より上層は冒険者の数も多く、何処からでも剣を鳴らす音やモンスターの声が聞こえるものだ。

 

まるで、なにかに怯えるようにダンジョンが静まり返っている。

 

そして、1つ遥か彼方から聞こえる猛牛の声。

 

 

(ミノタウロス?)

 

 

Lv7の人間離れした聴覚が異端の存在を認識する。それを捉えたのはアイズも同じようだ。

再度、フェリアの中で事の重要性が更新される。

 

ミノタウロスは15階層以下でしか生まれないはず。9階層に現れれば死人が何人も出る!

 

音の反響から大体の位置を割り出しはフェリアは瞬時に走り出し、最短ルートを選択させる。

 

 

「アイズ!」

 

 

「うん!」

 

 

迷宮内を疾走していると、正面に血まみれの小人族が現れる。

 

 

「冒険者、様。どうか、、、どうか助けてください」

 

 

割れた額から今も血を流し、瞳の視点が定まらない彼女は、それでも懇願するように声を荒らげて叫ぶ。

 

 

「!?」

 

 

「あの人を、ベル様を助けてください」

 

 

その声にアイズは彼女を抱き抱える。

 

 

「場所は!?」

 

 

「正規ルート、E-16の広間」

 

 

ギルドで公開されている地図情報、広間ごとに割り振られている地域番号を聞く無いなや走り出す。

 

少女の献身的な血の足跡を辿るように幾重もの広間を疾走する。

 

今もアイズの腕の中で助けを懇願し続ける彼女を一瞥してさらに速度をあげる。

 

 

そして、目的地の広間目前、その最後の広間に差し掛かった時だ。

 

 

「止まれ」

 

 

一人の猪人の声にその足が止まる。

 

眼前に広がる空洞、その最奥に鎮座する男が一人。

 

【フレイヤ・ファミリア】 団長。オッタルの姿がそこにはあった。

 

 

「オッタル、、、」

 

 

「フェリアか、、」

 

 

そこには巌のような巨躯。男神と女神の時代から共に研鑽を続けてきたよく知る顔がお前も動くなと警告を発している。

 

 

アイズが一歩前に出る。

 

 

「通して、、くれない?」

 

 

「、、、言葉はいるまい」

 

 

ガシャン!!と巨大な大剣がベルと言う冒険者が今も死闘を繰り広げているであろう広間に通じる通路の中央に突き刺さる。

 

オッタルの行動に少し驚くフェリアだったがその行動には心当たりがない訳ではなかった。

少し前のことだ。怪物祭の時に受けた【フレイア・ファミリア】の警告。

 

 

一貫して言葉に出る白髪の少年。

 

 

アイズが最近、朝早くから足繁く通う城壁の上で行っていた特訓。

酒場で一目見た少年だと答えに行き着くことは容易だった。

 

だからこそ、あの女神が行おうとしていることにも辿り着くことは必然だった。その為のお膳立ても彼の目的も。

 

 

「、、、、、」

 

 

少女を床に下ろし、愛剣を構えるアイズ。少女を守るように刀に手を添えるフェリア。

 

 

正真正銘の都市最強の冒険者。オラリオに君臨する『頂点』の一人。そして、フェリアと同じLv7。

 

戦えばタダではすまない。それはアイズが1番理解している。

 

それにフェリアは手は出せない。

仮にも派閥同士の最高位の二人が戦えばそれは両ファミリアの抗争にまで発展する。

 

 

助けはない。

 

 

でも、、、それでも!

 

 

「そこを!どいて!」

 

 

都市最強と謳われる二人の冒険者が激突する。

 

 

強烈な踏み込み。最速今も地面に寝かされた少女の肉眼では到底視認することすら叶わない超高速戦闘。

 

残像が現れては消えそれと同時に遅れてやってくる金属同士が打ち鳴らされる音と火花を認識する。

 

フェリアの目が今も観測し続ける夥しいほどの連続斬撃。

 

それを猪人は意図も容易く防ぎ、いなしては弾かれる。

 

アイズから放たれる一撃一撃はどれも必殺を秘めるほどの出力。

それを武人は正面から堂々と受けきっている。

逃げることもなく一歩も引くこともなく受け止める。

 

一寸でも狂えばたちまち切り刻まれる烈迅をその圧倒的技術を持ってその全てをねじ伏せる。

 

 

「その動き、そうか新たなる高みに至ったか」

 

 

知り得もしないはずの昇華をその身で受けることで感じ取った武人は賞賛の言葉と共にその一切合切を受け止めては打ち砕く。

 

 

「っ!!」

 

 

その差を、圧倒的なまでの技術にアイズは目の前の猪人がまるで巨人のようだと錯覚してしまう。

 

 

次元が違う。

 

 

Lvの差がいや、積み重ねた研鑽の密度が違う。

 

 

大剣という武器のデメリットすら押しのけ細剣よりも速く、そして繊細さをも合わせ持つ剣技に戦慄する。

 

 

時間にして一分にも満たない攻防。

 

 

打ち合うこと数十。

 

吹き飛ばされること三度。

 

 

一刻とタイムリミットが迫る中アイズが出せる最大火力を持って押し通る。

 

 

「【目覚めよ!!】」(テンペスト)

 

 

爆風が身を包む。

 

溢れ出る力に己の膂力を乗せる。

 

壁を幾度となく蹴り上げ足場とした高速戦闘。

 

 

それでもなお。

 

 

「足りない」

 

 

フェリアの瞳には魔法を行使するアイズの烈火の如き剣戟をその出鱈目な『強さ』を持ってして撃ち落とす。

 

その身を焼き続けた軌跡が『猛者』を底が見えぬ傑物に押し上げる。

 

男神と女神(ゼウス・ヘラ)の時代から浴び続けた泥がその経験値が糧となって谷のようにアイズと猪人の前に現れる。

 

 

紛れもない今代の『英雄』。

 

 

フェリアと同じく神々に認められし『器』。

 

 

しかし、、

 

 

「ーーーッ!!」

 

 

相対する彼女も又。

 

 

「リル・ラファーガ!!」

 

 

神々が認める『英雄』の『器』なのだ。

 

 

風が渦巻く。

 

閃光と轟音。

 

音よりも速くその身を走らせる少女は、少年の安否に顔を歪めながらその必殺を持ってこじ開ける。

 

 

「オオオオオオオオオオ!!!」

 

 

互いの獲物が触れ合い閃光が視界を遮る。

 

 

凄まじい威力の力と力がぶつかり合う。そのはずだった。

 

 

「そこまで」

 

 

「ーーー!!」

 

 

階層主すら屠る必殺の中に、まるで瞬間移動かのようにぬるりと現れたフェリア。

 

 

(ダメ!止められない!)

 

 

アイズの必殺はもう解き放たれている。今更止められない。

その瞬間、理解し難い現象が起こる。

 

 

双方の得物に手の平が添えられた直後。

勢いよくその身を回転させることで互いの必殺は空を斬り有り余る衝撃は地面を切り飛ばしては衰えず。

ダンジョンの外壁をも抉りとる。

 

 

「、、、、」

 

 

「ーーーー!!」

 

 

ありえない。

 

その驚愕がアイズの思考を止めた。

 

技と言われればそれまでだ。だが、それでもアイズの脳が違うと叫んでいる。

 

その真相を問いただそうか迷った時だ。

 

 

「走って」

 

 

その一言がアイズを非現実から現実に引き戻す。

 

一瞬の硬直。

 

その好機を逃さない。一陣の風になった金髪の少女は猪人が守り抜いていた通路口を疾走する。

 

それを見る彼の目は不快そうに歪んで見える。

 

 

「不服かな、私が動くことが」

 

 

「、、、、、」

 

 

「確かに、少年が女神の試練を乗り越えその魂の輝きを増すことに私は興味が無いわけじゃない」

 

 

「、、、、」

 

 

ならば何故だ?

 

そう言わんばかりに佇むオッタルは無言の圧力を放ち続ける。

 

 

「選択肢を与えてみたくなった」

 

 

「何故だ」

 

 

「もし、仮に彼女の手を取れば『器』足り得ない。今を超えたとていつか綻びがでる。それは少女の望むものにはならない」

 

 

その言葉にオッタルは何も言い返さない。その代わりに瞳をつぶり何かを考えているのか思っているのか、立ち尽くす。

 

 

「でも、手を跳ね除けたなら」

 

 

「、、、、」

 

 

何か納得したように瞳を開けたオッタルと見つめ合う。

 

 

「『英雄』になり得ると思わない?」

 

 

数秒見つめあったあと、オッタルは大剣を地面から引き抜き歩き出す。

 

数歩、進んだオッタルはその足を止め振り返る。

 

 

「そんなことは、、理解している」

 

 

「だよね」

 

 

「あの方の、寵愛に応えろ」

 

 

そう残して去って行くオッタルの背中を私は見つめ続けた。

 

 

その後、合流したフィン達にオッタルの事を聞かれたがいきなり修練の成果を確かめると言って絡まれたことにしておいた。

 

『魔法』で治療を終えたリヴェリアに少し睨まれたりもしたがとりあえずはアイズの後を追うように広間を抜けた。

 

 

その先で私達が目撃した物は、眷属である以上、冒険者である以上。

 

誰しもが通る道であり、乗り越えるべき壁。

私達の心でさえも揺さぶる。

 

 

 

 

『冒険』そのものだったのだから。

 

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