オラリオの黄金鳥   作:逆戲愛薙

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どぞ


9話

 

 

フェリア・アーディライトという少女はいたって平凡だ。

 

身長は高く整った顔は少し目を引くがそれまで、どこにでもいる村娘と言われても誰も疑わないだろう。

 

フィン達がオラリオに来た時、彼等の後をついて回る小娘を遠目から見たオッタルの第一印象は『非才』だとそう思った。英雄の都にそぐわない幼気な少女。

 

全てにおいて劣っていると感じた。

フィン達の後を追い続ける少女を憐れだと思いもした。

 

そしてそれはオッタルの予感どおりの結果を小娘に叩きつけた。

 

何度、ダンジョンに挑もうと、ボロボロになり震える足で何度歩いている姿を見かけたがついぞ少女のLvが上がることはなかった。それは保護者が同伴しているからだとかそういう問題ではなかった。

 

そんな小娘に興味があった訳ではない、ただ視界に入る事にボロボロになる姿に少しだけ頭の隅に止まっただけだった。

 

あの時は、オッタル自身よりも主神の方が興味を示していた。

少しだけ、ほんの少しだけ興味を持ったオッタルはある時、女神に投げかけた。

 

 

ーーなぜ、あの娘なのか

 

 

「死んでいるもの魂が」

 

 

帰ってきた言葉はオッタルの想像を超えるものだった。

退屈そうにしていた女神はワインを片手にそう答えた。

その答えに今でも強い衝撃を受けたことを覚えている。

 

 

「なんの手違いか、本来死んでいる魂なのよあの子」

 

 

世界にはある程度運命が定められた人間がいるらしい。この世界に生まれ落ちた時から決めれたレールの上を走らされている者がいると。

 

 

ーーそれが奴だと?

 

 

「そうよ。本来はどこかで死ぬ運命だったか、そもそもこんな所に来るような人間ではなかったか。それを何らかの奇跡かそれを破る者に出会ったか」

 

 

そんなことが出るきのは、神話の英雄ぐらいなものよ。

そういった女神は手元のワインを回し真紅の液体が照明に照らされて輝く。

女神はその後、運命とは大きな力で動かし続けなければどこかで結末は収束すると語っていた。

 

 

「まぁ、放っておけばどこかで死ぬわ。でももし違ったら……」

 

 

ーーー違ったら?

 

 

「それは、もう英雄と言える存在になっていると思わない?」

 

 

そうして数年してフェリア・アーディライトが剣神、レオナ・フェリディスの弟子になったと噂になった。

 

そこからは早かった。

 

数ヶ月でLv2になったフェリアはまるで、止められていた時が動き出したかのようにLv3まで駆け上がった。

 

名声はすぐさま広まり、あの男神と女神の眷属達でさえ一目置くほどの存在になっていた。

 

女神の宣言通り。運命をねじ曲げた少女は誰よりも早く英雄達と肩を並べた。

そうして、少女はその腕を見込まれて唯一【三大クエスト】に参加した。

 

 

そして、少女は陸の王に◾︎◾︎◾︎れた。

 

 

 

 

 

 

「はい、オッタル。私の手作りカスタードシュークリーム」

 

 

「、、、」

 

 

「みんなには内緒だよ?ヘイズと幹部分しか作ってないから」

 

 

そういって渡されたシュークリームと言われた甘味を手渡してきた。それはフェリアが作る甘味の中でも一際美味いとヘイズが絶賛していたものだ。

本人も受け取ったことを確認してから自分のシュークリームを口に頬張っている。

 

 

「師匠にはまだ追いつけそうにないね」

 

 

師匠とは剣神のことだろう。オラリオ始まって以来の神の技に手をかけた唯一の眷属にして人の身には有り余る力を手に入れた規格外の化け物。

オッタルやレオンも幾重にも挑み、ついぞ彼女に剣を抜かせることすら出来なかった。挙句の果てには箸や羊皮紙を丸めた簡易的な剣でボコボコにされた。傑物(マキシム)と対を成す【ヘラ・ファミリア】最強の眷属。

 

あの『才禍の怪物』をしてあれは人間では無い、と断言させる圧倒的な技を持って当時の【ヘラ・ファミリア】で女帝を差し置いて最強を欲しいままにしていた。

 

 

「奴の剣は天災そのものだ」

 

 

「そうだよね。そういう私は師匠とは正反対」

 

 

その身に受けてきたからこそ分かる。剣を抜かず手刀だけで斬撃を飛ばす剣神の斬撃はフェリアとは違い激しく重い一撃だった。

それに対してフェリアの剣は攻めよりも受けが強い。斬撃も剣神と違い水のように鋭く鋭利なものだ。

 

 

「もっと強くなるよ。そして黒竜を討つ」

 

 

「、、、」

 

 

あのボロボロで非才だった少女が今や己と同じ領域に立っている。

運命をねじ曲げ、逆らい続けることがどれ程の偉業かどれ程の茨道だったことかオッタルには理解が及ばない。

 

だが、『非才の少女』は今こうしてここに立っている。弱者だった彼女が己の運命を乗り越え強者として立ち上がった。

ならば、自分は先人たちのように背中を見せ続けなければならない。

 

 

「黒竜を討つのは俺だ」

 

 

「じゃあ勝負だね」

 

 

そういって変わらない表情の中にほんの少しだけオッタルは笑顔を感じた。

 

 

 

 

 

 

あれから数日、オッタルと調整という名の『洗礼』を続け朝起きて日が沈むまで戦う生活をしていた。

 

大体の感覚が戻ったのでフレイヤに礼をして、ヘイズに甘味と健康食を作ってから出てきた。

 

 

「フェリア〜、あの鬼畜エルフに殺される〜後猪をころして〜」

 

 

「無理、、」

 

 

「じゃあ結婚して〜!!結婚だけでいいからぁ〜!」

 

 

「やばい、ヘイズ様がご乱心だ!」

 

 

「『夜の黄金鳥』ここは私達が!」

 

 

涙目で呪詛のような愚痴を零しながら腰にまとわりついて離れないヘルンを剥がすのに一苦労した。

 

 

「さて、そろそろアイズ達が帰ってくる頃だと思うんだけど」

 

 

本拠の正門をくぐり中庭に向かって歩いていく、【フレイヤ・ファミリア】を抜けてきたのが早朝だった為、まだ寝静まっている頃合だ。

 

 

「、、、ん?」

 

 

Lv7になって更なる強化を施された聴覚が剣が空気を割く音を捉える。こんな時間から剣を振るような人間をフェリアは一人しか知らない。

そう思って足速に中庭を目指す。

 

日が登り始めた日差しが目元に差し込み眩しさを放つ。

 

空中廊下の下を抜け中庭に出る。そこには、金髪の髪を揺らした、、、少女が。

 

 

「あれ、フェリアさん?」

 

 

「、、、『超凡夫』」

 

 

「ラウルっすよ!そろそろ名前で呼んでくださいよフェリアさん」

 

 

「いや、名前呼びは…恥ずかしくて」

 

 

「いや、年齢考えてくださ、、」

 

 

おっと手が滑った。

 

 

「無言で斬りかかるのやめてー!」

 

 

そりゃあ、女の子に年齢の話をすれば斬られて当然だろう。

リヴェリアに同じ話をしてみろ何故か耐久を貫通するゲンコツをお見舞されることになる。

 

 

あ、ソースは私。

 

 

それにしても、ラウル・ノールド。確か、同時に入団したのは貴猫だったか。この二人はよく覚えている。あの年の入団試験の担当は私だったからな。

 

唯一合格したのはこの二人だけだった。

それにしても、よく鍛えられている。服の上からでも分かるおおよそ凡人に出来る努力の結晶。自分のもてる全てをつぎ込んでいることは見ただけでわかる。

 

まるで、『昔の私』を見ているようだ。

 

 

「『超凡夫』、、はもうLv4だもんね。少し前に入団試験した気がするのに」

 

 

「いや、もう7年も前っすよ」

 

 

「それでも、私にはこの前の記憶だよ」

 

 

「そうっすか?」

 

 

彼がひたむきに努力していることを私は知っている。貴猫がよく夜遅くまで数多の武器を一心不乱に振り続ける超凡夫をテラスから眺めているのを見ていたからだ。

 

本人は己の実力に自信がないようだが、十分今のままでも【ロキ・ ファミリア】の中では上位に食い込む実力を持っているはずだ。

 

それに、彼には彼なりの役割がある。

ファミリアにとって必要不可欠でそれぞれに必要性がある。

誰一人として【ロキ・ファミリア】に不必要な人間はいない。

 

 

「『超凡夫』、時間ある?」

 

 

「大丈夫っすけど」

 

 

「今から、私が相手になってあげる」

 

 

「そ、そんな俺の為なんかに、フェリアさんの大事な時間を取るなんて」

 

 

「ラウル・ノールド」

 

 

「ーーー!」

 

 

構えろと、私はツクヨミに手を添える。それだけでラウルはロングソードをこちらに構えろ戦闘態勢を取る。

 

上出来だ。自分に対する危機感知能力がよく育っている証拠だ。

 

 

「、、、行くよ」

 

 

そっと優しく、地面を撫でるように蹴り出す。

 

それだけでラウルとの距離をゼロにする。

 

 

「ーーー!!!」

 

 

刀と剣が衝突する。

 

Lv4でも追えるギリギリの速度で肉薄しギリギリ全力で受け止められる力に調整して振るったツクヨミをラウルがすんでのところで受け止める。

 

それでも、重さとスキルの差でラウルが負ける。

ツクヨミの超重量と万力の膂力がラウルを剣ごと震わせる。

手から伝わる衝撃に苦悶の表情を浮かべるラウル。それでも、しっかりと受けきれているいい感触だ。

 

続けざまに連撃。調整を終える前ならラウルは今頃明後日の方向にぶっ飛んでいたことだろう。

 

そんなこともなく、今もツクヨミとロングソードは火花を散らしながら切り結ぶ。

 

そのどれもが適切な防御をして受けなければ切り裂かれる絶妙な力加減と角度でラウルに振り下ろす。受け損ねた箇所が増え、ラウルの体を少しづつ切り裂いていく。

 

比嘉の戦力差はLv7とLv4、歴然とした差が存在する。それでも、ラウルには超えてもらわなくてはならない。絶望を、地獄を。乗り越えて踏み潰して進んできてもらわなくてはならない。

 

師匠が私にそうしてくれたように全てをねじ伏せて凌駕して、常に限界に晒し続ける。

 

一際大きくぶつかり合いお互いに視線を交わす。

最初こそ多少ツクヨミに切り裂かれていたラウルだが、私の意図が通じたのか適切に対処することで私と切り結ぶことが出来るようになってきている。

 

視線の端でアナキティの息を飲む姿が見えたが、今は目の前の弱者と語り合う時だ。

 

一瞬を置いて、仕掛けてきたのはラウル。

 

 

「うぉおおお!」

 

 

ひたすら防御に回っていたラウルが一転して攻めに出る。

Lv4の全力の連撃を正面から封殺する。舞い散る火の粉が刀とロングソードの軌跡をなぞるように空中に現れては消えていく。

 

それでは崩せない、崩されない。レベル差という力でねじ伏せるのではなくラウルにも分かりやすいように技でねじ伏せる。

 

スキルや魔法が強さを決める指標でない。確かに分かりやすい強さだが、それが全てでは無い。ないものはない。ならば彼は技で上を行くしかない。

身も凍るような絶望と地獄から自分自身をそして仲間を守るには立ち上がり走らなければならない。

 

 

「ーーっ!」

 

 

太刀筋も悪くない、圧倒的な【ステイタス】第二級冒険者の力に振り回されない立ち回り。フィンの指導がよく行き届いている。

でも、足りない。半身をずらすだけでラウルのロングソードは私を捉えられずからぶる。

 

 

「くッ!」

 

 

「疑問と焦燥、顔に出すぎだよ。ラウル・ノールド」

 

 

何度ロングソードを振るってもフェリアの輪郭を捉えることすら出来ない。全てが紙一重で避けられるかいなされる。

 

 

「私は師匠譲りで感覚派だ。もっと滑らかに動け、常に最適解を選び続けろ。思考を回せ、考え続けろ」

 

 

「はいっす!」

 

 

バカ正直に打ち合ってくれる敵などほとんどいない。

ダンジョンの殺し合いも人との殺し合いも、時間をかけていられない。

最速で、最短で目の前の障害を取り除かなければないらない。それが少し遅れれば仲間の命を失うことになる。

 

適切な力で適切な向きで、適切な速度で振るえば確実に相手を葬れる。師匠からの受け売りだが本当にその通りだと私も思う。

 

切り結ぶこと数十。とうとう初めてラウルのロングソードがフェリアを捕らえて初めてツクヨミで防御させる。

 

 

「今のは良かった」

 

 

「よっし!」

 

 

「じゃあギア上げるね」

 

 

「え?」

 

 

少しツクヨミを押し返す。

それだけで、先程まで切り結べていたことが嘘かのようにラウルの体が中に浮かされる。

 

 

「ちょ、ちょちょ待ってフェリアさ、、」

 

 

「シッ!」

 

 

目に迫る漆黒の刀が視界をめいいっぱい覆い隠したあと、ラウル・ノールドの意識は綺麗さっぱり刈り取られた。

 

 

「あれ?」

 

 

白目を向いて泡を吹いて倒れる『超凡夫』見て?マークを頭の上に浮かべるフェリア。

それを見ていた貴猫が飛び出してきてラウルに駆け寄ってきた。

 

 

「だ、大丈夫!?ラウル!」

 

 

「あ、アキ。お、俺見つけたっす、、よ。ガクッ」

 

 

「ラウルーー!」

 

 

おかしい、師匠はいつもこうやって私に修行を付けていたのだが、、、。

 

なにか間違ってしまったのだろうか?

変わらない表情とは裏腹に心の中のフェリアは頭を抱えてしまっていた。

 

 

そう、この女。

 

何を隠そう。今の今までまともな修行など行ったことなどないのである。

あのアイズをして、フェリアの修行、、過酷?違う、地獄だよ。と言わしめるほどの苛烈を極める。

フェリア・アーディライトの今までの修行のモデルケースはオッタルやあの英雄達(ゼウス・ヘラ)である。それは根っからの叩き上げ。ぶちのめされて立ち上がってはぶちのめされるの繰り返しである。

 

 

「『貴猫』」

 

 

「は、はい!」

 

 

「お前達は、素質がある。自信を持て、、と『超凡夫』にも伝えておいて」

 

 

「あ、、ありがとうございます?」

 

 

さて、ここは『貴猫』に任せて。ちょうど時間もいい感じななので朝ごはんを食べてゆっくりでも、、、

 

 

「アイズたんLv.6キタァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

「うるさ」

 

 

 

 

 

 





また、お休みの日に書きます〜


感想凄く励みになります!ありがとうございます!
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