アリウスの象徴は今日も死んだ顔で仕事をしている 作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。
多分あと1,2話でリオifルートは終わると思います。
突如として変化したモニターには『Divi:Sion』という文字が光る。誰もがモニターに意識を向ける中、リオは目の前の現象から一つの結論に辿り着いていた。
「ハッキング……?まさか、コレは……」
頬を冷や汗が伝う。
「がああああああ!!!!」
"なっ!?"
「トキ!?」
普段は無口のトキが大声をあげ、その苦しみを少しでも紛らわせるためか頭を押さえながら大きくかぶりを振っている。明らかな異常を前に彼女も声を荒げた。
「リオ!アビ・エシュフの頭脳はどこ!?」
「っ、ヘッドマウントディスプレイよ!」
「了解!トキ!目を瞑って!」
彼女の意図を理解したリオが端的に示せば彼女はアサルトライフルの銃身を持つよう逆向きに構え、苦しみ悶えるトキのヘッドマウントディスプレイに向かって横から銃床を叩きつけた。
「ぐっ!!」
勢いそのままにヘッドマウントディスプレイは壊れ周囲に破片が飛び散る。床に転がった残骸はバチバチとショートしており、やがて何も起こらなくなった。
苦しむ声が収まったトキは壊れたヘッドマウントディスプレイを外して手で目の周りを払い、ゆっくりと瞳を開ける。その目には理性が灯っているが疲労やダメージが蓄積されているように見える。
「先輩、助かりました……うっ……」
「トキ、大丈夫かしら。考えることはできる?私達は見えてる?」
「はい……大丈夫です、リオ様」
"今のはいったい……"
トキの無事を確認できたリオはタブレットを取り出して操作する。素早いがどこか乱雑で、その手の動きは普段のリオらしくない。そして、いつしかパタリと手が止まった。
「……やられた。AL-1Sが本格的に動き出してしまったようね。エリドゥがハッキングされようとしている。いえ、むしろハッキングどころか、ナニカに作り変えられていく……?」
「……リオ」
「……もうエリドゥは敵の手に落ちたと言ってもいい、後は時間の問題よ。エリドゥの演算機能を用いていたアビ・エシュフもその影響を受けたのだと思うわ」
「……急ごう。まだ間に合うかもしれない」
「その期待は……いえ、そうね。ここまできたらやれるところまでやるしかない。トキ、行けるかしら」
「もちろんです」
リオはエリドゥとは接続していないAMAS*1を呼び出し、自分達の周囲に配備させる。
トキはエリドゥの演算機能を前提に作られていたために使い物にならなくなったアビ・エシュフをその場に脱ぎ捨て、リオの隣に並び立つ。
「先生、貴方まで来なくてもいいわ。この先は危険だろうから」
"な、なんで、危険なのは君達も一緒じゃないか"
「私達はこうなることも覚悟の上でここに立っている。現状は想定の中でも最悪だけれど……貴方まで私達に付き合う義理は無いわ」
向き合う三人と一人。先生を遠ざけようとするリオに、まるで見定めるかのように静かに見守っている二人、それらを一身に受け止める先生。その間にある空間はたったの一歩か二歩か、けれどその距離があまりに遠い。
言葉の節々から伝わる意識の違いに認識の違い。アリスを思っての自分達の行動は果たしてどれだけの影響を与えたのだろうか。それが裏目に出ているのではないか。着いていくことでまた悪影響を及ぼすのではないか。
先生の頭の中でグルグルとネガティブな思考が繰り返される。それでも、危険な場所へ向かおうとする生徒達を置いて逃げるなんて選択肢を取れるはずがなかった。
"……いや、私も行くよ。きっと、私にも責任はあるんだ"
もうヴェリタスとの通信が繋がらなくなったタブレットを仕舞い込み、置いていかれまいと三人に近付く。時間が無いからか、はたまた興味など無いからか、歓迎も拒否も無く四人は目的地へと向かう。
だが、アリスの居るはずだった部屋は既にもぬけの殻だった。
「居ない……!?さっきまでここに居たはず……」
「リオ様!」
"これは、あの時の……!!"
部屋の入口で呆然と立ち尽くすリオだったが、廊下の奥からは蜘蛛や海月のような姿をした謎の機械達が前進してきていた。圧倒的な数で廊下を埋め尽くすようにズラズラと行進してくる様は圧巻としか言いようがない。
全長1m程の四足歩行の蜘蛛型が前方に並び、全長4〜5m程の白と黒の丸いボディに不気味な触手のようなものを携えた海月型がその後ろを追う。それぞれの中心にあるレンズのような部位は目のような役割を果たしているのか、その全てがこちらを見据えている。
各々が臨戦態勢になるが、謎の機械群の奥から見覚えのある一人の姿が見えた。特徴的な床まで引き摺る長い黒髪にミレニアムの制服、探していた人物その本人がやって来た。
"アリス!!"
思わず呼びかける先生だったが、その声は無機質な空間に悲しく響き渡るのみ。向こうからの返事はわずかな期待すら持たせてくれないほどに冷たく、無機質だった。
「アリス?私はアリスではありません。個体名を'key'。そして、'王女'もアリスではありません。そのような名称など不要です」
"っ……"
瞳は青から赤へと変化し、淡々と告げるその口調と主張は目の前の存在がアリスではないと確信させるには十分すぎる。想像はしていたがそれでもショックを隠し切れない先生は二の句が継げなかった。
「……お前の目的は何?このロボット共は?」
「……」
彼女は視線を逸らさず、一切の油断もせずに問いかける。だが、相手から返ってくるのは無機質を通り越したひどく不快そうな視線。
「あなたが居なければ、もっと簡単に事は運んだというのに」
「……何?」
「あなたは英雄にはなれなかった。あなたの
「アトラ・ハシース……!?」
彼女はコード名に反応したリオを横目にkeyの言葉の意図を探るが、間もなくkeyは左手を前方に伸ばし謎の機械群に命令を下した。
「
すると、廊下を埋め尽くしながらkeyの周囲に位置取っていた数多の機械達のレンズが同時に輝き出し……
"マズい!一斉攻撃してくるよ!"
「退いて!狭い廊下では逃げ場がないわ!」
リオがAMASを前方へ配備する。射線を遮ったのも束の間、一斉に紫の光弾が発射された。
ダダダダダダダダッッ!!!!
「くっ、走って!」
全速力で駆ける四人の背後から聞こえてくる光弾の発射音に着弾音。AMASが文字通り壁となっていなければ蜂の巣になっていたのは自分達だろう。リオは退いていく自分達と入れ替わるように次から次へとAMASを前方へ送る。既に前線では耐えきれなくなった個体が破壊される音も混ざり始めていた。
「……待って、この先は……」
自分達が来た道を引き返した先に何があるのか。狭い廊下を抜けてリオと合流した部屋すらも越えた先で、自分達は先程まで何をしていたのか。
それを思い出す頃には、既にその場に辿り着いていた。
"み、みんな……"
倒れ伏すゲーム開発部とC&Cのメンバー。先程彼女とトキが倒した面々がそこにいた。四人の足が止まる。
「……リオ、どうする?」
「リオ様」
リオのAMASの多くは壁となってその役割を終えた。ここはエリドゥの上層、この人数で悠長に全員を運び出す余裕など無い。ならば、置いていくのか。意見が対立していたとはいえ同じ学校の、ただの生徒達を。
判断はリオに委ねられた。託された。今回の計画の首謀者である、リオに。どんな残酷な決定でもおそらく二人は賛同するだろう。もう既に分岐路は過ぎ去った。迷う時ではない。
5秒と経たず、リオは決断した。
「どうしようもないわ。ここを最終防衛ラインとしましょう。AL-1Sが覚醒しエリドゥが掌握された以上、なんとかここから逃げ出したところで未来などないのだから。ここで迎え撃つわ」
「「了解」」
"リオ……"
「……先生、申し訳ないのだけれど今は貴方の力も必要よ。手を貸してくれるかしら」
"もちろん。やれることはやるさ"
そうしてゲーム開発部とC&Cのメンバーを一箇所に集め、皆を囲うようにAMASを配置した。先生をその前に立たせ、残った数少ないAMASとトキとリオ、そして彼女が前線に立つ。しかし、リオは顎に手を当てて思案していた顔を上げ、彼女へ告げた。
「貴方は別行動よ」
思わずリオの顔を伺う。彼女だけでなく、トキや先生までも。
「……なぜ?正直、この中では一番の戦力だけど」
「貴方にはアレを使って欲しい」
「……アレ?……ああ、アレ。でも、トキのアビ・エシュフは駄目だった」
「アレはエリドゥと接続していないからおそらくだけれど大丈夫よ。AMASが今も私の指揮下にあることがその証明になっているわ。むしろ、今一時的に貴方が抜けるデメリットよりアレを使った貴方が参戦してくれるメリットの方が大きいと思うの」
「……了解。ここは任せる」
彼女は言うが早いか反対方向に駆け出した。一部が壊れた貨物エレベーターの横を通り過ぎ、階段を駆け下りていく。
そして、その姿は見えなくなった。
"良かったのかい?あの子が居なくても"
「ええ、今言った通りメリットの方が大きいと判断したわ。それに、彼女ならばきっと一人でも辿り着ける。後は私達がどこまで耐えられるかにかかっているのだけれど……」
「先輩が居なくともこの私が居るので大丈夫ですよ」
「ふっ、そうね。頼りにしているわ。先生も、指揮は得意なのでしょう?」
"ああ、少しでも力になってみせるよ"
「少しでも戦力を増やすため、壁にしていたAMASの一部を後退させるわ。準備はいい?」
「もちろんです」
"いつでもいいよ"
「……今AMASを後退させた。二人とも、戦闘開始よ」
こうして、
急げ、急げ、急げ、急げ!!!!
止まるな!!休むな!!足を動かせ!!あの数相手に三人と少しのロボットでなんとかなる訳がない!!あの場の最高戦力であるトキだって既にアビ・エシュフを失ってるし、さっきのダメージがまだ抜けてないはずだ!!本格的にマズい!!
逸る心に従い全速力で目的地へと向かう。その頭の中ではkeyの立ち振る舞いとその言葉に意識が割かれていた。
あの目、明らかにアリスとは違ってた。色だけじゃない、雰囲気も、視線も、何もかも。アリスはどこにいった?入れ替わってるだけか?それとも乗っ取ったのか?クソッ、結局アリスは駄目だったのか?
王女?アトラ・ハシース?リオだけは何か理解していたみたいだが俺には良く分からねぇ。結局俺の質問にはちゃんと答えてねぇし。ふざけんなよ鍵!たかが鍵のクセに王女?の体操作してんじゃねーぞ!
っ、オイオイ!マジかよ!
不満をタラタラと脳内で零していた所で、その正面から
「チッ、邪魔だッ!!」
加速する。アサルトライフルを構えたまま、己に迫る光弾も急所には当たらないと判断し無視していく。そのまま四発。
ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!
その四発のうち三発は寸分の狂いも無く
あんなもん無視だ無視!たった一体で何ができんだボケ!横を抜けちまえばコッチのモンだ!一、二発くらい被弾しようが構わん!弾の節約だってしなくちゃならねぇんだよ!
ガシッ!
「へっ?」
横を通り抜ける瞬間、海月型の触手のような部位が腕を掴んだ。思わず固まる体に、目の前には光り輝くレンズ。
「っ!!」
咄嗟に空いている手を懐に突っ込んで抜き身のナイフを取り出し、力任せにレンズに叩きつける。その結果レンズは破壊され、内部で貯められたエネルギーが行き場を失いその場で暴発した。
「っ、けほっ、けほっ」
光弾を顔面に食らう代わりに煙が顔中を襲う。無事にその場を切り抜けられたが手に持っていたナイフはひしゃげ、使い物にはならなくなってしまった。
あーあ、俺の護身用……いや、ちゃんと護身用として使ったんだけども。でも、無視して横を通るとかが出来ないとなると面倒だ。その度に装備を破損とかやってらんねぇぞ。
……あ、丁度いいのあるじゃん。丁度いいの。
近くで動かなくなっている蜘蛛型の足を手に持ち、関節を踏みつけながら逆方向へ折り曲げていく。するとミシミシという音が聞こえ始め、思いっきり力を入れるとバキッと関節から折れた。
ヨシ、これを近接用の武器とする。扱いに困ったら捨てればいいし投げてもいいしどこでも調達できるし完璧だな!
ダァンッ!ダダダダダダッ!
っ、上ではもう始まってるのか!?ヤバい!急がねぇと!クソッ!広すぎるんだよこのエリドゥ!チッ、まだ来るのか!?
先程の爆発音に導かれるように集まりだす
「そこを退け!!クソロボット共!!」
駆け出した勢いを一切落とすことなく、
「ハァ……ハァ……ハァ……流石に……多すぎる……」
今、とある扉の前に立つ彼女の周囲には動かなくなった
必要最低限の防御と攻撃のみで被弾も無視して駆け抜けた先、ついに目的地に辿り着いた。服はボロボロになり、体中に光弾を受けた跡がある。流石に今回の無茶は堪えたのか肩で呼吸をしながら酸素を体内に取り入れていた。
部屋の扉を開くとそこはAMASなどをメンテナンスしている工房のような部屋だった。だがその部屋に用はなくその隣、部屋の中にあるもう一つの扉から入れる半分物置のようになっている部屋に目当ての物がある。
普段使われていないのかその中は暗く、ホコリを被っているダンボールなども見受けられる。そんな部屋の最奥に一つ、真っ黒な塊がその存在を主張していた。
「……また使うことになるとは思わなかった」
ソレはアビ・エシュフより一回り小さく、兵装は何も着いていないシンプルで真っ黒なパワードスーツだった。周囲の物とは異なりホコリは被っておらず、定期的に手入れされていたことが伺える。
思わず機体に手を添える彼女の前で、パワードスーツは鈍い輝きを放っていた。
Tips
社畜とのやり取りの結果原作より覚悟が決まっていたアリスによってkeyは色々モロモロ手こずっているぞ!
そのためアトラ・ハシースが完了するまでまだ時間がかかりそうだぞ!
邪魔者を排除してからじっくり取り組もうかと検討しているぞ!