アリウスの象徴は今日も死んだ顔で仕事をしている   作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。

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再会は思ったよりも早く

ホシノを落ち着かせ、周辺を探索していたスクワッドに合流する。

 

"なにか手がかりはあったかい?"

 

「いや、無い。強いて言えば、逃げる時に使ったであろう音響閃光弾とスモークグレネードの残骸が転がっていたことくらいだ」

 

困ったな、どうやら本当に手がかりは無いらしい。見渡してもたしかにそれらしきものは無いし、あるのは銃痕ばかり。

 

"そうか……なら、もうこの辺りには居ないかもしれないね"

 

「どうするの?居場所が分からないんじゃ、結局のところ状況は何も変わっていない。無駄足だったってこと?」

 

"……ホシノ、思い出すのは辛いかもしれないけれど、あの子とホシノのやり取りを見ていた人はいた?目撃者とかはいた?"

 

「いや、いなかった、と思う」

 

"そっか……"

 

誰か目撃者がいればと思ったけれど、そう都合の良い状況ではないらしい。色々と気にしているのかすっかり俯いてしまったホシノを見守っていると、ホシノの顔がピクリとわずかに上を向いた。

 

「あ……」

 

"ホシノ?"

 

「大将……大将なら、あの子を見たかもしれない」

 

"大将?それって、柴関ラーメンの?"

 

「私があの子を見失った先で、大将は屋台の準備をしてた。もしかしたら、何か知ってるかも」

 

その一言で、私達は柴関ラーメンの屋台を目指すことにした。ホシノ曰く柴関ラーメンは曜日ごとに色々な地域で屋台を開いているようで、今日はアビドスで屋台を開いているらしい。

 

降って湧いたヒントから答えを手繰り寄せるように駆け足で向かう。期待と、焦燥感にかられながら。道中、柴関ラーメンの説明をするホシノ以外は無言だった。

 

「あ、あった!」

 

そして、私達が柴関ラーメンに辿り着くと、そこではたった一人の客が丁度食べ終わったのか帰って行くところだった。丁度いい、話を聞かせてもらおう。

 

"大将、少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか"

 

「おや?なんだ、先生か。変にかしこまってどうしたんだ?それにホシノちゃんと、後ろの嬢ちゃん達は……」

 

「ごめん、大将。さっき私が大将と話した直前に誰か女の子を見なかった?私達、その子を探してて……何か知ってないかなって……」

 

「……」

 

ホシノの言葉と共に、大将の浮かべていた笑顔は鳴りを潜めた。何か良くないことでも言ってしまったのだろうか。触れてはいけない禁忌に触れてしまったかのような、そんなピリッとした雰囲気が漂い始める。

 

「た、大将……?」

 

「多分だが、その嬢ちゃんのことは知っている」

 

「ほ、本当!?」

 

「俺の想像している嬢ちゃんとホシノちゃんが想像している嬢ちゃんが同じならな」

 

思わず前のめりになるホシノだが、大将の表情は晴れない。……マズいな。

 

「でもホシノちゃん、一体何のために探しているんだ?今度はこんな大人数で……あの時のホシノちゃんは血相を変え、憎しみのような感情を抱いていたように思える。嬢ちゃんのためにも教えるわけにはいかない」

 

「あっ、あの時は、その……」

 

ホシノは今不安定だ。当時の自分の状況と今の状況を説明して大将に協力を申し出るのは少し難しいだろう。私は一歩前に踏み出し、大将と視線を合わせた。

 

"大将、ここからは私が説明します"

 

 

 

あくまで知らせるべきではない核心的な部分は避け、あの子の現状とスクワッドとの関係性、ホシノが謝りたい思っていること、そして大将からのいくつかの質問に答えて認識の擦り合せを行った。

 

 

 

「はぁ、あの嬢ちゃんに危害を加えようってワケじゃないんだな?」

 

「うん。私、謝りたくて……」

 

「……分かった、知ってることを話そう。とは言え、嬢ちゃんとは一度しか会っていないから情報も何もないかもしれないが」

 

"それでもいいんです。ほんの少しでもあの子の手がかりを手に入れたい状況ですから"

 

私がそう言うと大将は体の前で腕を組み、私達から視線を逸らして斜め下を向きながら情景を思い出すように語り始めた。

 

「……三日前、軽い装備しか持たない嬢ちゃんがこの屋台の前にふらっと現れた。数秒立ち止まってたから何食べるかを悩んでるのかと思って、嬢ちゃんの所に行って食べるかって聞いたんだ。客は一人もいなかったし、せっかくだからおすすめでも教えてやろうかってな。

 

そしたら、お金がないからいいって断られちまってよ。見たところ本当に少ない荷物しか持ってなかった。銃と、小さな斜めがけの鞄くらいだったか。

 

表情は一切動かない無表情で……いったいどんなことを体験したんだろうな。分からねえが、俺には何も分からねえが、放って置くことなんか出来なかった。だから一杯奢ってやることにしたんだ」

 

三日前ということは、私達と戦ったあの日だ。じゃああの後にそのままアビドスまで来ていたのか。所持金もほとんど無いだろう。ここで大将と出会えたのは良かったのかもしれない。

 

「余程腹が減っていたのか大盛りのラーメンもぺろっと食べちまって、いい食いっぷりだった。残念ながら笑顔は見れなかったが、それでも味わって食べてくれたんだぜ。口数は少ないし表情も変わらないけど、それでも感謝の言葉は伝えてくれてさ」

 

嬉しかったのだろう。大将の言葉の節々からどこか楽しそうな雰囲気が滲み出ている。きっと金欠の状態で食べる物を探していたあの時の便利屋への対応と同じようにしたんだろうな、なんて簡単に想像できた。

 

だけど、次の瞬間には大将の表情は一変していて、仕方ないとでもいうような、何かを諦めたかのような儚げな表情になっていた。

 

「……一応口約束みたいなモンだし嬢ちゃんからの返事も無かったけどよ、『また食べに来てくれ』って、そう伝えといたんだ」

 

ドキリと、心臓が跳ねる。多分、その望みは叶わなかったのだろう。叶わなくなってしまったのだろう。それも、おそらく最悪な形で……。

 

ちらりと隣を見れば、ホシノはグッと手を握りしめて堪えていた。

 

「それで、さっきのホシノちゃんがここに来る直前、俺が屋台の裏に居た時に何かが屋台の前を通り過ぎたんだ。最初はただの風かと思ったが、違った。

 

丁度そこだ。今さっき帰っていった客がラーメンを食べていたその席に、ラーメン一杯にしては多すぎる金と、一枚の手紙が置いてあったんだ。ラーメンを奢ってもらったことへの感謝と、直接お礼を言えないことへの謝罪が書かれた手紙が」

 

「っ……」

 

きっと、あの子はもうここには来ないだろう。大将にお金とその手紙を渡したということは、きっとそういうことだ。そうでなければまた来ればいいだけのはずだから。

 

「すまないが、これ以上のことは分からない。俺はあくまでラーメン屋の大将なんでね」

 

"そう、ですか……いえ、ありがとうございます"

 

「ああ。嬢ちゃん、見つかるといいな」

 

"……はい"

 

私は大将に向けて何も言うことは出来なかった。きっと、何かを言うべきでは無かった。青白い顔をしたホシノと暗い表情をしたままのスクワッドを連れて屋台から離れる。

 

屋台から十分離れた場所で、私達は今一度顔を突き合わせた。

 

「先生、これじゃ結局振り出しじゃん」

 

「あの店主は気の毒だが、分かったことは彼女はもうアビドス……いや、この周辺には近付かないであろうということだけだ。ただ、それだけじゃ探す範囲が広すぎる」

 

「ど、どうするんですか……?」

 

"いや、大将の話してくれたことにはちゃんとあの子に繋がるヒントがあるよ"

 

多分、アツコはもう気付いている。頭を悩ませている三人とは違い、ガスマスク越しにこちらをジッと見つめていた。

 

「お金……」

 

「お金、ですか……?」

 

「そうか!金か!」

 

大将は言っていた。三日前のあの子はラーメンを食べるお金も無かったが、さっきはラーメン一杯にしては多すぎるお金を置いていったって。つまり、この三日の間でお金を稼いでいたということだ。

 

「じゃあ、アイツがどこで金を手に入れたかを考えればいいってこと?」

 

"そういうこと。そうなると自然にあの子のいる場所は絞られる。こういう言い方は悪いけど、あの子にはまともな経歴も身分証なんてものも無い。なら、稼げる場所なんて一つしかないだろう?"

 

「ブラックマーケット」

 

「確かに、そこなら……」

 

「でも、どこか別の場所で盗みや犯罪を行った可能性は?それならブラックマーケットにも居ないかもしれない」

 

「ミサキ」

 

待ったをかけるミサキを咎めるようにサオリが言う。新たに見つけた希望を潰すようなことを言うなと言いたいのか、それともあの子はそんなことしないと言いたいのか。真意は分からないが、ミサキは冷静にサオリの目を見て言い返す。

 

「はぁ、アイツならできるでしょ、それくらい。そういったことも考えておかないと」

 

きっと、どちらも正しい。感情と理論、切っても切り離せないこれらが同じ方向を向いているとは限らない。ただ、全てを見ないといけないんだ。思わぬうちに見落とさないように。

 

"ああ、そうだね。いろんな可能性は考えておくべきだ。ブラックマーケットに居ればそれでいい。居なければまた別の場所を探すんだよ。これまで通りさ"

 

「……そうだな」

 

「……チッ」

 

「で、ですが、以前私達でブラックマーケットは探したような……」

 

「うん、でもブラックマーケットは広いから見落としてたのかもしれないし、私達とすれ違いになっていたのかもしれない。避けられてたのかもしれないけど」

 

「そ、そうですね……あの人ですもんね……」

 

取り敢えず、これから行くのはブラックマーケットで良いだろう。これで見つかればいいけど……。それと心配なのはホシノだ。ホシノは大将の話を聞いてからずっと無言のまま、今も静かに私達の会話を聞いていた。血の気の引いた顔色でどこか思い詰めたような表情をしながら。

 

"ホシノ"

 

「……せ、先生?どうしたの?」

 

ゆっくりと顔を上げたホシノの目は僅かに震えている。声にもハリが無い。かなりメンタルにキているようだ。

 

"私達はこれからブラックマーケットに行くけど、ホシノはどうする?"

 

「わ、私は、私は……」

 

悩んでいるのだろう。本当の事を言うのなら、行きたくなんてないのだろう。抱えきれない感情から逃げ出してしまいたいのだろう。何も無かったことにして、何もかもに蓋をして。

 

それでも、瞳を震わせたまま、ホシノは決断した。

 

「……私も、行く。ここで逃げたら多分、もう会う勇気なんて出せない……」

 

"……そっか、分かった。一緒に行こう"

 

こうして、私達はブラックマーケットへ向けて出発した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ああ、面白い先輩達だったな。見た目上傷だらけの俺を見てめちゃめちゃビビってたし焦ってた。『お前がそうなるとは何事!?』って感じでバタバタしてさ、俺を連れて行ってくれた先輩は腹抱えて笑ってたし。

 

ビビらせんなって怒られもしたけど傷の心配してくれる人もいて、なんだかんだ等身大の高校生って感じなんだよなぁ。普通の高校生はドンパチしないけど。

 

ちゃんと傷の手当てをした後にやった仕事は護衛みたいなやつ。なんでもそこそこ貴重な物資を運ぶから守ってくれってことらしい。まあ、普段の警備の仕事が移動式になっただけだな!この俺には特に支障はない!

 

依頼主に悪意があるヤツとか、そんなもん関係なしに金目のモン盗みに来るヤツとか、そういうヤツらをちぎっては投げちぎっては投げでさよならバイバイ。今は先輩達と報酬抱えてウハウハのまま帰宅中。先輩達が嬉しそうで俺も嬉しいよ。

 

ふぅ、なんとも楽な仕事だったぜ。こんなもので金を稼げるなんてこの世界はどうなっているんだ。もしかして、俺の人生イージーモードか?

 

フハハハハ!!そうと分かれば怖いものなどない!!俺の人生はこれからだぁ!!

 

「見つけた」

 

「……え?」

 

見つけた?何が?先輩達じゃない。今、どこから聞こえて……

 

「やっと見つけたぞ、'――'!」

 

はえ?あっれぇ〜?まさか、サオリじゃないですかね?気のせいかな、なんかスクワッドの皆が見えるんだけど。俺、疲れてんのかな……。

 

「誰だテメェら、見つけたって何のことだよ!」

 

「報酬狙いかお前ら!」

 

あー、マズいかも。先輩達が臨戦態勢になってるわ。無理だ、先輩達じゃ勝てない。というか逃げることも出来ないと思う。ご丁寧に向こうはスクワッド全員いるし先生もいるし……ん?先生の隣にピンクのバーサーカーも居ない!?

 

ふざけやがって!!なんでだよ!!こんなの過剰戦力が過ぎる!!スクワッドだけならまだなんとか逃げられる!!バーサーカーだけでもなんとか逃げられる!!でも両方は駄目だろ!!規約違反だ!!

 

クソッ、今すぐ逃げるか!?先輩達を置いて正反対に逃げ出せば恐らく、ってくらいの確率だが……でも、先輩達巻き込むのはなぁ……。

 

頭の中で色々と考え込んでいると、先生が両手を上げながら一歩前に出てきた。

 

"私達に戦闘の意思はないよ。お願いだから銃を降ろしてくれるかい?そこの'――'と話すために来たんだ"

 

「おい、あれって噂の先生ってやつか?」

 

「事を荒立てるとマズい感じ?」

 

「でも報酬取られるのは痛いし、やるしかないでしょ」

 

「だよな」

 

うーーん、だよなじゃないんだよなぁ。話聞いてないし血気盛んすぎる。速攻で負けるぞソレ。交渉するか報酬抱えたヤツを守るようにしながら逃げるのが最適解だ。まあ、流石に高校生に状況判断を完璧にしろとは言わないけども。

 

「よし、それじゃあいつも通りに――」

 

「……先輩」

 

「あ?」

 

「……あの人達の狙いは私。先輩達は逃げて」

 

「はァ?なんだよそれ、アタシ達が勝てないとでも?それにお前もいるだろ」

 

「……多分、私でも正面突破は難しい。逃げるだけならなんとか、ってくらい」

 

「お、お前でもか?マジかよ……」

 

頼むから逃げてくれ。先輩達が目の前でボコされるのはちょっとキツイ。そんな思いが届いたのか、それとも相手の強さに尻込みしたのか、先輩は構えていた銃を下ろした。

 

「お前は、大丈夫なんだよな?」

 

「……大丈夫」

 

「……」

 

こちらを見てくる先輩から視線は逸らさない。すると、先輩は周囲の先輩達と顔を合わせてからもう一度俺を見た。

 

「……クソッ、逃げるぞお前ら」

 

先輩がそう言うと、周りの先輩達も渋々と銃を下ろしていく。多分ちゃんと相手との実力差を分かってくれたんだと思う。じゃないと普通にヒャッハーとか言いながら飛び出していくような人達だし。その世紀末スタンスはどうやって培われたのか……。

 

先輩達は俺に視線を送りながらも、ゾロゾロと先生達とは反対方向に移動しだした。

 

よし、これで第一関門クリアだ。先生達もわざわざ先輩達が居なくなるのを待ってくれている。マジで俺が狙いらしい。戦闘の意思はないって言ってたけど、信じていいのか?

 

……先輩には大丈夫って言ったけど、これ大丈夫じゃないのでは?殺されたりしない?俺生きて帰れるよね?先生って立場なら人殺しは容認しないよね?ね?

 

逃げるか?一か八かに賭けてもいいような気がしてきた。うん、大丈夫かも。全員一箇所に固まってるなら、なんとでもなるような気がする。

 

いや待て、冷静になれ。三日前、あの先生の指揮でスクワッドは劇的に動きが良くなった。つまり、先生は軍師やリーダーとしてかなりの才があるのだろう。そしてそれは、あのバーサーカーにも適応されるのでは……?

 

……。

 

クソゲーーー!!ふざけんなよ!!マジでふざけんなよ!!ただでさえ強かったんだぞあのバーサーカー!!なんでまだ上があるんだよ!!こんなのズルだ!!俺は一人なんだぞ!!

 

ま、マズい。詰んでるかも。戦闘になったら終わりだ。

 

……つまり、結局は逃げるしかねェ!!俺は逃げるぞ!!

 

「待ってくれ!」

 

片足の向きを僅かに変えた瞬間、サオリの懇願するような声が響いた。逃げようとしていた体が思わず硬直する。

 

「もう、私達から離れないでくれ……頼む……」

 

"私からもお願いだ。少しでいい、会話をしよう"

 

えぇ……なんで先生とスクワッドの皆がそんな悲しそうな顔してるんだよ。いやまあ、危害を加えないって言うのなら話すくらい別にいいんだけど……そこのバーサーカーの手綱は握ってくれるって事でいいんだよね?襲われたりしないよね?近寄った瞬間ヘッドショットとかないよね?

 

……どうするかな、これ。




大将を悲しませるなんてホシノってやつは最低だな!謝罪も無しかよ!ケッ!




自分達よりも圧倒的強者の集団を前に一人その場に残って逃げさせてくれる無表情だけど素直でノリが良い出所不明のつよつよ後輩概念。ありだと思います。


誰だよリオifルートなんて考えたヤツはよぉ。書こうとしたら想定以上に話が膨らんで長くなって全然書き終わらないやないかい。……あ、私か。
いつか出せたらいいなぁ、と思いながらチマチマ書いてます。
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