アリウスの象徴は今日も死んだ顔で仕事をしている   作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。

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リオifルート、始めます。ifルートなのであんまり長くならない予定です。

ですが、別にすべて書き終わっているわけではないので、早めの更新は期待せずに……。


リオifルート
世界は破滅へと向かう


「……リオ、持ってきた」

 

「そう、今回も無傷なのは流石ね。資材の状態も良い。助かるわ」

 

俺がマダムの所を抜け出してしばらく、適当にブラックマーケットで日銭を稼いで生きていた俺に接触してきたのは調月リオという女だった。接触って言ってもドローン越しに声かけてきた感じだけど。

 

マダムの所を抜け出したのは黒服おじさんのくれた口座にチマチマ貯めていたお金がかなりの額になったから。ずっとマダムの所に寄生してても良かったが、やっぱり俺もいい大人だしな。そろそろ独り立ちしねぇとって思ったんだ。

 

もち、退職届けはちゃんとマダムに出してきたぜ。マダムって俺には優しいけど一応人外だし、ちょっと怖かったから手紙を置いてきただけだけど。まあ、大丈夫やろ。多分。きっと。知らんけど。

 

「貴方に頼むと大抵の場合資材に傷一つ無いわね。あのブラックマーケットから……一体どのような手段を取っているのかしら。戦闘が絶えない場所のはずよ」

 

「……戦闘にならなければいい」

 

「なるほど、隠密行動に優れているということかしら。とはいえ、頼む資材はかなりの量だし、音も出るはず。いくら貴方でも難しいと思うのだけれど」

 

「??……違う、戦闘になる前に障害になりそうな敵を全て倒しておけばいい」

 

「……そう」

 

なんだその微妙そうな顔は。敵は大体クソザコだし、見つかって戦闘になる前にぶっ飛ばせば戦闘にはならないだろうが。これが一番合理的だろ。合理的って言え。いつも言ってるじゃん。

 

「……それで、コレは何のために?あまり見たことない、金属……?」

 

「貴方には話したわね。要塞都市エリドゥを」

 

「……あぁ、あの……」

 

なんか、あれだよ、終焉に備えるため、みたいな感じだったはず。そんな説明されたはず。あれマジだったの?普通に話半分で聞いてたけど。

 

要塞都市、要塞都市ねぇ……男心がくすぐられるぅ!本当にあるのなら行きてぇ!

 

「エリドゥで足りない、または必要になった資材を集めてもらっているだけよ。お金を積むだけでは手に入らない物もあるし、貴方に頼んだ方が資材の状態も良いもの。何か気になることでも?」

 

「……何も」

 

「そう、なら今回の報酬はいつもの口座に振り込んでおくわ」

 

「……分かった」

 

そうして秘密裏に資材の受け渡しを行う一つの隠れ家から離れた。

 

こんな感じで最近はちょくちょくリオからの依頼を受けている。金払いも良いから助かるぜ。

 

さて、これからどうしたものか。一応危険()な仕事を受け持つという都合上、上辺だけあっさりとだが説明は受けた。というかさせた。俺が仕事受けてやるからちょっと事情教えろやボケ、って。

 

なんも知らないまま犯罪の片棒を担がされたら困るしな。俺の現状やらなんやらを教えるって条件付きでリオも折れてくれたし。まあ俺の話なんか知られて困ることもないし、結局は一方的に情報を得られたわけだが。

 

なんの背景もないしょーもない人間の話なんて誰が気にするかね。ゴミみたいな情報で新しい情報が得られるとは素晴らしい。

 

ただ、気になったのはどうしてその要塞都市に注力しているのかだ。たしかに男心はくすぐられるよ?もちろんめっちゃ気になるよ?行きたいよ?

 

でも、コレについては結構ちゃんと考える必要がありそうだ。"要塞"都市だぞ?何かの危険に備えているとしか思えない。リオは俺より頭が良いし、合理性に基づいた判断ができる。そんなリオが要塞都市にご執心なんて、もうそういうことだろ。

 

じゃあ、その危険は何か。自然災害とかじゃないはず。それならシェルターでいい。要塞である必要がない。戦うことを前提とした都市……多分、その相手はクソロボットだ。クソロボットめ!やっぱりクソだな!

 

いつかクソロボットとの争いか、それに近しいことが起きるのかもしれない。なんだかんだ学園間の仲が良くないトコもあるみたいだし。

 

……俺も他人事じゃねぇかもしれないな。最悪リオに助けてもらわないといけなくなるかも。

 

となると、リオは学生の身でマダムと同じ何かが見えているってことだ。マダムと同じ視点に立てている。リオってスゴイよね。頭良すぎるわ。でも、どこからそんな金が出てきてるんだろ。どっかの令嬢か?金持ちの娘か?

 

うん、仲良くしとこ。特に深い理由はないけど仲良くしとこ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――以上が、私の手に入れた情報を元に考察できるAL-1Sの正体よ」

 

は?クソロボットが人間のガワを被っている?学生に紛れている?いつ暴走するかも分からない?なんだよ、それ……まだ仮説だからって……いや、お前の頭脳で導き出された仮説って、そりゃ……。

 

……。

 

「今は安定しているわ。けれど、いつ、なにがきっかけで暴走するかは分からない。なにか、決定的ななにかがあれば、恐らく……」

 

もし、もしもそうなった場合、どうなる?ソイツのいる学校は?周りの生徒は?そもそもソイツの強さは?

 

止められないのか?トキじゃ勝てないか?お前でもか?機械なんだろ?お前はそういう方面にめっぽう強いじゃねぇかよ。なぁ、無理なのか?機械の一部に介入しちまうとかさ。

 

「そうなってしまえば私では止められない。いえ、たとえ誰であっても止めることはできない。貴方でさえも。そして、キヴォトスは滅ぶ」

 

そうか、お前でも無理なのか。

 

そうか……。

 

……。

 

どうすんだよ。もしお前が言っていることが本当なら、本当にそんなことが起こっちまったら、この世界は――

 

「だから、私は――

 

 

 

 

 

 

AL-1Sのヘイローを破壊するわ」

 

 

……なんだ、あるんじゃねぇか。そんなカンタンな方法が。

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

 

アビ・エシュフ。チートとも言えるソレを装備したトキ相手に、唯一導き出した勝ち筋。貨物エレベーターという広くない領域、そしてアビ・エシュフの弱点。

 

「あたし、前にも言ったよなぁ。あたしの間合いに入って勝てるヤツなんざ、このキヴォトスにはいねェって」

 

「……」

 

「あ、てめぇには言ってなかったか?まあ、そんなもんどっちでも構いやしないが」

 

加速する。トキとネルの二人を乗せたエレベーターが、普段の十倍にもなる加速度で上昇していく。

 

「……」

 

それにより、トキの身に纏ったアビ・エシュフはエラーを吐き出すのだった。回避システム麻痺という、絶望的な一文と共に。

 

トキは理解していた。もう目の前の存在に勝てないことを。アビ・エシュフの回避には期待できない。むしろ、この狭いエレベーター内では大きな機体のせいで自分は単なる的でしか無く、近距離では打ち勝てない。

 

「さあ、正々堂々戦ろうじゃねぇか、後輩?」

 

だから、負けを認めるしかなかった。全身に傷を負ってなお、動くことすら苦痛を伴うであろう状態で自身を追い詰めた先輩に、その執念に、トキは潔く両手を下ろした。

 

「……すみません、先輩」

 

「あ?なんだ?この期に及んで謝罪か?てめぇ、それで――

 

ドゴォォォンッ!!!!

 

――なっ!?なんだ!?」

 

突如として鳴り響いた爆発音と共にエレベーターは大きく揺れた。そして、突然の事にバランスを崩したネルの背後に誰かが降り立つ。

 

「……トキ、負けてるじゃん」

 

ダダダダダダッ!!

 

「ぐあっ!?……て、てめ……」

 

既に満身創痍だったネルが背後からの奇襲に耐えられるはずもなく、バタリと倒れ込む。それを一瞥した少女は目の前で固まるトキへと近付いた。

 

「ありがとうございます、()()

 

「……結局、私が出ることになった。最初の勢いはどうしたの?」

 

「先輩、大人げないですよ」

 

「……先輩の出番はありませんとか言ってたじゃん。アビ・エシュフまでフルで使って負けるとか、ねぇ」

 

「……」

 

ヘッドマウントディスプレイによって目の周りは見えないが、トキの口元はキュッと結ばれている。どこか不満げなトキの雰囲気と、いつまでも自然体な一人。ただ、二人は共にエレベーターのドアの前に立っていた。

 

そして、上昇を止めたエレベーターはその扉を開く。

 

「……じゃあ、行こうか」

 

「はい、先輩」

 

一歩、踏み出す。エレベーターから出た二人の眼前に広がっていたのは、トキの無事と謎の生徒、そしてドアの向こうに倒れ込んだネルの姿に驚愕した先生達の姿だった。

 

「なっ……なんで……」

 

「ね、ネル先輩が負けた!?」

 

「チート染みた動きはできないはずなのに……」

 

"君は、いったい……"

 

ネルの勝利を信じて疑わなかった。自分たちの作戦は、ユズとチヒロによるこの作戦は、一つのほころびも無かったはずだった。ただ、この場にいる全員が一人の存在を見落としていた。

 

「……さぁ、次は誰?」

 

アサルトライフルを構え、ゲーム開発部とC&Cを見渡す謎の生徒。その瞳は光を映さず、本当に自分らを見ているのかすら分からない。この人数を前にまるで日常会話でもしているかのような雰囲気は、ひどく不釣り合いに見える。

 

「……それとも、全員でやる?もしくは、諦めて降参する?好きな方でいい」

 

その異常さ。その異質さ。先生達は直感した。いや、せざるを得なかった。『ネルを倒したのはコイツだ』と。

 

"君は、何者なんだ……"

 

「……私はリオの仕事仲間。それ以上でも以下でもない。貴方達が頑張ったおかげで私の仕事が増えた。どっかの後輩が負けたから」

 

「後輩?トキが?」

 

「……話は終わり。トキ、仕事の時間」

 

謎の生徒が言うが早いか、トキのアビ・エシュフはジェット噴射をしながら距離を詰めていく。両腕に備え付けられたガトリングが回転し、もう間もなく弾が放たれる。その脅威を知っていた各々はそれを避けるために左右に飛ぶが……

 

"みんな!!前だ!!"

 

「え――

 

中央突破を図るトキに誰もが意識を向けた。向けてしまった。ここにはもう一人居たというのに。

 

「……まず、一人」

 

「きゃあっ!?」

 

「ユズ!!」

 

「なっ!?速い!」

 

「私も居ますよ」

 

「うぁぁっ!?」

 

一人、また一人と、二人の動きに対応する前に次から次へと倒れていく。ネルが居ない今、アビ・エシュフのスピードに追いつける者はおらず、トキに警戒すれば謎の生徒に削られる。

 

そして何より、二人の動きが巧い。一緒には動かず、されどお互いが常に視界に入るように動いている。圧倒的な()()を前には先生の指揮も虚しく、ネルを迎えに行くつもりだったメンバーはあっけなく床に倒れ伏していた。

 

"み、みんな……"

 

「これで終わりです」

 

「……トキ、やっぱソレはズルくない?」

 

「ふっ、これは私専用なので」

 

「……そう」

 

時間にして一分もない。戦闘と呼ぶことすら烏滸がましいただの蹂躙劇。たった二人を相手に何も出来なかった無力感を噛み締めながら、ゲーム開発部もC&Cも、落ち行く意識に抗うことなど出来なかったのである。

 

一仕事を終えたとばかりに謎の生徒は銃を下ろし、踵を返す。

 

「……トキ、リオの所に戻る。これからアリスのヘイローを破壊する」

 

「了解」

 

"ま、待ってくれ!"

 

立ち去ろうとした二人に待ったをかけた先生に対し、二人は構わず歩みを続ける。止まる気配もない。ふと倒れたみんなのことを一瞥した先生だが、苦々しい表情をしてから視線を切り、前を歩く二人を追いかけていく。

 

"なんでそんなにヘイローを破壊することに拘るんだ!まだなんとかなるかもしれない!アリスを救うことが出来るかもしれないのに!"

 

「……貴方がキヴォトス唯一の先生と聞いた。違う?」

 

"そ、そうだけど……"

 

「……大人、先生、それらの肩書きを、貴方はどう思う?どう利用している?何のために?」

 

自分の必死の問いかけとは全く別の話に切り替わり、思わず勢いが削がれる。その言い方は、まるで先生本人を試しているようで……。

 

真っ向から対立していた自分に何を問いただしたいのだろうか。勝手に追いかけて着いてきている自分の同行を放置しているだけの理由でもあるのだろうか。あのまま他の皆と一緒に気絶させていた方がやりやすいだろうに。

 

グルグルと思考を続ける先生だったが、言葉を捏ねくり回しても意味はないだろうと判断し、誠実に自身の目的を語ることにした。

 

"利用なんてしていないさ。私はただ、アリスを救うためにここまで来たんだよ"

 

「……どうやってアリスを救うつもり?」

 

"そ、それは……ヒマリや皆と協力して、アリスがなんとか暴走しないように対策を……"

 

「……それに正確性はある?成功する確率は?失敗した場合の保険は?もう二度と暴走しないと言い切れる?」

 

"……"

 

答えられるはずがない。あくまで先生はそういった具体的な解決策を持っていないのだから。「アリスを迎えに行く」という目的のみで飛び込んだ。「アリスのヘイローが壊されないように」迎えに来た。

 

何も語らない、語れない先生の姿はソレを顕著に映し出していた。

 

「論外」

 

"……っ"

 

「……計画性も何もない。これからどうなるかも分からない。アリスの危険性を微塵も考慮していない。私達がここまでする背景を理解していない」

 

淡々と、感情の起伏も読み取れない彼女は、されど先生を責めるように言葉を紡いでいく。

 

"で、でも!だからっていきなり連れ去ってヘイローを壊すだなんて、そんなのおかしいよ!まだ何か出来るかもしれない!諦めたら駄目なんだ!皆で話し合って、協力して、アリスのために最善を尽くせば、もしかしたら――"

 

そこまで話して、先生は思わず口をつぐんだ。彼女の表情が、初めて変化したから。雰囲気が一変した彼女は明確な怒りを覚えていた。

 

「……あまり巫山戯るなよ。諦めた?リオが?貴方にはリオが諦めたから殺そうとしているように見えたのか?」

 

"違う!そういうことじゃない!まだ私達にも何か出来るかもしれない!他の皆の協力で新たな道が見えるかもしれないじゃないか!"

 

「……アリスが一度暴走した以上、そんな希望的観測を持っていられる余裕はない。アリスが完全に覚醒した場合、あの時の比じゃないレベルの被害が出る。それこそキヴォトス全土が危うくなるような被害が」

 

"だからってヘイローを壊していい訳がない!何をしようとしているのか分かっているのか!?"

 

「……私は是非を問うている訳ではない。人殺しを容認しろとも言っていない。そちら側の意見を聞いただけ。私達を止めたいのなら止めてみせろ。一縷の希望があると言うのなら、その希望とやらで説得してみせろ」

 

"なっ……"

 

「分かっているだろう?感情に振り回されやすい他の生徒達と違って、貴方は大人なんだから」

 

"――っ"

 

大人だから。その一言は、大人として、先生としてこれまで努力してきた先生の心に深く突き刺さった。何かを言おうと口を開いて、何も言葉が出ずに閉じる。言葉を取り上げられてしまったかのような、何も出来ない無力感が先生の心を埋め尽くす。

 

だからだろうか。

 

考えてしまった。もし、自分がリオ達からアリスを回収できたとして、その後完全に覚醒してしまったらどれ程の被害が出るのかを。

 

思い出してしまった。暴走から醒めた後のアリスの表情を。

 

結局、二人の生徒を説得できる何かを思いつくことはできず、とうとうリオのもとへ辿り着いてしまった。

 

「二人ともよくやったわ。ただ、なぜ先生を連れているのかしら」

 

「勝手に着いてきました」

 

「着いてきたって……」

 

「……何発か流れ弾で足とか狙ってみたけど全て当たる前にナニカに弾かれた。自身を守る術があるらしいから放置してた」

 

「……なるほど、それなら仕方ないわね。先生、私は貴方のことを特別嫌っている訳では無いけれど、邪魔をすることは許さないわ。これはキヴォトスの未来に直結するのよ」

 

"……"

 

冷静に、厳格に、芯の通ったリオの言葉が先生の鼓膜を揺らす。そこには覚悟があった。殺人者として後ろ指を指されたって構わないという覚悟が。

 

世界のためにその手を汚すと決めた。そうするしかなかったのかもしれない。だが、実際に行動に移せる人間が果たしてどれだけ居るものか。知らぬ存ぜぬで毎日を過ごしていた方がずっと楽だろうに。

 

そうはならなかった人間が、三人。リオだけではない。リオと同等の覚悟を持った人間が、この場に。

 

("でも、今ならまだ止められる。止めないといけない。この三人相手に、どうにか説得しなければ。希望を、私が繋げなければ。さもなければ、アリスは――")

 

「リオ様、モニターが……」

 

「え……?」

 

Divi:Sion

 

だが、世界の終焉は刻一刻と迫っていた。

 

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