憧憬の彼方にて 作:お前はトリコ?
ゴオオオオオオオオオオオオオオッ!!!
芸術家が名を呼んだ瞬間──天が怖れるように震え、地がそれに呼応するように鳴動した。それは動作一つにさえ莫大な力を伴っており、そうして動いたのは人工の天使。ほんの一片とはいえ、『■■』の階にすら手をかけた怪物が今動く。
”…………!?皆、構えてっ!!”
先生は一瞬呆気にとられてしまったが、すぐに気を取り戻し、横にいる生徒達に指示を出す。
しかし──
「……さて。少々前衛的と思われるかもしれないが、あえてこう宣言させてもらおう。……嗚呼、かの聖者は天へと昇り、其は再び『神』の奇跡を代行せん……。さあ、先生……どうか今一度、喝采の準備を」
マエストロは両手を広げ、ギギィとその身体を軋ませる。その様子を皮切りに、ヒエロニムスは先生と生徒達に狙いを定めて襲い掛かった。
◇
毎度皆さん、一般通過転生者だお♧
ということで、遂に始まりました。
決戦、ヒエロニムス!!
こいつはねぇ、俺とマエストロさんの合作──いや、ほぼマエストロさんが作成したもんだけどさ。どうやら完成したヒエロニムスが気に入らなかったのか、彼は俺に対して協力を持ちかけた。俺という『本物』を観測したせいで、ヒエロニムスの出来栄えに納得がいかなくなったらしい。
そこまではおけ?
そうして研究に与し、完成したのがコイツ──
──その名も、『ヒエロニムス(擬似崇高)』です。
要は『崇高』の疑似顕現なんですよ、これ。
完成した時はマエストロさん達が狂喜乱舞してましたねぇ。だって、彼らの悲願が擬似的にとはいえ達成できたわけだから。『崇高』の完全顕現に関してはまだ、少し先の話になりそうだけど。
ま、問題はどうやって疑似顕現まで漕ぎ着けたのかってこと。初歩的なことさ、友よ。俺の血を一滴未満、ヒエロニムスきゅんにくれてやった。
はい、お気づきの方はいるかもしれません。
分け与えたのは『求道神』の血です。
そこから更に概念のみを抽出したとはいえ、求道の神たる俺の血は一滴でも「天体」に匹敵するほどの密度を誇ります。どれだけ小さくても、それは『神』の
そこから更に『崇高』の概念の一部を抽出し、ゴルコンダの力も借りてヒエロニムスへ抽出した『疑似崇高』を付与。そうして完成したのが、あの【ヒエロニムス(疑似崇高)】なわけですよ。
まさしく「神性の怪物」ということです。
今まで『崇高』の一側面である「
そんなこんなで戦闘も始まったわけですが、生徒達はヒエロニムスきゅんの様子を伺いながら攻撃。そして後退を繰り返しております。
そして──ん?先生が何か取り出しましたね。
あれは……
”……大人のカードを取り出す”
おや、先生が大人のカードを取り出しました。
さてさて、ここから一体どうなるこ──
うおっ、ビックリさせんなよ……。
このマネキン、時々だがめちゃくそ煩いんだよな。そこを何とか抑えてほしいんだが?
「そうか、あれが例の『カード』……!人生を、時間を代価として得られる力……その根源も限界も、私たちですら把握できない不可解なもの……!!」
あー、そういやそんな設定でしたね。
先生の時間や寿命を削ることで、奇跡を起こせる魔法のカード。なお、実際は画面の前の先生方が必死こいて課金してるだけという──ガチャですよガチャ。夢も希望もありゃしねぇぜ(泣)
ともかく、アロナは紫封筒だけを出しゃいいんだよッ!!……青封筒?知らない子ですねぇ。
そんなこんなで発動した「大人のカード」。召喚された生徒は──最初からフルスロットルですね。小鳥遊ホシノ、空崎ヒナ、剣先ツルギ、美甘ネルですか。文字通り、キヴォトス最高戦力で応戦しようというわけですよ。こりゃ期待できそうだ。
そうして召喚された生徒はヒエロニムスに……アレ?彼女達、何かこっちを見てませんか?
………………ありゃりゃ、これは不味い。
◇
「……でだ、先生。あたしらを呼んだってことは、つまりあのデカブツを叩けば良いんだな?」
”うん、お願いできるかな?”
「ハッ、誰にものを言ってやがる……!」
「大人のカード」によって召喚された生徒の一人──ミレニアムの秘密兵器。コールサイン
「あんなデカブツ、あたしにかかれば一瞬……と言いてぇところだが。……不味いな、ありゃ」
ネルは目を窄め、忌々しそうな表情でヒエロニムスを睨めつける。
”……厳しいの?”
「ああ、ハッキリ言って勝算がねぇな」
先生は珍しいネルの物言いに目を見開いた。
普段勝ち気な彼女が、一瞬とはいえ弱音を吐いたのだから。先生は純粋に驚いた。だが、召喚された他生徒達も概ね似たような反応を示していた。
「だが、だからといって諦めるのは性に合わねぇ。正直、気に食わねぇが……やらなきゃ負けるのはこっちだ。だから、あたしは──」
ネルは視線をヒエロニムスの向こう側へ向ける。
”……まさか”
そんなネルの様子を見て、やがて先生達もその意図を察した。つまり──
「……そうだ、あのふざけたマネキン野郎どもをぶっ叩く。そうすりゃ多分、あのデカブツも消えんだろ」
ネルの発言に思わず絶句した先生。
だが、彼女達を守るためには、それしか道は残されていない。ゆえに、先生も覚悟を決める。
”……分かった。ネルの言う通り、マエストロ達を叩こう。ヒナとホシノは、サオリ達と一緒にヒエロニムスの足止めをお願い!ツルギは私達と一緒に彼らを……!!”
「うん。任せて、先生」
「うへ。おじさん、腰が痛いんだけどなぁ」
「……ま、任せてください。先生」
◇
「見せてくれたまえ、先生。そなたが払ってきた代価を……
ンンンッ、ノリノリですねぇ────だけどね?マエストロさん、ちょっといいかな?
「……ん、どうした?体現者よ」
いや、なに。一度は無粋かなと思ってやめたんだけど、ちょっと危なくなってきたから俺の影の中に潜ってもらおうと思ってね。良いですかい?
「……!そうか、それはすまない。では、被害を被る前に潜らせてもらうとしよう。……しかし嗚呼、実に惜しいな。これ以上、この光景を目に焼きつけることができないとは……」
大丈夫ッスよ(鼻ほじほじ)
影の中でもリアルタイムで状況を映像で確認できるようにしといたんで、マエストロさんはマエストロさんで存分に鑑賞していってくださいな。
「おお、そうか……!そなたには感謝してもしきれんな。では、また後ほど──」
あいよ。……さて、いらっしゃいませ?シャーレの先生、そしてその生徒のお嬢様方。
”……君は──いや。マエストロはどこ?”
あらら、警戒されてるわね。
まあ、どうということはないんだけど……そうだね?どこに行ったんだろうね???
「あたしらが来たってのに、胡座をかいたまま座ってるたぁ──随分と余裕だな、オイ……!」
いやん、凄い敵意剥き出し♡
……そりゃ、戦うつもりも必要もないからね。そも、君達が俺を傷つけられるとも思えんし。
”彼女達は強いよ”
そりゃあな。
彼女達は単独の実力もそうだが、アンタの指揮があればもはや敵なんて居ないだろうし。
……でも、んなこたぁ分かってるんだよ。
その上で断言してやる。お前達じゃ、俺には決して勝てない──ってね。とりま、二人掛かりでいいからかかってきな。戦うつもりはなかったけど、座ったままでいいなら軽く相手したげるよ。
「……あァ!?ざっけんなッ、ぶっ殺してやる──!!!」
「きええええええええ〜〜ッ!!!!破壊だ、お前を破壊してやるぅッ!!!!!ギハハハハハハハハハハハハハハッ!」
”いくよっ、二人とも!!”
「大人のカード」を掲げて二人を強化する先生、そして銃をぶっ放してくる
……ん、だけど甘い(メインヒロイン)
「……ッ、てめッ!?」
効かないねえっ!『神』だから
あれれ?これは一体、どうしたことでしょうか。攻撃が通用しない。その謎を解明するため、我々調査隊はアマゾンの奥地へと向かった──。
「……チィッ!コイツ、あたしらの攻撃がまるで効いてねぇ!!どうなってやがる……っ……!!」
「ぎぃええええええええええええッッ!!!!」
ズドドドドンッ、ドガアアアアアアアアアアアアアアンッッ!!!
──でも、効かない。
”……っ、そんな……!!”
んー、焦ってらっしゃる。
……だけど、本当に焦る必要ないんだけどな。
だって、あのヒエロニムスも今回は疑似顕現しかしてないから、放っておくと自然に消えるし。
本当に抑えておくだけで良いんよね、アレ。
というかマエストロさんも満足してるっぽいし、そろそろ彼女らにこのこと伝えようかな?でも今、めっさ銃弾喰らわせられてるんだけどね……ツルギも殴ったり蹴ったりしてくるし。
「……テメェ、いい加減──立ちやがれッ!本当に戦う気があんのか!!お前はッ、あァ!?」
(真面目に戦う気なんて)ないです。
というか自分で言うのもなんだが、些か茶番感が酷くなってきたなぁ。だけど、白状したところでなんだよな。先生に信じてもらえるとは思えん。
「………………」
「……はぁ、はぁ……ゲホッ……!」
しかも、何もしてないのに満身創痍やんけ。
彼女らって確か、タフネスが売りなんじゃなかったっけ。それなのに満身創痍……どゆこと?
これじゃあ、こちらの言い分も何も聞いてくれなさそう……さて、どうしたもんべか。
……うーん、よし!
逃げるやで(^^)