憧憬の彼方にて 作:お前はトリコ?
「……ふん、何をするのかと思えば……結局何も変わっていないではありませんか。所詮は見かけ倒し……私と
おおっと?ベアトリーチェ(怪物のすがた)が、いきなり赤いビームをぶっ放してきました。流石にこれを喰らえばひとたまりもない──わけないですが生憎、俺にはやりたいことがあるのです。
それは──
「──ッッッ!?!?」
バリンッ、という音とともにビームが
それは俺がビームに拳を叩き込んだと同時に聞こえてきた。ベアトリーチェからしてみれば驚愕でしかないでしょう。光線が砕け散ったのだから。
ま、とりあえずは成功ですね(キリッ)
「……どんなトリックを使ったのかは知りませんが、そんな小手先だけの技で私を騙せると思っているのですかッ!!!!」
このオバハン、まーだこれをトリックか何かだと思ってますね。全く、呆れて物も言えないぜ。
「■■■■■──!!!」
そしてオバハンと同時に襲いかかる
俺はそれらに拳を向け、溜めて溜めて──
ズガアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!
一気に解放した。
周囲に信じられないほどの爆音が轟き、その音に誰もが耳を塞いだ。そうして俺の拳に触れた全ては拳圧とともに、その歴史の一切に幕を引いた。
「……はっ?」
その様子に、耳を塞いでいた誰もが目を見開く。ベアトリーチェは呆気に取られ、先生や後ろに控えている生徒達も生唾を飲み込んで絶句した。
しかし俺にしてみれば、そりゃそうだという感想しか出てこない。まあ、こんなことをせずとも指を弾くだけで相手を消滅させることくらい可能だが……これは
「……ありえない」
そうして呆気にとられ、茫然自失といった様子のベアトリーチェが発した第一声がそれだった。
「お前は、お前はいったい……!?」
その声色から滲み出る感情は──恐怖。
この者の存在を理解できない。
そんな恐怖の感情が、ありありと声に溢れている。先程までの憤怒は何だったのかと言わんばかりに彼女は今、俺に対して畏れを滲ませている。
「お前は、何者だ──!?!?」
……俺の正体が何なのか、か。うーん、正直言ったところでなんだよなぁ。君は特に俺のことを信じたくないだろうし。まあ、強いて言えば……
瞬間、辺りに静寂が走った。
だが、その静寂もほんの一瞬のこと。
その後、ベアトリーチェは鼻を鳴らしながらも恐怖を押さえつけ、下らないとばかりに俺の言葉を一蹴する。周りの生徒や先生の反応も、呆れたような反応ばかりだ。ま、予想はしていたけどね。
「……何を言うかと思えば。こちらが貴方の素性を真剣に問うてみれば、言うに事欠いて──『神』?……本当に下らない。呆れを通り越して、吐き気すら感じさせる。ですが、私は寛大です。貴方にもう一度、チャンスを与えましょう。答えなさい、貴方は何も──」
「いいえ、マダム。彼は間違いなく、私達が求めた到達点そのもの。『
刹那、ベアトリーチェの言葉に割り入るように聞き馴染みのある声が聞こえた。その声に先生とベアトリーチェは眉間に皺を寄せ、眉を顰める。
それは俺も普段から聞いている、余裕綽々といった大人の声。まったく、タイミングが良いねぇ。
いったい何の用です?黒服さん。
「クックック……いえ、貴方が困っているようでしたので助け舟をと思いまして。ご迷惑でしたか?」
いえ、全然。最高のタイミングでしたよ。
それよりも黒服さんが来たということは、他の「ゲマトリア」の面々も一緒にですかい?
「ええ、そろそろ到着するはずです」
そんな黒服の返答と同時に、何時の間にか後ろにあったゲートから二人の影が見えた。ゴルコンダ&デカルコマニー、そしてマエストロさんだ。
彼らはコツコツと靴音を響かせ、こちらへと歩み寄ってくる。これでゲマトリア勢揃いだね♡
「……裏切り者が。この期に及んで、いったい何をしに来たというのですか……!!!」
ベアトリーチェは忌々しそうに俺達を見る。
「本来ならば私達も出てくる気はありませんでした。ですが、マダム。貴女は先より、彼の素性について知りたがっていたようでしたので……顔を見せるついでに、私達から彼の正体について教授してさしあげようと思い、ここを訪れた次第です」
だが、そんな視線は無いものとばかりに、当の黒服達はベアトリーチェに向けて語り始めた。
「ですが、私から引き出せた答えは『神』などという愚劣極まる妄言だけ。黒服、お前までこの化け物を『神』と宣うつもりではないでしょうね?」
彼女は目を鋭く細め、言った。
「いいえ、彼は間違いなく『神』ですよ。そして、それこそが貴女を『ゲマトリア』から切り捨てたことにも繋がってくるのです」
「……何ですって?」
彼女の言葉を無視し、黒服は続ける。
「彼は確かに神ですが、より正確には『求道神』という神格に分類されます。言ってしまえば、人間大の宇宙そのものと言って差し支えない存在です」
「………………」
ベアトリーチェは眉を顰め、もはや話の外野にいる先生達でさえも更に眉間に皺を寄せる。
「己の願いし世界法則を、自身の内側にて永久展開し続ける超越存在。この存在位階のことを、ある世界では『流出』や『太極』とも表現するそうで……かの高名な唯一神による天地創造も、この『流出』に端を発すると言われています」
そして黒服の言葉に続くように、ゴルコンダやマエストロ達も言葉を発した。
「既知世界から完全に独立した存在、この宇宙から永遠に孤立した異世界そのもの。彼は神であるがゆえに己と同じ神格以外による干渉、及び介入はその一切を受けつけない。貴下の攻撃が彼に効果を発揮しなかったのもその為だ」
「純粋な強度の面では『覇道神』──いわゆる
彼らが一頻り話した後、黒服は言った。
「……さて、理解できましたか?つまり、私達は彼に独自の『崇高』を見出したわけです。そしてその推測通り、彼は実際にそうだった」
続けて彼は言う。
「彼の血液を採取したことにより、我々は
──貴女の有する『領地』が持つ意味、そして価値が一瞬で暴落・喪失してしまうほどに」
「──ッッ!?!?」
ベアトリーチェの表情が凍りつく。
彼女は仮にもゲマトリアに所属していた。ゆえに、黒服が発した言葉の意味、重みを理解できないほど彼女は愚昧ではない。曲がりなりにも、その重要性を彼女はしっかりと理解できていた。
「……それに加えて、マダム。貴女は外界と繋がり、『色彩』と接触しようとしましたね?」
「………………」
袋小路。
この状況を端的に表す言葉が正にそれだ。
正直に言って草である。
「……さて。なぜ、ただ到来するだけの概念である『色彩』と接触を果たそうとしていたのか。我々の協定を破ってまで招来しようとした理由を、お聞かせ願えますか──?」
もう終わりだよ、このオバハン()