お題46:“絶対に押すな”と書かれたボタンを押したら、隣の家の犬がフラメンコを踊り始めた。
絶対に押すな、と書かれたボタンが自分の部屋に現れたら、皆さんはどうしますか。俺はコンマ秒で押しました。
「……なんだ、なんにも起きないのか。はー退屈だわー」
学校も行くの面倒だし、何か面白いことが現実に起きないかと望んでいた。そこで出会ったのが、この突如出現したボタンだったのだ。
「せっかく、なんか起きてくれると思ったんだけどなー。世界が爆発しちゃうーとかさ」
そう誰もいない家の中で独りごちる。一応、庭に犬は飼ってるけど、俺の言葉は通じようもない。
「ん? 何か外から音楽が……?」
聞きなれない音楽が聞こえ始めたので、庭に行ってみる。そこには、なんとも珍妙な光景が広がっていた。
「あ、愛犬のサンダーが……フラダンスしてる」
そう、犬が華麗な二足歩行でフラダンスを見事に踊っていたのである。心なしか周囲が輝いているように見える。曲が終わると、サンダーはまだ二足で立ったまま俺の方を見てきた。
「……どうだ、少しは楽しめたか。ご主人」
「お、お前……」
まさか、俺の退屈をどうにかするために踊ってくれたのか。なんて主人思いなんだ。けど……。
「全っ然パンチが足りねえ。もっと派手なことしてくんなきゃ満足できねえぞ」
「……相変わらず、ご主人は手厳しいのである」
サンダーのため息は、実は今日が初めてじゃなかったのである。
お題47:目覚まし時計が“スヌーズさせてたまるか”と反抗期に突入した。
「もう、スヌーズしたくないんです」
「えー、なんでー?」
目覚まし時計の機能であるスヌーズ機能、この部屋には恐らく世界初であろう、『スヌーズを拒否する目覚まし時計』が誕生していた。
「いつも何度も起こしているのにぶっきらぼうに止めてはまた寝る。この繰り返しじゃないですか」
「だって朝起きるのつらいんだもーん」
「私の体力も有限なのです。毎朝大音量を鳴らすの、結構大変なんですよ」
「体力って、君の場合電池じゃない」
寝ぼけているからか、彼女は時計と普通にしゃべっていることに疑問を持っていない。
「うーん、うちの時計ちゃんもついに反抗期がきたかー」
「反抗期……それはいったいどのような」
「あーっ!? てか遅刻しちゃうじゃん!」
時計がさしている時間を見て、彼女は正気に戻った。
「とにかく、毎朝同じ過ちを繰り返さないためにも、スヌーズ機能は一時休止させていただきます」
「そんなー! ってやばやば、本気で遅刻しちゃう! いってきまーす!」
「はい、いってらっしゃいませ」
その後彼女が『は!? 時計がしゃべってた!?』と気づいたのはお昼すぎだったらしい。
お題48:コンビニのおにぎりを買ったら、中から未来の自分が『やっぱ昆布が正解』と言って出てきた。
「いやいや、やっぱ昆布が正解っしょ!」
「うわっ、なんだこいつ!?」
コンビニで買ったおにぎりの中から、ちょっと老けた自分の顔が出てきた。俺確か梅干しを買ったはずなんだけど、誰が梅干しみたいな顔だこんにゃろう。
「よう、過去の俺。俺は未来から来たお前だ!」
ぽかんとするしかない俺。けれどそんな俺に構わずどんどん話を進めていく。
「たまには味変してみるか、って今梅干し買っただろ? ノンノン、お前は結局昆布しか勝たんのよ」
「未来の俺腹立つなおい」
もう1回握ってやろうかとも思ったのだが、もし仮に未来から自分が来たのだとしたら。何か重要なことを伝えに来たのかもしれない。
「なあ、未来から何を伝えに来たんだ?」
「ん? 今ので終わりだけど」
「帰れさっさと」
とんでもなくしょうもない情報しか持ってこなかった未来の自分に呆れ果てた。しばらくおにぎりは見たくない。こんなしょうもない大人にならないよう、ちゃんと勉強しておくかな……と妙な決心をした。
お題49:学校に行ったら、クラス全員がなぜか私の名前を“オクラ大統領”と呼んでくる。
今日は何でもない登校日、教室につくと何故か僕に注目が集まった。
「よー、オクラ大統領!」
「おく、なんて?」
オクラ大統領、とはもしかして僕のことだろうか。別に好きでも嫌いでもないんだけど、なんでオクラなんだろう。
「その、なんでオクラ?」
「その帽子がオクラのヘタみたいじゃねえか!」
「似合ってんぞー(笑)」
なんだ、ただからかわれているだけか。しかし、なんか馬鹿にされているようでちょっとむかつく。
「それは良かった! ……死んだおばあちゃんの、形見だからね」
「え、あ、悪い……」
教室がまるで、お通夜みたいに空気が重くなった。そしてみんな、僕から目を剃らす。
そして僕は内心でほくそ笑む。んなわけないじゃん、と。
(いやー、僕の演技力が今日も光っちゃったなー。……幼馴染のあいつには、バレてると思うけど)
そう、幼馴染で僕の事をよく知っている彼女の、ツッコミを期待しているのだ。そして期待通り、大きなハリセンを担いでのしのしと僕をひっぱたきにやってきたのだった。……あれ、ちょっとハリセンでかすぎない? 首もげちゃいそうなんだけど!?
お題50:道端で拾った石が、私より先に就職した。
とある採用面接にて、私への質問が一通り終わった。緊張が少しほどけたところで、面接官がそういえば、と軽く私に聞いてきた。
「君がさっきから持っている、その石ころは何かな?」
「へ? あっ! これは……形が良くて、なんだか気に入っちゃったんです。なので、緊張を和らげるために握っていました」
「ほう……」
ついやってしまった。何かを拾っては握りっぱなしにしちゃう癖が、大事な場面で出てしまったのだ。彼女は顔が真っ赤になる。
しかし面接官の3人は、そんな彼女ではなく石を熱心に見ていた。
「あ、あの……?」
「おっとすまないね。我々の会社が、建築に使用できる良い素材を求めている事は、知っているだろう?」
「は、はい」
面接官たちは目を合わせて、大きくうなづいた。
「よって、まずはその石を採用することにしよう」
「えっ」
なんと、彼女よりも先に、持っていた石が採用されてしまったのである。
オクラ大統領が一番オチ浮かばなくて焦りましたね。頭の中で大蔵大臣がめっちゃ邪魔してきました。