お題91:目玉焼きが突然しゃべりだして、人生相談を始める朝の台所。
「なあ、俺この先どうしたら良いかな……」
「うん、とりあえず中まで火が通ってくれたらいいかな」
俺の朝食が、熱されたフライパンの中から人生相談を持ちかけてきた。相手は、目玉焼き。
「いや、もっとこうさ、身のある話をしたいわけよ」
「黄身と白身はあるだろ」
「だからそういう上手い返しが欲しいんじゃなくてさ」
「俺はお前に美味くなって欲しいけど」
ついでに朝から頭を使わせないでほしい。隣のベーコンくんは黙って焼かれているというのに。
「お前このあとはただ俺に食われるだけなんだからさ、何を悩むことがあんのよ」
「はぁ……君みたいな若輩者にはまだわからないか、この僕の苦悩は」
「生まれてすらない奴が何言ってんだ。ほら塩コショウだぞ」
「は、ハックション!」
目玉焼きがくしゃみをするという異常減少が起きているけれど、眠たい俺の頭はただ流すばかりだった。
お題92:世界一足の速いカタツムリをめぐって、近所の子どもたちが賭博を始める。
世界一足が速い、少年たちにとっては喉から手が出るほど欲しいステータスかもしれない。それならば、世界一足の早いカタツムリはどうだろう。
「うちのは断然速いんだぜ!」
「いやいや、俺のカタツムリはふと目を離したらいなくなっちまうんだ」
村で行われているカタツムリ競争大会。少年たちは自慢のカタツムリをそれぞれ連れてきて、自慢しあっている。
「いやあ、今年も盛り上がっておりますな」
「しかし会長、勝手に世界一って単語使って良いんですかね?」
「こういうのは言ったもん勝ちじゃろ。それに、こんな事してんのうちの村くらいだしのう」
年老いた会長は、かつての優勝者である。もっとも、この大会を唯一やっている村で一番だっただけだが。
「大盛り上がりなのは良いんですが……お金かけちゃうのはどうなんですかね……」
「ま、親御さんには見せられんな。ほっほっほ」
「いや、というか法律的に駄目なのでは……?」
カタツムリ黙示録は、今日もひっそりと、しかし大盛り上がりだ。カタツムリたちの、おっそい競争が今日も始まる。
お題93:会社のコピー機が「もう限界です」と退職届を提出する。
会社のオフィスに佇むコピー機が、誰も動かしていないのに一枚の紙を印刷し始めた。皆が怖がる中、恐る恐る出した紙には、大きな字ではっきりと、明朝体で書かれていた。
「退職届」
社長は誰かのいたずらかと社員たちを疑った。しかし、そもそも始業時間前、誰もパソコンに電源すら入れていないのである。
「毎日毎日、大量の印刷稼働。いくら音を上げても耳を塞がれて動かされてきた。もうワンマンでの稼働は嫌です」
「あ、そういえば数日前から変なこすれる音が出ていましたね……」
「このコピー機何年前からだったっけ。他のが前に壊れてから、ずっと1台で動かし続けてたよな」
一応、社員たちには心当たりがあった。調子が悪いことは、誰も言わずとも承知はしていた。とはいえ、コピー機が自分から言ってくるとは思っていなかったのである。
「ふむ、こういうのは誰かが声を挙げないと、会社としても良くないな。じゃあ、コピー機以外の全員クビで」
「なんでだよ!!!」
社長の絶望的な察しの悪さによって、コピー機含め誰の願いも叶わなかった。
お題94:校庭の砂場に巨大なエビフライが埋まっていた話。
今日も登校日。皆が学校に集まってくる中、皆とある異変に気がついた。そのせいで、誰も教室にたどり着けずにいる。
「おいなんだよあれ! 教室にエビフライが埋まってるぞ!」
「でっけー……。屋上より高いぞ」
「しかも湯気立ってる!」
なぜか、揚げたての巨大エビフライが、校庭の砂場に刺さっていた。生徒たちが興味津々に砂場に集まるのはもちろん、教師たちは一体どうしたものかと、苦虫を噛み潰したような顔でエビフライを囲んでいた。
「せんせー! これ食べても良い?」
「砂がついてるので駄目です!」
「もんだいそこなの?」
先生たちも混乱している。まず突如現れた出どころ不明のホカホカエビフライとか、普通に怪しいだろう。
「えー、こんなに美味しそうなのにー」
「うわっ、衣サクサクだー」
「こら、勝手に触らない! とにかく業者に頼んで撤去……なんの業者に頼んだらいいの?」
巨大なエビフライに対して、目を輝かせる子供と困る大人が、とても対照的だった。
お題95:くしゃみをすると必ず鳩が1羽召喚されてしまう体質になった主人公。
なんの変哲もない普通の少年に見える彼。しかし、彼は特殊な体質だった。
「は……はっくしょい!」
「クルッポー!」
彼の懐から、バサバサっと鳩が飛び立っていった。これは決して彼が手品のように仕込んでいたものではない。
「もー、また鳩出してる。一体どうなってんのよそれ」
「ふぅー……僕にもわかんないよ」
昔からの幼馴染である彼女は、いちいち驚かなくなっていた。急に鳩を出してくる彼を怖がらず、一緒にいてくれたのは彼女ぐらいのものだろう。
「いつも思うけど、出てきた鳩はいつもどこに行っちゃうのよ?」
「ああ、それがすぐに行っちゃうから、わからないんだ」
「野生に戻ってるってこと? 本当に不思議よね、それ」
「うぅ……せめて室内にいるときはちょっと勘弁してほしいんだけどなー」
「別にそうでなくてもあたしだったら四六時中嫌よ」
「だよねー……ぶえっくしゅ!」
バサバサッ。また鳩が飛ぶ。
「……ねえ、あの子。さっき飛んだ鳩と同じ方向に飛んで行ってない?」
「あ、本当だ」
「ねえ、追っかけてみない?」
「えぇ?」
彼女が彼の手を引いてかけていく。その先にあるものとは、一体なんなのだろうか。
残り5個、それが終わったら次はどうするか……。
正直、また100個書くよりは別の事をした方が良いのでは、と感じています。