俺は神の駒らしい ―平和のためにコーディネーターを滅ぼすまで―   作:やわらぎ

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各勢力の視点を追加しました。


第4.5話 「崩壊の余波と、それぞれの空」

ユニウスセブンが砕け散ったその瞬間――コズミックイラの歴史は、確実に転がりだした。

 連合とプラントの緊張は、一気に断裂。ザフトは“黒衣の独立宣言”をし、地球圏へ向け徹底抗戦の構えを見せた。

 

 そして、世界は揺れた。

 

◆大西洋連合(アズラエルの視点)

 

「……やれやれ、血のバレンタイン、か」

 

 ムルタ・アズラエルは、薄曇りの光の差す執務室で、報告書を片手に肩をすくめた。

 OC――オルビタル・コモンウェルスとの接触以来、彼の思考は以前より冷静だ。

 OCの存在は、自分の支配欲を満たす手段であり、同時に巨大な“安全装置”にもなっていた。

 

「核を使わずにユニウスを破壊した……連合軍も、少しは成長したじゃないか。これなら国際世論の反発も最小限で済む」

 

 アズラエルは唇の端に笑みを乗せた。

 ザフトは激昂し、戦争は避けがたい。しかし、OCという“第三極”が存在する今なら、連合は敗北しない。

 

「さて――彼等には、こちらも手の内を見せ過ぎないようにしないとね」

 

 OCとの裏同盟。

 それは連合の未来を左右する、大きな賭けだった。

 

◆ユーラシア連合

 

「……ちっ。ユニウスが落ちたか」

 

 ユーラシア軍参謀たちは、全員が渋い顔を並べた。

 彼らにとって、この事件は利益でもあり損失でもあった。

 

「ザフトは独立を宣言。徹底抗戦の姿勢を示したとのことです」

「となれば、ユーラシアの宇宙航路は壊滅的だ。対策が必要だな」

 

 だがその一方で――

 

「OCから輸入した“ザニー”……あれは良い。部隊配備を急げ」

「工作機械として完成度が高い。それに――バッテリー式のこのMSは、いざという時に軍用転用が容易だ」

 

 そう、OCの“限定技術供与”が、ユーラシア軍の焦りをわずかに和らげていた。

 彼らはまだ知らない。OCが意図的に“一年戦争クラス”の技術しか渡していないことを。

 

◆アジア連合

 

「……世界が傾きはじめたな」

 

 アジア連合の主席補佐官は、冷たい茶をすすりながら、重苦しい空気の中でつぶやいた。

 

「OCからの“ザクⅠ”導入は幸いだった。あれがなければ国土防衛が成り立たなかった」

 

 ザクⅠ(バッテリー式)は、あくまで民生用の“工業労働機械”である。

 だが、アジア連合は密かに軍事転用の可能性を探っていた。

 

「ザフトとの全面戦争は避けられまい。OCとの関係強化が急務だな」

 

 アジア連合は、早くも“連合側の勝ち馬に乗る”覚悟を固めつつあった。

 

◆プラント(評議会側)

 

「なんという暴挙だ!! ユニウスを……我々の故郷を砕くとは!」

 

 パトリック・ザラは、怒りに声を震わせた。

 涙を浮かべる議員もいる。家族を失ったものも少なくなかった。

 

「大西洋連合は必ず後悔するだろう。徹底抗戦だ! プラントは屈しない!!」

 

 ザラの声に多くの議員が呼応した。

 怒りと悲しみは、簡単に戦意に変わる。

 

 しかし――

 

「……ザフトの全力投入は、危険です。敵を知らねば戦は勝てません」

 

 その中で、シーゲル・クラインだけが穏やかな声を張った。

 

「OC――彼らは未知です。無為に敵を増やすべきではありません」

 

「クライン議長! 今さら融和など――」

 

「戦うのであればこそ、敵を理解すべきでしょう」

 

 議場には微妙な空気が流れた。

 ユニウスを失った悲しみは、理性と感情の境界を曖昧にしてゆく。

 

◆オーブ(国防省)

 

「……世界がまた、戦争へ向かうのか」

 

 まだ16歳のカガリ・ユラ・アスハは、軍施設のモニターでニュースを見て拳を握った。

 

「父さんは、今度も“中立”を選ぶのかよ……!」

 

 彼女の叫びに、側にいた軍人が苦笑する。

 

「カガリ様、あなたはまだ学生でしょう。政治は大人に任せなさい」

 

「関係ない! 誰も戦いたくなんて――!」

 

 だが、その叫びは世界には届かない。

 政治の舞台に立つ日が彼女にも訪れるが、それはまだ先の話だ。

 

◆OC(オルビタル・コモンウェルス)

 

「……ユニウスが、落ちた」

 

 主人公――久世ユウヤは、管制室の大型スクリーンを見つめていた。

 視界に映るのは静かに漂う残骸と、崩壊したプラント居住区。

 言葉を失うほどの惨劇。

 

「ユウヤ殿……お気持ちは分かりますが、行動を急ぐべきです」

 

 シーマ・ガラハウ中佐が、静かに声をかける。

 護衛アンドロイドである彼女ですら、どこか沈んだ表情をしていた。

 

「ザフトが“黒衣の独立”を宣言しました。地球連合との戦争は避けられません」

 

「分かってる……でも、これは――」

 

 ユウヤは息を吐いた。

 

「神様の……予定通りってわけか」

 

 そのときだった。

 

《──よく見ておけ、人間。これが“システムの揺り戻し”だ》

 

 脳内スピーカーのように、あの“クルーゼの声に似た神”が語りかけてくる。

 

《歴史は決まっている。だが、お前の役割は“修正”ではなく“誘導”だ。誤作動を防ぎ、より正しい結末へ導け》

 

 ユウヤの手が震えた。

 

「……正しい結末、ね。ナチュラルが救われる未来……」

 

《そのための駒が、お前だ》

 

 冷たい声だった。

 慈悲でも優しさでもない。

 ただ“使命”を告げる機械のような声音。

 

◆ユウヤの決意

 

「……やるよ。やるしかないんだろ」

 

 ユウヤは顔を上げた。

 

「OCは動く。ザフトの暴走も、連合の暴走も止める。

 ……世界が平和になるように。俺の手で」

 

 シーマが微かに微笑む。

 

「ユウヤ殿。その覚悟があれば、我らはどこへでもお供します」

 

 レビル大将の声が通信機から響く。

 

『準備は整っています。第十三独立戦隊も、戦力確認を終えました』

 

 ワッケイン少将が続く。

 

『ユウヤ殿の判断を、我々はただ待つだけです』

 

 世界は混沌へ向かう。

 だが、OCはすでに次の一手を動かす準備を整えていた。

 

 ユウヤは静かに拳を握る。

 

「……すでに戦争の火蓋が切られた。

 ここからは、俺がこの世界を“導く”番だ」

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