妹がネット小説書き始めた話、聞く?   作:【ユーザー名】

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身内の恥は、蜜の味(3)

ふたりして声を殺しながら笑い転げ、ようやくひと息ついたところで、アラタがぼそっとつぶやいた。

 

「……カナちゃん、ガチやったな」

 

ユウマは笑いすぎて腹筋が痙攣したのか、床に倒れてピクピクしている。

息を吸うたびに変な音が漏れて、見ているこっちが不安になるレベルだ。

 

「ふひっ……へへ……せやな。カナちゃんは本物やで……ふひっ」

 

アラタは白湯をもうひと口飲んだ。

何かを口に入れなかったら、笑いを堪えきれない気がしたからだ。

 

「よし、気になるとこ、まとめるで」

 

半ば自分に言い聞かせるように宣言する。

 

「ひひっ……なんで兄貴はそんなに耐えられへんねん……?」

「カナちゃんへの愛やろが」

「愛……カナちゃんへの愛……ふひっ……瀬戸ウイルスにも負けへん愛……ひひっ」

「黙れや。話進まへんやろ。計画どおり、俺らは読者としてカナの小説に感想つけんねん。

 ──お前、ちゃんとアカ作ったんやろな?」

 

ユウマはようやく上半身をお越し、ぜいぜいと肩で息をしながら答えた。

 

「はー……ふー……よし、落ち着いた。おう、作っといたで」

 

多少は頭が回るくらいには復活したらしい。

 

「よし。ほんならカナの小説以外の作品に、ちょこちょこ感想つけとけ」

「なんでや?」

「カナの小説にだけ感想書いとったら……100パー身内やろが。カナにバレたら終わりや」

「あ、確かに。兄貴ってやっぱ賢いなぁ」

 

(いや、お前……)

 

アラタは内心ため息をついた。

ほんま、こいつよう大学受かったな……ああ、俺が教えたからか。

 

「まあええわ。ほな、どんな感想にするか方針決めるで」

「はいはい〜」

「まず、お前から気になったとこ言うてけ」

 

促すと、ユウマは腕を組んで「うーん」と唸り、意外と真面目な顔になった。

 

「うーん……大前提としてなんで少女漫画やねんってツッコミはあるけど……少女漫画として見ても、この第1話だけで先が読めちゃうんちゃう。文音ちゃんがなんやかんやあって瀬戸ウイルスとくっつくんやろな〜って」

「まあ、確かに、出だしから王道ド真ん中や」

 

アラタもそこは否定できなかった。

タイトルからして「瀬戸くんは、春風でできている。」だ。

それで転校生の瀬戸くんが出てきて、地味女子主人公が胸を鳴らしている時点で、9割方ゴールは見えている。

 

(いやでも、少女漫画ってそもそもそういうもんなんか?)

 

にわかすぎてどうにもわからない。

 

「せやろ。あとカナちゃんって……手首フェチなんかなって」

「……それは、重要やな。俺も初耳やったわ」

「やろ? ほな俺、明日から手首見える服にしよかな。七分袖とかさ、袖ゆるめのシャツとか。兄貴もそういう服持ってたやろ? ええ感じのヤ——」

「お前のファッションはクソどうでもええねん」

「うわ、ひっど……ユウちゃんのガラスのハート、今パリーンいったわ……」

「……コンビニのレシートでお茶の10円引き当たったぐらい、どうでもえええ」

「それガチでどうでもええやつ!」

「他は?」

 

テンポよくツッコミを入れると、ユウマは少し笑ってから、また真面目な顔に戻った。

 

「文章自体は普通に上手や思うわ。1話に少女漫画って単語が3回出てくんのはビビったけど、流石は新聞部やな」

「そこはほんまポイント高いな。少女漫画は……かわいいから、よし」

「てか、カナちゃん、自分が新聞部やから主人公も新聞部にしたんかな? 投影かなかな?」

「うぜえ。……むしろ逆ちゃうか。カナは背高いしキリッとしたタイプやん。主人公はちっこくてふわっとした子やし、そこは敢えて変えたんちゃう? 新聞部は単に書きやすかっただけやろ」

「せやな。じゃ瀬戸ウイルスは? モデルおるん?」

 

その質問に、アラタはぴたりと動きを止めた。

 

「……」

「え、なんで黙んねん。怖いって」

「……」

「瀬戸ウイルスは……多分、いや、絶対妄想やんなぁ……」

「……うむ」

 

ユウマが指摘した内容を、アラタはメモに走り書きしていく。

 

* 話の筋が読めてしまう

* カナちゃんは手首フェチ

* 文章は上手い

* 主人公はカナちゃんの反対の性質

* 瀬戸ウイルスは妄想

 

(……ゴミみたいなコメントやな)

 

「俺としては、このジャンル、ハーメルンでどこまでウケるかってとこが一番気になんねん」

「前言うてた、なんとか観念逆転ものが流行っとるって話?」

「それもあるけど、根本的にハーメルンの読者は男が多い。せやから、男が感情移入しやすい話のほうがウケる……はず。理想は万人ウケやろうけど、今のままやと読者層とちょいズレとる」

「おぉ〜兄貴編集者みたいやな」

「うっさい。ちゃんと考えろ。一般男性読者目線ではな、地味女子×イケメン男子は正直あんま興味ないねん。世に出てる漫画とかラノベとか見てみ。ウケてるんはだいたい逆の、地味男子×美少女やろ」

「なんでや、地味女子×イケメン男子でもええやん」

「だから、一般男性って言うとるやろが。そういうんは例外」

「それ言うたら地味男子×美少女やって現実にはレアやろ」

「だから一般男性にウケるんやろがい」

 

(こいつ、実は3歳児なんか?)

アラタは脳内でだけ辛辣な評価を下しつつ、続けた。

 

「要するに、男目線の妄想が叶うからおもろいって話や」

「……せやな。確かに、イケメン男子×美少女とか聞いても、そらそうやろ、の一言で終わるわ」

「やろ? 地味男子×美少女やと、何でや?の余白が生まれる。その何で?が物語になるんや」

 

ユウマはふむふむと頷いた後、急に思い出したかのように話し始めた。

 

「でもイケメン男子が地味女子とくっついても何で?って気になるけどな。いや、実は同じ学科にもおんねん。齋藤ってやつなんやけど、ごっつイケメンなん。せやけどな、その彼女さんが……なんというか、温もり感じる系っちゅうか、素朴系の子でさ。いや、齋藤に粉かけとった子ら結構おったで。中にはモデルやん!?って感じのすげえ眉毛長い子とかもいてな。みんな齋藤はその子と付き合う思っとったんよ。ほいで齋藤のやつ、ある日いきなり大学にウクレレ持ってきよって——」

 

アラタは慌てて手を上げた。

 

「なあ、ちょい待てや」

 

ユウマの口を止めるように、顔の前に手をかざす。

 

「何やねん? ここからおもろなるとこやって」

「お前の話はだいたいわかった。地味女子×イケメン男子も確かにおもろい。でも、それ以上に気になる——」

「わかっとる、ウクレレやろ。俺も最初おもったもん。ウクレレって何?って。ていうか大学にウクレレ——」

「ちゃう。いや、ウクレレも確かにおもろい。でもそれより先に、俺はお前の兄として、どうしても確かめなあかんことがある。」

 

 

「お前さ、ここの毛の名前、わかっとるか?」

 

そう言ってアラタは、自分のまぶたの縁を指差した。

 

「なんやねん。俺、これ兄貴に話すの結構ためてたんで」

 

ユウマがむっすりした顔で言う。

だが、アラタはユウマの言葉をほぼ無視して、自分のまぶたの縁を指差し続けた。

信じられなかった。いや、信じたくなかったのだ。

 

「なんその顔。眉毛やろ」

 

アラタは、そっと指を少し上にずらし、もう一度尋ねる。

 

「ほな、こっちの毛は?」

「バカにしとる? 流石に俺でもわかるで。まつ毛やろ」

 

「……せや…な」

 

アラタは無言で白湯を探し始めた。

 

(白湯はどこや……白湯はよ……)

 

今この状況から自分を救ってくれるのは、もう白湯しかなかった。

湯呑に白湯を注ぎ、自棄気味に一気に飲む。

 

「あっつ!」

 

案の定、舌を焼いた。

 

「なんや兄貴、そんな喉かわいとったん? あほやな〜、そういう時はちゃんとフーフーしてから飲むもんやで」

「………おん」

 

(ああ、これが学校教育の敗北か……)

 

アラタは1分前の記憶を心の奥に封印し、ぐちゃぐちゃになった話題を強引に本筋へ戻した。

 

「要するに。要するに、や。ただの少女漫画じゃ男の読者は引けへん。この路線で行くなら、なんかひねりが要るやろって話や」

「急に真面目になるやん。なんかってなんや?」

「だからそれを考えんねやろが。はあ……まあええ、ぶっ飛んだ設定やけど、たとえば瀬戸くんが実はロボットやった、とかやな」

「ドラえもんやん!」

「……お前はドラえもんと恋するんか?」

「……ドラミちゃん」

「お前はドラミちゃんが実はロボットでしたって聞いて、びっくりするんか?」

「……」

「瀬戸くんがロボットやったら、ロボットの目的とか世界観とか気になってくるやろ。そういうやつや」

 

ユウマがしきりにうなずいている。

思考はまだ生きているらしい。少しホッとした。

 

「なるほどな。そんな感じで、普通の少女漫画にひとひねり加えるって話やな。理解理解」

「最初からその話しとるけどな」

「ほなロボット以外にも、なんかアイディア考えなあかんな」

「最初からその話しとるけどな」

「ならどうやろ、イケメン男子が実は叔父さんでしたっていうんは?」

「お前、それほんまに読みたいんか?」

 

(もう手遅れかもしれんな……)

 

心の中でそう結論づけつつ、アラタはメモ帳をめくる。

 

「じゃあ……『瀬戸くんは、春風でできている。』ってタイトルやし、瀬戸ウイルスが風の精霊やった、とかは?」

「ええな。ありっちゃありやけど、ちょい月並みやな。女児向けアニメとかにありそう」

「むずかしいな……でも、せっかくカナが考えたんやし、風の要素は入れたない?」

「せやな。ファンタジー寄りならありかもしれん。SFに入れるんはむずいけど、ロボットでした、とか、未来から来たって設定にどうにか組み込むとか。ホラーなら、瀬戸くんが実は退魔師で、風操って幽霊祓うとかは作りやすそうやけど」

「あ、それならわかるで。ミステリーならあれやろ、瀬戸ウイルスが殺されて、文音ちゃんが犯人探すんやろ」

「全然わかってへんやん」

「いや、おもろいって。最初はな、瀬戸ウイルスが探偵で、文音ちゃんはその助手なんよ。でも、事件を追ってくうちに瀬戸ウイルスが殺されて、最後は文音ちゃんが探偵になって犯人捕まえるんよ。ラストシーンで、春風を背景に、文音ちゃんが瀬戸ウイルスのこと思い出すんよ」

「……」

「いや、なんか言ってや!」

「驚いとったんや……お前、脳みそあったんやな」

「あるわ!!」

「せやな。そういう設定もありや」

 

こうしてアラタは再びメモを取る。

 

* 話の筋が読めてしまう

* カナちゃんは手首フェチ

* 文章は上手い

* 主人公はカナちゃんの反対の性質

* 瀬戸ウイルスは妄想

* 瀬戸くんはロボット

* 瀬戸くんは探偵

 

「他は?」

「今気づいたんやけど、この小説ってジャンルが現代/恋愛やん。せやったら、ロボも探偵も無しなんちゃう?」

「せやったな。まあジャンルなんて緩いもんやとは思うけど、せっかくやし現代/恋愛縛りで考えてみるか。問題はやっぱ、1話読んだ時点で瀬戸くんとくっつくんが丸わかりってとこや」

「ほな、イケメンいっぱい出したらええんちゃう? 木を隠すなら森の中っちゅうやろ」

「発想が完全に乙女ゲームなんよ。ゆうてタイトルから瀬戸くん一本釣り状態やのに、どこに森作んねん」

「せやったら、最初は別のイケメンらとくっついとって、読者を惑わせてから、最後に瀬戸くんも捕まえるってのはええんちゃう?」

「だから何で発想が乙女ゲームなん?」

「ほんなら……めっちゃ戦略的な地味女子が、確実に獲物狩りにいくハンターってのは? 地味やけど、狙った男は必ず落とすんよ。HUNTERxHUNTERのヒソカみたいに、微妙な手札で強キャラ倒す、みたいな。男なら燃えるやろ」

「……微妙言うなや。でもまあ、ちょっとリアルでええな。そらおもろそうやけど、そんだけ落として、そのあとどうすんねん」

「うーん……捨てる?食べる?」

「鬼か。まあ、おもろくはある」

「やろ? あとは、瀬戸ウイルスは実は五つ子とか六つ子でした、とか——」

「そのネタはもう出とる」

「じゃあ九つ子」

「おかんどんな化け物なんや。兎か?」

「あとなんやろ。瀬戸ウイルスには実は秘密がある、とか?」

「どんな?」

「えー……あー……たまに女の子走りになるとか」

「お前やん」

 

もうこの辺で限界だ、とアラタは悟った。

 

「ほな感想書くぞ。明日の朝までにはカナに届けるで」

「了解。兄貴が真面目キャラで、俺がテンション高めやな?」

「いや、キャラは好きにしたらええ」

 

ふたりはさっそくキーボードに向かい、それぞれ感想の下書きを始めた。

だが、しばらくカタカタとキーを叩いていたユウマが、ふいにぴたりと指を止める。

 

「……なあ兄貴。今さらやけどさ」

「ん?」

「この少女漫画みたいな小説に男二人でマジな感想書くって……普通にキモない? カナ、感想欄見たらドン引きせぇへん?」

「……一理……あるな」

「どうすんねん」

 

言われてみればそのとおりである。

しかし、そこで止まるような兄弟ではなかった。

 

アラタは深く息を吸い、真剣な顔で告げる。

 

「……ほんならもう、お前がネカマになるしかないやろ」

「は!? 嘘やん!?」

「俺のアカは昔使っとったから今更ネカマは無理や。せやけどお前のアカは真っ新。いける」

「いけへんて!! 妹の小説にネカマで感想書く兄ってめっちゃヤバいやつやん!?」

「安心せえ。今更や」

「兄貴、自分がやらんからって……!」

 

アラタは静かに問いかけた。

 

「なあ、お前のカナを応援したいって気持ち……そんなもんなんか?」

「……」

「カナとプライド、どっちが大事や?」

「……カナに決まっとる」

「うむ」

「おん……」

「安心せえ。ネカマ構文は俺が教えたる」

「兄貴、経験者なん?」

「昔な、そういう文体のクラスメイトがおってん。そいつのパクるだけや」

「……嘘つかんでええって。俺、兄貴がネカマでも受け入れるで」

 

──ドスッ。

いいところに蹴りが入り、ユウマは床でゴロゴロ転がった。

 

「ほら、とにかく下書きせえ。俺がネカマ構文に整えたる」

「うう……はい……」

「カナのためやろ」

「蹴ったの関係あらへんやろ!」

「カナのためや」

 

ぶーぶー文句を言いながらも、ユウマはようやくキーボードを叩き始めた。

 

 

  剣聖ペンギン  20XX年XX月XX日(X) 02:34

とても丁寧に書かれた第1話で、最初の数行を読んだ時点で一気に物語の空気に引き込まれました。朝の光や風の描写が鮮やかで、場面の情景が自然と立ち上がってくるところに、作者さんの文体の安定感を感じます。

 

主人公・文音のキャラクターが短い導入部分でしっかり伝わってくるのも良かったです。地味で、背が低くて、「ふわっとしてる」と言われるタイプ──その小さな自己描写の重ね方がさりげなく、読者が彼女の視点にすぐ入り込める作りになっていると思いました。

 

瀬戸くんの登場シーンも魅力的でした。

手首の描写や、微笑んだ瞬間に春の光のような印象を添える描写など、少女漫画的なきらめきが上手く整理されていて、読みながら自然と心臓が忙しくなる感覚を覚えます。こういう感覚を文章で表現するのは難しいと思うのですが、作者さんは感情の揺れをとても丁寧に書ける方なんだろうな、と思わず微笑んでしまいました。

 

全体として、王道の少女漫画風の「始まり方」がしっかり掴めていて、読みやすさと甘酸っぱさのバランスがとても良い、第1話だと思います。

 

ここからは、一読者としての小さな提案になります。

この作品が投稿されているサイトの特性上、読者には男性も多いので、少女漫画路線に加えてもう一つだけひねりがあると、より幅広い読者が惹きつけられやすくなるかもしれません。

 

例えば、

 

・瀬戸くんにほんの少しだけ秘密があるような描写を入れて、軽くミステリーの匂いを出す

・文音の新聞部という設定を活かし、「転校生の裏にある何か」を追いかける展開を匂わせる

・ファンタジーやホラー、ほんのりSFの要素を少し混ぜる

・あるいは、恋愛ジャンルの中で、文音の視点や性格に特有のズレた面白さやクセを強めることで、一味違う物語にしていく

 

など、方向性はたくさんあると思います。

 

もちろん、王道を突き抜けるのも素敵な選択です。

 

ただ、読者層の幅を広げたい場合には、こうした小さな仕掛けがあると、さらに続きを読みたいと思わせる力が増すのではないかと感じました。

 

続きを楽しみにしております。

 


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  闇のミルクティー  20XX年XX月XX日(X) 03:37

ぎゃーーーッ!!めっちゃキュンでした……!!。゚(゚´///`゚)゚。

 

最初の朝の描写から、空気が透明でふわっとしてて、一瞬で文音ちゃんの世界に入り込める感じが本当に素敵でした。

廊下を抜けてく風とか、光が跳ねる感じとか、「あっこれ絶対好きなやつ…!」ってなる雰囲気の良さで、読みながら静かにテンション上がりました。

 

そしてそして、瀬戸くんの登場シーン!!!

あれはもう反則級の少女漫画でした……ッ!!

手首が綺麗とか春の光みたいな笑顔とか、そういう一瞬のきらめきを切り取る描写がめちゃくちゃ上手で、読んでるこっちまで顔が熱くなるやつです。

文音ちゃんと一緒にときめいてしまいました……(震)

 

文章も読みやすくて、感情が自然に流れてくから、気づいたら一気読みしてました。

かわいさ全開で読んでて楽しいし、文音ちゃんの恋がどうなっていくのか続きが気になりまくりです。

 

最後に、ヤミティーからの今日の一言♡

 

☆*:.。.木を隠すなら森の中.。.:*☆

 

次のお話、楽しみにしてます〜!!

 

 


Good:0/Bad:0) 1話 報告

 

朝の日差しがじわじわと部屋のカーテンを透かしはじめたころ、

アラタは椅子に沈み込んだまま、死んだ魚みたいな目でぽつりと呟いた。

 

「……お前の感想、中身ないやん。提案系読者ちゃうんか」

 

ユウマはやたら自信ありげに胸を張る。

 

「内容がないよう、ってやつやな」

 

アラタの黒目が、ゆっくりとユウマへ向いた。

その視線は、もはや動かすのもしんどいという疲労の色すら帯びていた。

 

「いや、ごめんて。せやけどいっしょに案出しとったんやから、提案したら内容まる被りになるやろ」

「……まあ、せやな」

「それに、ちゃんと木を隠すなら森の中って入れといたやん。……てか、何やねんヤミティーの今日の一言って。他にやり方なかったんか」

「……まあ、せやな」

「それに、感想書く段になって、感想欄で具体的な案出したらネタバレになるかもとか、カナの方向性狭めるかもしれんとか、言い出したん兄貴やで。そのせいで、俺らの考えた案、ほとんど原型留めてへんやん」

「……まあ、せやな」

「……なあ、ネカマ構文の生みの親は、やっぱ兄貴やんな?」

「……まあ、せや……せや?」

 

重たい溜息をひとつ落としてから、アラタはよろよろと立ち上がった。

ユウマがちらっと時計を見る。

 

「兄貴、今日も仕事やろ? 大丈夫なん?」

「せやで。だいじょぶちゃうけど、行くしかあらへん」

「ほな……なんか、がんばってな」

「……せやせや……」

 

二人とも眠気で思考力ゼロのまま、なんとなく会話だけが続く。

そのとき、突然ユウマがバッと顔を上げた。

 

「……あ! やっべ!」

「なんやねん」

「忘れとった! めっちゃ大事なこと!」

「なんや、家燃えてんのか?」

「風邪!」

「……は? 風?」

「だから風邪やって言うてるやん!注意せなあかんて!」

「……意味わからんわ。風にチューとか、どこのメルヘン世界やねん。恥ずかしいからカナに見えんとこでしとけや。……ほな、ちょっとでええから寝かしといてくれや」

 

そう言い残し、アラタはユウマの背中を軽く押し、半ば追い出すように部屋から出した。

扉が閉まる音がして、廊下に取り残されたユウマはぽつりと呟く。

 

「いや風にチューって……俺、何の妖精さん扱いやねん……まあ、感想欄で指摘して恥かかすんもあれやし……ええか」

 

自室に戻り、ベッドに倒れ込んで天井を仰ぐ。

夜更かしの熱がようやくゆっくり冷めていく。

 

「……カナ、驚くやろな。喜んでくれるやろか」

 

自分でも驚くほど静かな声だった。

そのまままぶたを閉じると、朝の光が薄く広がり、部屋の空気があたたかく揺れる。

 

兄弟ふたりの小さな秘密の作戦は、まだ始まったばかりだ。

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