クソみたいな世界で、俺は   作:月山 白影

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なんか今日は長くなっちゃった。



その後の話

 

 

 

 

 

 「ここは……」

 

私は目を覚ます。

確か、撃たれて……

 

 『……初めましてかな、先生。』

 

突如、目の前に少女が現れる。

背は低く、狐のような耳に、長いプリン色の髪。

私の知らない子だった。

 

 『私の名前は百合園セイア。』

 

セイア、聞いたことのある名だ…誰に聞いたんだっけ……ナギサだった…かな…?

 

 『そしてここは君の夢の中だ……或いは、私の夢の中かもしれないがね。』

 「セイア……」

 『おっと、もしかして「初めまして」ではないかな?』

 『これは失敬。今の私にとって、時間の流れは少しばかり捻れていてね。』

 『しかし先生、大事なのはそこではなく、君と私がこうして会えているということだ。』

 『さぁ……では、お話を紐解いていくとしよう。』

 『先生、君はキヴォトスの外部から来た者であり大人だ。となれば、契約、取引……そういった「約束事」の持つ重要性について、よく知っていることだろう。』

 『例えば「悪魔と契約する」、という言い回しがあるだろう?』

 『昔話においても「驚異的な存在が何か不注意な約束をしてしまったがために敗北する」、あるいは逆に「そういった約束によって打ち勝つ」というお話は幾つもある。』

 『そこからは、こうも読み取れないかい?』

 『単純な紙切れ、或いは口約束に過ぎないとしても……「約束」というものは時に何かを強く拘束し、定義付けることもある。』

 『契約、戒律、約束……こういったものはそれら昔話と同様に、キヴォトスにおいても重要な概念だ。』

 『例えばトリニティの経典には太古の始まりの「神性」、そしてそれとの間に締結された10の戒命が描かれている。』

 『その他にも、私たちは原初において「約束」を破ったから楽園から追放されたのだ……そのようなことも書き伝えられている。』

 『……今さらな話かな。なにせ実際に君は、そういった概念を利用した誰かを救ったことがあったはずだ。』

 

何か、当てはまるな。

 

 『思い出してほしい。「ゲマトリア」はアビドスの生徒に何かを強いることはできず、ただ「契約」を要求していた。』

 

っ……

なぜ、ゲマトリアやアビドスの事を…

まるで、私の今までの行動を見てきた様な……

 

 『その契約が成立しないとなれば、ゲマトリアは退くしかなかっただろう。』

 『……』

 『この事件もまた、つまりはそういうこと。』

 『「エデン条約」、これ自体が学園間で行われる約束事であることは確かだ。』

 『しかし、この条約が行われる「特別な場所」……』

 『そして条約締結のために集まった、代表者たちの資格。』

 『こういった要素により、これは大きな意味を持つ「約束」となった。歪曲されつつも、これは明らかに「公会議」の再現。』

 『そしてその約束である「戒律」を守護するユスティナ聖徒会を、特殊な方法で「複製(ミメシス)」として顕現させた。』

 『つまるところ、契約を曲解し、歪曲し、自分たちの望む結果を捏造した……そうまとめても良いだろう。』

 『これがゲマトリアの言う、「大人のやり方」……』

 『……あぁ。念の為言っておくが、私はこれらのことを事前に全て知っていたわけではないよ。あくまで君の夢を通じて、観測しただけだ。』

 

私の夢……

つまり…記憶…?

 

 『あれらは私の基本的な理解を超えた、不可解な存在だからね。』

 『形式的な話から離れると、つまるところ……アリウスの背後には「ゲマトリア」がいて。』

 

ゲマトリア……

やはり…あいつらはどこまで行っても子供たちを苦しめるのか…?

 

 『アリウスは倒れることも死ぬことも無い、強大な軍隊を手に入れた。この現在の状況にして事実。』

 『私たちがかつて追放された楽園……「エデン」、その名に冠する条約のもとに。』

 『……』

 『これが全ての、無意味な足掻きの終着点……』

 『私はアズサに警告していた。何度も何度も、このような結末になるだろうということを。』

 『それでもアズサは、希望を抱いてしまった。淡い希望を。』

 『……』

 『だから言っただろう?』

 『これが物語の結末。何もかも虚しく、全てが破局へと至るエンディング。ここから先を見たところで、無意味な苦痛が連なっていくだけだ。』

 『これはつまるところ各位が追い詰められ、結局誰かが誰かを殺める物語。誰かが、人殺しにならざるを得ない話。』

 『不快で、不愉快で、忌まわしく、眉を顰めたくなるお話だ。』

 『悲しくて、苦しくて、憂鬱になるような。それでいて、ただただ後味だけが苦いお話……そうは思わないかい。』

 『しかし紛れもなく、真実の物語でもある……』

 『これが、この物語の正体だ。』

 『君は以前、五つ目の古則に対してこう言っていたね。』

 『「ただ楽園があると信じるしかない」、と。』

 『然して、信じたい結果がこれだ。』

 『元より不可能なことだったのだよ。エデン条約、お互いに「憎み合うのはもうやめよう」という約束。』

 『そんなこと、できるはずが無いというのに……』

 『その上、条約の名前に「エデン」と来た。ここで楽園の名前だなんて、相変わらず連邦生徒会長の不愉快な冗談は皮肉にもほどがある。下手すれば悪意すら感じてしまいそうなほどだ。』

 『このプロセスを経て、確認できたものはあるだろう。』

 『それは不信から降り積もった、ゲヘナとトリニティの互いへの恨み。そしてアリウスたちが持つ恨み。』

 『それらを通じてこの条約は、歪な形で完成されてしまった。何よりも皮肉なことに、どこにも存在しない、証明すらできない……その楽園の名前を携えて。』

 『まさに、楽園から追放された私たちにふさわしい結末かもしれないね。』

 「……分かったよ、セイア。」

 『?』

 「……君も、その後はどうなったのか見ていないんだね?」

 『……?』

 『……見る必要が、あるのかい?』

 『悲しいエンディングの後、そこに続くエピローグを見たところで悲哀が増すだけ。苦しみが連なるだけだ。』

 『……それで?何が「分かった」と言うんだい?』

 「……この後のお話を確認するのは、怖かったよね。」

 『何を……』

 「だから夢の中に隠れて起きられず、ずっと彷徨っていたんだね。」

 『わ、私は……』

 

セイアは動揺しながらも答える。

 

 『先生……君は一体、何を……?』 

 

私が、セイアの代わりにこの後のお話を確認しないと。

生徒達が苦しまないような未来なのか。

 

 「セイアと会えて良かった。少し待ってて。私はやらなきゃいけないことがあるから、戻らないと。」

 『戻る……?』

 『待ちたまえ。私と違って、君の身体はまだ治ってすらいない。』

 『そして何より、君が起きたからと言って何も変わるわけではない。これは私の未来予知で判明している……』

 『いや、「七つの古則」から既に導かれていた、この世界の真実だ……!』

 「実のところ、楽園の証明にはそこまで興味なくって。「七つの古則」みたいな言葉遊びは、優先事項じゃなくって。」

 『……』

 『……七つの古則を、否定するつもりかい?』

 『楽園の存否は、全ての人たちにとっての宿題だろう?それの存在を証明できなければ、何も……』

 『……先生。君は未だに、楽園を信じているのかい?』

 『証明すらできないまま、ただ盲目的に信じていると?』

 『「楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか」……』

 『つまりこれは楽園証明の話ではなく、ただそれを信じられるかという話だとでも……?』

 「……ごめんね、今は生徒達を助けに行かなきゃ。」

 「また後でね、セイア。」

 『……待ちたまえ先生。もう一つ、聞いておきたいことがある。』

 『ただ信じたところで、何も変わりはしない。』

 『信じたところで、そこには何の意味も無いだろう……!?』

 

私はハナコの事を思い出しながら言う。

 

 「水着じゃなくて下着だと思えば、それは下着だから。」

 『……は?』

 『……え、下着?』

 

セイアは顔を赤らめる。

正直、私も少し恥ずかしい。

 

 『い、一体何を……水着、下着……?それはどこの古則の、いやそんなのは聞いたことが……』

 「待ってて、セイア。」

 

私の視界は真っ暗になる。

 

 

 

 

 「……っ」

 

私は目を覚ます。

周りを見渡すと私が今座っているベッドと同じ様な物が何個もあった。

それから察するに多分ここはトリニティの救護騎士団の救護室だろう。

そういえば、私は撃たれてからの記憶がない。

私はベッドから降りようとした時、横腹付近から激痛が走る。

 

 「い゙っ……」

 

私が痛みに悶えていると、ドアが開く。

 

 『先生!!まだ寝てなきゃダメです!!』

 『安静にしててください!!』

 

私は声のする方へと顔を上げると、そこには鷲見セリナが居た。

その顔は焦っており、それに私を心配しているような顔をしていた。

セリナは私をベッドへと転がるように言うが、私は従わない。

私は「シッテムの箱」へと手を伸ばす。

アロナが心配だ。

落とした衝撃で……

私はシッテムの箱を手に取る。

すると、シッテムの箱は傷1つ無く、無事に起動した。

 

 『先生!!』

 

画面の中にはシッテムの箱のOSのアロナが居た。

アロナは涙ぐみながら私に話しかけてくる。

 

 『私が不甲斐ないばかりに…!』

 「安心して、アロナ。この通り私は無事だから。」

 「だから、大丈夫。アロナが泣く必要はないよ。」

 

私はアロナを安心させる為に落ち着くような言葉を投げかける。

すると、アロナは段々と元気を取り戻していく。

しかし、まだ、心配しているようだった。

私はセリナに問いかける。

 

 「セリナ、今の外の状況はどうなってるの?」

 『今も…混乱は無くなってません…』

 『あと、ミカ様が…』

 「ミカが…どうしたの…?」

 

何か、嫌な予感がする。

ただの気の所為とかではなく、本能的なもので、嫌な予感がする。

まるで、地震が起こる前に山から小石がパラパラ落ちてくる前兆の様に…

私はゴクリとツバを飲む。

そして、セリナが次に放った言葉は、思いもよらなかった。

 

 『ミカ様が…トリニティの裏切り者として、投獄されています……』

 「っ……」

 「ミカが…裏切り者…?」

 『はい…アリウスと手を組んでいた事で、このテロの共犯として、投獄されています…』

 「そっか…」

 

……

ミカには後で会いに行こう。

それよりも今は、この物語の後を見るためにも…アリウス自治区に行かなきゃ。




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えーと、簡単に言わせてもらうと何個か作品を絞ってきました。続けてほしい作品に投票してください。1位から3位までの投票数が多かった作品を書きます。 あ、因みに、その3つしか書かないというわけではありません。ただ、受験勉強などで時間が無く、書ける時間がないからです。高校に合格したらまた今みたいに続けます。 この中から選んでください。

  • 呪言師のブルーアーカイブ
  • スイーツ!?食べる!!
  • あ゙ー…どうも、普通のキヴォトス人です…
  • クソみたいな世界で、俺は
  • やあ皆、俺だ。
  • シロコと俺
  • 先生に塩対応してたら殺されそうなんだが
  • 探究心は無くならない
  • おかん
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