Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order   作:神谷萌

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Chapter-02

 ストーム・ボーダー、藤丸立香の居室。

 ピンポーン

 立香は、インターホンの呼出音で目を覚ます。

『おはようございます、先輩。まだおやすみでしたか?』

 インターホン越しに、マシュがそう声をかけてきた。

「ああ……」

 立香は、ちらっと時計を見てから、

「うん、でも、起きるのに丁度いい時間だから」

 と、マシュに言った。

『それなら良かったです。あ、失礼しますね』

「うん」

 マシュは、立香に問うと、その返事を待ってから、室内に入ってくる。

「ふぁ……」

 立香は、そのマシュが入ってくるまでの僅かな間に、腕を上に向けて、欠伸を伴って()()をする。

「現在、マリアナ諸島に差し掛かるところとのことです。あと4時間もしないうちに、日本近海にたどり着くとのことなので」

「流石に南極から日本までは、丸一日もかかるか」

 立香は、そう言いながらベッドの上に座って、マシュと向き合う。

「最短距離より少し遠回りしているそうですが」

「そうなの!?」

 マシュの言葉に、立香は少し驚いたような声を出した。

「はい。私も、さっき一旦管制室に行った時に聞いたのですが」

 マシュは説明する。

「世界のあちこちに電波源があるそうです。その……まるで、汎人類史のように……」

「……それは……近代文明がある、ってコト……?」

 マシュが説明すると、立香は、不思議そうにしつつも重くは考えずに聞き返す。

「まだ詳細は解りませんが。なので、人のいる陸地は避けて海上を進んでいるんだそうです」

「ふーん……」

 ビーッ! ビーッ!

 立香が返事をしたその直後のタイミングで、狙ったかのように警報が鳴り響き始めた。

 それまでのんびりしていた立香とマシュの表情が、一気に緊張してくる。

「先輩!」

「うん、行こう!」

 2人は言い、部屋を出た。

 管制室へ向かって駆ける。ガラス窓の並ぶ通路を通り ────

 ヒィイィィィィッ……ゴワッ……

「えっ!?」

 思わず、立ち止まってしまった。

 窓の外、至近距離にジェット戦闘機がいた。

 立香達にもわかりやすい、現代的な超音速ジェット戦闘機だ。

 僅かな間、ストーム・ボーダーと並走した後、ゆるく弧を描いて離脱していく。

「戦闘機がいる……この世界にはジェット推進の航空機がある……」

 マシュが、途切れ途切れの声を出す。

「それに……あれは……」

 立香は、それを確かに見た。

 戦闘機が翻した翼に描かれていた、 “紅い円” を。

「はっ!」

 立香が、先に我に返った。

「ボケっと突っ立ってる場合じゃなかった! 行くよ、マシュ!」

「は、はい!」

 通路を疾走し、突き当りの自動ドアの前に至る。

 その扉が開き、雪崩れるように2人は管制室に入り込んだ。

「すみません……少し、遅れました」

 まず、マシュが言う。

「それで、どうなっているんですか?」

 立香が、管制室の要人を一瞥するようにしながら、訊ねる。

「警告を受けている」

 ネモが言った。

『繰り返す!』

 スピーカーに繋がれていた受信機越しに、相手の怒声が飛び込んでくる。

 ── 日本語…………!

 立香は、その事に気づき、眼を(まる)く広げた。

『こちらは大日本帝國海軍第1艦隊、貴方は我が国の防空識別圏内にある! 直ちに引き返すか、さもなくば所属・目的を申告せよ! 然らずんば撃墜する!』

「答えなくていいんですか?」

「どう答える?」

 立香が問いかけるが、視線があったダ・ヴィンチは、困ったように言う。

 それに対して、立香も言葉がすぐに出てこなかった。

 どう答える ──── 素直にノウム・カルデアと答える? 目的は?

「ええい!」

 立香が、わずかに考え込んだ時、ゴルドルフが苛立った声を上げた。

「ステルスをかけながら振り切ってしまえばいいだろう! あんな旧式機!」

「旧式……?」

 マシュが聞き返すような言葉を出した。

 すると、立体ディスプレイにサンプル画像が表示された。

「グラマンF-14『トムキャット』。ただし、酷似はしているけれど完全には一致していません。全体的にひと回り小さくできているようです」

 シオンが解説する。

「まぁ確かに、そのものだとするなら制式採用から40年以上経っているわけですが ──── そもそも、汎人類史においては日本航空自衛隊が運用した事実はないのですが、なにせ異聞帯なので、何でもありですからねェ……」

「最初から、光学を含めた電磁波に対する隠蔽はしていたんだ。それで発見されてるってことは、向こうはこちらの概念を捉えられるって事なんだよ。これ以上ステルスを強めようってなったら、推進器を停止するしかない」

 ネモが、困惑したような、ゴルドルフに対して抗議するかのような態度と口調でそう言った。

 ステルスを強めるために、推進器を停止してしまっては、移動ができなくなる。本末転倒だ。それでやり過ごしてから改めて、という考え方もできるが、それは確実にステルスが効く、という前提が必要になる。すでに、光学・電磁波隠蔽が通用していない以上、それは希望的観測だ。

「このままズルズル進んでいくわけには行かないじゃないですか!」

 立香が声を上げる。

「報告! 急ぎ!」

 観測係のネモ・マリーンが、声を上げる。

「何があった!?」

 ネモがそう言って、報告を促す。

「海上に船舶……いえ、軍艦です! ただ……」

「ええい、いい! 映像をこっちに写せ!」

 マリーンの、どう言ったらいいのか、と言いたげな口調に、ゴルドルフが焦れて、声を出す。

「は、はい」

 立体ディスプレイに、それが表示される。確かに、3隻の軍艦が、艦隊として洋上を進んでいるかのように見えるのだが……

「は、はぁ!? こんな事があっていいのか!?」

 ネモが、困惑を通り越して混乱しかけた様子の声を上げる。

「こ、これが実際の映像……だと!?」

 ゴルドルフも、それを見ると、困惑しきった声を上げる。

「ど、どういうこと?」

 その2人の困惑が解らず、マシュとともにキョロキョロとしながら、立香が問いかける。

「簡易スキャン結果……先頭は03DDむらさめ型護衛艦、その左後ろにいるのは……敷島型戦艦、右隣にいるのは……汎人類史の艦とは一致しないように見えますが、艦橋構造物の形状は翔鶴型空母……」

 シオンは、唖然とした様子で映像を見つつも、そう説明する。

「ただし! すべて、魔力的な……サーヴァントのような、魔力を練り込んだ存在でできています!」

「えっと、どれも、日本海軍の戦艦……ってコト?」

 立香が、おずおずと言った様子で、問いかける。

「そうだ。だが時代がぜんぜん違う!」

 ゴルドルフが言う。

「敷島型戦艦は、日露戦争の『三笠』の同型、翔鶴型は第二次世界大戦期の空母で、真珠湾攻撃にも参加した1隻です! 先輩!」

 マシュが、立香に、その2隻の存在した時代を説明した。

『直ちに減速し、所属・目的を申告せよ!』

 

 

 戦闘工作艦『朝日』、霊子臨時艦体、艦首付近甲板上。

「ここまでついに返答なし……ね……」

 詰め襟の白い制服に身を包んだ、銀髪を、ぼさっとやや伸ばした短髪の女性が、そこに立っている。

『航空隊の退避、完了しました』

 彼女の脳内に、穏やかだがどこか杓子定規な口調の、女性の声が響いてくる。彼女は、それを “通信” と認識した。

「うん。多分そいつには、対大型サーヴァント級程度の対霊兵器は効かないと思うから、それでいい」

『SAMで支援しますか?』

 別の、やや若さを感じさせる女性の声が、やはり “通信” として聞こえてくる。

「いい。 ……ああ、鬱陶しいとかそう言う判断じゃないから」

『了解』

 銀髪の彼女の声もまた、 “通信” になって相手に聞こえていて、返信がきた。

 かの大戦を生き抜いたのか、それとも大戦自体がなかったのか、ジェット機対応のために、飛行甲板の高さを下げ、耐熱不燃のアングルドデッキとし、艦橋構造物に視覚的に解る面影を残している『翔鶴』。

 その前を征くは、半世紀を経て生まれるはずの03DDむらさめ型護衛艦、かの乱戦の最中の台風の目になった艦の2代跡をついだ『ゆうだち』。

 そして、撤去された30.5サンチ連装砲の代わりに、そのゆうだちのCompatto砲と同じオート・メララ76mm/L62の連装砲を据え付けた『朝日』の艦首に立つのは……────

「これは最終警告である! 次は撃墜する!!」

 銀髪の女性の左右に、霊子で編まれた、軍艦の砲塔のようなものが出現した。

「責任者として名乗っておこう! 私は ────」

 

 

『これは最終警告である! 次は撃墜する!!』

「な ────」

 その言葉に、緊迫感がさらに切羽詰まったものになる。

「高重力波反応 ──── ちょっ、自励核融合が発生しますよ、これっ」

「駄目だ、回避 ──── どっちでもいい舵を切れ! 回避だ!!」

 シオンとネモが、半狂乱の声を上げる。

『責任者として名乗っておこう! 私は、大日本帝國終身内閣総理大臣にして永世征夷大将軍、大和、大日本帝國軍艦大和であるッ!!』

 閃光。

 何かを、撃たれた。

 強烈な光条が、ストーム・ボーダーを掠めた。

 ビリビリビリビリビリビリッ

 最初は激しくも細かった振動が、一気にストーム・ボーダーの艦体が空中に転がるかのような衝動となった。

 立香が、もう少しで、管制室の床に転がりまわることになりそうだ、という、寸でのところで、振動は収まった。

 なんとか踏ん張り耐えた、と視線を上げて、周囲を確認しようとする。

 そして、信じ難いものを見た。

「あ、ああ、大和……ヤマト、と言ったのか……あいつ……」

 全員が取り乱している中でも、平静を保っている事が多いネモが、顔面から血の気を失せさせた、恐慌の表情で震え、立ちすくんでいる。

 ネモが取り乱すこと自体は珍しいと言うだけで初めてではない。だが、恐怖に対して、それでも的確に対応とするのではなく、怯える姿というのは、初めて見た気がした。

「ゴルドルフ所長!」

 そのネモが、ゴルドルフを呼んだ。彼がゴルドルフを継承付きの名前で呼ぶのも、今回が初めてなんじゃないだろうか。

「僕は降伏を勧める。それ以外に、皆の安全を保証する方法が思いつかな……──── いや、断言する。そんなものは存在しない」

「む、むぅ……」

 普段そうはならない人物が狼狽えているのを見て、全員に動揺が走っていた。それは、当然のようにゴルドルフもだ。

「だ、だが……」

 そのような動揺は、時として合理的な判断をする能力を奪う。

ヒュームバレル(人理定理)()レイプルーフ(未来証明)だ! あの艦隊ごと粉々にしてしまえ!」

「ええっ!?」

 そう言いそうで、意外に強硬策を嫌うゴルドルフが、そんな事を言いだしたことに、その場にいた全員が驚愕の声を出す。

「すでに我々は攻撃を受けたのだ。降伏しても安全が確保されるとは限らん。私には諸君らの身の安全を確保する義務がある」

 そう、ゴルドルフは、血色の悪くなった唇を震わせながら言ったのだが……

「駄目だ、ヒュームバレル・レイプルーフは使えない」

 ネモが、即座にそれを制する。

「えっ!?」

 ゴルドルフだけではなく、立香とマシュまでもが、驚愕に眼を見開いて声を上げた。

「アレは、アレは()()()()()()()だ。そうでないにしても、それに匹敵する力だ。そんなものに、人理の脅威に対する兵器を使ったりしたら……効かないだけならいい、下手したら、同等の人理同士がぶつかり合って対消滅することになる……!!」

「なにを……はは……私も短気だったが……それ、それは大げさじゃないかね……」

 戦慄した表情のままのネモの、重い口調の言葉に、ゴルドルフが、笑っていない笑い声を漏らしながら言う。

「自分としても、断言はできませんが、今の重力波によるエネルギーの圧縮は、そうだとしてもおかしくないと判断します」

 シオンが、ネモの発言を支持した。

「私もそう思う」

 ダ・ヴィンチまでもが言う。

「…………」

 ゴルドルフは、苦い表情でわずかに考えた後、

「向こうが受信できるだろう送信を頼む」

 と、スタッフに告げた。

「はい、どうぞ」

 マリーンの1人が、ゴルドルフに告げた。

「あー……聞こえているかね、大日本帝國海軍を……大和と自称する者」

 ゴルドルフがそう言うと、

『これはその空中戦艦からの通信かね?』

 先程の、大和、と名乗った、 ──── ある少女サーヴァントが成年の姿になるとこのような声質だろう、という声で聞き返してきた。

「本艦はノウム・カルデア移動拠点、次元境界穿孔艦ストーム・ボーダー。私はその責任者、ゴルドルフ・ムジークという」

『ん? ムジーク?』

「あ、ああ……」

 大和の声は、疑問点を反芻するような呟きに聞こえたが、ゴルドルフはやや(はや)ったかの様子で、言葉を続ける。

「極めて不本意であるが、我々は貴君らに対して降伏を選択したい」

『降伏? 我々は国防の一端として貴艦の身上と目的を問いただしているだけだが』

 ゴルドルフの申し出に対して、大和は、本当に、軽く驚いたような声で聞き返してきた。

「そうかも知れないが、我々はどこかの国家に所属しておらず、(かえ)るべき場所がない。そして、目的として日本に行かなければならない。そうなると、選択肢は2つになってしまう」

『戦って押し通るか、我々に唯々諾々と従うか、か。なるほど』

 ゴルドルフが説明すると、大和は納得したような声を出した。

「た……ただし、だ。条件として、我々の身の安全は保証してもらいたい」

『俘虜を無体に扱うのはもとより主義ではないが。まぁ、承知した。帝都までは毛先ほどの傷もつけずに案内すると約束しよう』

「助かる」

 大和の答えに、ゴルドルフは、安堵するのを隠しきれないが、表情は引き締めたまま返した。

「帝都……東京?」

 まず、立香がつぶやき、

「あのっ、私達が行きたいのは、東京ではなくて広島、なのですが……」

 と、マシュが、慌てて身を乗り出すようにして、通信の向こう側に声をかける。

 ゴルドルフの表情が、恐慌にひきつった。

『いや、あなた方が広島へ赴く理由は、今のところはないはずだ。()()()()()()()()()の諸君。なぜなら、この世界の空想樹は72年も前に伐採された』

「えっ」

 立香とマシュが、呆気にとられて、短く声を漏らす。それに対して、

「やっぱり、そうか……」

 その背後から、中央のディスプレイの方を見ていたカドックは、そう呟いた。

『もし、諸君らとしてどうしても必要であり、我々としてそれを認めるのであれば、その時改めて広島にはお連れする。今はまず、諸君らの今後について、会談が必要なはずだ』

 大和は、最初の(はげ)しい口調とは一転、堅苦しい言い回しではあるが、こちらを気遣っている様子の口調で、言った。

『諸君らの案内役と交代しよう。私は一旦、先に失礼する。歓待の準備をして待っている』

 そう、大和が言ったかと思うと、

「! 霊子エネルギーの圧縮を確認!」

「な、なにっ!?」

 マリーンの1人の言葉に、一瞬だけ、緊張が走る。

「ま、まさか直後に気が変わった、というわけではないだろう?」

 血の気の失せた顔面で白目を向いたゴルドルフが、声を上げる。

「い、いえこれは、かなり大規模 ──── 神霊級ですが、性質としてはサーヴァントが顕界するときのそれに似ている反応です!」

「お、おおっ……」

 観測員のマリーンと共に、前下方のモニターを覗き込んでいたネモが、感嘆の声を上げる。

 今まで見えていた3隻の後ろ、日本のある側に、その巨体が現れた。

「近現代の、それも人造の代物でありながら、信仰の如き思念を集める、地球における船舶の、ひとつの定礎(キロポスト) ────」

『それでは、征夷大将軍閣下に替わりまして、ここからのご案内をいたします、護衛艦の「ゆうだち」と申します』

 案内役からの通信が入っているが、その時は、全く彼らしくなく、ネモはそちらに視線を奪われたまま、声が届いていなかった。

 手前側に翔鶴型空母と敷島型戦艦がいることでなおのこと引き立つ、背後からですら、見る者が感嘆を禁じえないその威容、見た目だけで解る、その圧倒感。

「史上最大にして、悲劇の主役、けれどそれがゆえに不確定の可能性の象徴 ──────── 戦艦、大和」

 

 






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カドックとのカップリングは……

  • アナスタシア以外考えられない
  • 譲っても立香♀まで
  • 既存の型月キャラなら、まぁ……
  • 別に型月キャラでもオリキャラでも
  • 逆にやるならいっそオリキャラの方が良い
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