Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order   作:神谷萌

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Chapter-03

「えっと」

 “護衛艦ゆうだち” は、この後の段取りを考えつつ、他の2艦に話しかける。

「私は臨時艦体を格納してあちらへお邪魔しますが、お二方はどうされますか?」

『私は、今は臨時艦体を格納することはできない。航空隊が乗っている』

 女声だがどこか勇ましさを感じさせる口調と声色で、 “航空母艦翔鶴” はそう言った。

『ワタシも付き添います』

 別の声。 “戦闘工作艦朝日” が言った。

「護衛なしで大丈夫ですか?」

 ゆうだちが、翔鶴に確認するように言う。

『今は平時だ。潜水艦の心配はあまりないだろう』

 ネモが聞いたら気を悪くしそうではあるが、常識的に考えた場合、艦体の整備が水上船とは根本的に異なる潜水艦が、海賊船であることは考えにくかった。

「そうは言っても、無防備になられて何かあっても困るんですが」

 ゆうだちが、軽くため息を()きつつ、少し困ったように言う。

『大丈夫だ。油断禁物ぐらいは心得ている』

 翔鶴がそう言う中、その言葉を裏付けるかのように、飛行甲板で対潜哨戒機の発艦準備が行われていた。

 不明大型飛行物体 ──── “ノウム・カルデア” と名乗る集団の次元境界穿孔艦『ストーム・ボーダー』に接触を試みていた、三菱A14M艦上戦闘機『瑞風』の格納が行われているのを余所に、富士重工S3Nq対潜哨戒機『祥雲』が、機首と両翼の航空用ディーゼルエンジンを全開にしながら、艦首カタパルトから射出、発艦していく。

「じゃあ、お二方でなんとかなりますね」

『ああ』

 ゆうだちの声に、翔鶴が答える。

 すると、ゆうだちの霊子臨時艦体が、キラキラときらめきながら、その存在が淡くなっていく。

「じゃあ、行ってきますね」

 ゆうだちがそう言い残すと、彼女の霊子臨時艦体は姿を消した。

「大和もな、他に駆逐艦や護衛艦を用意できないんなら、案内役をワタシにしてくれればよかったのに」

『それは色々と問題があるから無理だな』

 朝日がぼやくような声を出すと、即座に翔鶴が言い返した。

 

 

『では、ご案内のために、そちらへお邪魔いたしますね』

 “護衛艦ゆうだち” は、ストーム・ボーダーへはそう通信を送る。

「こちらへ来る?」

 どうやってだ、と、ゴルドルフが言いかけた時、ゆうだちの艦体がキラキラと、光の粒子を纏ったかのように煌き始める、かと思うと、その像が薄れて消えていく。

「こちらの甲板上! 霊子体の出現反応あり!」

「!」

 オペレーターの言葉に、ガラス窓越しに、ストーム・ボーダーの前部甲板に視線が集まる。

 そこには、海軍の士官服のような ──── いや、そのものなのだろう、白い衣装を着けた、青みがかったように見える長い黒髪の、少女が立っていた。

「迎え入れてあげてくれ」

 ダ・ヴィンチが言う。

「いいんだろ? 降伏した立場なんだし」

 念のため、といったように、ダ・ヴィンチは、ゴルドルフを見てそう言った。

「う、うむ……仕方がない、か」

 カルデアスタッフとネモ・マリーンに案内されて、少女が管制室までやってきた。

「改めて御挨拶します」

 肩と脚の膝から下が機械のようにも見える少女は、入室すると、その場で敬礼して、告げる。

「03DDむらさめ型護衛艦『ゆうだち』、命令によりあなた方を日本本土までご案内いたします。なお、征夷大将軍閣下の言葉通り、あなた方に危害は加えないとお約束いたします」

「うむ……こちらも改めて挨拶しよう。私はこの場の指揮官で、ノウム・カルデア所長ゴルドルフ・ムジーク ────」

「えっ? ゴルドルフ・ムジーク?」

 ゴルドルフが自身の名前を名乗ると、ゆうだちが、思わず、といった様子で、言葉を出してしまった。

「私が、なにか?」

 軽く驚いたように目を(まる)くしながら、ゴルドルフは聞き返す。

 ── 単なる同姓同名……じゃ、ないなぁ。同位の存在なんだろうけど、◯るとこうなるのか……

 ゆうだちはそう胸中でつぶやきつつも、

「あ、いえ。すみません」

 と、軽く手を振ってごまかした後、申し訳ないような気まずいような様子で視線を一度伏せ、そう言ってから、視線を戻した。

「続けよう。こちらは技術顧問でサーヴァントのレオナルド・ダ・ヴィンチと、同じく技術担当のシオン・エルトナム・ソカリス君だ」

「まぁ、よろしく頼むよ」

 ダ・ヴィンチはニコニコと笑みを浮かべながら、ゆうだちにそう言った。

「それと ────」

 ゴルドルフがそちらへ視線を向けると、ゆうだちもそちらを見た。

「魔術師、カドック・ゼムルプスだ」

「マシュ・キリエライトです」

「あ、えーと……ふ、藤丸立香です。よろしく」

 立香が自己紹介をして、右手をゆうだちに差し出す。それを見て、カドックが手で目元を覆う。

「…………」

 ゆうだちは、立香と、カドックを見た後、

「すみません、こちらの手で」

「え、あ、はい」

 と、ゆうだちが左手を差し出し、立香はいくらか戸惑いつつ、それに(こた)えた。

 握手が終わってから、立香は姿勢を正しつつ、ゆうだちを縦に一瞥する。

「あの」

「?」

 立香の態度に、ゆうだちはキョトン、とする。

「どこかで会ったこと、ありませんか?」

 立香は、どこか締まりのない笑顔で、ゆうだちにそう問いかけた。

「いえ……私は、汎人類史の方と会うのはこれが初めてですが……?」

「そうですか……失礼しました」

 ゆうだちに言われ、立香は身を引いた。

「いいかな?」

 そこで、ネモが割って入ってきた。

「艦の責任者の、ネモ・キャプテンだ。ネモと呼んでくれればいい」

「はい、よろしくお願いします」

 まず、挨拶を交わす。

「それで、日本列島に向かいたいんだけど、進行しても大丈夫かな?」

「はい、識別信号などは私が処理しますので。ええと……よろしいでしょうか?」

「あ、うん。こっちへ」

 ゆうだちは、ネモに案内されるかたちで、操艦部の方へと歩いていった。

「先輩も、やっぱり誰かに似ていると思いましたか?」

「マシュも?」

 自分達が話題から抜けたところで、マシュが立香に問いかけの声をかけ、立香はそれに聞き返すような言葉で応えた。

「はい」

「そうなんだよね……結構身近にいる気がするんだけど……」

「誰に似てるっていうんだよ……」

 どこか緊張感に乏しい立香の言葉に、カドックは、目元を手で覆ったまま、ボヤくように言った。

「お三方、よろしいでしょうか?」

 そこへ、シオンが声をかけてくる。

「この世界の魔力(マナ)濃度の測定と、その分析の結果についてなのですが……」

「説明おねがいします」

 シオンの言葉に、立香がそう言って促す。

「トリスメギストスII(2)の解析によると、この世界の魔力の濃度は、紀元前660年付近の濃度としてきました」

「紀元前660年……!」

 カドックが、驚きに目を見開いて短くそう言った。

「待ってください、じゃあ、この世界に汎人類史の人間が降りようとすると……」

 マシュが、慌てたような口調と表情で言い、それに合わせて、マシュ、カドック、シオンの視線が、立香に向けられた。

「えっと……え? 私?」

 どうして自分が注目されているのか解らず、立香は反射的に誤魔化すような苦笑をする。

「キリエライトが言いたいことは解る。神代のマナが満ちている中に、現代の人間が降りれば即死レベルだからな。霊装で対策していくしかないか」

「あ、ええ、そのことなんですが」

 シオンが切り出す。

「確かに濃度は高いのですが、性質としては西暦以降の第五架空要素(エーテル)に近いものになっています」

「性質が変わっている? ですか?」

 マシュが、反射的に聞き返した。

「まぁ、近代科学技術が発展しているようだし、神代の魔力は邪魔になるんだろう。 ……卵が先なのか鶏が先なのかという疑問は残るが」

 カドックが言う。マシュと立香が、シオンに向けていた視線を、一瞬カドックに向けた。

「ただ、汎人類史の第五架空要素とも、また微妙に違います」

「信仰の差か」

「ハイ。トリスメギストスIIもそう答えています」

 シオンの言葉に、カドックが指摘すると、シオンは肯定の言葉を返した。

「どういう事?」

 立香が聞き返す。

魔力(マナ)が大源から供給される流れが “神秘” であり、 “神秘” が “神秘” として存在し続けるいわばバックボーンが “信仰” なんです」

「汎人類史における第五架空要素の定義は西洋で行われた。まぁ、西洋と言っても現代人が想像するヨーロッパよりも広い、所謂アブラハムの宗教の支配的な地域を示すがな……この世界が異聞帯としてどこから分岐したのかにもよるが、日本が中心だったのなら、信仰の差によってマナの性質と濃度も変わってくるのも有り得る話だ」

 マシュの言葉に続いて、カドックが説明した。

「なので、立香さん達がこの大気にさらされても、いきなり破裂してしまうということはありません。もっとも急性的な話で、時間の経過でどうなるかはモニターが必要ですが」

 シオンは、そう結論づけて、説明した。

 立香が、ゆうだちの後ろ姿に視線を移す。

「それだけの魔力があるから、彼女みたいな存在もあると……」

 立香は、相手に聞こえると思わず、呟くように言ったのだが、

「そうですね」

「わっ!?」

 と、ゆうだちが反応して、振り返ったため、間抜けにも驚いたような声を出してしまった。

「今、いくつか確認させてもらってもいいかい?」

「はい、大丈夫です」

 ダ・ヴィンチが問いかけると、ゆうだちは、真摯な目をしつつも微笑みながら答えた。

「こっちも、さっきの姿と今のキ……あなたが、最初の護衛艦の姿をした『ゆうだち』と同一だということは解っている。後の3人……大和もそうなんだろう?」

「はい。あの姿は霊子臨時艦体といいまして、どちらかと言うと今の、人の姿の方が私達の本質なんです」

 ダ・ヴィンチの問いかけに、ゆうだちはすらすらと説明する。

「汎人類史の軍艦をその本質に内包しているみたいだけど、工業生産品そのものってわけじゃないんだよね?」

「…………そうですね、後ほどより詳細に説明させていただくことになると思いますが、簡単に説明すると、私達はそれぞれの帰属する国家を起点に、庇護されるべき国の民の思念……空想、妄想といったものが霊子体として形をとったもの、といったところでしょうか」

「つまり、サーヴァントみたいなものってコト?」

 ダ・ヴィンチが質問を継ぐよりはやく、立香が問い返すように言った。

「近い面はあります。異なるのは、私達は個人が意図をもって召喚するものではなく、庇護すべき国民の思念によって具現化します。それが私達 “具現化人格軍艦”」

「空想の具現化……そんな事が……」

 ゆうだちの答えに、ダ・ヴィンチがゴクリ、と喉を鳴らす。どこぞの真祖の姫君(あーぱー吸血鬼)の能力である “空想具現化(マーブルファンタズム)” とは全く同じものではないのだろうが、同じ様に表現される存在が出現する、という説明に、戦慄した表情をしていた。

「でも、あなた達の元になっている軍艦って、汎人類史のもののように見える」

 立香が言うと、続いてマシュが、

「他の方々 ──── 大和や翔鶴、三笠は、歴史上の存在からということも考えられますが、護衛艦ゆうだちは2017年の汎人類史でまだ現役の艦だったはず」

 と、疑問を付け加えた。

「2017年……?」

 ゆうだちは、まずそう言って、少しの間、困惑した表情で考え込み、

「ああ、西暦でってことですね」

 と、言った。

「まぁ、西洋の暦に固執する理由はないよな……」

 カドックが、軽くため息を吐きつつ言う。

「まず最初に訂正しておきます。多分敷島型戦艦ということで間違えたのかと思いますが、それは『三笠』ではなく『朝日』です」

「そ、そうでしたか、失礼しました」

 ゆうだちに言われて、マシュが、少し気まずそうに視線を伏せて、謝罪するような言葉を出した。

「それで、その疑問ですが、この世界には数多の並行世界から、空想、妄想が、情報の載ったエネルギーとして流れ込んでくるのです。その環境の中、私達の国の民の想いを呼び水として、具現化するのが私達です」

「空想や妄想が、並行世界からエネルギーとして流れ込んでくる世界……」

 カドックが、呟くように言いながら、苦い顔をする。

「他の世界から情報が流れ込んでくるというのは荒唐無稽もいいところだけど、他の世界で建造されるはずの軍艦を模した彼女達がいることがその証左とも言えるのか」

 ダ・ヴィンチも、なんとも言えない表情になりながら、そう言った。

 

 

 2時間半後。

「まもなく日本列島、東京湾付近に到着するけど、このまま湾内に進入して大丈夫かな?」

 ネモが、ゆうだちに問いかける。

「はい。先程私が指示した経路通りに。特に西側に外れられると、東京国際飛行場の進入路に()()()ので注意してください」

「羽田ね。了解」

 ネモが言う。

 ストーム・ボーダーは、提示された進路を通って東京湾へと進入を始めた。

「あれ、でも私達、これじゃ大和さんよりはやく到着しちゃってるんじゃ……?」

 立香が疑問を口にすると、ゆうだちは、先に視線を立香に向けてから、

「ああ、あの方は……──── 大和は、ひとり(単艦)でしたらどうにでもなりますので」

「だろうね」

 ゆうだちが、どう説明したらいいのか、という様子で言うと、かたわらのネモが、同意するかのように言った。

「さっきの説明を聞いて、思った通りの存在だと認識した。並行世界まで含めた、空想、妄想が集まってくる世界で、それが具現化した戦艦大和。神造兵器だろうと、彼女にはそうそう通用しない。ORTとも勝負になるんじゃないかな」

 ネモが、珍しく弱気な言葉をつらつらと並べる。

「キャプテンがそこまで言うほどのものかなぁ……」

 立香が、そう言って口をへの字にした。

「うむ……空想、妄想、となると、創作物までも反映されると考えていいだろうからな……」

 ゴルドルフが近づいてきて、言う。

「なにせ、ヤマトと言えば、宇宙の14万光年彼方まで言って戦ってきた事もある、ということになるのだろうからな」

「宇宙の彼方……?」

 立香は、ゴルドルフの言葉が理解しきれず、不思議そうな表情で呟くと、マシュと顔を見合わせる。

「まぁ、立香君やマシュ君は、世代的にも解らないか……」

 ゴルドルフはそう言ったが、

「あれ…………?」

 と、ダ・ヴィンチがそのことに気がつく。

「確かゴルドルフ君も、まだ29歳のはずじゃ……」

「サブスクで見たの! 他のロードたちからハブられて暇な時に!!」

 ゴルドルフは、ムキになって声を上げた。

「予定着水地点、障害物なし!」

 マリーンの1人が、そう報告してくる。

「座標位置で停止、降下、着水を開始する!」

 ネモが指示をだした。

 立香は、マシュ、カドックとともに、窓からその外、陸地の上を見た。

「ぁ…………」

 立香にとっては、それは見慣れているもののはずなのに、否、見慣れていたものだからこそ、驚いてそれを凝視してしまった。

 今までの異聞帯(ロストベルト)では見ることのできなかった、 ────21世紀の、近代的な都市。

「ここには……」

 現代的、あるいは近未来的な都市はオリュンポスにはあったが、それもどこか、汎人類史と比べて異質な面があった。

 それに対して、目の前に広がる、関東平野を埋め尽くし、繁栄を謳歌するメガロポリス。

 2つのランドマークタワー、東京スカイツリーと、東京タワーの姿も見えた。

「この世界は……」

 立香は、呟いてから、ゴクリ、と喉を鳴らし、そして、深く息を吐き出した。

 






具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
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カドックとのカップリングは……

  • アナスタシア以外考えられない
  • 譲っても立香♀まで
  • 既存の型月キャラなら、まぁ……
  • 別に型月キャラでもオリキャラでも
  • 逆にやるならいっそオリキャラの方が良い
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