Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order   作:神谷萌

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Chapter-08

 東京発函館行 東北新幹線『はつかり』5号。

 鹿児島へ向かう名門寝台特急が健在なので、東北・北海道新幹線の愛称も伝統あるこちらの愛称が使われている。

 『こまち』は併結していないが、函館まで向かうのは11号車から17号車のE6系編成のみで、その後ろ、東京寄り10両は盛岡切り離しのE5系編成である。

「車内では、私は仮眠を取らせてもらいますね」

 マグダレーナが言いつつ、氏姫、ダ・ヴィンチちゃん、に続くかたちで、車内を指定席に向かって移動していると……

「!?」

 デッキで、その人物に出くわした。

「言峰綺礼……いや、ラスプーチンと呼ぶべきかい?」

 これが立香やマシュだったら、ミクトランの件もあってもっと歓迎ムードなのだろうが、ダ・ヴィンチはそこまで心を許しきる事はなく、口元で不敵に笑いつつも、険しい視線を言峰に向ける。

 しかし、言峰の方は、視線ははっきりダ・ヴィンチに向けつつも、

「君達は……何を……しているんだね」

 と、どこか憔悴したような表情で、そう、ダ・ヴィンチに問いかけてくる。

「?」

 その言峰の様子に、ダ・ヴィンチ、それに氏姫も怪訝そうな表情をする。

「君達が……この世界を受け入れてしまったら……私は……私は……」

 言峰は、心どこかここにあらずといった様子で、視線を外してしまうと、僅かにフラフラとするようにしながら、ダ・ヴィンチ達とすれ違い、隣の車両へ歩いて行ってしまった。

「…………なんだったん、ですか?」

 氏姫が、ダ・ヴィンチに訊いてくる。

「なんだったん、だろうね?」

 訊かれたダ・ヴィンチも、今の状況がなんだったのか把握しきれず、言峰が去っていった方を振り返って、覗き込むようにしながら、そう言うしかできなかった。

 

 

 16時40分頃、小樽駅。

 晩秋の北海道は、まだ本格的な降雪ではなかったが、薄っすらと雪化粧をしている。

『お待たせしました。4番線に 札幌行 急行「ニセコ」5号が到着致します。危ないですので、黄色い線の内側に下がって お待ち下さい』

 羊蹄山のヘッドマークも誇らしげに、キハ56形エンジン・変速機換装車を先頭に、ミディアムグレーとダークグレーのツートーンに塗られた急行列車が、5両編成で小樽駅の4番線ホームに滑り込んできた。

『御乗車お疲れ様でした。小樽、小樽です。4番線に停車中の列車は 急行「ニセコ」5号 札幌行です。当駅を出ますと 次は終点 札幌です』

「お待たー!」

 その声を聞き、声の主の明るくニコニコとした様子を見て、出迎えに来ていた立香とムニエルがズッコけるようなリアクションをとった。

 元特急型キハ182形の、座席としてはグリーン車に格上げ、用途としては急行形に格下げされたグリーン車、キロ182形8000番代のデッキから、ダ・ヴィンチが、妙に明るい声を発しつつ、片手を上げながら降りてきていた。

「まったく……あんな感じでマグダレーナさん達に引き渡したから、どんな再会になるのかと思ってみれば……」

 姿勢を立て直しつつ、メガネを直す仕種をしながら、ムニエルは呟くように言った。

 発車メロディが鳴り、『ニセコ』5号は扉を閉めて、エンジンの轟音を立てて札幌へ向けて駆け出していった。

「あはは、ごめんごめん。いや、私もびっくりしてるんだよ。簡単に霊子体を再構築してくれちゃってさぁ……」

 ごめんと言いつつさして悪びれていない様子で、ダ・ヴィンチは言う。

「こちらとしては、そこまで簡単な話でもなかったんですが……時間的に最大限急ぐのはなんとかしましたけれども……」

 ダ・ヴィンチの背後に、氏姫とともに立っていたマグダレーナが、謙遜なのか本気なのか、苦笑しながら言う。

「えっと、……こちらは?」

 マシュが言う、立香と共に、マグダレーナを凝視していた。

「ん、ああ、2人は初めてなのか」

 ムニエルは、まずそう言い、マシュの背後から、マグダレーナの方に移動すると、

「話には出てただろ? こちらがこの世界のムジーク家当主で、天文部藩王位のマグダレーナ・フォン・ムジークさん。それと、護衛サーヴァントのセイバー」

 と、立香とマシュの方を向き、手振りを加えつつ、マグダレーナと氏姫を紹介した。

「マグダレーナさん、氏姫さん」

 ムニエルは次に、マグダレーナと氏姫の方を向いて、

「こちらも以前話にだけは出していました、我々のカルデアのサーヴァントマスター、藤丸立香と、同じくマスター兼セイバーのマシュ・キリエライトです」

 と、同じように2人をマグダレーナと氏姫に紹介する。

「どうぞ、よろしくお願いします」

 マグダレーナが、左手を差し出す。

「あ、こちらこそよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 立香とマシュが、まずマグダレーナと握手を交わす。

「セイバー、足利氏姫です。宜しくお願いします」

 そう言う氏姫とも、立香、マシュは握手を交わした。

 一度姿勢を正す。

「先輩、マグダレーナさんて……」

「こらこら、見えるように耳打ちしない」

 マシュがひそひそ声で立香の耳元に囁くと、立香が苦笑してそう言った。

「私が、なにか?」

 マグダレーナが、何を言われているのか、と、少しキョトン、した表情をする。

「すみません、あの、森蘭丸と縁のある方だったりしませんか?」

 立香が、少し申し訳無さそうな声で、マグダレーナに訊ねる。

「森蘭丸……日本の昔の武将ですね……いえ、我が家はそこまで古くからは日本との関係はなかったはずですが……」

 マグダレーナは、怪訝そうな表情をしつつ、まずそう答えた。

「それに、私自身、ムジーク家の因子は受け継いでおりますが、この身体は霊子体人形でして」

「霊子体人形」

 マグダレーナの説明に、今度は立香が鸚鵡返しをしてしまう。

「ええ、その、本来の嫡子が、魔術師一家の当主よりも目指す道ができてしまったものですから、その代わりとして」

「ああ、なるほど」

 マグダレーナの、決まり悪そうな苦笑での説明に、立香は納得の声を出した。

 ラリーストとして活躍している、この世界のゴルドルフについては、笑い話の一環として、ムニエルやカドックから聞いている。

「まぁ、私にはどうしても後継を残せということで、この身体は女性的両性具有で……調整次第で、単性の男にも女にもなれるようになっていますし」

 マグダレーナは、苦笑したまま、自身の胸元に手を当てて、自嘲気味に言ったのだが、

「え」

 と、それを聞いた立香とマシュが、目を点にする。

「性別が変えられるって、それ謎の蘭丸Xさん……」

 マシュが、呟くように漏らした。

「謎の蘭丸X?」

 逆に、マグダレーナが、なんのこと? と小首を傾げる仕種をした。

「そう言えばそんな事もあったね……」

 ダ・ヴィンチが、脱力したような苦笑で言った。

「? ??」

 氏姫と揃って、何の話なのかわからない、といった顔をしているマグダレーナに、

「いやまぁ、内輪の話なので、すみません」

 と、ムニエルが、苦笑しつつも申し訳無さそうにそう言った。

「まぁ……それならそれで構いませんが……」

 マグダレーナがそう言って苦笑する。

「それで、ダ・ヴィンチちゃんはもう、完全に大丈夫なんですか?」

「うん……存在意義の定義を緩めてもらったからね、これでまた皆のアシストをガンガンやっちゃうよ!」

 マシュの問いかけに、ダ・ヴィンチはそう答える。

「完全に大丈夫かどうかは、すみません、完全には言い切れないところではあるんですが……」

 気まずそうな苦笑をして、マグダレーナが言う。

「なに、皆を裏切っちゃうような事はないんだろう?」

「それは、はい、お約束できます」

 笑顔を真摯なものに引き締めて、マグダレーナは断言した。

「後はなんとでもするさ。ストーム・ボーダーを引き受けられるほどのキャスターもいるんだろう?」

「あ、はい。後で紹介します!」

 ダ・ヴィンチの言葉に、マシュがそう答えた。

「本当は傍で調子を見てあげられるといいんですが、私は東京を長く離れる訳には行かないというのがもどかしいですね」

「枷さえ解いてもらえただけで大丈夫さ。私のこの名前は伊達じゃないよ?」

 そこまでは、笑顔で笑い飛ばすかのように言ったダ・ヴィンチだったが、急に深刻そうな表情に戻る。

「ところで、シオンはまだ見つかってないのかい?」

「えっと……」

「はい、見つからないと言うか、探すにもどこを探したらいいのかという現状で……」

 ダ・ヴィンチの問いかけに、先に立香が声を出しかけ、結局マシュが答えた。

「彼女がカルデアから離れたのは、在り方を縛られていた私みたいに単純な理由じゃないはずだ。この後何をしてくるのか……」

「できれば、シオンさんも助けてあげたいですね」

 苦渋の表情で言うダ・ヴィンチに、立香がそう言った。

「助ける? あ、うん、そうだね」

 立香の言葉に、ダ・ヴィンチは表情をいくらか崩した。

「ただ、彼女が土壇場で何をするかは、気をつけておく必要がある。ストーム・ボーダーの管制人格を変えた程度じゃ、情報的には安心しない事だね」

 心苦しそうに、ダ・ヴィンチはそう言った。

 

 

 ────────

 ────

 ──

「皆、配置についたかー?」

「はーい!」

 ネモ・キャスターの言葉に、返ってくる声。

 一見すると、以前のようにネモ・マリーンが動いているかのように見える。だが、そのマリーン達は、ここまでのネモ、ネモ・キャプテンではなく、ネモ・キャスターの分割思考で出現させた分身達だった。

 元々ネモ・キャスターもこれ自体は可能だった。今まではエンゲル係数を上げないように、よっぽど忙しい時以外は使わなかっただけだ。

 違う点を挙げれば、主人格がネモ・エンジンなので彼女のコピーは出せない(どうしても出せないわけではないが、とんでもなく悪燃費)ことと、中性的でわかりにくいが、マリーンが女性(ガールマリーン)である事、逆に、食事担当が男性のネモ・カフェである事あたりだ。

 軍統一型魔力炉とトリトンエンジン・レプリカは、最適化されてネモ・キャスター主人格の意識と接続されている。後はマリーンの何人かに付き添ってもらっていれば大丈夫だ。

 ストーム・ボーダーは、すでに三菱の乾ドックから、小樽の港湾内の水上に引き出されている。

 その、管制室。

「外部動力、接続断してもらって大丈夫だ」

「ハッ!」

 ネモ・キャスターが指示すると、ネモ・ガールマリーン達ではなく、海軍の士官服を着けた人間が敬礼付きで言い、手に持っていたハンディ無線機で何かを指示した。

「よし、魔力炉、エンジン、どちらも正常に出力上昇……ストーム・ボーダー、離水する!」

「イエス! マム!!」

 ネモ・キャスターの言葉に、ガールマリーン達が(こた)えると、ストーム・ボーダーは水飛沫をたてつつ、空中へと浮かび上がった。

「魔力炉、エンジン、スラスター、全て異常なし(コンディション・オール・グリーン)! 行けるぜ!」

 ネモ・キャスターは、そう言って振り返り、自信満々の表情をセレスタに向けた。

 ダ・ヴィンチを送り届けた日、一泊だけして東京に蜻蛉返りしたマグダレーナと氏姫を除き、2つの世界のカルデアの関係者が、管制室に揃っている。

「万国カルデア天文台所長として指示します ────」

 ネモ・キャスターからの報告を受けたセレスタは、その視線をネモ・キャスターから、ゴルドルフに移す。

「──── ゴルドルフ司令官、指揮をお願いします」

「うむ」

 ノウム・カルデアのメンバーが注目する中、ゴルドルフが彼らを見回す。

「ストーム・ボーダー、南極、万国カルデア天文台本部に向かう!」

「はいっ!」

 





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ネモ・ガールマリーンの衣装について

  • 原作マリーンと同じ短パン
  • スカートにしたら?
  • ちょい色気のあるショーパンにならない?
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