Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order   作:神谷萌

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第3節 摩尼曼陀羅式天令観測疑似惑星カルデアス
Chapter-01


 ──── インド洋南方上空。

 ストーム・ボーダーは、南極の万国カルデア天文台本部に向けて飛行している。そこは、汎人類史において、人理継続保障機関フィニス・カルデアのそれがあった場所と全くの同一座標だ。

 管制室。

「ここまで妨害がないのは拍子抜けだな」

 操縦席に座っていたムニエルが、意外そうな表情をしてそう言った。

「まぁ、ないならないに越したことないじゃん」

 ネモ・キャスターが歯を見せる笑顔で言う。

 ノウム・カルデアのメンバーである方のネモ、ネモ・キャプテンは、今は霊基回復ポッドの中にいる。これでシオンの霊子ハックから逃れられるとは思えないが、ストーム・ボーダーをネモ・キャスターに渡すまでの消耗を回復し、突然には消えたりしないように。

「しかし油断は禁物です。警戒は、怠らないほうがいいでしょう」

 大和に代わり、護衛として同行している翔鶴が言う。

「そうですね……」

 ムニエルが言い、ため息を()く。

「今までもさんざん、 “まさか” の連続だったからなぁ」

 それを聞いて、

「そう言う事なら」

 と、ネモ・キャスターが少し決まり悪そうにしながら、帽子をかぶり直す仕種をする。

「シバの観測に頼りすぎるな、艦の警戒装置からも目を離すなよ」

「イエス、マム!」

 ネモ・キャスターの言葉に、観測機器のモニターに張り付いているネモ・ガールマリーンが返した。

 

 一方 ────

 ポーン

 インターフォンの音が鳴る。

「はい、どなた?」

 与えられている個室の中、セレスタはそう問いかける。

『私です。立香です。入ってもよろしいでしょうか?』

 その声に、セレスタは一瞬、キョトン、としてから、

「ええ、いいわよ」

 と、答えた。

 扉が開き、立香が個室内に入ってくる。

「何か、私に聞きたいことがあるの? この世界のカルデアの事とか?」

 セレスタは、ベッドに腰掛けたままそう訊ねるが、すぐに、

「ああ、どうぞ、座って」

 と、立香に椅子を勧める。

「失礼します」

 立香はそう言って、椅子に腰掛けるものの、緊張したような表情をセレスタに向けている。

「あの、ずっと気になってたんですが」

 立香が問いかける。

「ん?」

「セレスタさんは、本当にオルガマリーさんの妹なんですか?」

「…………」

 立香の質問を聞いて、セレスタは、一瞬、動きを止め、僅かに沈黙する。

「どうしてそんなことを訊くのかしら?」

 セレスタは、すぐには答えず、質問の意図を問い返した。

「なんとなく、ですけど。見ていて、セレスタさんの方がオルガマリーさんより、年上に見えることがよくあって」

 立香は、深刻そうな表情で言ったのだが、セレスタは呆れと困惑の混じった苦笑になる。

「それって、この見た目の割には、って修飾語つくんじゃないかしら?」

「う……そ、それは、否定できません、けど」

 セレスタに言われて、立香はセレスタに向けていた視線を一度伏せ、焦ったように声を出す。

「そこは否定して欲しかった」

 セレスタも、後頭部に汗をかくような感触を覚えながら、まずそう言い返す。

「でも、あなた鋭いわ。うん……────」

 セレスタは、口元で笑んで、言う。

「── 間違いなく、私は妹。オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィアのね」

「でも ────」

「ただ」

 セレスタの答えに、立香が更に問い質そうとした言葉を、セレスタは遮る。

「── 私は普通の生まれ方をしていない。だから、あなたの違和感は正しい」

 自分の胸に手を当てながら、セレスタはそう言った。

「え…………」

 立香が、一瞬絶句する。

「……藩王位の話は聞いた事があるかしら?」

 セレスタが、立香に問いかける。

「マグダレーナさん、の事ですよね?」

「ああ、そっか。ええ、そうよ」

 立香が確認すると、セレスタは自分の言い方に不足があった事を感じながら、肯定する。

「確か、霊子体人形なんだとか……」

 立香は、そう言ってから、ハッとしたようにセレスタを凝視する。

「もしかして、セレスタさん、も……」

 立香の言葉に、セレスタは頷く。

「霊子体人形とホムンクルスの中間みたいな存在……そう思ってくれていいわ。私は、元々この世界のカルデアスと魂を共有する為に造られた……そう言うことよ」

 そこまで、その事に誇りがあるかのように言ったセレスタだったが、急に苦笑の表情になって、

「お姉ちゃんには悪いんだけどね、()()()()普通に生まれていると言っても、カルデアスと魂を共有する候補ではあったから」

 と、頬を掻く仕種をしながらそう言った。

「だから、名前もそんな感じに……」

「ええ……不自然に感じるわよね。ここだけ日本語だし」

 立香の言葉に、セレスタは苦笑のまま返した。

「でも、お2人は、その……カルデアスになる事を、嫌だとか思ったことはないんですね?」

 意外そうな表情をして、立香が問い返す。

「もちろん。だってアニムスフィア家最高の秘蹟そのものになるんだし、これ以上の栄誉はないわ」

 セレスタは、自信有り気な笑顔で言う。

「ああ、でも勘違いしないで。それは別に “セレスタ” を諦める事じゃないから」

「え?」

 セレスタの言葉に、立香が、一瞬、キョトン、とする。

「ちゃーんと人間の私としても人生謳歌してるもの。私の趣味の話だってしたでしょ」

「あ」

 セレスタの言葉に、立香は、短く声を出し、そして、苦笑した。

「今もちょっと職権濫用してたりするし」

「えっ?」

 セレスタがニヤニヤと笑いながら言うと、立香は軽く驚いたように訊き返す。

 すると、セレスタはMCフォンを取り出し、画像の中から、赤い昭和末期のハッチバック車の写真を見せた。

「L30系最終型カローラII(2)、リトラのGPターボ。これ譲ってくれるって人がいたけど、私離れられないから東京のスタッフに程度見に行ってもらってるのよね」

「あははは……それは……」

 妙にウキウキとした様子のセレスタに対し、立香は乾いた笑いをする。

 ヴィンテージコンパクトカーのコレクション、それがセレスタの趣味だ。

「できればターセルやコルサじゃなくてカローラIIで欲しいし。私の名前的に。あ、もちろん無理やりに頼んでる話じゃないわよ? ジャンル違いではあるけどクルマの話できる人に頼んでるし。そうじゃないと意味ないし」

「そうなん……ですね」

 セレスタの語りや、やや弁明気味に言う言葉の間も、立香は乾いた笑いのままだった。

「こういうのを思う存分やるためにも、汎人類史のマリスビリーの思惑は阻止しないと」

「!」

 セレスタの笑み混じりの言葉に、立香の表情が急に引き締まる。

「さっきはアニムスフィア家のって言ってましたけど、お父さんの件は……」

「家系に誇りを持つことと、その誤りを正すことは矛盾しないわ」

 立香が言いにくそうに言った言葉に、セレスタは、口元では笑みつつも表情を真摯なものにして答える。

「そもそもにしてね、アニムスフィア家の冠位指定に瑕疵があるのよ ────」

 

 星の形。宙の形。神の形。我の形。天体は空洞なり。空洞は虚空なり。虚空には神ありき。

 Stars Cosmos Gods Animus Antrum Unbirth Anima Animusphere.

 天は巡らず、地は動かず。

 

「── それを初代が受け取った時に意図を違えたのか、(はな)っから間違ってたのかはともかく、どうやっても無理が存在する。私達の世界のマリスビリーはその事に気付いてしまったから、冠位を投げ出して箱根で隠居しちゃってるわけ」

「…………私にはよくわかりませんが……そうなんですね……」

 立香は、セレスタの言い分は完全には理解できなかったが、険しい表情で言う。

「だから私は、汎人類史のマリスビリーの行動を利用して、それを正しいかたちに上書きしてやる。これはアニムスフィアとしての、私とお姉ちゃんがやらなければならないことだから。 …………大丈夫、その時になったらあなたにも理解できるわ。あなたは汎人類史とは言え、日本人だから」

「日本人だから、ですか」

 セレスタの言葉に、立香は、眉を(ひそ)めたまま、意外そうな声を出す。

「うん、自然と理解できると思う」

 セレスタは、笑顔になってそう言った。

「でも、汎人類史の……その……────」

 立香が言いかけ、言葉を選びかけると、

「呼び捨てでいいわよー。なんなら『あンのバカ親父』でも」

 と、セレスタが言う。

「はい……ええと、汎人類史のマリスビリー……の行動を利用すると言っても、どうやって?」

「汎人類史でも、カルデアスが設置されていたのは南極でしょ?」

 立香の質問に対し、セレスタは確認するかのように言う。

「だとしたら、行動の起点は南極になるはず。だとすれば、その異変はこの世界のカルデアの施設、それに、私の異体であるカルデアスが、真っ先に捉えるはず」

「あ、なるほど!」

 セレスタの説明を聞いて、立香も納得の声を出した。

 セレスタは不敵に笑う。

「そこから一気に勝負をかけてやるわ」

 

 

 南極。

 標高6,000mの山脈に位置する、万国カルデア天文台に、ストーム・ボーダーは接舷した。

 ノウム・カルデアのメンバーがタラップの出入り台に立つと、その出入り口の左右に、セレスタとオルガマリー、それに、総務長である万華美玉彦が立った。

「ようこそ、万国カルデア天文台へ。歓迎致します」

 玉彦が言い、そして、扉が開いた。

 扉が開き、立香達はその館内へと歩みを進める。

 セレスタを先頭に、通路をゆくと、 ────

「どこか、懐かしいような、新鮮なような気がするねぇ」

 と、ノウム・カルデアのメンバーがキョロキョロとしている中、ダ・ヴィンチちゃん、がそう言った。

「!」

 万国カルデア天文台の職員と思しき2人の男性が、小走りにかけてくる。なにやら大きなダンボール箱を抱えていた。

「あたっ」

 カタンッ!

「あ、す、すみません!」

 1人の男性の肩が、ムニエルにぶつかった。その拍子に、ダンボールの中身のひとつが、通路の床に落下した。

 オルガマリーが、それを拾い上げる。

「……ビデオテープ?」

 それは、Digital Betaのビデオカセットテープだった。ラベルには、鉛筆で「平27.8.10~8.17」とだけ書かれていた。

「す、すみません、オルガマリーお嬢様」

「わざわざお嬢様、なんて言わなくていいって」

 相手の謝罪の言葉に対し、オルガマリーはそう言いながら、拾ったビデオテープを差し出す。相手は、どこか慌てた様子で、そのテープを受け取った。

「今は初来訪者を迎えたところなんだし、片付けなんてそこまで優先しなくていいわよ?」

 何故かセレスタには背中を向けようとするその態度に、怪訝そうな表情をしつつ、セレスタはそう言った。

「は、はい! これだけ片付けたら、歓迎の準備の方に戻りますので!」

 職員のその言葉に、セレスタは腕組みをしつつ、わざとらしく口元をへの字にした。

「そ、それでは!」

 そう言って、2人の職員は、ダンボール箱を抱えて小走りに去っていこうとする。

「走ると危ないですよ。急ぐより、安全優先で」

 玉彦がその背後にそう声をかけるが、

「は、はいっ!」

 と、そうは答えるものの、やはりそそくさと小走りに去っていってしまった。

 玉彦はセレスタと顔を見合わせる。なんなのだろうか、といった様子の玉彦に対し、セレスタも肩を竦めて手を広げた。

「ああ、すみません、皆さん。見苦しいところを見せてしまいまして」

 玉彦が気が付き、立香達ノウム・カルデアのメンバーにそう言う。

「まぁ仕方ないだろう、我々の方も “急なお客様” だったろうからな」

 ゴルドルフが、自身の髭を手悪戯しながらそう言った。

 





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ネモ・ガールマリーンの衣装について

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