Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order   作:神谷萌

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Chapter-02

「信じられないような話……でもないか。ここにいると」

 セレスタが言う。

 万国カルデア天文台。

 大会議室。

 ノウム・カルデアのメンバーから、ゴルドルフ、ダ・ヴィンチちゃん、立香、それに立香に付き添う形でブーディカ、が、紹介を受けるために、会議室の前の方に横に並んで立っている。

「彼らの感覚からすると、本来、我々の世界の方が、異聞世界(レイヤー)と呼ばれる、過去の可能性から作り直された世界で、その外側に汎人類史、正規の世界が存在していたのですが……」

 ホワイトボードに簡単な説明を描きながら、玉彦が説明していく。

 その最中、ブーディカはチラッ、チラッと立香の様子を伺っていた。

「それは白紙化され、文明はおろか、その地形すら僅かな痕跡を残して白紙化されてしまった」

 玉彦の説明がそこに進んだ時、ブーディカの表情が焦ったようなものに変わった。

「そして今、我々の世界が、白紙化された地球上に定着しようとしている、というわけです」

「本来なら、正規の世界を取り戻そうとする彼らと、私達は敵対する関係、のハズだったけれど、彼らにとって、この世界は消すことが許容できない内容なのだそうよ」

 玉彦の説明に、セレスタが添える。

「我々の世界の他にも、7つの、異聞帯(ロストベルト)と呼ばれる、異聞世界(レイヤー)の前段階の世界が作られていたのですが、それらは基本的に、安定の代わりに発展と人類の尊厳を否定した、そのままでもDead Endが確約された世界で ──── そう言えば解るかと思いますが、我々の世界は発展を止めていない。人類の尊厳も否定していない。そんな世界を終わらせられない……────」

「厳密には!」

 玉彦の説明を遮って、立香が声を上げた。

「厳密には、この世界の他にもうひとつ、異聞世界(レイヤー)に進んでいた世界もありました。ただ、その、世界も ────」

「妖精國ブリテン ────」

 立香の言葉を、ダ・ヴィンチが引き継ぐ。

「── この世界と違って、我々の歴史とは程遠かったとは言え、まだ発展する可能性のあった世界だ。女王モルガンの圧政は苛烈だったが、理由があった。ただ、それを理解できない、上に立とうとした連中の愚策によって結局は崩壊してしまったのだけれど」

 説明しつつ、ダ・ヴィンチは残念そうに眉を下げた。

「今の、立香さん達の言葉を聞けば解るように、彼女達はその世界の性格に応じて柔軟に対応してきた。ただ異聞帯を排除してきたわけではなくてね。その思考の結果、 ──── えーと、つまり……」

 言葉を選びかけたセレスタを、玉彦が手で制し、

「つまり、我々の世界を排除したところで白紙化された汎人類史が復活できる事を確約できない、それなら我々の世界が白紙化地球に定着しても構わないのではないか、彼らはそう判断した、というわけです」

 と、説明した。セレスタが立香を気遣って言い難いところを、玉彦が汚れ役を(かぶ)ったかたちだ。

 その言葉が発された時、ブーディカがやはりヒヤヒヤした様子で、立香の表情を覗き込む。

「それで、その、汎人類史というものが、白紙化された原因は解っているのですか?」

 立香達と対面して立っている、万国カルデア天文台の職員のうちの1人が、手を上げながら質問の声を発する。黒髪・黒い瞳の、日本人を中心にアジア人が目立つ中で、金髪の髪をショートとセミロングの中間ぐらいにした、シルヴィア・ダットソルという女性だった。

 その質問を聞いて、セレスタが、芝居がかって大袈裟に目元を覆う仕種をした後、

「……その手段についてはまだ検討の余地があるわけだけど、首謀者は解ってる。マリスビリー・アニムスフィア」

 と、説明した。

 その名前を聞いて、万国カルデア天文台職員側にもどよめきが起こる。

「た、確か前藩王位は、引退して箱根にいるはずでは……」

「あー、それは私達の世界のウチのバカ親父(マリスビリー)ね」

 職員の中から上がった声に、セレスタは苦笑しながら言う。

「地球白紙化からの、自身の理想の上書きを企んでいるのは、その、汎人類史のマリスビリーなのよ」

 再び、職員の中にどよめきが起こる。

「汎人類史は白紙化されたのに、汎人類史のマリスビリー(前藩王位)が生き残ってるんですか!?」

「…………正式には ────」

 その問いには、ダ・ヴィンチが、険しい表情で答える。

「── 記録の上では、彼は……西暦で2011年、平成23年に死んだことになっている」

「その言い方は……」

「そう」

 訊き返す職員の言葉から先は、セレスタが引き継いだ。

「死亡の事実を捏造し、白紙化から逃れて生き延びられる場所はある」

 そう言って、セレスタはホワイトボードに、青いマーカーで円を描いた。

「汎人類史のカルデアス。ここは地球上じゃない。地球上にある記録も、汎人類史が白紙化した事実も、ここには関係ない」

 険しい表情でセレスタはそう言った。

「でも、汎人類史のカルデアスというのは、どこに……」

「今は簡単にアクセスする事ができない場所……」

 険しい表情で、ダ・ヴィンチが言う。

「ただ、元々は南極に、この場所に同じように基地が設置されていて、そこに据え置かれていた」

 それを聞くと、再び職員の間からどよめきが起こる。

「そう、だから行動を起こすとすれば起点はここになるはず」

「したがって、皆さんの重要な任務は、この地で異変が発生することを、可能であれば前もって察知することです」

 ダ・ヴィンチの後を受けてセレスタが言い、さらに玉彦が続けた。

 

 

「立香、大丈夫だった?」

 万国カルデア天文台の職員に対する、ノウム・カルデアの紹介と、これからについての説明が終わり、解散になったところで、ブーディカが心配そうに立香に寄りながら、問いかけるように言う。

「うん……ちょっとだけね」

「キリエライトやカドックに立たせても良かったんだぞ」

 ブーディカの反対側から、ゴルドルフが立香に向かってそう声をかけた。

「……最初に今の事を決めたのは、私ですから。他の人は、巻き込んじゃったようなもんだし…………」

 立香は、苦笑しながらゴルドルフを振り返りつつ、言う。

「ブーディカこそ、せっかく娘さん達いるんだから、私に付き添ってなくても良かったのに」

 再度ブーディカの方を向いて、立香はブーディカを見上げつつ、言う。

「な、何言ってんのさ! 戦闘じゃないとは言っても、マスターが矢面に立ってるのに、ほっとけるわけないだろ!」

「そっか、うん、ありがとう」

 立香は、取り繕っているのか本心からなのか、笑顔でそう言った。

「私達としても、あなたが無理をするのは本心ではないんだけど……」

 セレスタが、立香に声をかける。

「いえ、大丈夫です」

「それなら、いいけど……」

 立香の答えに、セレスタは、複雑そうな表情で言ってから、ため息を()く。

「ごめん、私達はちょっとこっちの話をするから」

 セレスタはそう言ってから、

「玉彦君」

 と、玉彦に声をかける。

「はい、どうかしましたか?」

 玉彦が、セレスタに視線を向けて、訊き返す。

「この部屋のセキュリティカメラ、明後日の場所写してるんだけど、理由わかる?」

「え!?」

 玉彦は驚いたように、天井を見上げる。

 逆さドーム型のセキュリティカメラが取り付けられているが、 ────

「本当だ、どうして……」

 ドームの中のレンズが、正面を向いていない事に気が付き、困惑の声を上げた。

 セレスタは、カルデアスを介してこの施設のシステムにアクセスできる。だから、この部屋のセキュリティカメラの不自然さに気付いた。

「…………」

 セレスタは、まずホワイトボードに視線を向けて、難しい顔をする。

 そして、その視線はホワイトボードの後ろにあった、プラズマレーザーテレビとDigital Betaのビデオデッキに移った。

 セレスタがビデオデッキのカセット取り出しボタンを押す。デッキの電源が入るとともに、テープ挿入口が開き、ビデオカセットテープが排出されて来た。

 そのラベルには、鉛筆で『天候特異事象 短縮編集版』と書かれているのだが……────

 セレスタは、そのテープを再度デッキに挿入する。テープローディングの時間内に、テレビの電源を入れた。放送が受信できる場所ではないので、最初からビデオデッキからのデジタル入力に切り替わっていて、ビデオデッキの待機画面が映る。

 セレスタが、眉間に皺を寄せながら、再生ボタンを押した。

 

『あ……あはーんうふーん♡』

 

 テレビの音量を確認していなかったのが運の尽き、ノウム・カルデアのメンバーもいる中で、画面の中の裸体の女性の嬌声が会議室内に響いてしまった。

 ゴルドルフとダ・ヴィンチが呆然とそれを見、ブーディカも自身は愕然とした様子でそちらを見つつも、反射的に立香の目を隠した。

「…………………………………………」

「あの、所長?」

 

『休息中の者は全員起床!! 手すき総員、廊下に整列!! これより施設内の総点検を行う!!』

 

 システム越しに館内一斉放送でセレスタが怒鳴る。あまりの大音量に、立香が眩んだようになった。

 そこからは、シルヴィアら女性職員を中心に捜索班を編成して、施設内の大捜索。

 まぁ出てくるわ出てくるわ、居住区の収納、ベッドの下、配水管のメンテナンスハッチ、挙句の果てには管制室のサーバーラックの裏からまで、テキトーなラベルの貼られたビデオテープの山・山・山。

 それらが、会議室で椅子にどっかりと腰をおろしたセレスタのもとに運ばれてくる。

「確認しました、これらも同様です」

 ストーム・ボーダーが到着した時、慌てて運んでいたビデオテープの段ボール箱も、シルヴィアが運んできて、セレスタにそう報告した。

 ビデオテープの山に取り囲まれるかのようにして、椅子に座っていたセレスタが立ち上がり、怒髪天の形相で、特にビデオテープの隠し場所を知っていた者を中心に、その場に集められた職員を睨む。当然ほとんどが男性職員だが、女性職員が皆無でないところが痛い。

「あんたらねぇ!! 何考えてんのよ!!」

 自身の傍らに積み上げられた、ビデオテープの詰まった段ボール箱をダンッ! と拳で叩きながら、怒声を発生する。

「そりゃあねぇ! 南極(こんなところ)に閉じ込めてるようなものだし、女の私だってムラムラするときゃするし、1本や2本や10本や20本くらい大目に見るわよ。だけどなにこの数!?」

 自身の背後に積まれたビデオテープの山を、手振りで示しながら、怒りの声を続ける。

「どう見ても軽く3桁あんでしょうが! これをいつ見てるわけ!? いつ仕事してるか説明できるんでしょうねあんたら!!」

 そう言いつつ、ビデオテープの1本を手に取る。

 汎人類史と違って、ソフト屋が電機メーカーの下にいる日本がイニシアチブを握っている構造上、DRMは強くない。デジタルソフトも、画質をアナログテレビ放送程度に落とせばデジタルテープへのダビングは事実上お咎めなしになっている。その分、テープ価格には著作権保証料が含まれている方式なのだが……

「しかも公費だと思ってROM付きの高いテープをダビングに使いやがって……」

 Digital Betaは、頭出し情報を書くための小さなフラッシュROMがついているビデオカセットテープもある。ただし、ROM付きのテープは上位品で、価格も高い。

 テープを持つセレスタの手が、ワナワナと震えていた。

「その上、それをなんでゲストを通す可能性のあるところで見てる!? セキュリティカメラの角度まで変えて!?」

 怒りの本丸といった感じで、目を剥いたような表情で怒鳴る。

「いやその、やっぱりテレビのサイズと画質はいいほうがいいですし」

「Shut up!!」

 セレスタの目の前に座らされていた男性職員が言い訳を口にすると、セレスタは即座に怒鳴り返した。

「ぜーっ、ぜーっ、ぜーっ……」

「事態が事態です、今は、謹慎などの職務を離れる処分は出しませんが、給料の査定は覚悟しておくように」

 怒りの昂りと怒鳴ったこととで息を切らしてしまったセレスタに代わり、総務長である玉彦が、落ち着いてはいるが険しい表情で、そう告げた。

「それと、公費で買ったビデオテープは、再利用のために返却してもらいますので」

「ええええーっ!?」

 玉彦が言うと、容疑者集団から絶望したような声が出るが、

「あったりまえでしょうが! 各国の税金よ解ってんでしょうねぇ!?」

 と、それに対して、椅子に座り直したセレスタが、怒声を上げる。

「購入価格で弁償しろって言わないだけ温情だと思いなさい!」

 その会議室の外の廊下 ────

「ごめんなさい、なんか着くなり身内の恥を見せちゃったみたいで」

 オルガマリーが、頬を掻く仕種とともに苦笑しながら、立香達ノウム・カルデアのメンバーに言う。

「いえ……返って緊張がほぐれてよかったかも」

 立香が、苦笑しながらそう言った。

「なんとなく、有耶無耶になっちゃった感じだもんね」

 付き添いつつ、ブーディカもそう言った。

「変な話だけど、リビドーがあるって事は、やっぱり人間なんだなぁって思うしね」

 ダ・ヴィンチも「しょーがないなー」といった様子でそう言った。

 






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