Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order 作:神谷萌
「これがこの世界のカルデアスか……」
ムニエルが、それを見上げて呟く。
万国カルデア天文台、カルデアス観測室。
大きな部屋の中央に、摩尼曼陀羅式天令観測惑星カルデアス、は設置されていた。
その様子は、防爆ガラスで仕切られたモニタールームから一望できる様になっている、というこの点は、汎人類史のカルデア基地に近い間取りではあったが……
「なんか、でかいサイクロン式掃除機みたいな容器だな」
装飾のついた宝石が浮かべられていたような汎人類史のカルデアスに対し、容器が床にどっしり据え置かれている姿を見て、カドックが呟いた。
「私は ──── そうね、一応、記憶としては汎人類史のカルデアスも覚えているけど、当然
カドックの傍らで、アナスタシア・オルタが言う。
「── 確かに、西洋魔術的な装飾以前に強度や安定性を重視した設計になってるわよね」
「……それってことは……────」
ダ・ヴィンチが気付いて、視線を、自分達より出入り口側にいた、アニムスフィア姉妹に向けた。アストルフォ、デオンのパートナーサーヴァントも一緒だ。
「これは、日本人が設計に携わってるってことかい? 主体的に」
ダ・ヴィンチが、アニムスフィア姉妹に訊ねる。
「まぁそういうこと。割と大胆に改設計してる」
セレスタが、オルガマリーとともに苦笑しながらそう言った。
「まぁ、立地に限らず固定したがると言うと、災害に慣らされてる日本人の思考だよね」
ダ・ヴィンチも、苦笑しながら頬を掻く仕種をしつつ、そう言った。
「…………これは?」
デカい掃除機に見える、その印象を強めるように、その前輪であるかのように設置された短く太い横方向の円筒を見て、カドックが訊ねる。
ポリカーボネイトの円筒の中で、黒い車輪のようなものが、一定の回転数で回転しているのが見える。その表面に模様のようなものが書き込まれているところまで確認できた。
「日本の、神学、仏学で呼ばれるところの
どこか不敵な笑みになって、セレスタが言う。
「その装置のおかげで、日本式改設計の不利を補って、父の原設計の83%まで消費エネルギーを圧縮してるわ」
「げっ、そ、そんなにかよ!」
説明を訊いて、ムニエルが驚愕の声を出し、その “車輪” を凝視した。
カドックも、飛び退いたような姿勢になって、それを凝視している。
「元々の消費エネルギーが大きいからね、17%の削減でも大したものだ」
「む、むぅ……」
ダ・ヴィンチも驚愕混じりの感心したような表情で言い、その隣にいたゴルドルフも唸るような声を漏らした。
立香はといえば、よくわからないけどすごいんだな、と言う様子で、その掃除機の
「カルデアス本体以外の説明も頼めるかい?」
ダ・ヴィンチが、アニムスフィア姉妹に訊ねる。
「もちろん。じゃあまず、お姉ちゃん」
セレスタは応じつつ、そのままオルガマリーに
「え、あ、私?」
話を振られて、オルガマリーは一瞬戸惑った様子を見せる。
「うん、だって肝心な部分じゃない」
「まぁ、うん……コホン」
セレスタに言われ、オルガマリーは苦笑しつつ、自分を準備するように咳払いをする。
「見た目、カルデアスのケースと一体化しているスクリーン状の、事象観測レンズ『キツネノメ』。それによって、カルデアスの地表で発生している魔術的、あるいは天体的事象を観察できます」
「うちらで言うところの『シバ』か。でもなんでキツネ?」
ムニエルが呟くように言いつつ、疑問を付け加える。
「…………そうか、伏見稲荷ですね?」
それまで、立香と設備を観察していたマシュが、ダ・ヴィンチやアニムスフィア姉妹の方を向いて、そう言った。
「流石に名前は聞いたことがあるぞ、日本の有名な神社だ。確かキツネの化身とか言われているのだったかな?」
ゴルドルフが言う。
「はい。その伏見稲荷の御利益のひとつに、目の健康があります」
「なーるほどな。日本人が設計した時に、それにちなんだ名前をつけたってわけだ」
マシュが口元に笑顔を浮かべながら説明すると、ムニエルが感心したように呟いた。
「日本人が設計した初期型は解像度低すぎて最低限のことしかできなかったんだけど……────」
セレスタは、苦笑しながらそこまで言うが、そこからは、誇らしげに胸に手を当てつつ、
「それを実用レベルに、劇的に改善したのが、誰あろう私の姉なわけです」
と、もう片腕でオルガマリーを示しながら、そう言った。
「も、もう……コンピューターを使って術式回路を最適化しただけよ」
大袈裟な、といったように、オルガマリーは気恥ずかしそうに言った。
「それも在野の天文魔術師には無理だったんだってば」
返って呆れたように、セレスタがそう言って、口を尖らせた。
「ほんと変なところで謙遜が強いんだから」
アストルフォが苦笑しながら言った。
「……それは、いつの頃の話だい?」
ダ・ヴィンチが、アニムスフィア姉妹に問いかける。
「私が、キツネノメを改良した時期ってことですか?」
「うん」
確認するオルガマリーに、ダ・ヴィンチは肯定を返す。
「えっと、平成16年だったわね」
「西暦で2004年か。まぁ、そんなところか」
オルガマリーの答えに、ダ・ヴィンチは納得した声を出しつつ、視線をカルデアスに向けた。
「次の設備が、この室内を取り囲むように配置されている、魔術駆動スーパーコンピューター『シオツチノオジ』」
セレスタが言う。
『トリスメギストス』があった汎人類史カルデアの管制室同様、カルデアスの設備を取り囲むように設置されているが、単純にオブジェクトとして見た場合、『トリスメギストス』に比べて、不安定な部分がなく、どっしり構えたような筐体になっている。
「シオツチノオジ?」
マシュが怪訝そうな声を出す。
「名前からして、塩にまつわる神様と思いますが……神様の名前をつけるなら、日本にも学問の神様はいるはずでは?」
「いや、そっちは私が知ってる」
眉を吊り上げつつ、ダ・ヴィンチが言った。
「シオツチノオジが祀られている鹽竈の神社に、誰にも解かれていない和算の問題が記載された絵馬が奉納されていたはずだ。それに由来、あるいは技術開発のきっかけにそれがあった、そんなところだろう?」
「御名答」
シオツチノオジを見上げながら言うダ・ヴィンチの言葉を、セレスタが肯定した。
「これを事象記録装置・電脳魔『ラプラス』と組み合わせることで、事象の分析、記録、レイシフトの実行を可能にしている、というわけです」
セレスタは、自らも室内を見渡すようにしつつ、そう言った。
「『ラプラス』はそのまま、俺たちの世界と同じってことか……」
「多分、マリスビリーが失脚する前に造られたアニムスフィア家の実績は、受け継がれてるってことなんだろう」
ムニエルの言葉に、ダ・ヴィンチがそう反応した。
よくわからないなりに、立香はその壁に見えるスーパーコンピューターの筐体群を眺めていた。
「…………」
しばらく、他のノウム・カルデアメンバーと共に、室内の設備を見学していたダ・ヴィンチだったが、
「ねぇ、これ ────」
と、声を出してから、視線をセレスタに向けた。
「未来にもレイシフトできたりしないかい?」
「えっ!?」
声を出したのはムニエルとカドックだった。それにマシュも加えて3人がダ・ヴィンチを凝視する。立香はいまいち状況を把握していないような表情をしていた。
「理論的には」
険しい表情で、セレスタは答えた。
「でも、現実的じゃない。レイシフトは言わば、その時代に割り込む事。未来に割り込んで、その際に何かを置き換えるような事を発生させてしまったら、未来を崩壊させてしまう。だから、事実上できない」
マシュとムニエル、それにカドックが、唖然としたように周囲の設備を見回す中、セレスタの言葉を訊いて、ダ・ヴィンチは険しい、それでいてどこか神妙な表情をしていた ────────
「すみません。個室は今調整していますので、しばらくはこちらの部屋で」
シルヴィアに案内されて、ノウム・カルデアの女性メンバーが連れられてきたのは、
「畳の部屋かー、これは私達のカルデアにはなかったね」
と、ダ・ヴィンチがそう言った通り、ゲストを宿泊させる為の、畳敷きの広い和室だった。
同様の部屋はいくつかあり、当然、男性陣は別の部屋をあてがわれている。
「布団は準備しましょうか?」
シルヴィアがそう訊ねる。
「あっと、えっと」
訊ねられた立香が、戸惑った様子で、周囲のメンバーを見渡した。
「あー、それぐらいはやるやる」
ダ・ヴィンチがそう言った。
「それでは、そこの押入れの中にこの人数分はあるはずですので」
シルヴィアは、襖風の引き違い戸の並んだ収納スペースを指して、そう言った。
「もし、不足があったら言ってください」
「はい、ありがとうございます」
立香が、シルヴィアの方を向いて礼を言った。
「それでは、失礼します」
シルヴィアはそう告げて、室内から出ていった。
「シオンとストーム・ボーダーじゃないけど、ここで盗聴を気にしても始まらない、か」
ダ・ヴィンチは、室内を見回しながらそう言った。
この施設は、この世界のカルデアスとシステムが直結している。そして、そのカルデアスはセレスタと同一の存在。そのため、セレスタはカルデアスを通じてこの施設の内部を把握できる。ビデオテープ騒動の件でもそれは明らかだ。つまり、この施設の中ではセレスタに隠し事はできない。
「立香ちゃん、ちょっと話、いいかな?」
ブーディカ、マシュとなにか暇つぶしをしようとしていた立香に声をかける。
「はい、なんですか?」
立香に、わざわざブーディカとマシュもついてきて、3人で横に並んでダ・ヴィンチと向かい合うように座った。
「ちょっと気になってることがあってね……」
ダ・ヴィンチは、困ったような難しい表情をしながら言う。
「もしかして、未来にレイシフトできる件、ですか?」
「!」
立香の答えに、ダ・ヴィンチは軽く驚いた表情をした。
「こういう時、立香ちゃんは鋭いな……その話ではなかったんだけどね、うん……」
そう言いつつ、ダ・ヴィンチは、深刻そうな、残念そうな表情になる。
「この世界では未来にレイシフトできることについて、理論が成立しているんだ、これってつまり ────」
「2017年より先が見えている、ってことですよね」
ダ・ヴィンチが言い澱みかけたところで、立香がその後を継ぐかのように言う。ダ・ヴィンチはそれを聞いて、軽く頷いた。
「そう……だ、BBドバイさんが言っていた、私達が未来へレイシフトできない理由……!」
マシュもそれを思い出して、漏らすようにそう言った。
『アナタたちのカルデアでは、2017年から先のレイシフトはできないからです』
立香達がドバイ特異点に向かった時、BBドバイから言われた言葉。
「実際、この世界のカルデアスは100年後を表示できていた。つまり、この世界はとっくに剪定事象じゃないんだ。少なくとも西暦2117年まではね」
「…………」
「…………」
ダ・ヴィンチが言った内容に、立香とマシュも言葉を失ってしまう。
「……でも、その話は本題じゃない、んだろ?」
肝心な話が止まってしまったと感じて、ブーディカが促した。
「ああ、そうだ。いけないいけない」
取り繕うかにも見えるように、少し戯けた口調でダ・ヴィンチが言う。
「本題は、本当にマリスビリーの行動は
「えっ?」
立香とマシュが、短く声を漏らす。
「うん、私も ──── 私達も、キーポイントは南極だと思ってた。南極のカルデア基地を取り戻すのが最優先事項だと……でも、逆にセレスタ、彼女がここから始まる、と確信して、軽く興奮しているのを見ていると、返って冷静に、『本当にそうか?』って疑念が湧いてくるんだよ」
「確かに、こちらの思惑通りすぎる気はしてきますね……」
ダ・ヴィンチの懸念の説明に、マシュがそう返す。
「そうなんだ。何より、彼女自身がマリスビリーの用意周到さを説明してくれた事がその疑念をふくらませるんだよ。計画の場所を “地球上” から切り離しておく、死亡の記録も誤魔化せる、そんな人物が、南極なんて解りやすい場所を放置しておくかな、って」
「それに ────」
ダ・ヴィンチの言葉に、立香が続ける。
「同一の場所に拠点が置かれていて、なにもない……っていうのも、不自然な気がする」
「そうだね、それもそうだ」
立香の言葉を、ダ・ヴィンチが肯定した。
「マリスビリーが生きているにしろ死亡しているにしろ、この施設は彼の計画の邪魔になるはずだ。それを何もしないというのは不自然に感じる」
「でも、
ブーディカが問いかけるように言うと、立香も、ダ・ヴィンチとマシュも考え込んでしまう。
だが、やがて、
「あ」
と、立香が何かを思いついたように呟いた。
「もしかして、 ──」
それを聞いて、マシュとダ・ヴィンチが目を
「なんで……なんでその可能性を忘れていたんだ、私達は!」
ダ・ヴィンチが声を上げた。
「じゃ、じゃあ、もしそれが正しいとするなら、私達は大きく遠回りをしてしまっているということに!?」
マシュも驚愕と困惑の混ざった様子で、言う。
「いや! そうじゃない、むしろ正しかった」
ダ・ヴィンチが言う。
「え?」
立香とマシュが、意外そうな声を出す。
「この時代で直接行ってもしょうがないんだ。あの特異点に行かなければならない。つまり…………」
「そうか、レイシフト……!」
立香の言葉に、ダ・ヴィンチが頷く。
「ストーム・ボーダーのペーパームーンであそこにつなぐことは、不可能じゃないけれど難しい。でも、ここにはカルデアスがある。カルデアスを使ったレイシフト設備がある。それは我々にとっての僥倖だよ」
具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
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