Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order   作:神谷萌

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Chapter-04

 ピンポーン

 という、特に緊急事態を知らせるわけでもない、普通の放送の際のチャイムで始まった。

『セレスタ所長、至急、制御室においでください。繰り返します ────』

 女性の声で、そう告げられる。

 その時、セレスタは自分の執務のための部屋、所長室にいた。何用か、と、先に内線電話に手を伸ばしかけたものの、

「…………セレスタ?」

 と、その手を止めたセレスタに、デオンが顔を覗き込んで問いかける。

「いい、やっぱり直接行く」

 セレスタはそう言って、立ち上がった。

 ──── 制御室。汎人類史カルデアではモニタールームと呼ばれていた部屋。

「唐突に呼び出して、なにがあったの?」

 扉が開いて室内に入るなり、セレスタは職員に問い質す。

「はい、先程から、カルデアス上に……表示欠落が発生していまして」

「表示欠落?」

 報告を受け、セレスタは怪訝そうな表情をする。

「場所は?」

「こちらです」

 大型の3Dディスプレイに、キツネノメを通したカルデアスの表面の一部が、拡大されて表示される。

「日本の九州地区、大分県」

 報告の通り、北部九州の瀬戸内海側の一角を中心に、本来カルデアスの現状を表示するべきスクリーンの上に、黒いシミのように、なにも表示できていない円ができあがっていた。

「もっと精細な場所は特定できないの!?」

 セレスタが、軽く苛立ったような、焦ったような口調でそう言うが、

「それが、キツネノメが表示欠落部分に焦点をあわせることができないんです」

 と、職員も困惑の声を上げる。

「そんなバカな……」

 一瞬、呆然としたかのように立ち尽くしたセレスタだったが、

「いや……これはひょっとして、()()カルデアスで起きている事象じゃない? 外部からの干渉によるもの……?」

 そう、ブツブツと呟くように言ってから、くしゃくしゃと前髪を掻きむしる仕種をした。

「ああ、迂闊だった。()()()()()()()()()()()なら、カルデアスとして感じ取る事はできないじゃない」

 セレスタは、マリスビリーの干渉がより能動的に行われると思っていた。そうすれば()()()地球になにかの異変が起き、それはカルデアスで感じ取れる ──── はずだった。

 だが、それが現在の異聞世界(せかい)に対する干渉ではないのだとしたら、時間の位相がずれているとしたら……────

 表示はされる。それは確かに地球上で発生している異変だから。だが、それはあくまで “表示されている” だけだ。カルデアスの上で、実際に現在と未来との間に発生している異変ではない。

 それは、カルデアスそのものであるセレスタには感じ取ることができない。

 人間が自分の顔の様子を知るには鏡などを使うしかないように、それはキツネノメなど表示装置を通してしか見ることができない。

「しっかりしろ、セレスタ!」

「はっ!?」

 混乱はそれほど激しくなかったが、思考に深く沈んでいたセレスタは、デオンの声で我に返る。

「何かが始まったのは間違いないんだろう?」

「そう、何かは始まった。ただ、南極じゃなかった。現在と未来じゃなかった。それは私のミス」

 デオンの言葉に、セレスタはまず淡々とした口調でそう言ってから、

「だけど、無関係とは思えない。ノウム・カルデアの皆さんを呼んで」

 と、指示した。

 

 

『ノウム・カルデアの皆様、至急、制御室においでください。繰り返します ────』

 その放送が入り、和室で緊張を解いていた立香達に、その緊張がにわかに戻ってくる。

 立香が、ダ・ヴィンチの顔を見た。

「どうやら、始まったみたいだね」

 ダ・ヴィンチが言う。

 立香達は頷きあって、部屋を出た。

 そこで、別室の男性陣がその部屋から出てきたところと、合流する。

「さっき所長(セレスタ)を呼び出して、それから私達だ」

 ゴルドルフが言う。

「マリスビリーが計画を動かし始めた、ということなのだろうな」

「それが能動的なものなのか、対処療法なのかは解らないけどね」

 ダ・ヴィンチが返す。

「対処療法?」

 カドックが鸚鵡返しに訊き返す。

「マリスビリーの計画の全容はまだ見えてこない、とは言え、何か目的があって、カルデアスと ──── 汎人類史のカルデアスと、地球の表面を置換したことは間違いない」

「だけど、白紙化したはずの地球の表面に、新しい世界が定着してしまったら、その置換の意味がなくなってしまう ──── だから、まずはその対策、ってことですか?」

 ダ・ヴィンチの言葉を継ぐように、立香が言った。

「まだ推測にしか過ぎないけどね」

 ダ・ヴィンチは、苦笑交じりにそう答えた。

「こんなところで話し込んでいる場合ではないのではないか?」

「おっと、そうだった」

 ゴルドルフの言葉で、ダ・ヴィンチが我に返る。

「とにかく、行ってみましょう」

 立香が言い、ノウム・カルデアのメンバーは通路を進み始める。

 制御室 ────

「!」

 立香がそこに入った時、カルデアス上に黒い染みが発生しているところが、3Dディスプレイに表示されているのが目に入った。

「ついさっきから、日本の九州地方にこの表示欠落部分が出現したの。まず、これの理由がなんなのか、あなた達の意見を聞きたかったのだけど……」

 セレスタが、入室してきたノウム・カルデアのメンバーを振り返って、そう言うが、立香、それにマシュは、その表示を凝視してしまっていた。

「ここって、やっぱり……」

「はい、間違いないと思います」

 立香が戦慄したような声を出し、マシュが、立香が具体的な名前を出す前に、それを肯定する言葉を出した。

「この場所が解るのね?」

 セレスタが訊き返す。

「はい。この場所は、冬木市のはずです」

 立香が答えた。

「冬木市?」

 セレスタが怪訝そうな表情で鸚鵡返しにした。同時に、職員の中からもどよめきが起きる。

「魔術研究都市の冬木……確かにあそこなら、なにか行動の起点になる可能性はある」

 セレスタは呟いてから、

「観測の焦点を合わせてみて!」

 と、職員に指示した。

「……いえ! ダメです、冬木市、特別な異常は検出できません!」

 僅かに経って、職員が困惑したような口調で報告してきた。

「ええ!?」

 セレスタが困惑の声を出す。

現在(いま)や未来の冬木市を見ても意味がないんです」

 立香が言った。

「……時間の位相がズレているってこと?」

「そう言っていいのかはわかりませんが。2004年1月30日の深夜に合わせてみてください」

 セレスタの問い返しに、立香がそう答えた。

「西暦で2004年だから……平成16年! 平成16年1月30日深夜に観測装置を合わせて!」

「はいっ!」

 セレスタがそう指示すると、オペレーターがそれを実行に移していく。

「…………平成16年冬木市、表示されました……が……なんだ……これは……」

 オペレーターは、それを覗き込み、どこか戦慄したような、呆然としたような言葉を出した。

「どうなっている? 報告して!」

 セレスタが、やや強い口調で促す。

「観測はできません、できませんが……逆に、そこだけが観測できないんです! ぽっかりと穴が空いたように!」

 オペレーターは、先程の口調のまま、そう言ってきた。

「特異点……」

 セレスタが呟いた。

「はっ!?」

 オペレーターが訊き返してくる。

「歴史の定礎となる部分に、なにかが原因で発生した異物。本来歴史にあるはずのない、間違った事象。その中心点……──── 確かにこれがあった、でも、()()()()()()にまで繋がってくるなんて……」

 セレスタは、説明しつつ、息を呑むような口調になっていった。

「なにかが始まった、というのは、間違いないと思います」

 立香は、セレスタの隣に立ち、まずそう言ってから、

「私達を、そこへ、レイシフトで送ることはできませんか?」

 と、訊ねるように言った。

 驚いた表情で、セレスタが立香を振り返る。

「私達は、以前にあそこへ行ってきたんです。汎人類史のカルデアから……その時は、生き残る事に精一杯で、気付かなかったんですが、今にして思うと、私達はこの特異点を解決できていなかった。今もこの特異点が燃えている、そして、それがこの世界にまで浮かび上がってきた」

「平成16年、1月の末、冬木の聖杯戦争 ──── あなたたちのカルデアの運命の分岐点になった特異点が、未だに燃えている、汎人類史のカルデアスが存在している限り、歴史を上書きされようとも、それだけでは覆い隠せない……ここには何かがある、そういう、ことね」

 立香の説明に、セレスタは呟くようにしつつ、納得したように言った。

「でも、レイシフトの精度の限界がある。まして、今回は世界の(レイヤー)が違う……まったく同じ場所、時間に行こうとするなら、その場所に強い縁のある者……以前にレイシフトしたことがあるような、それぐらいの情報のつながりが必要になる……」

「つまり、それって、私とマシュしか送り込めない、ということですね?」

 難しい表情で呟くように言うセレスタの言葉に対し、立香がそう問い返した。

「ええっ」

 それを聞いていた、ブーディカが驚いた声を出し、星麗禰と2人して、セレスタに迫ってきた。

「2人だけで送り出さなきゃならないって、どんな危険があるかもわからないのに!?」

「いえ、あなた達は一緒に送り込める」

 星麗禰と並んで、抗議するような声を上げるブーディカに対し、冷静さを取り戻した様子のセレスタがそう答えた。

「正式に契約しているマスターとサーヴァントの縁は強いから、それは大丈夫。ただ、それ以上の追加の戦力は、こちらからは直接には送り込めない」

 セレスタはそう言ってから、視線をゴルドルフに向けた。

「ノウム・カルデア司令官」

 険しくも真摯な表情で、セレスタは言う。

「彼女達に私から直接、頭越しに指示はできない。どうする?」

「む、むぅ」

 最初、唸るような声を漏らし、苦渋の表情になったゴルドルフだが、やがて、

「頼めるな、2人とも……いや、4人と言わなければならないか」

 そう、真摯な視線を立香達に向けて言った。

 立香達は、顔を見合わせあって、

「はい!」

 と、声を出した。

「では行ってきたまえ。君達のことだ、2時間もあれば向こうで知るべき情報は集められるだろう」

 ゴルドルフは、余裕気な表情をつくりながら、そう言った。

「その間、我々は……──── 技術顧問」

 ゴルドルフが視線をダ・ヴィンチに向ける。

「うん。多分そこから先は、ストーム・ボーダーが必要になるはずだ。私達はその準備をしておくよ」

 ダ・ヴィンチがそう言った。

 一方。

「レイシフト準備! いつ使うことになっても問題ないようにって、普段から言ってあるわよね!?」

 並行して、セレスタが自身の部下にそう指示していく。

「目標座標をガッチリホールドしておきなさい。肝心な時に事故とか、ありえないから」

 オペレーターが、設定を入力していく。

「レイシフト、目標、皇紀2664年1月30日23時00分。座標 ────」

 

 






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