Resurrection of Rising Sun ~Failed Grand Order 作:神谷萌
Chapter-01
『座標固定、アンサモン行程開始、霊子変換実行』
『シミュレート完了。成功率99.998%、行程続行』
『跳躍まで、3、2、1 ────』
ヴンッ
システムボイスとクライン・コフィンの若干の仕様の違いを除けば、今まで経験してきたレイシフトそのもの ────
「!?」
『──── 塩基配列 ヒトゲノムに申請』
『──── 霊器属性 善性・中立に申請』
『──── 100%の安全性を保証 ゲート 開きます』
── 何だ、これは。
『ようこそ、人類の未来を語る資料館へ。ここは人理継続保証機関 カルデア ──── 最終確認を行います、登録名を入力してください』
それは、視覚的な情報なのか、精神的なノイズなのか、はたまた別のなにかか。
その区別すらできない。
ただ、その場面は知っている。
──── 知っている、はずだった。
── !?
『──── 登録済みのデータと一致します。あなたがカルデアスの
『お待ちしておりました オルガマリー・アニムスフィア。あなたの来訪を歓迎します。どうぞ、善き未来をお過ごしください』
──── レイシフトから抜けた ──── かに見えた。
しかし、目の前に広がる光景は、炎上する都市ではなく ────
荒涼とした海岸。まるでそれと対象的に、満点の星空。天の河がキラキラと美しい。
なぜこんなところに、と思う間もなく、その光景は、まるで新幹線の車窓のように流れ去っていく。
再び、レイシフト中の視覚情報から、その出口の光へ ────
「──── 立香、立香、大丈夫かい?」
「はっ」
声をかけられて、立香は我に返る。
そこは、かつて見た光景。
建物の一部は倒壊し、あたりは瓦礫にまみれ、人の姿はなく、ただ、燃えている都市の光景。
「また、ここへ来たんだ」
「はい」
立香の言葉に、マシュが反応する。
「すべての事件が始まった場所、最初に観測された特異点、そして ────」
「ッ!」
マシュがその先を言おうとした時、立香が、下唇を噛みながら表情を歪めた。
「す、すみません」
マシュが、立香の傷を抉りかけていたことに気付き、慌てた声を出す。
「いや、いいよ、ここに来るって決めた時点で、その記憶との戦いになると覚悟してたから」
立香は強気の笑顔をみせて言うが、
「相当、苦しい思い出があるんだね」
と、ブーディカが心配そうな表情で問いかけるように言う。
「あたしみたいに……本当に、大丈夫なの?」
「……うん、大丈夫。それに、それを乗り越えるためにも、ここを乗り越える必要があるんだ」
強気を取り繕ったまま、立香は言う。
「無理は、 ──── うん、少しはしないと。所長の為にも」
マシュとブーディカは、それでも少し心配そうな表情で立香の表情を見ていたが、その立香の視線を追う形で、自分達も周囲を見渡した。
「あの時、私達はこの特異点を修復したわけじゃなかったんだ」
立香が言う。
「特異点としての聖杯は確かに回収した。けれど、それで崩壊を始めたこの特異点から、強制退去させられただけだったんだ」
立香は、どこかしみじみとしたように言った。
だが、それを聞いて、
「ちょちょちょ、ちょっと待って」
と、ブーディカが驚いて声を出した。
「あ、あたし専門外だけどさ、こういう特異点、みたいのって、かなりのエネルギーリソースがないと維持できないんじゃないの? 聖杯を回収して、じゃあ、今
「はい、それは私も驚いています。今でもあのときの状況が維持されているとは ────」
マシュも、自身が驚いていることを隠さず、言いかけたが、
「完全にあのときのままじゃ、ないみたいだよ」
と、マシュの言葉を遮って、立香がそう言った。
「え?」
マシュが、短く声を漏らす。
「あれ」
立香が指差した方向には、冬木市を東西に貫いている道路があった。瓦礫でだいぶ散らかっているが……
それを見て、マシュが驚いた声を出す。
「架線柱!?」
揃ってなぎ倒されてはいるが、明らかに鉄軌道の架線を支えるそれに見えるようなものが、道路の中央分離帯に並んでいた、その残骸が視覚できた。
「こ、ここはどう見ても道路です。路面電車の軌道もない、なのに、どうして……」
マシュが戸惑いの声を上げている最中に、立香はその架線柱の並びを追うように視線を移動させていく。
「あった、あれだよ」
その目的のものを発見して、立香はそれを指差した。
それは、半ば瓦礫に埋もれかけているが……────
「バス……いえ! トロリーバス!!」
マシュは、損傷しつつもどうにか原型が確認できる車体の上に、集電装置周りがあるのを確認して、声を上げた。
「トロリーバスがあると、何か変なのかい?」
ブーディカが訊ねる。
「汎人類史の冬木市には、トロリーバスはなかった、いえ、そもそも汎人類史2015年の時点で、日本にトロリーバスは専用道の2路線しか残ってなかったんです!」
「え?」
マシュのブーディカへの言葉を聞いて、立香が笑っているかのように表情を引き攣らせる。
「汎人類史の日本にトロリーバス、あったんだ」
「知らなかったんですね……」
立香が気まずそうな表情で言うと、マシュは目元を手で覆った。
「
「だ、だとするなら、今のこの場所は……」
立香が説明すると、マシュは慄いた様子の言葉を出しつつ、喉をゴクリと鳴らす。
「元々の冬木と、
マシュの言葉に、立香が頷いた。
「それじゃあ、ここでどうしたらいいか、わかんない ──── って事になってたりする?」
ブーディカが、2人に問いかける。
「いや、そんな事はないと思う」
立香が言い、未遠川を挟んだ西の方角を見る。
「セレスタさんが言ってた。この世界でも平成16年に聖杯戦争があったんだ」
「つまり、私達が目指すのは変わらず、座標点0号、大聖杯のある地下大空洞、ということですね」
立香に、マシュが続き、2人は顔を見合わせて、頷きあった。
その直後。
「きゃあ~。誰か~助けて~」
と、高い声が聞こえてくる。
「今の声は!?」
立香がその声が聞こえてきた方を向く。
「どう聞いても誰かの悲鳴です! 行きましょう!」
マシュが言い、瞬時に霊装、武装を呼び出す。
「うん!」
そう言って、2人は駆け出す。
「そーかなー。今のなんか妙に余裕ぶって間延びしてたように聞こえたけどなー」
そう言いつつも、ブーディカは霊体化していた槍を実体化させつつ、星麗禰とともに、2人を追い越す勢いで後を追う。
果たして、4人の前に現れた光景は ────
「え、ええっ!?」
立香が、それを見て、目を剥くようにしながら驚愕の声を上げる。
空想樹の種子が複数、1人の女性を取り囲んでいる。
空想樹の種子も、以前は見たことがない存在のはずだが、それはまだいい。すでにここでは、
だが、問題はその、取り囲まれている女性の姿だった。
「オルガマリー所長!?」
「と、とにかく救助しましょう!!」
立香とマシュが驚きと戸惑いの声を出しつつも、マシュも含めた3人のサーヴァントは、その方向へ向かって飛び出した。
「ていっ!」
ブーディカが、ランサー霊基ながら、腰に吊っている細身の剣を抜き、それを空想樹の種子に向かって投げつける。
キンッ
それ自体は、空想樹の種子の1体に当たって跳ね返るものの、それがきっかけで、オルガマリーを取り囲んでいた空想樹の種子の動きが変わり、
「はっ!!」
と、新たなアクションに入りかけたところへ、ブーディカは槍でその1体を貫いた。
そのまま、別の種子に、上段から踵落としを入れると、そこで崩れた態勢を立て直される前に、槍で貫く。
「ヒュウッ」
星麗禰が、隙間を擦り透けるようにしながら1体の胴を深く斬りつけ、その動きのまま身体を回しつつ、クナイをもう1体の頭部に投げつける。それが命中して頭部を損傷した種子が、その頭部が爆発するように崩壊し、地面に崩れ落ちる。
「た ────」
マシュは高く跳躍し、空中で倒立前転しつつ身体の向きを変え、空想樹の種子とオルガマリーの間に、オルガマリーを庇うように立った。
「え?」
「救助要請を聞いて駆けつけました! オルガマリー所長をお守りします!」
マシュは言い、
「はっ!」
そのまま、目前の種子の1体を剣で斬り裂いた。
「え、え、えええー!?」
オルガマリーが驚愕の声を出している間にも、
「でぇいっ!」
マシュは、左腕に装備されている、少し小型化された円卓の盾で、空想樹の種子の1体にシールドチャージをかけると、
「星麗禰さん!」
「フンッ!」
と、マシュが弾き飛ばした種子を、星麗禰が斬り裂く。
同時に、マシュ自身も、また別の種子を剣で袈裟斬りにしていた。
「……戦闘は終了しました」
マシュが言う。この場にいた空想樹の種子は全て、残骸となった後に霧散していた。
「ですが、これはどういうことなのでしょう?」
マシュは戸惑いを隠さず、言った。
「それは私の言葉よ」
オルガマリーが言う。
「マシュ、あなたシールダーじゃないの? その武装、まるで……セイバーじゃない」
「えっと、これは、その」
オルガマリーに問い質されて、マシュはとっさに言葉が出なかった。
「それも含めて、お互いの状況確認。私はこの通り無事よ。傷一つないから心配無用 ──── 何よ、その顔は」
「その……所長は、本物、なんですか?」
立香が、やっと声に出せた、と言う様子で、オルガマリーに向かって指を差してしまいながら、そう訊ねた。
「なによ、それ」
怒ったような口調で、オルガマリーは言う。
「私が本物か、ですって? それ、カルデアの所長に相応しいかどうかって話? バカな事言わないで。誰がなんと言おうと私はカルデアの所長よ。その責任から逃げられるわけないでしょ」
「い、いえ、そういうことではなくてですね……その、なんでここに存在しているのか、実在する存在なのか、っていう事で……」
立香がさらにそう問う。
「それは……」
オルガマリーは、そこで言い澱んだ。
「そうだ……触ってみてもいいですか?」
立香がそう言い、オルガマリーに近付こうとする。
「えっ……」
オルガマリーは、一瞬固まったかのように、短く驚いた声を出すと、
「ちょ、ちょっと待って、あなたのその魔力量……迂闊に近づかないで、爆発しちゃうでしょ!?」
そう言って、後ろにさがり、立香から離れようとする。
「マシュの武装と言い、立香の魔力量と言い、この時点で他の2体のサーヴァントを連れているところと言い……確かにおかしなところが多いわね、今回はそういう設定か、とも思ったけど……」
立香とマシュをジロジロと見ながら、オルガマリーは言う。
「設定って……どういう意味です?」
オルガマリーの言い回しに、立香は、後頭部に汗をかくような感覚を覚えながら、訊き返す。
「こっちの話……いえ、それも含めて、まずは事情と状況を説明して。協力パターンにはいるのは、それからよ」
オルガマリーがそう言うと、
「あ…………」
マシュとブーディカが、少し不安そうな表情を立香に向けた。
「うん、大丈夫。このオルガマリーさんにも納得してもらわないといけないと思うし……」
立香は、苦笑交じりにそう言った。
「オルガマリー
オルガマリーは、敵意も感じさせるような視線を、立香に向ける。
「あ、ああこれには深ーい事情があって! それも今、説明するから」
ブーディカが、立香の方を制するかのように腕を広げて庇いながら、そう言った。
「事情、ね……まぁいいわ。聞かせて頂戴」
「それじゃあ……────」
……………………
…………
……
「…………それを、私に話して、どう反応するか考えなかった?」
レフ・ライノールによる冬木へのレイシフト実証の失敗。
7つの特異点を消去する人理修復の旅、人理定礎の復元。
そして、人理焼却の現況だったゲーティア、ビースト
人理が修復、されたと思った、事。
その後、発生したカルデアへの襲撃。
カルデアスの凍結、南極のカルデア基地からの脱出、地球の白紙化、空想樹の降着、異聞帯の発生。
本来冬木に送られるはずだったAチームが、クリプターとして異聞帯を育てていたこと。
キリシュタリアの第5異聞帯で降臨した『異星の神』。
「この、『異星の神』に記憶容量は使わなくていいわ、いいわね?」
7つの空想樹を切除、本当の『異星の神』、カルデアスこそが『異星』であり、地球白紙化を行った元凶だと知った事。
そして ────
その奪還を試みて、南極に突入した時に、入り込んでしまった8つ目の
そこまで、オルガマリーは話を聞き、理解し、自分なりに噛み砕いて納得していたのだが ────
「カルデアの本来の名前は忘れてないわよね? 本来の人理を投げ出して
「それ、は……」
それを話すことを楽観視していた立香は、オルガマリーから強く詰められて、視線を伏せつつ、言葉を詰まらせてしまう。
「り……立香の精神の負担も考えてあげてよ!」
マシュと2人で、立香を庇うようにオルガマリーとの間に割り込みながら、ブーディカが言う。
「世界全体を背負わされる、なんて、英霊でも気が遠くなる!」
「そうね、それは同情してあげてもいい。でも、今の事情を納得できるかは別」
オルガマリーはそう言い、怜悧な視線を立香に向けている。
『そう、じゃあ、あなたもう話さなくていいわ』
「えっ!?」
突然、割り込んできた声に、その場にいた者はキョロキョロとあたりを見回す。立香も顔を上げた。
立香とマシュには見慣れた、魔術通信の映像が映し出された。
『通信の呼び水になってくれてありがとう。でも、その判断について立香達を責めるなら、あなたはもう黙ってて。後は私がやる』
具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
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Discordは「一時メンバー」となりますので、私のオフライン時に来られた方は、「エントランス」及び「一時メンバーの連絡用チャンネル」のアナウンスに従って必要事項を書き残してください。
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